初めは、あなたに全てを渡そうと思っていた。
私よりもあなたの方が、ずっと価値があると思っていたから。
でも、沢山の仲間と繋がりを得た事で、思い出が、大切な人が出来たの。
そう思ったら、生きる事も悪くない。そう思ってしまった。
でも、それはあなたも同じこと。
あなただって、かつての仲間と出会って、生きる意味を掴んだ。
生きたいって、そう願った。
だけど、この身体は一つしかない。
あなたに譲ることが人類にとって、世界にとって、有益になり得る。過去の私なら、迷わずその選択を選んでしまう。
だけど、私は──
「──い」
……ここはどこ? レッドフードはどこ?
「おーい。聞こえてますかー?」
誰だ。この声は?
真っ暗闇の中で体をがむしゃらに動かしていくと、奥の方に僅かな光が見えた。
「……あれは」
他に道はなく、藁にも縋る思いで必死に体を動かし、その光に手を伸ばし続ける。これを逃したら、もう二度と機会が訪れないのではないかと言う恐怖に駆られた。
「待って……!」
失いたくない。満たされた心を、私自身を。
必死に手を伸ばし続け、光に触れようとした瞬間、光の向こうから飛び出した手が私の手を掴んだ。
その手は私の身体を引っ張り上げ、暗闇を抜け出した。
「よっ!と」
そこは、暗闇から一変して、どこまでも白が続いている空間だった。
顔を上げると、そこには見知った顔が立っていた。
「ルミナス……ムーン?」
何故彼女がここにいる?ここはどこだ?どうして私に戻っている?
「聞きたいことが山程あるって顔ですね」
「……そうね」
「立ち話も何ですし、椅子にでも座って話しましょうよ」
「座るって、そんな物……」
そうルミナスムーンが呟くが、辺りを見渡してもそんな物はないと、目線を彼女に戻すと目を疑った。
「ほら、あるでしょう?」
そこには椅子に座っているルミナスムーンがいた。
「そんな物、一体どこから……」
「それも含めて話します。さあ、貴女も座って下さい」
「何を言ってるの……? 椅子なんて何処にも──」
「貴女の背後にあるじゃないですか」
ルミナスムーンがそう言うと、足に何かが当たり、振り向くと彼女と同じ椅子が、そこにあった。
「……椅子が」
混乱する。当たり前だろう。確実にこの場になかった物が音もなく、いきなり背後に現れたのだから。
「さあ、座ってください」
これ以上問い詰めても進展はないと思い、恐る恐る椅子に腰掛けると、感触も本物だと分かる。
「さて、何から聞きたいですか?」
そう言うとルミナスムーンはいつ現れたのか分からないテーブルの上で、ティーカップにお茶を注いでいた。
「……ここは何処なの?」
まずは最も知りたい事を質問する。
「簡単に言えば仮想現実という奴です。ほら、アークにも似た様な物があるでしょう?」
彼女はお茶を一口含んだ。
「私、そして貴女とレッドフードの脳に直接回路を繋げてこの空間は存在しています。まあ、超高度な妄想を繰り返しているとでも思って下さい」
「どうして、私をここに連れてきたの?」
「貴女とレッドフードを助ける為です。両方が生きる事を望み始めたのに、必ず片方が消える。そんな理不尽への対抗策として、貴女達をこの空間に招待しました」
「じゃあ、レッドフードは何処にいるの?」
辺りを見渡してもその様な人影も一切見えない。
「まだ来ていませんよ。レッドフードは少しだけ時間が掛かるんです」
さて、とルミナスムーンはカップを置き、私を見据えた。
「失礼。今度は私が貴女に質問をしても?」
「構わないわ」
「では、遠慮なく。貴女は、レッドフードを超えたいですか?」
「……え?」
超える? レッドフードを? 憧れを?
