バ先のカフェの店長が多分異世界帰り   作:日常系ファンタジー

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「桂馬くん、また明日も来てくれるよね?」「当たり前じゃないですか」

 

 私は神だ。だが、私は剣でもある。

 

「このままでは彼は……今宮桂馬は死ぬぞ?」

「なにソルドラ、君から話しかけてくるなんて珍しいね」

「お前はどこまでいっても勇者だ。その運命だけは変えることはできない。自分でもわかっているはずだ」

「その運命を仕掛けた側の君がそれを言うの? しかも私に負けて今は私の鞘に収まっている分際で?」

「それは世界を修正した後の話だ。実際に勇者(おまえ)は私の世界の魔王(いじょう)を消しただろう」

 

 彼女――秋元千和と私が出会ったのは十二年前。

 私が神として彼女を異世界に召喚した。

 

 私は神であるが故に、私はこの世界のことを人間よりもずっと高次元で理解している。

 

「お前がこの世界にいる以上、この世界の神もお前を使わざるを得ないだろう。この世界の神の定めた基本構造(うんめい)は『異能の排除』。お前はその修正力(ゆうしゃ)としての因果を持っている」

 

 だから秋元千和(ゆうしゃ)は、運命的に異能を集束させる方向に動く。

 

「だから店に結界を張ってるんじゃん。呪剣(シルヴィ)の力を組み込んだ運命の介在すら弾く結界を」

「故に、この世界の神は今宮桂馬を使うことにしたのだろう。直接的にお前を巻き込むのではなく、今宮桂馬を先に巻き込み、芋づる式に勇者を巻き込むことで異能を排除する」

「だから、その桂馬くんにも運命を含めたあらゆる異能を弾く結界を張ってるよ」

「故に、その近しい人間を使っているのだ」

「そんな証拠どこにあるって言うの……」

「今宮桂馬は友人からの誘いで墓地に向かった。あんな令嬢が一般の高校に通っている時点で不自然だ。悪魔召喚を実行したのは彼の友人だ」

「……でも、桃花ちゃんの事件は異能なんて関係してなかったでしょ」

「本気で言っているのか? あの娘は潜在的に異能者の素質を持っている。お前も気が付いているはずだ。そもそもこの国は、なんの力も使わずあんな往来で狙撃殺人など起こせる国か?」

「……それは」

 

 私の目的は秋元千和が私の世界の魔王を打倒した時点で達成されている。

 私があの世界から消えたとしても後任の神が生まれるだけで、世界の運営に問題はない。

 

 こちらの世界での私の存在など最早蛇足なのだ。

 

 だから……だからこそ……

 

「私はお前のために言っている。今宮桂馬と縁を切れ。彼には彼の人生がある。彼と関わるすべての人間にお前が生涯に渡る結界を張るなど不可能だ。お前が今宮桂馬と関わりを持つ限り、彼の周りには異能が溢れることになる」

「嫌だよ……」

「何故だ……? 何故あんななんの特別も持たない少年に固執する?」

「なんにも特別じゃないからだよ。なんにも特別じゃない彼が一緒にいてくれることが、私は幸せなんだ」

「理解できんな。だったら今宮桂馬をこの店に監禁でもしろ」

「勇者に仕立てた側の君にはわからなくて当然だよ。仕立てられた側の気持ちなんて……」

「そうか……では、お前のせいで今宮桂馬は死ぬだろうな」

「させないよ。桂馬くんは私が必ず守りぬくし、桂馬くんには絶対に異能のことはバレないようにする」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 だからッ、なんでッ、そんな話を俺がいる時間帯にわざわざするんですかね!?

 バックヤードで休んでるって言ったって俺がいつ帰ってくるかわからないでしょうが。

 

 あの神剣とかいうのもアホなのかな。

 アホなんだろうな。神様なんだもんね。そりゃ人間の常識なんて知らなくて当然だよな。

 

 気が付かない振りをするこっちの身にもなって欲しいものだ。

 

「店長ー、俺そろそろ上がりますね」

「あぁ、お疲れさま桂馬くん。また明日……も来てくれるよね?」

「当たり前じゃないですか」

 

 それに、俺の方もバイトを辞める気はない。

 理由なんて決まってる。

 

 神様も悪魔も異能も、その絶対的な理由には勝てはしない。

 

 

 

 この店は、時給が1800円だから。

 

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