「ドロシーにルミナスムーンもいるし!?な、なんであの子達が急に出てくるの!?」
ゴッデスの登場にアニスは困惑していた。
「……初めて見るニケですよん。どなたかご存知なんですかぁ?」
「あの方達はピルグリムです」
「……ええっ!?」
「ア、アークに……!ラプチャーにヘレティックにピルグリムまで来るなんて……! わ、私たちは大丈夫なんでしょうか?」
分かりやすくミランダは狼狽えた。
「うーん……そうですねぇ。地上での記録を見る限り、ルミナスムーンとは接触した事例が多くあり、そのどれもが生還していますから、少なくともアークに害を及ぼすようなことはないと思いますよん。ヘレティックも攻撃していましたし」
「……」
ラピは降り立ったゴッデスをジッと見つめていた。
「指揮官、どうしますかぁ?」
「……とりあえず、行ってみよう。ここに来た理由を確認しないと」
「では、私はここで待っています。問題が発生したらすぐにご連絡ください」
指揮官達はエニックを残して外に繰り出した。
ズズッ、ズズッ、そんな何かを引きずる音が歩みに合わせて聞こえた。
「重ッ!? 本当にこれ持っていくんですか!?」
「勿論です。プレゼントですから」
「私が羽を持ちますから、パトラは胴体を掴んでくださいね」
その音を鳴らしているのは四人の少女。
「あっ、ドロシー」
ルミナスムーンが指揮官達の存在に気がつくと、ドロシーの肩を叩く。
「あら。こんにちは、みなさん。よくお会いしますね」
「……ドロシー」
「どうしてアークに……?」
指揮官が尋ねる。
「招待されましたから。ついでに今、プレゼントを手に入れたところです」
ドロシーが視線を向けた先には、ピナともう一人、マスクを被った人物がニヒリスターを運んでいた。
「……この方、死んだのでしょうか」
「私が首を、ルナがさらに追撃を加えてますから。本来なら死んでいるはずですが、彼女はヘレティックですから、間もなく自己修復するでしょうね」
そう言うと、ドロシーはニヒリスターを掴み上げ、そのまま投げ捨てた。
「……どうしろってのよ、こいつ」
「どうぞ。好きに使ってください。エデンに持っていくことも考えましたが、こんな大荷物を抱えては移動の妨げになってしまいます。それに、下手に目覚めて暴れられたりしては困りますからね」
「……爆弾とか埋めてないでしょうね?」
「そんな面倒なことをわざわざすると思いますか?」
ドロシーは一瞬、意味深な笑顔を振り撒いた。
「はいはい。悪役令嬢ごっこは終わった?」
「ごっ、こ?今の私、ルナ、あなたにはごっこ遊びに見えたと?」
「ごっこでしょ。アークは嫌いだろうけど、わざわざ今、君の印象を悪くする理由もないでしょ。まさか、また映画の真似事って訳じゃないよね?」
動かないニヒリスターの前で言い合いをする二人を、カウンターズとA.C.P.U.は呆気に取られて見ていた。
「……少し聞いてもいいかしら?」
ラピがドロシーに少し警戒した様子で声をかける。
「ええ、どうぞ」
「あの後、パピヨンはどうなったの?エデンはこのことを?」
「そう身構える必要はありませんよ。私達はただ話をしに来たんです。パピヨン様もエデンで大活躍されていますよ。アークと私を繋いでくれました。あなた達が想像しているような状態には、少なくともなっていないはずです。しばらくは私とアークを繋いでくれるパイプとして動いてもらいます。エデンには今のところ内緒にしていますが……」
ドロシーはルミナスムーンに顔を向ける。
「なに?」
「いいえ。何でもありません。まあ、少なくともそういうことです。さて、再会の挨拶はこれぐらいにしましょう。バーニンガム副司令官様はどちらに?」
「……どうして?」
「彼が私達を招待してくださったからです」
指揮官は警戒しながらも通信を入れる。
「……エニック」
「少々お待ちください」
しばらくすると、バーニンガムが映った。
「エ、エニック?どうした?」
「こんにちは。ドロシーです」
「!!」
ドロシーの声を聞いた途端、バーニンガムは動揺を見せた。
「ピ、ピルグリム?」
「はい」
「ほ、本当に来たのか?」
「あら。本気ではなかったのですか?」
「い、いや。そうじゃない」
一見すると、バーニンガムはとてもじゃないが軍人が見せる姿ではない。ただ、ルミナスムーンは知っている。これはただ相手を油断させるための演技であることを。