「現在、貴女のボディはレッドフードと分離作業中です。その時のあの出力の二割をレッドフードに、もう八割を貴女のコアと融合させます」
ルミナスムーンは立ち上がり、私の背後に立つ。
「貴女がレッドフードの様になりたいという事は既に知っています。厳しい事を言いますと、貴女がレッドフード以上の戦力になってくれなかったら、カウンターズの全滅及び人類の敗北は避けられないでしょうね」
「ちょ、ちょっと待って……!」
流石に話が肥大化し過ぎている。私がレッドフードを超えられなかったら人類の敗北? いくら何でもそんな事はあり得ない。
「あり得ないって顔ですね。貴女が信じているか分かりませんが、私が少し未来が見えるという事は覚えていますか?」
「……ええ、随分非科学的な話だわ」
「まあ、そうでしょうね。参考までに教えておきますが、貴女がレッドフードを継承出来なければ、地上奪還作戦も叶わずに朽ち果てる事になります」
「……そんな」
今目の前の彼女が言っている言葉に事実はない。だけど、今までのルミナスムーンの動きを見ると、全て予測され、その通りに事が進んでいる様に見えた。
ならば、人類の結末は──
「……嘘」
レッドフードを継ぐ、当たり前だが簡単な事ではない。仮に継承したとして、自分がレッドフードらしく戦える保証もない。
思考を巡らせ、必死に考えるが結論は出せない。
「今までの貴女なら、ここで自分のボディを渡すだの何だの、自己犠牲の選択を取っていたでしょうね」
「……あ」
「貴女がレッドフードにボディを渡す。もしくはレッドフードがボディを返す。そのどちらかを選べば、この問題は思ったより簡単に解決出来る。ですが、貴女が望めば二人共がそれぞれ生きる道を選べます」
願ってもない事だ。私とレッドフードのどちらかが消えなくても良い。そんな大団円な結末があるのなら、それに越した事はない。
「ですが、簡単ではありません。レッドフードを継ぐ以上、茨の道を進むのは貴女の方です。覚悟はありますか?」
「……聞かせて」
ここまで来て、引く選択など存在しない。
「では、話します。簡単に言うと貴女にはレッドフードの出力に慣れてもらう為の訓練を受けてもらいます」
「訓練?」
「はい。完全に継承が行えるならこんな事をする必要はないでしょうけど、何割かをレッドフードに残す以上、このまま完全な継承を行えるかいささか不安視しています」
そこで、とルミナスムーンは指を振る。
「今、現実世界の貴女のボディには制御装置を取り付けています。十割の力を現状出す事が出来ない以上、八割の力を出し続けられる様にする為の訓練です」
「……具体的に、訓練ってなんなの?」
「そりゃあ、貴女達がいつもしている事ですよ」
突如、背後から巨大な影が現れた。
「……え?」
巨大な口は私が避ける間も無く、地面ごと私を飲み込んだ。
───
【CASE1】
「……ッ!?」
再び目を開けると、そこは変わらず白い空間であり、目の前にはルミナスムーンがいた。
「一体……何が……」
「如何でした? 貴女はたった今、一度死んだんですよ」
ルミナスムーンは感情の起伏もなく、そう言った。
「……死んだ?」
「はい。これが訓練です。ここで出力の維持を行いながらの戦闘訓練を行ってもらいます。もし、過度に出力を上げると制御装置が作動し、強制的に貴女の動きを止めます。ですので、制御装置が作動しないギリギリを維持しながら、敵を殲滅して下さい」
ルミナスムーンが指を鳴らすと、再び背後から黒い影が現れた。
既に警戒体制を取れていた為、素早く前方に飛び出し一撃目を回避する。
すると、鮫のようなラプチャーは雄叫びを上げ、再び私に向かって突撃を開始した。
手に重さを感じて目線を逸らすと、自分の愛銃が握られていた。
「……」
やるしかない。これでレッドフードを救えるなら、再び仲間に会えるなら、私は何度だって死んでやる。
そう決心できた。
「エンカウンターッ!!」
出力を上げ、髪が赤く染まり、私はラプチャー目掛けて飛び出した。
───
【CASE5】
出力を上げ過ぎてオーバヒートを起こし、そのまま頭を噛み砕かれて死亡。
【CASE10】
一体目の鮫型ラプチャーを瀕死に追い込むが、援軍のラプチャーの存在に油断し、そのまま蜂の巣になり死亡。
【CASE39】
六割程度を維持出来るようになったが、長時間の運用は困難、鳥型により串刺しになり死亡。
