誤字報告、ありがとうございます
「おはようございます。ゆうべはよく眠れましたか?」
「あ、はい。まあ……よく眠れました」
長期間地上を彷徨い、更にあれ程の緊張を味わったのに、自分でも驚くくらいに深く眠ることができた。
「おはようございます、キロ。様子からして多少疲れは取れた様ですね」
ティーカップを持ち、コーヒーを啜るルナさんは、私にそう口にした。何事もない様に、淡々と。
「えっと、おかげさまで」
「朝食が出来上がっていますわ。あなたもどうぞ」
「あっ。はい、いただきます……」
一番手前の椅子に座り、出された料理を口に運ぶ。
「食事はお口に合いますか?」
「はい、とても。地上の食べ物は初めてでしたが、おいしいですね。素材が違うからでしょうか……」
「素材の違いだけではないのだ。私が料理したからなのだ。この! 私が! なのだ!」
「やはりチャイムの料理の腕は日々成長していますわね」
「身に余るお言葉でございます。お嬢様」
そうして、二人が会話をしている間にも、私はルナさんから視界を外せない。
「キロ。どうしました? さっきからずっと一つの方向を見ている様な気がして……」
いつの間にか隣に座っていたマリアンさんが、そう私に声を掛けてきた。
「へっ!? あぁいや、その……私、朝はちょっとボーッとしちゃう体質でして……」
「そうだったんですか。でしたら、無理に食べなくてもいいですよ?」
「い、いえ。食欲はありますので、大丈夫です!」
そうして、料理を口に入れていく。少しでも気を紛らわせる為に。
「チャイム、ルナ、マリアン。今日の予定はいかがですか?」
「私は特に何もありません。最近は風が強いので、落ち葉の掃除でもしようかなと思います。後は……またお菓子作りにチャレンジするのもいいかもしれませんね」
「私は引き続きインフラ修理の為の部品制作をします。朝食が終わったらすぐに」
ティーカップを置いたルナさんと一度目が合い、慌てて逸らす。
「私はキロに付いて、王国の外へ行こうと思っております。仕事を教える必要もございますので」
「えっ……?」
「昨日説明したのだ。王国の外に行って使えそうなものを集めるのだ」
「……」
今度は背後からの視線が外れない。他方向から見られている様な圧迫感を感じてしまう。
「む? どうしたのだ?」
「あっ、いやその……な、何でもないんです。本当に……」
誤魔化そうとするが、それはかえって悪手になっていく。
「……クラウン。王国の外について行ってあげられませんか?」
いきなり、マリアンさんがそんな事を呟いた。
「ええ。そうですわね……。民の初仕事を支えることも王の責務のうちでしょう。喜んで同行しますわ」
「おお! お嬢様に同行いただけとは! 光栄でございます!」
話は進み、結果的に三人での行動を取ることになった。
「では、留守をお願いしますわ」
「はい、待ってます」
「いってらっしゃい」
その言葉に、私は軽く会釈をする以外出来なかった。
「そうだ。マリアン、ちょっといいかな?」
「はい? 何でしょうか……?」
後ろで何か聞こえたが、最後まで聞くことは出来なかった。
───
「ふーむ……では、あのロボットは地上で長時間活動するために作られたのだ?」
「は、はい。チャージが必要ですが、動力源はニケと同規格のコアなので長持ちします。ナノコーティングがあるので簡単な自己修復も可能です。内臓されているAIがどんな状況でもサポートしてくれます」
「ふむ……だが、弾薬などは限りがあるのだ。地上で長期間過ごすのは難しいはずなのだ」
「ああ、はい。生産機能があるんです。3Dプリントの機能があって簡単なものは作れます。だから、タロスの弾薬は普通とは素材が違って……」
ここまで話すと、二人の視線がどこか熱いものになるのを感じた。
「あの……なぜそんなに見つめて……?」
「すばらしい才能なのだ」
「まさしく、王国が必要とする方ですわね」
「えっ? はい? 私がですか?」
いきなり褒められた事に困惑した。
「ところで、他のニケも乗れたりするのだ?」
「あっ……いいえ、操縦できるのは私だけです」
「むぅ~では、仕事を始めるのだ。このあたりを歩いて、使えそうな物を何でも拾ってくるのだ」
「使えそうなものって、どうやって判断するんですか?」
ただ闇雲に拾ってはただのゴミ拾いになってしまう。
「バッテリーが最優先なのだ。その次は電子機器なのだ。あとは金属、木材なのだ」
「……何に使うんですか?」
「まあ、色々なのだ。ルナ達が多少の資材を持って来てくれると言えども、バッテリーや電子機器はいくらあっても足りないし、後はルナが今やっている様に、王国の補修に使うのだ」
「……補修?」
「王国は元々観光地として使われていた人工の島なのだ。古い建物だから、修復が必要な場所だらけなのだ」
「うーん……とりあえず分かりました」
ならばやる事は一つ、としていた所、二人は歩き出した。
「あの……まさかいちいち探して、手作業で回収するつもりですか?」
「む、当然なのだ」
「欲しいものを手に入れる為には、労働が必要になりますもの。運が良ければ、両手いっぱいに収穫を持ち帰れることもありますわ」
確かにその通りだが、それではあまりに効率が悪すぎるし、危険も大きすぎる。
「ちょ、ちょっと待っててください!」
二人を呼び止め、私はタロスに指示する。
「タロス。オブジェクトスキャン。半径2km、バッテリーと電子機器を全部チェック。機能の50%以上が生きているもので」
「了解しました……スキャン完了。42個のオブジェクトが検知されました」
タロスが対象物を発見した事を確認する。
「よし、じゃあ移動」
「?? 何をしているのだ?」
「ここで、少し待っててもらえますか?すぐ戻ってきます」
「なにっ!?それでは危ないのだ……!?」
「すぐ戻ってきますから!」
