あのエンターヘブンの奇襲攻撃から今日まで目立った襲撃もなく、比較的静かな夜を過ごすことができた。
「予定では、明日私の分隊が到着します。それまでマリアン、あなたは準備を完了させて早急に休息をとってください」
「はい。わかりました」
マリアンを部屋に戻し、カウンターズの面々は巡回に回っている。
今、室内には私と指揮官しかいない。私と彼を二人きりにさせるとは、信頼を得てきた証拠なのだろうか。
「カウンターズを行かせてよかったのですか、指揮官さん? 私と二人きりなんて、もし私が敵なら絶好の機会だと思いますけど?」
「信頼に値する。そう判断した」
私を見る彼の目は、とても真っ直ぐだった。
「……ふぅん。まぁ、あなたが私を信用しようがしまいが、こちらの計画が止まることはありませんけどね」
「私達を助けてくれるのも、その計画の内なのか?」
「ええ、勿論。あっ、だからと言って余計な憶測はしないでください。あなたはあなた自身の考えを捨てないでくださいね?」
ここで余計な情報を与えてしまうと、指揮官の動きが大きくズレてしまう可能性がある。それは大いに避けたい。
「君は……いつから侵食を受けているんだ?」
「記憶ははっきりとしない所がありますけど、恐らく私がニケとして生まれた時には、既にボディに侵食が埋め込まれていたと思います」
今思えば、この芸当は侵食がまだ初期段階だからこそ可能だったもので、現代の侵食技術ではこうもいかないだろう。
「ということは、侵食を誘発させたのは内部の人物なのか?」
「そうでしょうね。まぁ、誰が誘発させたかは、ある程度予想がつきます」
「その人物は今、どうなってる?」
「恐らくもう死んでます。私の友人の手によって」
後にシンデレラたちとも合流するため、彼女たちについてはまた今度でいいだろう。
時計を見上げると、既に丑三つ時が迫っていた。
「あなたも休むべきだ。ただの人間の身体じゃ、休息を取らないと余計なミスが発生してしまいますよ?」
「ああ。そうだな」
カウンターズの面々もじきに戻ってくる。代わりに私が報告しておこう。
「助かる」
「いえ。それでは、おやすみなさい」
指揮官が部屋を出ると、室内は一気にしんと静まり返った。
「……久しぶりの感覚だな」
最近24時間ずっと騒がしい日々を過ごしていたためか、何だか手持ち無沙汰だ。
「コーヒーでも淹れるか」
思えばアークの製品は試したことがなかった。
コップに粉末とお湯を入れ、混ざったことを確認し、口をつける。
「……うん。意外といける」
エデンの物と比べれば当然質は落ちるが、それでも想像よりかは随分マシな仕上がりだ。
「……」
腕を伸ばし、次に足を伸ばし、一度レーダーを眺める。異常は見当たらない。
暇だ。思えば私はずっと何かに追われ続けていた。それがこうも何もないと、私は不安になってしまうことを知った。
「病気だな。完全に」
全てが終わった時、私はどうなるのだろう。もう戦わなくても良いと言われたら、私には何が残るのだろう。
「まぁ、今考える必要もないか」
だって、私は──
「ふわぁ……」
欠伸をするなんていつぶりだろう。
でも今日は、何だか疲れてしまった。
少し休もう。
目を閉じ、次第に音が消えていった。
───
朝。久しぶりに睡眠を取り、調子が不思議と良くなった気がする。
そして、今日は地上へ行く当日だ。
「来たか」
地上エレベーターには、スノーを筆頭に既に全員が集まっていた。
「久しぶりですね、ルナ」
「すみません。少々合流に手間取ってしまいました。本来なら明け方前には到着するつもりだったのですが」
「それはいい。連絡でも言ったけど、何で全員揃ってるのさ。重要人物を移動させるとはいえ、流石に過密すぎる」
流石にピナまで連れてくる意味はないと思うが……
「この先、何が起こるか分かりません。それに私もピナも十分戦えます。戦力は多いに越したことはないでしょう?」
「まぁ……それはそうかもしれないけど」
心に引っ掛かりを覚えていると、紅蓮が私の肩に手を置いた。
「あれだけ気分良く地上に降りてきたのに、よく言うよ。もっぱら、全員合流する機会に内心喜んでいただけじゃないのかい?」
「ええ。何か悪いことでも?」
「いいや? にしても、君も随分本音を口に出すようになったものだね」
「まるで今までの私がそうでなかったような言い方ですね?」
「ふっ、言い方もなにも、事実そうだろう?」
相変わらずバチバチに火花を散らしているドロシーをピナが、紅蓮を私が引き剥がす。
