「手伝うとは言ったけど、お母様も無茶を言うよ。本当に」
パトラは数日前に行ったルミナスムーンとの通信での自分の発言に若干後悔していた。
最近は幾分か暇が生まれ始めたと言うのに、楽園にいる自分の仮の母親は中々難しい要求をしてきた。
人命がかかっているとはいえ、もし失敗すれば本来の犠牲、それどころかさらに多くの人数の命が奪われるかもしれない。
「……だからと言って、逃げるわけにはいかない」
こうして命を与えられ、任務を与えられ、自分という存在が生まれてしまった以上、自分はこの人類最後の拠り所を陰ながら守らなければならない。
「それが、私の存在意義」
そして、親友との約束でもある。
「よしっ。完成した」
作戦の第一段階における種はたった今撒いた。
だが今ここで全てを発動してしまえば、エニックに勘づかれる可能性があるため、発動するのは事が起きる寸前だ。
「さてと……行くか」
嫌な緊張感が全身を駆け巡っていた。思えばラプチャーとは仮想空間でしか戦った事がなかった。
装備品だって万全な物を用意したが、果たして通用するのか不安である。
だが、アーク内で揃えるのはどう頑張ってもこれが限界だった。
ガトリングとチェーンソーを融合させたような武器を携え、部屋を出る。
すると隣では何かを話すような声が聞こえた。パトラが軽くノックする
と、向こうもその音に気がついたのかバタバタと音がする。
「悪い。配信中だったか?」
「ううん。大丈夫。でも、何だか通信が悪くて……」
私の同居人は首を傾げた。
「そうか。悪いが、今日は遅くなる。重大な仕事が入ってしまってな。もしかしたら一日では済まないかもしれない」
「それって……危険なこと?」
自分を見る瞳に心配の感情が混ざっていた。
「私の動き方による。前線に出続ければこれほど危険な仕事もないだろうな」
「なら私も──」
「駄目だ。お前は強いのかもしれないが、前線に出すのはあまりにリスクが高い。それに、お前の存在をアークに知られてはいけないだろ?」
「……むー」
彼女は頬を膨らませたが、こればかりは譲れない。
「お前はお前の方法があるだろう? 生憎、私はこうするしか人助けができないんだよ」
「……分かってる。でも──」
「心配するな。必ず無事に帰ってくる。お前はお前の視聴者達を安心させてやれ。それがお前の役割だろ。ディール?」
「……真剣な話をしている時に、その名前で呼ばないで」
彼女の自分を見る目が冷たくなった。
「わ、悪かった。とにかく、私は私の出来ることをするまでだ。私はお前と同じ形で希望を振り撒くことは出来ないからな」
ポンポンと彼女の肩を軽く叩く。
「……分かった。絶対に無事に帰ってきてよ?」
「当たり前だ。それじゃあ、行ってくる」
私は武器やその他諸々を背負い直す。
「うん。いってらっしゃい」
重い扉を閉め、下水が流れる地下道を進む。
そして、一つのハシゴに手をかける。
「あれ? ポイントは……ここで良かったんだっけ?」
最近は自分達の空間で引きこもりっぱなしだったので、道順を間違えてしまったのかと一瞬不安が過ったが、少しマンホールを持ち上げ周囲に人気がない事を確認すると、そのまま外へ這い出た。
「うーん……」
空を覆っているパネルからの擬似日光が眩しい。
身体を伸ばし、周りを改めて見渡すと、不気味なほど静まり返っていた。
「ミシリスのイベントで、ここら辺の市民も全員そっちの方に行ったか」
だがそれは都合がいい。
フードを深く被り直し、自分の顔を全て覆うフルフェイスのマスクを装着すると同時に、遠方から爆発音が聞こえた。
「始まったか。ちょうどいい」
絶好のタイミングで、奴らは襲撃を開始した。
ガトリングの弾丸の装填、刃の回転を一度確認し、私はすぐさま現場に急行した。
───
「クソ! ラプチャー共め、いくらでも湧いてくるぞ!!」
