LAST KINGDOM編は一時的に本編の章に表示しますが、エピソードが終わり次第、また一つの章としてまとめます。
「……終わらない」
クラウン王国のとある一室で、私は民としての業務に追われていた。
勿論分かっていた事だし、王国に滞在するとなったら、クラウン王国の技術士となっている自分に仕事が回ってくるのも、まあ理解できる。
「だとしても、全部丸投げっておかしいでしょ!?」
王国に着いた途端、私に命じられたのは王国の殆どの設備の点検だった。
流石に対ラプチャーの妨害兵器などの稼働は問題ないが、その他のインフラの整備にはだいぶ手がかかり、現在もとある箇所の修理の為にパーツを作成している所だ。
「相変わらずあの二人はどこかへ行ってるし、マリアンだって、手伝うのは難しいし……」
最近のマリアンはお菓子を作っているらしい。普段の料理もそうだが、マリアンの手際は随分と良くなった。前の様に
「はぁ……もうひと頑張りしますか」
そう言って、再び作業に集中しようと思った矢先、突如通信が鳴り響いた。
「……まさか」
勢いよく通信機を取り、起動した。
「はい。ルミナスムーンです」
『あっ、繋がったのだ!』
向こうからはチャイムの声が聞こえ、それと同時に何かを引きずるような音も聞こえる。
「どうしましたか?」
『王国の飾りにちょうど良さそうな置物を見つけたのだ。もうすぐ王国に着くから、運搬を手伝って欲しいのだ!』
「……私は今王国のインフラ整備をしている事をお忘れで? マリアンに手伝ってもらえばいいでしょう?」
『マリアンにキッチンを放置させる訳にはいかないのだ! 前に散々な目に遭ったのだ!』
一体何をやらかしたのか知らないが、聞かないことにしよう。
「ハァ……分かりました。入り口で待ってれば良いですか?」
『それで良いのだ。では、また後でなのだ』
そうして通信が切れると、私は天井を仰いだ。ある意味、普段の戦いより激務に思えたが、ようやく物語を進められると思い、私は作業着を脱ぎ、急いで門の前へと急行した。
「ルナ、お出かけですか?」
急ぐ中で、キッチンにいたマリアンが顔を出した。
「ええ、少し野暮用で。クッキーでも焼くつもりで?」
「はい! 料理の技術を磨いて、皆さんに喜んでもらえる物が作りたくって!」
どうやらマリアンにとって料理はマイブームらしい。趣味や生きがいを見つけられる。それは少なくとも今までなかった良い傾向だ。
「美味しい物を頼みますよ? すぐに戻りますから」
「はい、いってらっしゃい」
そう言葉を交わし、私は王国の入り口に向かって走った。
───
しばらくすると、クラウンとチャイム、そしてトロンベに引きずられているT.A.L.O.S.の姿があった。
「おかえりなさい。これまた随分と大きい物を見つけてきましたね」
「そうなのだ! これほど大きい置物を王国に飾れば、きっと王国の威厳も上がるのだ!」
チャイムは自信満々にそう言うが、どう見ても置物とは思えない武装の数々を積んでいるが、それについては触れないでおこう。
「クラウン。これを少し確認しても?」
「?ええ、構いませんわ。ただし壊す事だけはやめてくださいね?」
「……そんなことしませんから」
そう言って、仰向けに倒れたタロスの上に乗り、その中心をトントンと叩いてみる。
「もしもーし?」
しかし、反応がなく思わず首を傾げてしまう。
「チャイム。ルナは一体何をしているのでしょう?」
「きっと、技術士の癖であるかと。お嬢さまが気にする必要はございません!」
後ろで二人は何か呟いているが、私は色んな意味で焦っていた。もし、この中に人がいない。あるいはいても対応ができない状況だったら? そう思うと、様々な不安が巡ってくる。
「……仕方ない」
出来ればやるべき事ではないかもしれないが、今はこの不安を少しでも取り除いておきたかった。
私はバイザーを閉じ、殆ど趣味で作った機能を起動する。
「タロスのAIがこれをどう判断するかにもよるが……」
脳の引き出しを必死に開け、このロボットの操縦者の声色や、口調、トーンを必死に思い出し、自分が作成した声と照合する。
『「よし」』
ある程度マシな物が出来たと感じ、私はこのロボットを再び目覚めさせる。パスワードを呟いた。
『「ウェイクアップ、タロス」』
「再起動完了。こんにちは、キロ様」
タロスは私の声に反応し、起き上がった。
「な、なになに!? 何でタロスが再起動してるの!?」
そして内部から聞こえた声に一先ず安心した。
「る、ルナ!! 貴様、何をしたのだ!?そして今の声は誰なのだ!?」
「念の為、内部を確認しようとしたら、動き出したんですよ」