「紅蓮落ち着いて」
「ドロシー様も、喧嘩するために来たわけじゃないでしょう!」
これから重要な場面が起こるというのに、まるで緊張感がない。
というか、ピナも見ない間に随分言うようになったな。
「おや。そうでしたね。すみません、つい私としたことが」
「ああ。酒を控えたからか、つい頭の回転が早くなってしまった様だね」
そんなわけないだろ、と内心ツッコミを入れつつカウンターズの方を見ると、全員呆然としていた。そりゃそうだろう。到着していきなり喧嘩をし出す奴らに仲間の一人を預けようなんて、不安でしょうがない。
「えっと、すみません。今のは気にしないでください」
「……分かった」
明らかに疑いの目を向けられたが、ひとまず曲がりくねった話を本筋に戻そう。
「それで、マリアンという方はどなたですか?」
「はい……私がそうです」
マリアンは私たちの前に一歩出た。
「なるほど、あなたが……ルナとはまた違ったパターンですね」
「どうぞこちらへ、歓迎します」
「は、はい」
ラプンツェルに手を引かれ、マリアンを誘導する。
「随分可愛げのあるお嬢ちゃんではないか。君、酒はいける口かね?」
「えっ。お、お酒?」
「やめておけ、紅蓮。では、こいつを預かるということでいいんだな?」
「ああ、マリアンを守ってあげてくれ」
「分かった。信じて任せろ」
「私たちからも、あなたたちを信じているわ」
ラピたちにも、いつかは正体を完全に明かす日が来るだろう。
「指揮官たちと別れるのは辛いですけど、それでも指揮官は約束してくれましたよね?」
「あぁ、必ず迎えに行く」
「……っ……! はい、信じてますっ!」
マリアンは指揮官の方へと走り、そのまま抱きついた。
「おやおや。随分とお熱いようだね」
「こ、これは導入としてはあまりにも……じゅる」
「ストップ、ラプンツェル。今この場じゃ、それは相応しくない」
それにしても、指揮官は本当にニケに好かれる。
間近で見て、その罪深さが改めて伝わった。
「別れは済んだか? なら、行くぞ」
「はい。指揮官! ラピにアニスにネオンも、また会いましょうね!」
マリアンを連れ、地上エレベーターへと足を向ける。
「また機会があれば、お主たちとも酒を交わしてみたいものだな」
「皆さんの平穏をお祈りしています」
「では、向かいましょうか。あまりのんびりもしていられません」
アーク内の後始末は指揮官たちに任せるとしよう。
別れを告げ、私達はそのまま地上へと降りていった。
───
こんなに全員で行動を共にするのは久しぶりだ。
あの時はいなかったピナ。そしてマリアンもいる。
賑やかにならないはずがなかった。
「これだけラプチャーに出会わないのは珍しいな」
「そうですね。嫌というほど見てきた存在が突然消えると、何だか不気味に感じてしまいます」
「レーダーにもそれらしい反応はない。本当にゼロと言っていい」
いつもは警報でうるさいというのに、今日は怖いくらい静かだ。
「あの、これは一体どこに向かっているのですか?」
「今からとある王国に向かいます。かなり癖は強いですけど、アークに滞在するよりはよっぽど安全ですよ」
「王国、ですか……皆さんはすごい場所と関係を持っているんですね」
「関係……まあ、関係と言えば関係か……」
私の場合は、ただ一方的に……
「? どうしました?」
「こっちの話です。スノー、日没までもう少しだけど、目標地点につきそう?」
「問題ない。どうせ騒がしくなるのは予想できた。ある程度は加味してある」
「流石。なら、問題ないか」
───
「マリアン。大丈夫ですか?」
「は、はい! 問題ありません!」
太陽が落ち、空が暗くなった頃。私達は小川が流れる地点に到達した。目的地はまだ先だが、このまま歩き続けるには重大な問題がある。
「マリアン。そろそろ休憩にしましょう」
「い、いえ。私のためにそんなことは……」
「無理をして、それこそ倒れられたら面倒です。私達とあなたでは地上で生きた時間が違うのですから、慣れていないあなたは休息を入れるべきです」
ドロシーが立ち止まると、スノーも辺りを見渡した。
「なら、丁度いい。ここには小川もある。休むには最適だろう」
「君が賛成するなんて、珍しいじゃないか」
「思考転換のリスクもある。最適解を取っただけだ」
装備を置き、野営の支度を始める。
「す、すみません。私のせいで……」
「そう簡単に謝るでない。私たちだって、少なからず休息は欲しいものだ。マリアン、腹は減っていないかい?」