「へ、兵力をそちらに送ろう。そ、そこでた、待機してくれ」
「必要ありません。兵力なら既に優秀な右腕がいます。アークの見物と、差し上げたいプレゼントもありますし、直接お伺いします。できればガイドをつけてくださると助かるのですが」
「そ、そうか。エ、エニック。13ブリーフィングルームに案内してくれ」
「はい」
「エニック。座標を私とミランダに送ってくださいよん」
「分かりました」
ポリの行動にミランダは首を傾げた。
「案内は私とミランダがしますよん」
「わ、私たちがですか?」
「私は別に構いません。ピナ、護衛をお願いできますか?」
「はい!お任せください!」
ピナは意気揚々とドロシーの側に立つ。
「あっ、でもヘレティックはどうしますか? 私たちが運ぶには大変じゃないですか?」
「私が持っていきますので心配いりません」
「わあ!本当ですか!ありがとうございます!」
「では、すぐに出発しますよん」
「ではルナ、頼みましたよ」
「了解」
「パトラもまた会いましょうね!」
「はい。二人ともお気をつけて」
そうして、ニヒリスターを引きずりながらドロシーとピナは、ポリとミランダと共に去っていった。
「大丈夫だろうか?」
「大丈夫でしょう。その気があればとっくに行動を起こしていたはずですから。A.C.P.U.はアークの公権力。ドロシーがもし彼女たちに手を出せば、アーク全体が動くことになります」
「ええ、さすがにそちらのお巡りさんと揉めるわけにもいきませんからね」
「というか、アンタはドロシーと一緒にいかないの?」
「ただ話すだけなら、私は必要ありませんよ。それよりも、今起こっているラプチャーの侵入をどうするかの方が重要です」
そう言うと、ルミナスムーンに仮面の人物が声をかけた。
「そろそろ、潮時だと思います」
「なるほど。では計画通りにお願いできますか?」
「了解。お気をつけて」
そう言うと、仮面の人物は飛び上がりビル群の中に消えていった。
「……今のは?」
「ああ、言ってませんでしたっけ? 私の娘です。血は繋がってませんけど」
「あれが?」
「はい。あの子は長女です。良くできたいい子ですよ」
すると、ルミナスムーンは武器を担ぎ歩き出す。
「邪魔しましたね。指揮官、貴方は貴方の思うように最善を尽くせばいい。私もこれで一度失礼します。きっと、すぐに再会できるでしょう」
バイザーを閉じ、ルミナスムーンは彼女の子供と同じようにビル群に消えていった。
「……本当、こっちのペースとかお構いなしよね、アイツら」
嵐のように去っていったゴッデス部隊にアニスはげんなりとしていた。
「エニック、今の状況は?」
「アークの天井の一時補修はほぼ完了しました。さらにピルグリムの加勢により、アブソルート部隊とメティス部隊を主軸にしたニケ部隊に増援を確認しました。未だ地上で戦闘中ですが、これ以上アークにラプチャーは増えないでしょう。アーク内のラプチャーも徐々に減少していっています」
「それも彼女達の影響か?」
「いいえ。それは量産型ニケのみで対処していました」
それぞれの分隊の成果は、とても量産型とは思えない圧倒的なものだっ
た。しかも、ニケおよび人の死亡事案も発生していない。
「……では、私たちがアークのラプチャー討伐に合流する必要がないということだな?」
「その通りです。あなたが合流したとしても進捗にさほど影響はないでしょう」
となれば、指揮官達が次に行うことは決まっていた。
「……指揮官様、追いかけるつもり?」
「ああ。エキゾチックを捕まえないと。エニック。クロウ、バイパー、ジャッカルの行方は分かるか?」
「ラプチャー侵略時、私の神経が別の場所に向けられた時を狙って、エキゾチック部隊は私の監視網から外れました。現在、行方が分からない状態です」
「シュエンは?」
「現在、ミシリス本社にいます。エリシオンとテトラのCEOも一緒です。ミシリス本社はアークで安全な場所の一つですから」
となれば、次の目的地が決まった。
「分かった、ありがとう。ミシリス本社に行こう。シュエンなら何か知ってるはずだ」
「ラジャー。移動します」
指揮官は何処か胸騒ぎを抱えながら、エニックとの通信を切り、移動を開始した。
───
「初めて来たけど、中々に劣悪だな、ここ」
オイルとスクラップが混じった土道を私は進んでいた。