あくまで私がパスワードを言った事は内緒にする。
「な、何なのだこいつは!? も、ももももしかして、ラプチャーなのだ!?」
「え? ニケ? よ、良かったこれで──」
カチャっと音が隣から響いた。
「き、貴様!! 何故言葉を喋れているのだ!?」
「ええっ!? ま、待ってください!!」
チャイムが銃口を向けたので、慌てたような声を出す。
「ふむ……あなた、お話ができるのですか?」
「は、はい。というか、私はニケですよ?」
「とぼけるんじゃないのだ! 貴様の様なニケがどこにいるのだ!?」
「コックピットを開けてみればいいでしょう? 今出来ますか?」
「は、はい。タロス、コックピットオープン」
そう言うと、プシューッと煙を吹き、タロスの操縦席からキロが現れた。
「へ、ヘビーグラム部隊所属のキロといいます……みなさんは……?」
「貴様! 何故ニケがロボットの中から出てくるのだ!」
「こ、これは私が操縦しているロボットで、タロスといいます。地上でテスト中にトラブルがあって、救助を待っていたんですが……」
キロの説明を聞き終えると、クラウンとチャイムは一度目を合わせた。
「救助を? そうでしたか。では、私たちが救助したということになりますわね」
「はい?」
「おっしゃる通りでございます。私たちが引っ張って王国まで持って来たのですから。安全な王国まで連れてきて『救助』してやったということなのだ」
「えっと……はい?」
キロは明らかに困惑していた。しかし、無理もない。
「私たちの恩恵を受け、王国に足を踏み入れた以上……あなたは今日からこのクラウン王国の民ですわ」
「光栄に思うのだ。王国の民には簡単になれるものじゃないのだ」
「え、ええと……」
「まあ、悪い人達じゃないからさ、取り敢えず受けておいて損は無いと思いますよ?」
キロに近づき、こっそりと耳打ちをする。
「あの、もしかしてあなたも?」
「まあ……半強制的に民になった者です」
「そ、そうだったんですか……」
どこか哀れんだ目で見られている気がするが、きっと気のせいだ。
「先方は好意の意思表示をしているものと判断。協力関係を構築した方が生存に有利です」
「そこ、何を喋っているのだ? まさか気に入らないのだ?」
「へ? いや、その……よ、よろしくお願いします?」
こうして、クラウン王国に一人と一機が民として加わった。
───
チャイムとクラウンによる王国の説明が終わり、キロが明らかに疑いの目を向け始めた頃。
「主な仕事は、先住のルナから聞けばいいのだ」
「え……? 私?」
私の名前が上がった事に、思わず聞き返してしまう。
「ルナはこの王国の技術士なのだ。しっかりと指導してやるのだ」
「……」
久しぶりに王国に顔を出したからか知らないが、頼まれる仕事が尋常ではない。
「あの、少しタロスの様子を確認してきても良いですか?」
「タロス……貴様が乗ってきたロボットのことなのだ?」
「はい。そのロボットです。操縦席を確認してきますので、五分ほど失礼します」
そう言って、キロはタロスのコックピット内に入っていった。
「……」
私はコックピットが閉じたタロスに盗聴を仕掛ける。
「タロス。逃げよう。ここ、ヤバい宗教とかそういうのみたい」
「目的地をアークに設定しますか?」
「うーん。じゃあ、それでいいから」
「現在、アークまでの移動を行う動力がありません」
「ど、どれくらいあればアークまで行けるの?」
「フルチャージ状態であれば到達可能です。自称クラウン王国の王と秘書、そして民から供給された設備では八時間かかります」
「は、八時間か……なら、取り敢えずここから出よう」
「推奨されない行為です。地上は安全ではありません」
「じゃ、じゃああのヘンな……まあ、あの民の人にはちょっと同情するけど……あの人達と一緒にいなきゃいけないの? ここも安全そうじゃないけど……」
明らかにクラウン王国を信用していないが、キロは渋々タロスの提案に承諾し、タロスをスリープモードにして、コックピットから出てきた。
「用事は済みましたか?」
「は、はい」
「では、お前が乗ってきたロボットの事を話すのだ」
「ええと、タロスは──」
すると、誰かの腹の虫が鳴った。
「何なのだ、今の音は……」
「あっ、その……! 食事の時間を逃さない様に、通知を設定しておいたのですが……!」
キロは頬を赤く染め、ゴニョゴニョと呟いた。
「た、食べなくても大丈夫なので……!」
「なるほど、食事の時間ということですわね。ちょうどいいですわ。私たちもお食事にしましょう」