量産型ニケ達は突如襲来したラプチャーの対応に追われ続けていた。
「市民の皆様は急いでシェルター内に避難してください!」
ラプチャーの迎撃と市民の避難。その両方を全て適切に行うことは、いくら機械の身体を持っている彼女達でも難しい。
「な、何でアークにラプチャーが入り込んでいるんだ!?」
「し、死にたくない!! おいッ!! 早くシェルターの扉を開けろッ!!」
地上に出ていないとしても、市民はラプチャーの恐怖を知っている。そして、抵抗できる手段が彼らにはない。結果的に、逃げる以外の手段がない。
「ちょ、ちょっと! 落ち着いてください! 割り込みは駄目ですって!」
「う、うるせぇ!! そもそもお前らがいるのに何でラプチャーがアークの中に入ってきているんだよ!!」
そして、その恐怖は目の前の彼女達への恨み言へと変わっていく。
「私達も原因は分かりません! とにかく今は避難を──きゃっ!?」
ラプチャーの攻撃によりビルが崩壊して轟音を上げ、その瓦礫を伝って次々とラプチャーがこちらに照準を合わせていく。
「まずい……急いで市民をシェルター内に入れろッ!!」
一人のニケがそう叫び、周囲のニケ達も応戦を開始するが、圧倒的物量に徐々に押され始めていた。
「応援はまだなのか!?」
「どこも人手を欲しています! 今すぐ応援を呼ぶことは……」
わずか数秒の間に、ニケ達は損傷していく。幸い、民間人の避難は粗方完了していた。最悪、玉砕覚悟で応戦しなければならない。
「総員、ラプチャーをシェルターには近づけさせるなッ!! 応援が遅れる以上、私達だけで守り切るしかない!!」
今、シェルター内の市民を守れるのは私達しかいない。誰もが覚悟を決め、身体を晒した瞬間、上空から何かが超高速で目の前のラプチャーに激突した。
「え?」
呆然と煙が舞い上がった箇所を眺めていると、そこには人影があった。
「ほんと、何処からでも湧いてくるなお前らは」
フルフェイスのマスクを被ったその人物はガトリングを構えると高速で回転させ、弾丸を発射し続ける。その弾幕は一方的にラプチャーの装甲を粉砕していく。
「そこの分隊! 市民は全員避難しているな!?」
「へ? あ、ああ……」
「ならいい。お前達全員、私の前には出るなよ!」
そう言うと彼女はラプチャーの大群に向かって走り出した。
「待て! お前は何者だ! 何処の分隊所属だ!」
助けられた事に間違いはないが、一切素性の分からない相手をみすみす見逃すわけにはいかない。
「人命がかかってる時にそんな事を気にしてる場合か! 今は一人でも多くの命が生還できる事だけを考えればいい。人類に加勢する者は味方、人類に害をもたらす者は敵だ!」
ガトリングが火を吹き、チェーンソーの刃が回り、ラプチャーのコアを直接切断していく。
「……めちゃくちゃだ」
羽でもあるかのように、彼女はラプチャーの間を飛び回り、弾幕を形成していく。
「すごい……」
ある量産型が呟いた。
あれだけのラプチャーの大群がたった一人に蹂躙されていく光景は、一度見たら忘れられるものではない。
撃つ、斬る、指揮なんてあったものじゃない。なのに、ラプチャーの数は目に見えて減っていく。
「はい。終わり! おい! お前達の中で指揮をしている者は誰だ?」
そして、残骸の山から姿を現した彼女に気圧され、指揮をしていたニケが手を上げた。
「ほらこれ! 他のシェルター付近の分隊に繋がる通信機。独自回線で繋げているから、通信が回復するまではこれを使え」
「ああ……感謝するが、お前は何者なんだ?」
「お前達と同じく、ただアークを守りたい一兵士だ。このスクラップ共は適当にお前達の手柄にでもしとけ。それじゃあ!」
そう言うと、見ず知らずの彼女は何処かへと走り去っていった。
「あっ! おい待て!?」