予定では指揮官達はエンターヘブンの本拠地に向かうはずだ。私もそれに便乗し、取るべき行動を判断する。そういった計画だったが、一番の不安視はやはりユニの存在だろう。ミハラの記憶消去をしていない関係上、ユニの怨恨はない。となると、ユニは……
「……正史を歪ませるのを阻止するなら、必ずユニは絡んでくる。ここで、あの二人が無関係になるはずがない」
憎しみも何もないただの彼女がテロに加担するとしたら、何かを突きつけられている他ない。そして、その突きつけられた相手はユニ本人ではない。
「……奴らめ、面倒な事をしてくれたな」
私の予想が正しければ、クロウ達は下衆な方法でユニを操っている。そう考えずにはいられなかった。
───
その後、指揮官はアウターリムに出向きエンターヘブンの本拠地に入ったはいいものの、そのままエキゾチックの罠にかかり、指揮官はラピ達と分断され拘束された。
「おっ、起きたみたいだな」
そして、目を開けるとエキゾチックの三人が立っていた。
「ダーリン、具合はどう?」
「あれ!? 指揮官、起きたんだ!」
そして、指揮官の横で生気なく拘束されている人物がもう一人いた。
「ミハラ……?どうしてここに……?」
「……指揮官」
ミハラは疲弊した顔で指揮官を見た。
「何故、ミハラがここにいる」
「ああ、少し『協力』してもらってるんだ」
「協力? ふざけるな。人質の間違いだろう。随分と落ちぶれたやり方だな」
「窮地に追い込まれた人間が落ちぶれるのは、当然のことじゃないか?」
指揮官は何とか立ち上がろうとするが、椅子に縛られ身動きが取れずにいた。
「……何が目的だ?」
「放送が始まる前に、少し話がしたくてな」
そう言うと、クロウは指揮官の前の椅子に座った。
「アンチェインドは見つかったか?」
「何のことだ?」
「見つけたんだな。やっぱりすごいヤツだな。何でも解決できるのか。ちなみに、この状況はどうやって解決するつもりだ?」
指揮官は咄嗟にとぼけて見せたが、それも無駄な足掻きだった。
「君たちを捕まえて自白させる。それがダメなら、脳スキャンだな」
「……おい、お前。今のこの状況は、むしろお前があれほど望んでいたニケの待遇が改善されるきっかけになるかもしれないんだぞ」
「……なんだと?」
クロウの言葉が指揮官に引っかかった。
「メティスの話からはじめようか。奴らは、『NIMPHのない……制御手段がなくなった兵器が果たして人間側に立って戦ってくれるだろうか』という非常に根本的な問いをアークに投げかけた。その結果、どうなった? メティスにNIMPHを。アークのクズどもも知っていたんだ。ニケという兵器は、制御不可能な状態下では自分たちを守ってくれはしないって事実を。そうなっても仕方がないような扱いをしてきたからな。勝利の女神となるべきニケを、人間の盾としか扱ってこなかった」
「なぜメティスだった?」
指揮官は問う。
「簡単さ。シュエンなら何かすると思ってた。さすがにアークにラプチャーを呼ぶなんてバカなマネをするとは思わなかったがな。とにかくあの派手なショーのおかげで、ニケは『NIMPHがなくても人類を守る守護神』だという印象を植え付けた」
「計画が失敗してさぞかし残念だったな」
「そう思うか? じゃあ、なんでアークに穴を開けたと思う?」
「……」
指揮官が黙った事を確認し、クロウは続ける。
「新しい目標ができたからさ。メティスのラプチャー掃討により印象付けられた『勝利の女神』というイメージは、素敵なショーを見た感想に過ぎない。それじゃあ、ニケはただのピエロになるだけだ。だから、穴を開けた。絶対に安全な場所だと思っていたアークに、ラプチャーという原初の恐怖を呼び込む。その時、アークはどんな選択をするのか見たかったんだ」
「……話を続けてくれ」
「テレビ越しに見ていたラプチャーという存在が目の前に現れたら、人間は恐怖を感じるはずだ。つまり、アークにラプチャーが現れたら、みんなが同じ恐怖と対面し、初めて完璧な平等がうまれるんだ」
指揮官は言葉を失った。クロウの思想があまりに過激で現実離れしていたからだ。
「……君のそんな考えのせいで、多くの人が死ぬ」
「その通り。あたしも誰が死ぬのは嫌だ。悲しいからな」
「嘘をつくな」