「え。まぁ、はい……」
「なら丁度いい。あの小川で運が良ければ、川魚が釣れるやもしれぬな」
「!!」
川魚という単語にスノーが明らかに反応した。
「カワザカナ……って何ですか?」
「気になるかい?」
「……はい」
「それなら、ついてくるといい。ルナ、君も手伝え」
「ん、了解」
三人で川に向かい、竿を垂らした。
「ふむ……思ったより手ごたえがないね。ルナ、君のレーダーを使うことはできないのかね?」
「これはラプチャー用だ。分かっても、この一帯に魚がいることぐらいしか分からない」
「そうかい。まあそれなら、気楽に嗜むとするかね」
ただぼんやりと水面を眺める時間が続いた。
「あの……これは一体何をしているんですか?」
マリアンが呟いた。
「この釣り竿という道具を使って、水の中にいる魚を釣るのさ」
「でも、さっきから魚が見えませんよ?」
「運が悪ければ何時間待っても釣れないこともある。よくあることだ」
「そうなんですね。美味しいんですか?」
「ああ、アークの物とは比べ物にならない程にな。まぁ、大人しく待とうじゃないか。“急いては事を仕損じる”というものだ」
三人並んで釣り竿を垂らしているが、それらしき当たりは来ない。
「……」
その間、マリアンはどこか上の空だった。
「坊ちゃんたちの事かね?」
「……はい」
「随分と惚れ込んでいるな。君にとっては坊ちゃんたちといた日々はきっと良い日々だったのだろう。しかし、そう全てがいい方向ばかりとはいかぬのだよ。悲しい日々が続くことは、覚悟してもらわないといけないかもしれぬな」
「では、いい日はいつ来るんですか?」
「……」
紅蓮と一瞬、目を合わせた。
「……マリアン次第ですよ」
「ああ、君次第さ。今はただ、いいことだけを考え続けたまえ。そうすれば良い日はより長く続き、悲しい日は早く消え去る。良いことだけを考えてそのために努力をすれば、今日の悲しみなど、いずれ雨の中の塵のようにすっかり洗い流されるはずだ」
「……おっ」
一度、私の竿が動いた。引いてみると、小ぶりな魚がついていた。
「小さいな……こんなじゃ、足りないか」
針を抜き、再び竿を水面に投じる。
「皆さんはいつから一緒にいるんですか?」
「いつからか……とうに昔とだけ言っておこうかね」
そんなこと、考えることもなかった。いることが当たり前になってしまったから。
「ええ、いい思い出も、悪い思い出もずっと共有してきた仲ですよ」
「そうなんですね。あの……言いづらいことだとは思うんですけど……」
「? どうしました?」
「その……私と戦った時、ルナさんは目が赤く染まっていました。あれって……」
やはり聞いているか。まあどっちみち話すことになるんだ。今言ったところで変わりはないだろう。
「ええ、ご想像の通り。私は侵食を受けています」
「皆さんは、この事は知っているんですか?」
「ああ、ルナ自身が打ち明けてくれたからね」
あの日の出来事も、随分昔に感じる。
「……失礼だと思いますけど、皆さんは恐怖は感じないのですか?」
「最初は驚いたさ。でも他人のためにあらゆることで自己犠牲に走るルナが、打ち明けるまで私達を襲わなかった理由は? そもそも、私達を助ける意味は? そんなことを考えたら、自然と受け入れることに抵抗はなくなったよ」
「なるほど、そうだったんですね」
「未来が見えているなんて言われた時も、冗談の類かと思ったさ」
マリアンは少し考え込む様子だった。
「……未来が見えているから、私を助けたんですか?」
「あそこで戦うことは確定事項でした。なので私が隙を狙っていました」
「未来が見えるというのは、本当なんですね」
「今思えば、ルナの不可解な行動が未来を見据えてのものと考えれば辻褄が合うことも多い。しょっちゅう地上に出ては、ニケや指揮官を助けていたからな」
「私はあくまで助力していただけに過ぎない。何でもかんでも助けたら、いつか自己防衛の手段もなくしてしまう」
技術や情報提供には細心の注意を払っている。彼らには自らの力でついて来てもらわないと困る。
「助力することに文句は言わないが、自己犠牲に走るのは勘弁して欲しいよ。あの時はドロシーが暴れて大変だったよ」
私の方を向き、紅蓮は少し笑ってみせた。
「あ、あの人が暴れるって想像がつきません」
「ふふ、そうだろう? 人は良くも悪くも変わるものさ。価値観や生き方が変わる者もおる」
「そうなんですね。あの、紅蓮さんはご自身をどんな生き方と感じているんですか?」