しばらくして、タロスの両手と背中にバッテリーと電子機器を満載して帰ってきた。
「!!」
「なっ!まさか!」
「タロスのスキャンで見つけました。最低限の性能なので大したものじゃないですが……」
「素晴らしいですわ」
「お嬢さま!これだけあれば1週間は出かけなくても大丈夫そうです!」
「ふふ、そうですわね。少し暇にできそうなほどですわ。お疲れさまでした、キロ」
一瞬、まるで自分が褒められた様な高揚感を得た。
けれど──
「あ……はい」
しかし、その高揚感はすぐに冷え込んだ。
───
「あっ、おかえりなさい」
王国に帰ると、作業着に着替え、油まみれになったルナさんが出迎えてくれた。
「貴様ッ! その汚れた格好で、決して城の中を歩き回るじゃないのだ!」
「分かってますって。今、そこのメンテナンス中ですから」
見ると、そこには巨大なアンテナやエンジンの様な多種多様な機械が詰め込まれていた。
「この機械って全部……」
「ルナが作ったのだ。ただ、この機械はルナしか触れないくせに、殆ど王国に帰ってこないから、ここ最近整備が行き届いていなかったのだ!」
「……あなた達のために、手順書作ったでしょう? それを見れば、メンテナンスぐらいは出来たはずです」
「お前の作った手順書は専門用語が多すぎて分からないのだ!」
「これでも最低限知っておかないといけない単語に絞ったんですけど!?」
そうして、置いてあった手順書をペラペラとめくっていると、確かに専門用語はあるが、それでも理解出来ない程ではないと感じた。
「あ、あの!」
そして、つい声を上げてしまった。
「私、もしかしたら出来るかもしれません」
「本当なのだ!?」
チャイムは嬉しそうに近づいてきた。
「ちょ、ちょっとした見た目じゃないので、そんな完璧には……」
「何日かけても理解出来なかった手順書を、お前はすぐに理解出来ているのだ!」
「やはり、あなたを王国に招いて良かったですわ」
タロスを操作している以上、いくらタロスが自己修復など万全な装備をしていたって、やはりこうした技術は必修科目になっている。それが、こうもありがたられる日が来るとは思ってもいなかった。
「それじゃあ、少し手伝って貰ってもよろしいでしょうか?」
「は、はい」
そうして、流れる様にルナさんの隣で手順書を見ながら、その仕組みを覚えていく。
「あっ、ここチューブを交換した方がいいんじゃないでしょうか……?」
「ん? おお、そうですね。ありがとうございます」
部品を渡し、時には少し組み立てを手伝い、気がつけば、随分長い間ふたりで作業を続けていた。
「キロは覚えが早くて助かりますよ。次壊れた時は、貴女に任せるのもいいかもしれませんね」
「えっ? 私なんかが……」
「大丈夫。第一タロスなんて複雑な機構を動かせる程の才能があるんですから、自信を持った方がいい」
そうして、頭をポンと撫でられた。
「……ッ!?」
「あっ、ごめんなさい。油まみれで嫌でしたよね」
ルナさんは私に謝り、今日は終わりにしようと言ってきた。その時も得体の知れない浮遊感が消える事はなかった。
───
その後もキロとタロスは、王国の修繕などの業務をこなし、確実に成果を上げていた。
「いや〜本当に驚きました! キロは大変素晴らしい人材でございます」
「タロスも素敵ですわね。特に、滑らかな胸部が気に入りました」
夕食時、クラウンとチャイムはキロとタロスを絶賛していた。
「……」
その様子をキロはどこか遠い目をしながら見ていた。
「不服ですか?」
「えっ……」
「その評価は決して自分に向けられた物じゃない。評価を向けられるのはいつも相方の方。そんな事を考えているんじゃないですか?」
「……何を言っているんですか」
そう言うが、顔を逸らし、目は明らかに動揺が浮かぶ。
「城の補強も、防衛システムも、全部やったのは自分ではない。その劣等感が日に日に増していくんですよね?」
そうやって囁けば、キロの顔は途端に顔色が悪くなり、俯いていた。
「ん? どうしたのだ?」
「別に、大した事じゃありません。少し疲れが出てしまった様で。少し寝室まで付き合ってきます」
「むっ、そうなのだ? なら、早く休むといいのだ」
「はい。では失礼しますね」
そうしてキロに肩を貸すと、人形の様に簡単に動かせた。
「ルナ」
そうして、キロと共に部屋から出る瞬間、クラウンに呼び止められた。
「症状は、本当に疲労のみですか?」
「……」
時計の秒針が一度動く程度の静寂の中、私はクラウンに微笑み返した。
「ええ、疲労のみです。色々と疲れてしまった様で」
私の返答に、果たしてクラウンは何を思ったのかは知らないが、やがて。
「分かりました。では、キロ。おやすみなさい」
「……はい」
チャイム、クラウン、そしてマリアンの全員に向かって頭を下げ、私は部屋を出た。
「さて」
静まり返り、暗闇が広がっている廊下でキロはまだ人形の様に力が入らない様子だ。
「私の部屋に行きましょうか。その方が色々と話しやすくて、丁度いい」
無言で首が縦に振られた事を確認すると、私はキロを支え、廊下を後にした。
荒療治と洒落込もう。
腹黒い主人公。
改変によるキャラクターの口調や本作の進行はどのような方向性にして欲しい?
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積極的に変えて
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原作っぽさを残しながらも変えてほしい
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あまり変えないで欲しい
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原作そのままで