「だからあの時間にしたんだ。メティスの勝利イベントに合わせて。最低限の犠牲。まあ、そんなところだな。だが……エニックが予想以上に優秀だった。人間をシェルターに押し込んで、またニケとラプチャーをテレビ越しの存在にしてしまったんだ。そこにヘレティックという最悪の敵がアークへやってきた。この時はちょっと期待したよ。ヘレティックは言葉通り、人類に対する悪意そのものだからな。だが……危機が訪れる前にピルグリムとかいう伝説のニケ共がそれを倒した。何とも呆気なく一方的にな」
クロウは続ける。
「さらに刺激的なショーになっただけさ。メティスの時は地上で。今度はアークで。距離が少し近づいただけで、一方的に楽しむショーには変わりない。このままじゃ、あたしが望むものは見られないんだ」
「一つ聞こう」
指揮官が口を開く。
「君はいったい何が見たいんだ?」
「言っただろ? アークの選択が見たいんだ」
───
「ゴッデス部隊の話をしようか。人類のためにすべてを捧げてきた彼女たちを『勝利の女神』だの『人類の希望』だのって持ち上げておいて、アークが完成した瞬間、捨てた。断絶されていたから、簡単に選択できたんだろうな」
指揮官が見てきたゴッデスは、少なくとも人類を敵視するような仕草は見せなかった。だが、実際まったく恨みがないとは考えにくかった。
「その次は第一次地上奪還戦。人類のために喜んで脳を捧げ、ニケになった彼女たちに再び『勝利の女神』という称号をつけた。そして失敗に終わると、アークはニケを迫害し始めた。金と資源をつぎ込んだのに勝利をもたらさない厄介者になったんだ。『ニケフォビア』とかいう言葉はこの時生まれた。これも、人間とニケの断絶が招いた事態だ。第二次地上奪還戦の失敗。最初の芸能人ニケ、プリティーの不審死。モデルZXのゴッデスフォール事件。事件が起きるたびに、アークの世論は揺れ動いた」
クロウは続ける。
「ニケを崇めて、迫害して、崇めて、迫害して。これは、人間とニケの断絶が原因で起きているに違いない。ニケはアークにいるが、存在していない。テレビ越しの、ショーの出演者に過ぎない。ドラマを見て登場人物をけなしたり、褒めたりするのと同じさ。何故か? 画面越しの存在だからさ。アークはラプチャーを怖がらない。なぜか? 画面越しの存在だからさ。アークはニケに感謝しない、アークはニケをけなさない。なぜか? 画面越しの存在だからさ」
クロウはゆっくり立ち上がり、指揮官を見下ろす。
「アークはニケについて何も知らない。ラプチャーのことも何も知らない。だから教えてやらないと。ニケのこと、ラプチャーのことを完全に理解すれば、アークはきっと真の『選択』をするはずだから。その選択のうちの1つに、お前があれほど望んでいた、ニケの待遇が改善される環境が含まれるかもしれない」
「君は……何をするつもりだ?」
「……テレビでも見よう」
クロウの視線が、テレビへと向いた。
───
「……」
ユニは崩壊したアークの街を一人、歩いていた。
だが、決して目的なく彷徨っているわけではない。
目的はただ一つ。ミハラを助けること。そのためには、自分を捧げることは最低条件。
自分の手を汚さずに人を殺す。自分はただ、勘違いの放送を流すだけ。たったそれだけのこと。
「ミ、ハラ……ユニに任せて……」
こんな事は間違っている。承知の上だ。自分自身の孤独から逃れるためには、こうするしかない。
誰かに助けを求めたところで、どうしようもないことは生きてきて嫌と言うほど理解している。だから、自分自身でやらなくちゃいけない。
しばらく歩くと、ユニの足が止まった。
「あっ……いた……」
そこにはテトラコネクトのカメラマンとレポーターが、ラプチャーから逃れようと隠れていた。
「助ける。助けるんだ。ユニが、ミハラを……」
ひたすら自分に言い聞かせ、隠れている二人にユニは近づいた。
結論から言うと、ユニは二人を逃がした。適当にラプチャーのことを誇張して言えば二人は怯え、機材を捨てて逃げろと安全な道を教えればその通りに従ってくれた。
「……ふふ」
捨てられたカメラを拾い上げ、ユニは笑った。
これからどうせ多くの人を死なせると言うのに、わざわざあの二人を安全な場所まで向かわせた。
こんな事をしなくても、感覚遮断を使って奪うでも何でも出来るはずなのに、普段では想像もしない行動をとった自分に笑ってしまう。
「おかしいな……どうせユニは……」