「私かい? ふむ……この美しい自然がいつまでも残るように、見守ることかね……む!」
紅蓮の竿がしなり、引き上げると腕ほどある巨大な魚だった。
「あっ! わ、私のも!」
流れに乗るように、マリアンの竿も大きくしなった。
「焦るでないぞ。ゆっくり引け」
「は、はいっ!」
マリアンが竿を引くと、紅蓮が釣ったものと同等の大きさの魚影が映った。
「初めてにしては上出来です。ほっ……と!」
岸まで寄せ、釣った魚を持ち上げる。
「これは大物だ」
「う、動いてます! ピチピチ言ってます!」
「これが魚さ。実際に見てどうだい?」
「うーん。何だか面白い顔ですね!」
「素直な感想だね。折角だ、もう少し釣って行こうか」
「はい!」
それからしばらく釣りに勤しんだ。大量の魚を抱え、ドロシーたちの元へ向かった。
───
「!!」
「あら、大漁ですね。いい釣り場が見つかったんですか」
「すごい量ですね! 調理は焼き以外ありませんけど、準備しますね!」
「私も手伝いますよ、ピナ」
「なら、捌き方教えますね!」
ドロシーとピナはせっせと魚を持って下処理に入った。
「マリアンの手柄だ。やはり才能がある。すぐにコツをつかんでいたよ」
「……えへへ」
二人の成果に比べて、私は散々だったのは内緒にしておこう。
「では、私は焚き火を起こして来ます。ドロシーとピナには既に料理を任せてありますし。これだけ人数がいると、何だか手持ち無沙汰ですね」
「食べる準備なら万端だ」
「私はセンサーの点検にでも行ってくるか」
立ち上がり、少し後ろを向く。マリアンはラプンツェルやスノーとも打ち解けたのか、笑顔が見える。
奥ではドロシーが魚に苦戦し、それをピナが教え、紅蓮も手伝っていた。
本来あり得ない光景。でも、とても幸福と呼べる光景。
「そうだ。こういう時こそ」
古ぼけたカメラを取り出し、ゆっくりシャッターを切った。
しばらくすると、投影された写真が浮き上がった。
「うん。いい写真」
確かにあった光景を忘れないように写真をしまい、私は本来の目的のためにその場を離れた。
───
レーダーの点検を完了してマリアンたちの元へ戻ると、焚き火の近くで寝息を立てる者がいた。
「休ませてあげてください。いきなり長旅に連れ出してしまったのですから」
「構わないよ。にしても、当たり前だけど寝具もなくてちょっと殺風景だね」
と言っても、特にそう言った持ち合わせがあるというわけではないため、代用品として私の着ている上着を被せてあげた。
「きっと、つらい運命に立たされます。確かに人類の味方であっても、ヘレティックという事実は消えない。ラプチャーからも、人類側からも敵視は免れません」
「ルナ様みたいってみんなが受け入れてくれることって、やっぱり難しいですよね」
「大丈夫さ、マリアンには彼がいる。当然、私たちも」
最悪、自らの力で生きていける技術は身につけてもらおう。
「折角だ。色々楽しいことを教えてあげよう」
「なら私は、酒の嗜み方だな。どんな話が聞けるのか楽しみだよ」
「私は料理とか、魚の捌き方を教えてあげます!」
「私は礼儀を教えましょう。いずれエデンを訪れる時のために」
マリアンに何を教えてあげるか、そんな話題に花を咲かせていると、横からスノーが私の肩を叩いた。
「ルナ。レーダーにラプチャーは映らなかったか?」
「うん。ここずっとそれらしい気配すらない。完全にゼロだね」
「……そうか」
無理もない。地上を出歩けば五分も持たず接敵するというのに、今日はそれが一度もない。異常だと思っても仕方ないとは思う。
「反応がないなら、それでいいじゃん。今はのんびり静かな地上を楽しめばいい」
「……しかし。はぁ、分かった」
「やけに素直じゃん。よしよーし、素直なスノーも可愛いねー」
「……やめろ。それより、魚はもうすぐできるだろう」
魚が焼けた匂いがここまで漂ってきた。もう食べ頃だろう。
「そうだね、じゃあマリアンを起こそっか」
未だ夢の中の彼女の肩を優しく揺らす。
「……ん」
「眠れましたか?」
「はい……あれ、この上着って……」
「私のです。タオルケットの代わりにはなるでしょう?」
マリアンはゆっくりと身体を起こし、軽く欠伸をした。
「はい。ありがとうございました」
「丁度魚が焼けました。みんな待ってますよ」
マリアンの手を引き、焚き火の元へ行くと、既にスノーが焼き魚を頬張っていた。
「来たか。悪いが先に貰ってるぞ」
「魚は逃げませんから、もっとゆっくり食べろと言っているでしょう?」