【CASE54】
九体目の人型ラプチャーに初めて到達。しかし出力を上げきれず、四肢を切断されそのまま頭を潰されて死亡。
死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡死亡
────
───
──
【CASE183】
「お疲れ様です」
呼吸が荒いラピに声を掛ける。当然だが、体には一切の損傷無く。
「……簡単にはいかないわね」
「当然です。誰でも行けるならゴッデスなんて要らないですから」
行き詰まりと言って良いこの世界では、いくら死んでも無問題だが、この感覚を現実に当てはめられる訳がない。少しずつだが、ラピの技術も成長している。しかし成長において下手な死に癖を現実に持っていく事は好ましくない。
「行き詰まりすぎるのも問題ですので、そんな貴女に、少し助っ人を入れてあげましょう」
「……助っ人?」
「はい。少し目を瞑ってください」
私はラピの目を手で押さえ、自分自身の目も閉じ、指を一回鳴らした。
「うわっ!?」
すると、ドスンと何かが落ちてきた様な音と、聞き慣れた声が現れた。
「何だここ、あたしはさっき……は? ラピ?」
その声を聞いた途端、ラピは私の手を払いのけ、その声のする方へと振り向いた。
「レッド……フード」
「よお、ラピ……何というか、その、久しぶりだな」
二人は互いの顔を見るばかりで、一向に会話を始めない。
「何でそんな気まずい雰囲気になるのさ」
私が近づくと、レッドフードは私を少し遠くに引きずり耳打ちをした。
「……最後はカッコよく去るつもりだったのに。やっぱり生きたいですなんて、なんかこう……言いづらいだろ!?」
「そこ……こだわる所? 生きたいって思うなら素直に言えば良い。ラピだって、君が生きる事を望んでいるんだから」
「そう簡単に……だーもう!!」
珍しく頭を抱えるレッドフードにラピが近づく。
「レッドフード」
「ん?……どうした?」
「私は、貴女に私のボディを渡す気だった。貴女の方がきっと人類の為になる。私のボディを渡すだけで貴女が再び戦える様になれるなら、それでいいってそう思ってた」
ラピの言葉もレッドフードはジッと聞いていた。
「でも、あなたと別れた後、多くの仲間ができた。大切な人ができた」
「そうか、なら生きる事も悪くないって思えたか?」
「そうね。人類の事を考えるとこの考えはきっと受け入れられないでしょうけど」
ラピの言葉を聞き終えたレッドフードは、どこか憑き物が落ちた様だった。
「なら、あたしもだな。過去の存在の私が、この世に縋る事は出来ないって思ってた。だけど、仲間と再会して、お前と再会して、やっぱ死ぬのはまだ早いって思っちまった」
レッドフードは振り返り、私を一瞥した。
「ルナ、どうすればあたしとラピが現実に戻れるんだ?」
「ラピが君を継げる、その第一段階が終わるまで。まあ、これから出てくる敵を全て殲滅出来るまで」
「それ、ラピが一人でやらなきゃいけないのか?」
「初めはそうするつもりだった。けどラピの師匠である君と一緒に達成することも悪くないって思ったから、君を呼んだ」
「なら、あたしがいても問題ないってことだな」
「うん。暴れてきていいよ」
そう言うとレッドフードの手にはウルフスベインが握られていた。
「レッドフード……」
「てな訳で、あたしも手伝うからさ、ラピ。もうちょっと頑張れそうか?」
ポンとラピの肩にレッドフードは手を置いた。そしてそのままラピを通り過ぎていく。
「待っ──」
ラピが手を伸ばそうとした瞬間、既に目の前にはラプチャーが迫っていた。
「お出ましか」
レッドフードはラプチャーに向かって飛び上がり、さらにラプチャーを踏み台にして上空へと上昇する。
───
「ウルフスベイン、レディー!!」
引き金を弾き、火の玉の様にレッドフードは躍動した。
「ラピッ! 守りたいものができたんだろ!? なら、その為の力をあたしに見せてくれよ!」
「……ッ」
憧れを目の前にして、私は心の底からの敬意と自分への劣等感で一杯だった。
別格すぎる。やはり憧れは憧れだ。少しでも近づけたのではないかと考えていた過去の自分を恥じてしまう。
だが、この憧れを諦めてしまっては、私は何者にもなれなくなってしまいそうで、それが堪らなく恐ろしい。
「まだ不安ですか?」
背後からルミナスムーンの声が聞こえた。
