「てなわけで、ラピは今レッドフードの中に入ってる」
一通りラピとレッドフードの現状を話し、故郷のことも話した。ドロシーやピナはもちろん、カウンターズの全員も呆然としていた。
「それでさ、今のラピの声が聞こえ……おい、何だその目は」
「いえ? 別に?」
ネオンはキョトンと首を傾げた。
「明らかに変な物を見る目だったろうが」
「おっと、それは失礼」
「……真面目に答えて。ラピはどこ」
「だから、この中だって」
「それをどう信じろって言うのよ!」
まあ、アニスの言い分も分かる。実際、こんな事実例が無いのだから。
「実際に変身している所は私が見ている。二つのボディを圧縮して、コアだって二つある。ボディの主導権はラピが握ってるが、必要に応じてレッドフードのボディを活性化させることができる。その際に生じるコア同士の反発作用であの出力が生まれる。そうでしょう? 指揮官さん」
端末を見ていた指揮官が目を見張った。
「そして、今貴方が持っているその注射器をレッドフードに刺せば、レッドフードは消滅しラピが戻ってくるが、ラピ自身はそれを拒否している。そんな感じでしょう?」
「……そうだ」
「注射器を打とうにも、ラピがそれを拒否しているから打てない状況。まあ、そんな所です。ですが、対策は既に打っています」
「何よそのSFとインチキ宗教が混ざったような話……アイツが死にたくないからわざと──」
「なら、その証拠を見せよう」
全員の疑いを晴らす為、一肌脱ぐことにした。
「指揮官さん。それ、ちょっと借りますね」
「なに……?」
私は指揮官の手にある注射器を無理やり奪う。
「ちょっと! なにしてるんですか!?」
当然、注射器を奪ったことにカウンターズは激高するが、構わずにレッドフードに近づく。
「ルナ、それは……!」
当然ドロシーもそれがレッドフードを消滅させる物だと知っている。
「大丈夫。レッドフード、腕出して」
「おい、お前なにを──」
忠告も無視して、私はレッドフードの腕を無理やり掴み、注射器を突き刺そうとした瞬間。
「うおっ!?」
突如、レッドフードのもう片方の腕が私目掛けて渾身のストレートを放ってきた。
「……うぐっ!!」
咄嗟にナノマシンを出して防御するが、相手はレッドフード。完全に防ぐことは出来ずにそのまま吹き飛ばされる。
「ガハッ……!!」
「何やってんだ馬鹿野郎!!いつもそうだが、自分の体を何だと思ってるんだ!」
「でも、これでレッドフードではない何かがいるという証明になった。もし演技なら、ボロボロの相手にここまで全力の力で殴ってくることはないでしょう?」
「ドアホ! 間違って殺しちまったらどうする気だったんだ!!」
「ナノマシンの防御もあるし、死ぬこともないかなーって。あはは……は」
凄まじい先ほどの様な殺気を感じ取り、恐る恐るその方向へ向くと、ドロシーが立っていた。分かっていたが、立っていて欲しくなかった。
「……みなさん。立ち話もなんですし、移動しませんか? こう言っては何ですが、注射器を打う時間はまだあるんです。レッドフードの故郷を目指し、ルナの言う対策という話を聞いてからでも遅くはないと思いませんか?」
ドロシーが諭すように間に入ってきたことに少し驚いた。やはり、精神的に余裕があるからだろう。
「……分かった」
「指揮官様、本気!?」
「注射器を拒んでいるのがラピだとするなら、このまま故郷に帰る理由があるはずだ」
それに、と指揮官は続ける。
「ラピが初めてやりたいことを言ってきたのはこれが初めてだ」
「……レッドフードの中にラピがいるって、指揮官様は信じるの?」
「もしこれが出鱈目で、ラピが消えてしまう事になったら、この手で殺す」
指揮官はレッドフードの方へと向き直る。
「レッドフード、それにルミナスムーン。嘘をつこうとは思うなよ」
「ウソじゃないって」
「一先ず、移動しよう」
ゆっくりと立ち上がり、一歩を踏み出した瞬間、肩をガシッと掴まれた。
「ルナ」
「は、はい……」
「今、あなたに説教するのは辞めておきましょう。時間の無駄です。ただし、これが終わった後は覚悟しておく様にしておいてくださいね?」
声には明らかに怒りの感情が混ざっており、振り向くことは出来ず、唾を飲んだ。
「勿論です……ハイ」
「それだけです。そしてあなたの事ですから、既に進路も決まっているのでしょう?」
「大体は……でもレーダーが破損しているから、途中チャイムの力を借りるかもしれない」
「ハァ……しょうがないのだ」
「では、行きましょう」
こうして、総勢九名の大行進が始まった。
「……感情的にはなったけどよ、あいつより怖くなってね?」