の相変わらずのスノーの食い意地に笑い、私とマリアンも座る。
「はい。どうぞ!」
ピナがマリアンに焼き魚の串を一つ渡す。
「い、いただきます……」
一口かじると、マリアンは目を輝かせた。
「わあ! 初めての味です!」
「おいしいかい?」
「はい!」
焼き魚に夢中になっているマリアンを見ていると、昔のスノーを思い出してしまった。
「では、私の分も食べるといい」
「えっ、いいんですか?」
「ああ。食べておくれ」
「私の分もどうぞ」
「はい!」
紅蓮とラプンツェルが分けたのを、マリアンは美味しそうに食べた。
「よく食べますね。私のも入りますか?」
「初めてですから、ぜひ味わってくださいね!」
「はい! ありがとうございます! とっても美味しいです!」
ドロシーとピナもマリアンに魚を分けてあげていた。
「……私の分も……やるべきか?」
「……もう私たちの分をあげましたから、気にせず食べてください」
「それにしても、よく食べるな。まともな地上の食べ物は初めてだろうから、気持ちは分かるがね」
「もぐもぐ……すごく美味しいです!」
みんなから分けてもらった魚を堪能しているマリアンの前で、スノーは何かを決心したように立ち上がった。
「……受け取れ」
スノーホワイトは手にしていた焼き魚をマリアンに手渡した。
「!!」
その光景にスノーとマリアン以外の全員が、目を丸くした。
「これも食べていいんですか!?」
「……ああ」
「えへへ! いただきます!」
自分の分の魚を食べているマリアンを、スノーはじっと見ていた。
「スノーホワイト……」
「……思考転換でも起こしたのかね?」
「ありえません。でも、スノーが自分のものを譲るなんて……」
「普段ならありえませんね!」
相変わらずスノーは、マリアンが食べている魚を見ていた。
涎を垂らしながら。
「もぐもぐ……」
「うまいか?」
「はい! すごくおいしいです!」
「そうか……」
本人は平静を保っていると思っているようだが、明らかに目が魚に一点集中している。
「スノー、おいで」
「……なんだ?」
「人に食べ物を分けられたその報酬。食べかけだけど」
私はスノーに自分の串を渡した。
「……いいのか?」
「いいさ。魚の味はもう十分堪能した」
「……!そうか、ならいただく」
サッと私の串を取り、かぶりつくスノーは、やはり昔のままだった。
やがて食事が終わり、マリアンが眠りについた頃、私たちは焚き火を囲んでいた。
「ルナ。王国との連絡は?」
「問題ない。おおよそ三週間掛かるとは伝えてある」
「分かりました……何だか、エデンに迎え入れられないことが惜しく感じてしまいますね」
「彼女を危険に晒すわけにはいきません。それに、今は拠り所が必要です。その役割は私たちではありません」
確実性を取る。今の私達に試すなんて余裕はない。
「まぁ良いではないか。まだ先は長い、この旅の間に色々教えてあげようではないか」
「余計なことを吹き込んで、折角の純情さに傷をつけないでくださいね?」
「余計なこととは、聞き捨てならないな。どれもこれも、人生を楽しむための方法だぞ?」
「それはあなたの価値観でしょう? きっと飲み込みが早いでしょうから、礼儀を教えたらすぐに覚えてくれることでしょう」
「ふっ。礼儀ばかり教えては楽しくないだろう? 時には堕落することも、人として当たり前ではないのかい?」
「あなたの場合、それが度を超していると言いたいのですよ」
あぁ……また始まった。
昔より棘がなくなった気がするが、それでも相変わらずこの二人の言い争いがなくなることはないな。
「喧嘩するほど仲がいいっていう奴ですね!」
「……そうだね」
実際、昔なら最悪殺し合いのような雰囲気になっていたため、そう考えると随分と落ち着いたのか……
「……ふふ」
拝拝。こんな感じだけど、今日もゴッデスは確実に生きています。心配はいりません。
遠く離れた戦友達に届くように、私は目を瞑った。
Q.ピナはいつの間にルミナスムーンの侵食を知ったの?
A.ドロシーに聞いた。サラッと受け入れてくれた。
改変によるキャラクターの口調や本作の進行はどのような方向性にして欲しい?
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積極的に変えて
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原作っぽさを残しながらも変えてほしい
-
あまり変えないで欲しい
-
原作そのままで