「お嬢さま、二時間前に召し上がったばかりでは……」
「た、民を飢えさせるわけにはいきませんわ」
もっともな事を言っている様に聞こえるが、自分が食べられる口実が欲しいだけであろう。
「今、マリアンがクッキーを焼いているそうです。軽食程度にはちょうど良いかと」
「何!? 貴様! 何故もっと早く言わないのだ!」
「聞かれてないですし」
「そうと分かればお嬢さま! 早速行きましょう! マリアンの腕も上がってきているので、きっと美味でございます!」
「ええ、期待していましょうか」
そう言って、早足でクラウンとチャイムは城へと戻っていった。
何から何までマイペースだ。
「あ、あの……」
どうすれば良いのか分からないのか、キロは私に声を掛けた。
「大丈夫です。詳しい事は後で私が教えてあげますから、今は一先ず心を落ち着かせていてください」
キロの肩に手を置き、敵意はない事を示す。
「さて、行きましょうか。マリアンの料理の腕は随分と上がりましたから、きっと気に入ると思いますよ?」
私はキロにそっと手を差し出した。
「あっ……は、はい。じゃあ、お願いします……?」
恐る恐るキロは私の手を取り、二人で城に向かった。
───
「みなさん、おかえりなさ──あら? 王国にお客様がいらっしゃるのは初めてですね。はじめまして、マリアンといいます」
「あ、はい、こんにちは。キロといいます。……おお」
キロはマリアンを見て、声を上げた。
「??」
「しょ、初対面ですみませんが……とても神秘的な方ですね」
「ふふ、そうですか。ありがとうございます。ちょうど焼けた所なんです」
「えっと、マリアンさんもクラウン王国の民なんですか?」
「はい。そうですよ」
「今はというべきでしょうか」
そんな意味深な言い方をするクラウン。
「さあ、もう並べてありますので、食べてみてください」
テーブルを見ると、色や形が取り揃えられたクッキーの山があった。
「……うぅ、初めの内から見てると、本当に進歩したのだ。もうあの時は思い出したくもないのだ……」
「……?何がですか?」
「知らなくていい事ですよ」
疑問に思っているキロを連れて、席に座らせる。
「じゃあ……いただきます」
「はい。どうぞ召し上がってください」
キロは恐る恐るクッキーを一枚手に取り、口に運んだ。
その様子を私は固唾を飲んで見守っていた。
「……! 美味しい」
「そうですか、良かったです!」
マリアンは嬉しそうに微笑み、キロも少し緊張が解けた様な気がした。
チャイムとクラウンも美味しそうに食べるので、私も一つ食べてみたいと思い、一枚を口に運んだ。
「ん〜おいし──」
絶賛の言葉が出る寸前、ある違和感が生じた。美味しい、確かに美味しいのだが、これは一体何の味だ?
妙な甲殻類の様な風味は一体どこから出てきているのだ?
「あの、マリアン?」
「はい、どうしましたか?」
他の者がクッキーに夢中になっている中で、私はマリアンとこっそり会話をする。
「このクッキー、美味しんですけど……何が入っているのですか?」
「クモです。この前見た目が苦手だとルナが言っていたので、細かく千切って、クッキーに混ぜ込んでみたんです」
「……あー」
そう思ってたら、途端に特有の苦味を感じる様になってきた。
聞かなきゃ良かった。
知らぬが仏だった。
未だクッキーを食べている向こうの三人を私はボーッと眺める事しかできなかった。
───
食事を終えた後、仕事を教えると言う名目で、私はルナさんの部屋に招かれた。
「うわぁ……!」
そこにあったのは、アークでもお目にかかれない様な機械の数々だった。
「そんなに見渡しても、あまり良い物はないと思いますよ?」
「あっ……ごめんなさい。その、色々ありすぎて……」
「?まあ、良いです。本題に入りましょうか」
ルナさんは椅子に座り、私も向かいの椅子に座った。
何と言うか、先程までとは違い妙な緊張感があった。
「まずは改めて自己紹介から。みんなからルナと呼ばれていますが、私の本名はルミナスムーンと言います。恐らく最近アークでも話題に上がった事でしょう」
その名前を聞いて、アークで起きたテロ事件が一瞬で頭の中に思い浮かんだ。
「地上から来たピルグリムの一人……」
「はい。その一人が私です」
私の中で一気に緊張感が生まれる。ピルグリムはアークを守る様な行動を取っていたが、アーク内において、ピルグリムは未知数な存在。それが今、自分の前にいる。
「怖がる必要はない……と言っても、その恐怖の対処がどうこう言っても説得力はありませんか……」
彼女が何かを考えている最中、タロスからの通信が入る。