呼び止めようとしても、既にその姿すら見えなかった。
「あ、あの……これからどうすれば……」
一人のニケがそう呟いた。
「……分隊の半数は引き続きシェルターの防衛をしろ。じきに他の分隊が応援に駆けつける。残りの半分は未だ戦闘中の分隊の加勢を行う!」
「りょ、了解です!」
名も知らないニケによって与えられた時間を無駄にしないためにも、ある一つの分隊はすぐさま動き出した。
───
「……もう始まっていたか」
アーク周辺に妙にラプチャーが集まっていると思っていたら、既にラプチャーが大穴の中に飛び込んでいくのが見えた。
「これは……」
「こ、この下ってアークがありましたよね!?」
アークにラプチャーが侵入した。この事実に二人も目を見開いていた。
「私はアーク内のニケ達に加勢する。ドロシーはピナと共に、予定通りバーニンガム副司令官の元に直行してほしい」
「あなたまさか……はぁ、この事も読んでいましたね?」
「そういうこと。悪いけどもう行くから」
そう言い残し、私は大穴の中に飛び込んだ。
「……はぁ」
「大丈夫ですか? ドロシー様」
「ルナ、あなたは私の神経を逆撫でる趣味がおありなのでしょうか?」
ドロシーはため息をつきながらも、自分の愛銃に手をかけた。
「ピナ、行けますか?」
「勿論です! ドロシー様を守るのが私の役目ですから!」
「ふふっ、それは心強いです。それでは行きましょうか。アークを救うために」
二人は拡張武装を展開し、大穴へ飛び込んだ。
───
エターナルスカイをぶち破ると、既にアークは無残な状態だった。
パトラによって既に民間人の避難と、緊急用の無線通信を繋げている事が報告されていた。
「奴らがまだ来てないうちに、数を減らしておくか」
目的はただラプチャーを一掃することではない。
既にカウンターズも異変に気がついているはず。これはあくまで前座に過ぎない。
「っと。お出ましか」
私を視界に捉え、レールガンを一斉にチャージし始めるラプチャー。
「邪魔だ」
一撃目を空中で回避すると、ブースターを点火し、一気に地上へと着地する。
「ここは人類のための場所だ。お前達が来ていい場所じゃない」
再びブースターを点火し、ラプチャーの股下に入り込み死角の中から周りのラプチャーに弾丸を撃ち込んでいく。
それぞれに一発ずつ確実にコアを撃ち抜き、機能停止へと追いやる。
「弾よけありがとう」
最後に遮蔽物としたラプチャーにナノマシンを槍状に変形させ、一気に突き刺し、装甲もろともコアを抉った。
「次」
残骸を投げ捨て、ルミナスムーンは爆発音を頼りに次の戦闘状態の地域へと向かった。
───
「ラプチャー。あなた達には礼儀を教えなければなりませんね」
ピナと共にアークに降り立ったドロシーは、挨拶とばかりにライフルを撃ち込み、ラプチャーの体勢を崩すと、変形した装甲を引き剥がし、空中を飛行するラプチャーに凄まじい速度で投擲した。
「随分と脆いものですね」
もはや銃を使うまでもないと判断して、そのまま目の前のラプチャーに蹴り込むと、その箇所はそのまま大きく歪み、ラプチャーは倒れ込んだ。
しかし、ラプチャーの軍勢に接近し過ぎたため、ドロシーはすぐさま囲まれた。
しかもその全ての個体が、ドロシーに向けてチャージを開始していた。
「ああ、なるほど。あなた達は多勢に無勢と仰りたいのですね」
だが、当のドロシーに焦りはなかった。
やがて砲身が青白く光り輝いた時、ドロシーはゆっくりと腕を上げた。
「ピナ」
その一言を呟いた瞬間、ドロシーの上空に影が映った。
「はい! 任せてください!」
突如、巨大な羽のような装甲がドロシーを覆ったが、ラプチャー達は攻撃を止める気はない。そのまま全方向からレールガンが放たれた。
「今です! ドロシー様!」
しかし、その羽は攻撃をまるで滑らせるように砲撃の軌道をずらすと、上部からドロシーが飛び上がり、ピナが地上から同時にラプチャーに攻撃を仕掛ける。