───
「……なんか」
故郷への旅はあまりに順調だった。
「いいかしら、こんなに緊張感ゼロで地上を歩き回って」
「私たちが何かすると、あの方達が先に全部片付けてちゃいますから」
「そりゃあ、最高の部隊ですから」
ドロシーとピナの連携はもちろんだが、ブランクがあっても自分なりに、そして確実な連携が取れるレッドフードに、王国の二人。その辺のラプチャーに負ける布陣ではない。
「あんたは戦わないの?」
「君はこんな重傷者を前線に放り出す気ですか? 長年地上にいても、無理なことはあります」
やはり、ゴッデスは素晴らしい程の成果を上げてくれる。これは彼が見惚れるのも無理はない。
「あの、量産型のニケは……」
「ピナの事ですか? ドロシーの右腕的存在、本部隊のムードメーカーです」
「……どう見ても、量産型の戦いには見えないが」
空中を飛び回り、敵を掃討していくその様は今やすっかり馴染んでいる。
「ええ、あの子は自分を見つけました。まあ、ちょっと手伝いましたけど、今のあの姿はあの子が自ら掴んだ姿です」
「……そうなのか」
言い方は悪いが、少し背を押してやっただけでピナは羽ばたいてくれた。もちろん、それまでの準備も大変だったが、やはりピナには生きていて欲しかった。
「……結局、自己満か」
「どうした?」
「何でもありませんよ。あっ、もうすぐ終わりますね」
既に銃声は収まりつつあった。しばらくするとレッドフード達は涼しい顔で帰ってきた。
「どうだ〜? あたしの戦いは」
「本当、傷一つついてないわね」
「……なんか、ムカつきますね」
ネオンはムスッと頬を膨らませると、レッドフードがそれを突いて、危うく別の乱闘が始まりかけたが、何とか防ぎ先を急ぐ。
「それで、どこまで話しましたっけ?」
「あたしの故郷の近くに施設を作ったって所だろ?」
「そうだった。では、続きを話しますね」
そうして、レッドフードとラピの問題に話が移る。
「結論から言うと、私の提案ではレッドフードを完全に戻すことは難しいです」
「そうなのか?」
「はい。二つのコアをそのまま抜き取って、別の身体に移植するというのはあまりにリスクが大きすぎるし、何より新しいボディが耐え切れない」
初めはこの計画を練っていたが、色々な懸念があり断念した。何より、これをしてしまうと継承ができなくなる可能性があり、これを一番危惧している。
「だから、レッドフードには記憶や戦闘データを抜き取り、別のボディへと移し替えます。単純ですけど、これならコアの影響は受けない」
「なあ、それだとあたし、すっげぇ弱くならねぇか?」
「コアの出力が下がるのは間違いない。それでもボディは最高のものを作ったつもり、姿も形もそっくりに。だけど君のボディはロストテクノロジーすぎる」
完全な出力を出せるならリスクの少ないこちらにしたが、一部レッドフードの弱体化という観点から、渋っていた案だ。
「まあ、いいけどさ。新しい身体を貰うだけの死人が文句を言う筋合いはねえからな」
「じゃあ、ラピはどうなるんですか?」
当然出てくる質問。ここからが本題と言っていい。
「ラピのボディに残ったコアは、元々あるラピのコアと融合させて、ラピの出力を上げる様にする。彼女がレッドフードの様になるために」
「……え?」
「融合?」
疑問の輪が広がる。
「言葉通りです。レッドフードがいなくなったコアとラピのコアを融合させれば、更に出力を上げられる」
「それは分かったわよ! あんた、またラピにあの力を使わせる気!?ラピの髪が赤くなったあの時を忘れたの!?」
「ん? 何だそりゃ?」
当のレッドフードは知らない様子だった。
「レッドフードの力を一部使った時があって、その時はラピの脳が焼けかけた」
「……まじかよ。そんな事が」
「まあ、その事を危惧することも分かる。だから補助機を付けるつもりです。最初は六割程度の力を出し、徐々に十割の力を出せる様に」
「どうしてそこまでラピのコアに拘るんだ?」
指揮官達にはまだラピの継承の話をするわけにもいかない。
「……ちょっとした未来の投資の為?」
当たり障りのない答えを口にすると、アニスはため息を吐いた。
「出た出た。そのオカルトチックな話。ハァ……本当に信じて良かったのかな……」
「最初は信じられませんよ。でも徐々に本当かも? って思える様になっちゃいますから!」
「……同じ地上のニケに言われても、説得力ないわよ」
───
「ルミナスムーン」
「はい。どうしましたか?」
移動中、指揮官が私に声を掛けてきた。
「あのクラウンとチャイムというニケ、もしかしてマリアンが居る場所のニケか?」