「ピルグリム:ルミナスムーンは地上において、人道的な行動を取るという記録が残っています。現在、敵対関係になる可能性は低いです」
「……そう、なのかな?」
「あっ、今もしかしてタロスと話しています?」
思わずビクンと体を震わせてしまった。
「あはは、分かりやすいですね。別に大丈夫ですよ。多分、私の危険性でもチェックしていたんでしょ?」
しかも、会話の内容まで当てられてしまっていた。
「それで、結論は?」
「……危険性はないって、タロスは言っていました」
「そっか……アーク内でも多少の信頼を貰えている様で何よりですよ」
目の前の彼女は、確かに敵意はない様に見える。ただ、その全容が全く分からなくて、それがとても不気味に感じてしまった。
「実は貴女に一つ情報を与えたいと思いましてね」
「情報……?」
唐突に彼女はそう言った。
「先程いたマリアン。見覚えはありませんか?」
「……見覚え」
マリアンさんの顔を思い出すと、どこかぼんやりと点と点が結ばれる様な気がした。
「彼女はヘレティックです。しかもアークに指名手配されている」
「えっ? えっ?」
唐突に打ち上げれた事実に、理解が追いつかなかった。
「真実かどうか、タロスに聞いてみればいいんじゃないですか?」
そう提案され、タロスにその事を伝える。
「はい。呼称、マリアンと呼ばれているニケは、ヘレティック・モダニアの情報と一致します」
「……ッ!?」
本物。ヘレティックからニケに戻ったというあの……
「伝えたい事は全て伝えました。後は貴女の自由です」
「……え?」
「アークに戻って、その情報を持っていけばきっと大成果ですよ」
「な、何でこんな事を私に……! だって、私はアークのニケなんですよ!? どうして、ピルグリムであるあなたが……目的は何なんですか!?」
理解不能。目の前の彼女は一体何が目的なのだ?
その正体不明さが更に恐怖を掻き立ててくる。
「……目的か。うーむ……君にこの情報を伝えたかったからとしか言えないな」
「そ、それじゃああなたに利益が一つもないじゃないですか!?」
何もない訳がない。疑わずにはいられない。
「私は別にこの情報を与えたからと言って君に何か対価を請求することもない。君がただこの情報を知ったという事実。それだけでいい」
「??」
「もし君がアークへの帰還を望むならそれでもいい。ただもし、何かの弾みでこの場に残る事を望むのなら、また明日食堂で会いましょう」
そうして、されるがままに部屋を出て、私は廊下を歩いていた。
「アークへ、ヘレティック・モダニアの情報を送りますか?」
当然、タロスはこの提案をしてくる。
「この情報を伝えれば、私は……」
その時、奥から一人のニケが歩いてきた。
「……あ」
「あら? あなた一人だけですか? 誰かとお話ししている様に見えましたが……?」
それは、まさにヘレティック・モダニア。その人だった。
「な、何でもありません。ひ、独り言がクセみたいなもので……」
「そうなんですか。私もよく独り言を呟いちゃうんです」
「……そうなんですか」
「はい。大切な人を守りたい、助けてくれた人達を自分の手で守りたいって」
マリアンは何処か遠くを眺めていた。
「心に誓っているんです。私の大事な人達を傷つけたり、危ない目に遭わせたりするような人がいたら、どんな手を使ってでも見つけ出して、潰したいんです。失うなんて思いは、もうしたくありませんから」
「……」
「あら? どうかしましたか?」
「な、何でもありません! それじゃあこれで……」
「はい。おやすみなさい」
マリアンが去っていくと、無意識の内に深いため息をついていた。
「……タロス。報告の事、少し考えさせて」
「了解」
それから自分の部屋と案内された場所に辿り着くと、緊張が一気に抜けたのか、強い眠気に襲われ、私はベッドに倒れ込みそのまま眠りに落ちてしまった。
マリアンの代わりに主人公、キロに怖がられる。
改変によるキャラクターの口調や本作の進行はどのような方向性にして欲しい?
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積極的に変えて
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原作っぽさを残しながらも変えてほしい
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あまり変えないで欲しい
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原作そのままで