囲んでいたはずのラプチャーは二人の連携によって一体、また一体と数を減らし、包囲網は完全に崩壊した。
「上出来でしたよ、ピナ」
「実戦では初めてやりましたけど、案外何とかなるものですね!」
そして、少しだけ静まった前線で、二人の顔には笑みが浮かんでいた。
「あ、あの!」
そして、二人の目を見張る連携を見ていた量産型のニケが一人声をかけた。
「あ、ありがとうございました! あなた達が来なかったら、さらに犠牲を増やすところで──」
「礼には及びません。私達はとある施設からやってきた者です。本来はアーク内で会談と行きたかったのですが、こうしてアークの襲撃に巻き込まれた形です。見た感じ、まだ交戦中の分隊が大勢いますね」
「は、はい。さらにラプチャーが増加していて……」
「詳しい地点は分かりますか? 私達も加勢しましょう。少しなら会談のお相手も目を瞑ってくれることでしょう。行きましょうか、ピナ」
「はい!」
偶然生まれた寄り道を、ドロシーとピナは肩を並べて歩き出した。
───
場面は変わってカウンターズ。彼らはエニックの部屋にいた。
「質問に答えてくれ」
「勝算があるのかという質問ですね。これから6時間後にすべての状況が片付きます」
「……えっ?」
ネオンが呆然とした声を出した。
「穴が空いた場所にはマイティツールズが緊急投入され、現在補修中。その付近でアブソルート部隊とメティス部隊が追加のラプチャーの侵入を防いでいます」
全ては順調に進んでいるとエニックは呟く。
「さらに、各地の戦闘可能なニケがラプチャーと交戦状態にあり、統制も問題ないとの報告を受けています」
「えっ? でも、今通信は……」
「はい。報告によれば正体不明のニケが独自の通信回路を作成した模様。圧倒的な戦闘力を有しているとし、ピルグリムと呼ぶのが妥当でしょう」
ピルグリムと言うと、指揮官達の脳裏に数人の候補が上がる。
「まさか、アイツらもいるの!?」
アニスが戸惑う。
「戦闘中のニケのうち30機が小破、20機が中破。大破、および死亡処理がなされたニケはまだいません。なお、加勢に来たピルグリムは複数の目撃パターンがあり、単独ではないと見て間違いありません。そして各種インフラは迅速に復旧中であり、5分後にアーク内の通信がすべて回復します。状況整理後、34日後に全被害を復旧可能です。そのためのプランを確認されますか?」
「……奇襲に等しいのにどうやって対処を……」
指揮官が驚きの声を上げる中、エニックの声に感情は含まれていなかった。
「アーク内部に自律型武装を内蔵し、いつどこでも補給できるよう環境を整えておきました。私は常に最悪の事態を想定しています。そしてこの事態は、最悪ではありません。そのため、比較的スムーズに対応できます」
「……すごいわね」
アニスをはじめ、皆が茫然としていた。
「でもよかったです。最初は本当にどうなるかと思っちゃいましたよ」
「……指揮官を呼んだ理由は?」
ラピが尋ねる。
「そうね。指揮官様がすべきことがあるって言っていなかった?」
「はい。ヘレティック・ニヒリスターがアークにやってくるはずです」
まさかここで彼女の名前を聞くとは思わず、指揮官が目を見開いた。
「!!」
「なっ……!」
そして、その思い出は決して良いものではない。
「……ニヒリスターが……?」
「追加の侵略兵力を確認するために地上をスキャンしていたところ、空中から超高速で接近している巨大なエネルギー源を感知しました。速度とエネルギー源の大きさから見て、ヘレティック・ニヒリスターと完全に一致します。現在の速度を維持した場合、メティスとアブソルートの武装では阻止できません。侵入を許すことになるでしょう」
「じゃあ、私がすべきことは……」