もう戻る事は許されない。自分とミハラは完全に乖離する。
「ミハラ……ユニを、絶対に見つけてね」
カメラを持つ手が、マイクに呼びかける口が震える。
そんな様子を影から見ている者にも気づかず、ユニはマイクに向かって声を張り上げた。
───
クロウは確信していた。ラプチャー捕獲部隊であり、なおかつ感覚遮断という能力まで持ち、そしてミハラというたった一人に依存している脆さ。
まさに絶好の相手だった。
そして、テレビが映り荒れ果てたアークの街が映し出される。カメラの画角は震え、一瞬映り込んだ服は間違いなくユニのものだった。
その一瞬でミハラは青ざめ、指揮官も息を呑んだ。
何とも滑稽な姿だと、内心笑っていた。
そして、ユニがその言葉を呟く事を今か今かと待っていたその時。
異変が起こった。
『アーク縺ョ縺みえま縺吶° ?? シェルター縺ォ繝ゥ繝励メ繝」繝シ縺梧判繧∬セシ繧薙〒……な、なんで ?? シ? 放送螯ィ螳ウ窶ヲ窶ヲ縺輔l窶ヲ窶ヲ』
「……何だ、今のは」
ユニの声が解読不能な音声へと突如変貌した。
想定もしていない事態に見舞われ、クロウは目を丸くした。
「隊長?どうしたの?何で驚いてるの?」
クロウはジャッカルに気も留めず、テレビを食い入るように見つめていた。
『だ、誰!? やめ縺ヲ ?? 屬縺励※ ?? 繝ヲ繝九′がやらないと、ミハ繝ゥ縺鯉シ?シ?』
突然カメラが大きくブレ、ユニが何かと争うような声がしたかと思うと、一度音声がプツッと切れた。
「ユニッ!」
ミハラもテレビを凝視した。あの争うような声が、ユニの安否をさらに不確定にした。
そして、映像が再度映るとノイズが混じった声が響いた。
『あーあー。アーク市民のみなさん。只今、ラプチャーの増加を確認しました。繰り返します。ラプチャーの増加を確認しました。市民の皆様は、決してシェルターの外に出るような行為は避けてください』
声の主は淡々と計画を台無しにしていく。
『首謀者は逃亡中、依然としてシェルター付近にラプチャーが集まっています。これから各分隊が駆除作業に入ります。皆さまに無謀な選択をさせない事を約束──』
ここで画面が切り替わり、テトラのマークが現れ、放送が停止した。
「……何だ、このザマは」
「ユニに何をした!!」
指揮官が叫ぶが、クロウの頭の中はグルグルと様々な思考が入り乱れており、それどころではなかった。
あの声の主がユニと接触したなら、自分達の事をバラされるのではないか? いや、ミハラを失う事を1%でもなくしたいのなら、そんな馬鹿な真似はしない。だが、あの声が言っていた最後の言葉、『皆様には無謀な選択をさせない』──この意味はまさに自分を……
「隊長ー?」
いや、まだだ。奴は首謀者を逃したと言っていた。それなら、まだ利用価値はある。
ひたすら思考を巡らせ、バイパーとジャッカルはその行く末を見ていた。それはつまり、指揮官達を一瞬目線から外すことになる。
「……」
三人が自分の視界に映っていない事を確信し、指揮官は上着の内部にある違和感を確信に変えるため、椅子を揺らし地面に倒れ込んだ。
───
ドロシーとピナはA.C.P.U.の二人と共に、バーニンガムの元に行くついでにアーク内を見てまわっていた。
「ピルグリムの方が正式にアークにいらっしゃるのは初めてですねぇ」
「そうですね」
「えっ、でもルナ様──」
ドロシーはピナの口に手を当て、静かにというジェスチャーをした。
「ん? どうしましたか?」
「いえ、何でもありません。それにしても、人の気配がありませんね」
「当たり前です! 今、市民の皆さまは全員避難しているんですから!」
「……そうなんですね」
ドロシーは周りをグルグルと見渡した。
「どうですかぁ? アークは」
ポリがドロシーに尋ねる。
「……いざ来てみると、特に何とも思いませんね。あれほど望んでいた場所なのに」
「そうですね。特段感動することもありませんでしたね」
「正直に申し上げると、地上と特に変わらないと思います。広くて、ラプチャーだけがいるこの光景は。もっと人がいれば何か変わるのでしょうか」
「勿論です! 普段はとっても賑やかなんですから!」
「そうですか。……気になりますね。どのような風景で、どのような感情を抱くことになるのか」
四人は再び足を進める。