「……!!」
「な、何故貴様がその名前を……!」
マリアンという名前を聞いた瞬間、二人の足が止まった。
「あっ……!」
「思い出した! ということは、あなた達が……!」
カウンターズも以前の会話を思い出した様子だった。
「すまない。マリアンを預ける事を依頼したのは私達だ」
「そうでしたか……でしたらあなた達がカウンターズということで宜しいでしょうか?」
「そうだ。それで、マリアンは元気か?」
再度、指揮官のその質問に、カウンターズとレッドフードを除くそれ以外の面々は目を逸らしたり、沈黙を貫いたりした。
「どうした?」
「マリアンは……その……」
「元気すぎるのだ。色々と」
「そう、なのか?」
「はい。毎日飲酒と卑猥な話、謎の作法を共有したり、動物を解体して焼き始めたと思ったら何でも拾い食いしたりするのが問題ですが、その他は平和に過ごしていますわ」
「……」
指揮官は絶句した様子で私を見つめた。
やめてください。そんな目で私を見ないでください。
「絶対ッ! 悪影響受けてるじゃない! ルミナスムーン!」
「誤解だ! 寧ろ私は止める立場だったんだ!」
この誤解だけは何としても解かなければならない。
「何故です? 打点を高く紅茶を注ぐ事は礼儀として……」
「おっ、お前まだあのドラマ覚えてたんだな」
「ええ、あなたが散々鑑賞会をやりたい何て言い出すから、嫌でも覚えてしまいますよ」
私が必死に弁解している中で、二人は呑気に会話をしていた。
「羨ましいです。そんな時間、私には与えられていなかったので……」
「なら、この旅が無事に終わったら、ピナ、ドロシーも一緒に久しぶりの鑑賞会でもどうだ?」
「今は遊んでる暇はありません、レッドフード」
「何でだよ。羽を伸ばすことも重要だって言ってだろー?」
「少なくとも、今はその時ではありません」
「あれ? でもドロシー様この前、自室で──もごもご!」
凄まじい速さでピナの口を塞ぐドロシーに、レッドフードはニヤついた。
「ふぅ〜ん。なあピナ、後でそれコッソリ聞かせてくれよ」
「そうしたらあなたを地面に埋めてあげますよ」
「ねえ! 誤解解くの手伝ってば!」
そんな和やかな雰囲気で、旅は続いていく。
───
そして、目的地までもう間も無くという地点まで来た時。
「あと少し進めば、お前の故郷に着くのだ。気をつけていくのだ」
「ん? 一緒に来ねーの?」
「私達の役割はここまでなのだ。後はルミナスムーンが案内しても迷うことはないと思うのだ」
レーダーが壊れている以上、チャイムの記憶力には非常に助かった。
「助かりました。ありがとうございます」
「うむ、そう思うなら王国に顔を出すのだ」
「はい……まあ、それは近々って事で」
「その……ありがとうな、二人とも。初めて会ったのに、ここまでしてくれるなんて思ってなかったよ」
レッドフードは少し照れくさそうにお礼を言った。
「民の面倒を見るのは我々の使命なのだ。気にする必要はないのだ」
「ええ、いつかあなたが王国にやって来る事を歓迎いたしますわ」
「そうか……ありがとよ」
「幸運を」
そしてチャイムが鈴を鳴らすと、白銀の馬がこちらへ向かってきた。
「何あれ……?」
「ウマ、ですよね?」
トロンベは頭を垂れてクラウン達の元へと近づいた。
「それでは、またお会いしましょう」
「ああ、マリアンをよろしく頼む」
「心配ご無用ですわ。それでは。行きなさい、トロンベ」
クラウンとチャイムを乗せたトロンベは風を切り、あっという間に姿を消した。
「か、帰ったら、ああいうの作ってって言わなきゃ」
「わ、私もです」
「なら、私が作りましょうか? あれ程の物ではないにしろ、それなりのクオリティを保証しますよ?」
「……自爆機能とかつけないでしょうね?」
「他人に渡す分には付けませんよ。まあ、今は先に進みましょうか」
「そうだな、行こう。後少しだ」
私の案内の元、旅の終点へと向かった。
改変によるキャラクターの口調や本作の進行はどのような方向性にして欲しい?
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積極的に変えて
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原作っぽさを残しながらも変えてほしい
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あまり変えないで欲しい
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原作そのままで