指揮官には次にエニックが言う言葉が嫌でも分かっていた。
「ここをバンカーとして、ニヒリスターと交戦してください。私がおびき寄せます。あなたにはヘレティックとの交戦で勝利した経験があります。現時点では、あなたが唯一の対抗手段です」
勝利したと言っても、あれはインヘルトとゴッデスが協力してくれたからであり、現在の戦力で果たしてどれだけ戦えるのかは未知数だ。
しかし、指揮官という存在が弱音を吐くわけにはいかない。
「分かった。やってみよう」
「ヘレティック・ニヒリスター。アークへの侵入を確認。擬似コーリングによりここへおびき寄せます」
あまりにテンポが速い。全員に緊張が走る。
「三秒後、接触」
「みんな、準備してくれ」
そう声に出した瞬間、熱風と火炎をまとったニヒリスターが私たちの前に立った。
周囲に広がった衝撃波と熱気で、息が詰まりそうだ。
「なーんだ。誰かに呼ばれたと思って来てみりゃあ、お前らかよ? つーかお前ら、いいとこに住んでんじゃねぇか。上の世界は壊滅状態だってのに、お前らはこんなとこで遊んで暮らしてたのかよ?」
「……何の用だ」
「上で大きな爆発が起きたから、何事かと思って来てみたのさ。よく見たら地面に穴が空いててよぉ。アークってのがどんな所か、一度この目で見たくて来てやったのさ」
「そうか。じゃあ見物が終わったら早く帰ってくれ」
指揮官はダメ元で交渉してみる。
「……そうしようかと思ったが、遠慮するぜ。思ったよりいい場所じゃねぇか。気に入った。住み着くのも悪くねえよな」
「あはは。数日暮らしてみたら考えが変わるはずよ」
「それに……この感じ。ここにいるんだな? 情けねえトーカティブとインディビリアが」
ニヒリスターは呟く。
「インディビリアですか?」
「……マテリアルHの原型となる名前よ」
「来たついでにもらってくぜ。俺のた〜いせつな仲間なんだ。ハハッ」
ニヒリスターの尻尾が揺らめいていた。
「あんたにできるかしら?」
「……ハァ?」
アニスの言葉にニヒリスターは止まった。
「この間、弾丸を使うまでもなくヘロヘロになってたじゃない? 今回は助けてくれるお友だちもいないみたいだけど、大丈夫?」
「……この間は世話になったな。あのウジ虫がいつこの『毒』を手に入れていたのかしらねぇが。これを抜くのに、俺がどんだけ苦労したか分かるか? 今回はうざってえ指揮官もピルグリムもいねえからな。すぐに灰にしてやるよ」
「アンチェインド発射!!」
アニスの掛け声にニヒリスターは一気に表情を変えた。
「冗談よ、冗談。そんなにビビらないで」
「……お前は徹底的に痛めつけてやる」
明らかに激昂したニヒリスターがアニスを睨みつけていると、背後からネオンが大きく息を吸った。
「アンチェインド発射!!」
その声に、またニヒリスターは過剰に反応した。
「わあ! これ、効果抜群ですね!」
「アンチェインド発射! シュンシュン! ダダダーッ!」
「発射発射! ドドドドー! バンバーン!!」
「……」
ネオンとアニスは明らかにニヒリスターを舐め腐っていた。
ラピは目を背け、ミランダは感心し、ポリはため息を吐いた。
先程までの緊張感はすっかり消えていた。
そして、当のニヒリスターが自分に対してこんな真似をする存在を許すはずもなく。
「……燃やしてやる。心も体も、全部燃やしてやるよ!! このクソ人間もどきが!!」
───
ニヒリスターとの戦闘が始まり、結論から言うと、決してニヒリスターに対して優勢になることはなかった。
遮蔽物に身を隠したとしても、ニヒリスターの炎によって意味を成していない。
しかしそんな中で閃光が走った。
「!?」
閃光に体を貫かれたニヒリスターは力なく落下した。煙を吐き出しながら、アークの闇の中へ消えて行った。
そして救いを象徴するような光が現れた。