「それにしても、本当にすごいタイミングで来てくれましたねぇ! ヘレティックが現れた時は本当に驚いたんですよん!」
「そうですか?」
「はい! 本当に完璧なタイミングでした! 爆発直後から、まるで仕組んでいたかのように完璧でした!」
ミランダの言葉で、一瞬時が止まった。
「えっと……ドロシー様。悪意はないと思いますよ?」
「……すみません。ミランダには本当に悪気はないんですよん」
「え? 私、何か間違ったことを?」
「ふふ、大丈夫ですよ。気にしないでください」
さらに進む。臨時のアーク観光も終盤に差し掛かる。
「さて、あとちょっとで着きますよん。ラプチャーがいないといいですねぇ」
「ご心配なく。ラプチャーがいても私達には何の問題もありませんから……ん?」
ドロシーの視界に引っかかる物が映った。
「あの石像は何ですか?」
頭と両腕がない、翼が生えた石像。
「あ、あれですかぁ? 勝利の女神像ですよん。ゴッデス部隊のみなさんを称える石像ですぅ!」
「……」
「ゴッデスを……」
「はい!アークのあちこちにあります! 管理も徹底されてるんですよ! ちなみにですが、トラブルを起こすたびに罰として勝利の女神像を磨いていたんです! だからピカピカに磨くことができますよ!」
ドロシーとピナはその石像に近づき見上げる。
「……これはなぜあるのですか?」
「えっ? それは……ゴッデスのみなさんは人類の救世主だからですよん」
「……」
「アークでは伝説だといえますねぇ。最初のニケの部隊ですし、最強の部隊ですからぁ。それに……アークのために地上に残り、最後まで戦ってくださった人類の守護神でもありますよん。データがあまり残っておらず、プロフィールなどは分かっていませんが、アーク内では一種の神話となっているですよん」
「神話……ですか」
「すごいですね!ドロシー様!」
ピナが嬉しそうにする中、ドロシーに一つの疑問が浮かぶ。
「どうしてデータがないのでしょうか?」
「かなり時間が経ってますからぁ。それに、ゴッデス部隊の情報をかなり積極的に広めていた方がいたのですがぁ。その方が亡くなってから、どんどん情報がなくなってしまいましたねぇ。もちろん、今も神話であることに変わりないですがぁ」
「……その方のお名前は分かりますか?」
「どなたの名前ですか?」
「ゴッデス部隊の情報を積極的に広めた方のお名前です」
ポリとミランダはしばらく唸っていたが、やがて申し訳なさそうに呟く。
「……すみません、名前まではよく分からないですよん」
「そうですか、大丈夫です。気にしないでください」
「では移動しましょうかぁ? あと少しで着きますよん」
ポリとミランダの後について行く中で、ドロシーとピナはもう一度石像を眺めた。
そして、ふと懐かしい人物を思い出していた。
「ふふっ」
「あっ、ドロシー様笑いました?」
「そういうピナも笑っているじゃないですか」
「えへへ、じゃあきっと思ってる事は一緒ですね!」
記憶の中で蘇るあの声。初めは自分達を騙すようなことをしていたのに、気がつけば関係を深めていた。
「あの時は色々大変でしたけど、それももう全部終わった話ですよ」
「ええ、そうですね。彼とも貴女とも出会えて良かった」
ドロシーは手を差し出し、ピナもそれに応える。
二人は互いの手を握った。
「あれ? お二人とも、石像がそんなに気になりますか?」
ミランダの問いに、二人は顔を見合わせもう一度笑った。
「いえ、何でもありませんよ」
「はい。何でもありません」
二人は足並みを揃えて歩き始める。
「ただ少し、旧友の事を思い出したんです」
ドロシーとピナの領域に割り込む人はルミナスムーンが八つ裂きにしちゃうぞ☆
改変によるキャラクターの口調や本作の進行はどのような方向性にして欲しい?
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積極的に変えて
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原作っぽさを残しながらも変えてほしい
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あまり変えないで欲しい
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原作そのままで