「レッドフードにこだわる事は大切ですが、貴女自身の事を大切にしてきましたか? なりきることに一生懸命になり過ぎて、貴女自身を見失っては意味がないでしょう?」
レッドフードをジッと見据えた彼女は私の背中を押した。
「後は貴女次第だ。行ってきなさい、恩師に苦労をさせる気ですか?」
ルミナスムーンが指差した向こうでは、レッドフードが鳥を模したラプチャーに吹き飛ばされていた。
「……ッ!?」
その光景を目にした瞬間、体は嘘の様に飛び出した。
「レッドフードッ!!」
出力を一気に上げ、追撃を加えようとしていたラプチャーの鉤爪を掴み上げ、そのまま投げ飛ばした。
「……ハァ……ハァ」
「助かった。ようやく来てくれたか、ラピ」
地面に倒れながらそう呟くレッドフードに、私は我に帰った。
「ごめんなさい、私また……」
「気にすんなって。ラピ、殻は割れたか?」
「ええ、多分ね」
「締まんねぇな。まあ、弟子の成長をまだ見られるならそれはそれでアリか」
起き上がるレッドフードに、私は自然と手を差し出し、それにレッドフードは自然と答えてくれた。
『グギャアアア!!』
投げ飛ばしたラプチャーが雄叫びを上げ、再び上空へと飛翔し始めた。
「いくぞ、ラピ!」
「ええ!」
「エンカウンター!!」
声は共鳴し、私達は飛び出した。
───
「やっぱレッドフードの力は偉大だねぇ……」
ラピの連携も勿論だが、こうもコンビネーションが良いのかと、二人には驚かされる。一体、また一体と、余裕な表情で捌いていくレッドフードと、必死に食らいつきながらも確かな成果を残しているラピ。
あの二人には確かな師弟関係が築かれていると再認識させられる。
「これが九体目」
そして、ラピが最も苦戦を強いられてきた相手、人型のラプチャーが現れる。
「ラピ! コイツの特徴は!?」
「とにかく素早くて手数が多い相手よ。長期戦になったら向こうにアドバンテージがある」
「そうか、なら話は早いな」
先手必勝とばかりにレッドフードのウルフスベインが火を吹くが、それを躱すとラプチャーはレッドフード目掛けて刃を突き立てた。
「させない!!」
だが、レッドフードが危機に陥った時にラピは必ず最善の位置にいる。ミリタリアが放った弾丸が刃を弾き飛ばし、ラピはラプチャーの脚部に蹴りを入れた。
「サンキュー、ラピ!」
バランスを崩したラプチャーに対して、レッドフードは勝機とばかりに連射した。
レッドフードの猛撃を受けたラプチャーはそのまま倒れ込んだ。
「今だ! 決めろラピ!!」
レッドフードはラピを投げ飛ばし、ラプチャーの真上へと迫ると、そこからラピは銃を連射した。
「終わりよ」
そして、ラプチャーの身体に乗り自らの拳でコアを砕いた。
「……完璧」
アドリブの動きとしては、これ以上ないくらいの連携を二人は見せてくれた。これならば──
「どうだ、ルナ。あたしとラピの連携は」
レッドフードはラピを抱き寄せ、乱雑に頭を撫でた。ラピも満更でもなさそうだった。
「九体目も無事攻略しました。素晴らしい連携です。ですが」
「なんだよ、まだあんのか?」
「ええ、後一つ」
「なら、早くして。今が最高の状態なの」
まだあるのかよとレッドフードは呟くが、ラピは完全にスイッチが入っている様だった。
「言われなくても、敵はもういますよ」
私の言葉に二人はバッと辺りを見渡すが、そこには何もいない。
「おい、どこにもいねえ……まさかお前」
「そこまで驚くことかな? 粗方ラプチャーの形態は殆ど倒した。後、想定される敵と言えば……」
鯉口を切っている刀を抜刀し、ラピ達に向ける。
「これが最後です、ラピ。レッドフードと協力して、私を殺してください」
仮想現実のラプチャーは全てルナナスムーンの妄想です。
改変によるキャラクターの口調や本作の進行はどのような方向性にして欲しい?
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積極的に変えて
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原作っぽさを残しながらも変えてほしい
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あまり変えないで欲しい
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原作そのままで