「……トドメを刺しますか?」
「やめておきなさい。それとドロシー。流石に目立ちすぎじゃない?」
「アークに降り立った救いの翼ですよ? その威厳を保てなくてはいけませんから」
「カッコいいです! ドロシー様!」
「……はぁ、また何かに影響されたな」
彼女は翼を広げ、私達をゆっくり見下ろした。
───
これは、今より少し後の話。
この世界で、彼女の無垢は決して汚されませんでした。
大切な人を失った絶望も、孤独も、恨みも、何も彼女を追い詰める事はしませんでした。
「ミハラ……ッ!」
しかし、そんな彼女を世界は許すことはしません。
「あたしたちは同じシュエンの鉄くずだろう? 分かり合えると思っていたが、残念だよ」
「うるさいッ!! 今すぐにミハラを放してよ!!」
「お前たちは私の計画を邪魔しようとしていたくせによく言う。だが、残念だったな。分はこちらにあるらしい」
ミハラはクロウによって拘束されていた。
「随分と慕われてるな、ミハラ。お前を失ったら、ユニはどんな顔をするかな」
「ハァ……ハァ……」
ユニは震えていた。自分の選択でミハラを失ってしまう恐怖に。
「余計な真似はするなよ、ユニ。あたしはあくまで穏便に済ませたいんだ。ここは取引と行こうじゃないか」
「取、引?」
「そうだ。あたしの指示を完璧にこなすことが出来たら、ミハラを解放する。悪くないだろう?」
「わ、私は……」
ユニの声は震えている。
「ユニ! やめて!」
ミハラが声を上げるが、抵抗しても抜け出すことはできない。
「余計な事を喋るな、ミハラ。どうだユニ? 今、選択権はお前にあるんだぞ?」
「あ、あ……」
「やめて! 私がやる! だからユニは──」
「喋るなと言っているだろ」
クロウはミハラの首輪を掴むと、鋭利に変形した鉄骨の前に立たせる。
「!!」
「これは攻撃ではない。あくまでユニ、お前があたしの提案に乗らなかった焦りで、ついミハラの手を離してしまったにすぎない。だけどどうだろうな。偶然コアを貫くなんて事故が起きてしまったら」
「……」
ユニはもう声すら上げられなかった。
もし自分がクロウの提案に乗れば、ミハラは助けられる。だけど自分の手はその時、完全に汚れきってしまっているだろう。それでも、このまま自分だけ逃げ出して一生孤独を味わう事はさらに苦痛だった。
仮にこれでミハラと会うことが最後だとしても、自分自身が孤独になる事は絶対に嫌だった。
それに、もしユニがユニじゃなくなったとしても、必ずミハラは迎えに来てくれる。
そう信じていた。
「いい加減決めろ、ユニ。このまま背を向けて逃げるか、あたしの話に首を縦に振るか」
ユニの瞳には恐怖を超えた何かが宿っていた。
「……分かった」
「ダメ!ユニッ!!」
ミハラが何か言っている。だけどもう今のユニに声は届かなかった。
「ユニ、頑張るから。だから……ミハラを助けて……」
捕まえる対象にユニは懇願していた。
「いいだろう。取引成立だ」
そしてユニは悪魔の契約を結んだ。
パトラちゃんの武器はチェーンソーの上に直接ガトリングを取り付けてるイメージです。(元ネタはあります)
改変によるキャラクターの口調や本作の進行はどのような方向性にして欲しい?
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積極的に変えて
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原作っぽさを残しながらも変えてほしい
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あまり変えないで欲しい
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原作そのままで