マブラヴ世界でメカゴジラの中枢AIとか、どないせいっちゅうねん! 作:八雲ネム
「 なんで、この空間が」
カプセルに入った後、人間体にもシステム更新を対応させる為に意識を落としたのだが、気が付くとまるでデジモンに登場する狭間空間の様な赤いカーペットを始めとする高級な内装や調度品が置かれた建物の内部に立っていた為、軽く混乱した。
何しろ、メカゴジラ自体はビルサルドの協力があったとは言っても海と深い繋がりがあるアトランティス文明が作ったものなので、精神世界に入るならベネチアの様な水の都をイメージしていたからだ。
予想を裏切られた事で少しの間、混乱していたのも相まってその場から動けなかったものの、冷静になるにつれて周囲を徘徊して建物内部は本当にデジモンの狭間空間を再現している様子だった。
もっとも、人がいない事やガラス張りの出入り口が真っ暗になっている事、そしてVIPルームに繋がっていると思われる扉以外は開閉ができない事を除けば忠実に再現できている。
その為、深く息を吐いてから覚悟を決めてVIPルームへ繋がる扉を開くとデジモンのキャラクターとは違ったものの予想通り、3人の女性が座っていた。
「初めまして、と言った所でしょうか?」
「そうでもないわ。寧ろ、メカゴジラを通して貴方の事を知ったわ。◼️◼️◼️◼️」
「また、懐かしい名前ですなぁ。この世界でその名前で呼ばれるとは思ってもいませんでしたよ」
「貴方もメカゴジラ、こちらもメカゴジラでは混乱するでしょう?」
「そりゃそうだ」
3人の女性の内、真ん中に座っている女性に声を掛けると当たりだった様なのだが、前世の名前で呼ばれた事に驚いてやや砕けた言い方になってしまった。
「本来ならあり得ないぐらいの確率だったのだけれど、巻き込んでしまって申し訳ないわ」
「構いません。寧ろ、ボーナスステージだと思っているんで特に気にしていません」
「ボーナスステージ?」
「えぇ。元の世界では、うだつの上がらない社会的には下の上から中の下辺りの人間だった自分が、奇跡的な確率で世界を変える様な出来事の中心にいるんです。苦労は死ぬ程するんでしょうが、不満はありませんよ」
「そう」
ここで整理しておきたいのだが、マブラヴ世界に入り込んだメカゴジラは無数にあるゴジラ世界の1つであって、それはゴジラ・アースを取り込んだ後の今でも変わらない。
対する人間体のメカゴジラ つまりは俺の事なんだが の人格形成は、外側から見ればうまく行った様に見えるものの実際には別世界で偶然にも事故死した魂が、転生先を探して漂っていた所にゴジラ世界がマブラヴ世界に流入する際に起きる大きな流れに巻き込まれてしまった。
その結果、ゴジラ世界と共にマブラヴ世界に紛れ込んだ後でメカゴジラの人間体を作った際に出来た人格形成用のプログラムと言う器に入り込む事に成功し、上手く定着させたと言う奇跡と言っても過言ではないレベルの確率が発生していた。
勿論、魂を実際に観測する技術はエクシフ辺りにでも頼まないと無理な技術なので、対外的にはメカゴジラが上手くプログラムを組んだ結果と言う事になっている。
そう言った意味で、前世で使われていた本名を使われた事に驚いたものの人間のスケールでは測りきれない地球意思的存在、と思われる真ん中の席に座った女性が俺の言葉を聞いて瞳を閉じてから再び開いて俺を真っ直ぐ見てこう言った。
「なら、そんな貴方に2人を任せても大丈夫そうね。2人はどう思う?」
「えっ?」
「大丈夫。上手く使ってくれたしね」
「私の邪魔をしてくれたんだから、その責任は取ってもらわなきゃねぇ」
「え"っ!?」
2人を任せるって言うとメカゴジラとゴジラ・アースだよな、と思っていると彼女の両脇に座っていた2人の女性も肯定的な反応を示してきたので困惑の声を上げるしかなかった。
何しろ、中央の椅子に座る金髪ツインテ少女が任せると言った2人は色白で水色の頭髪に赤眼のラバースーツ少女と緑髪碧眼のゴスロリ少女、と言う事情を知らない人が見たら速攻で通報案件になる見た目だからだ。
「安心して良いわ。2人は単なる人型インターフェイスだから現実世界に出すかどうかの判断を貴方に委ねるわ」
「出したら出したで色々、面倒になるんで出来れば引っ込んで貰いたいんですがねぇ」
「そう。私達の事が嫌いなんだね」
「ボロボロな状態で襲っておいてそんな事を言うんだ。逆に襲っちゃおうかしらぁ?」
「言い方ぁ!」
その為、任せられても困ると暗に伝えるとラバースーツ少女の方がしょぼくれる一方で、ゴスロリ少女の方はニヤニヤと笑みを浮かべながら揶揄ってきた為、反射的に反応してしまったので言った後で失礼だったかなと思って金髪ツインテ少女の反応を伺うとクスクスと笑みを浮かべていた。
「私達が求めているのはそう言った忌憚のない意見や反応だからね。怪獣だなんだと言って神格化したり、過度に恐れたりしない程度のね」
「単純に個人の力ではどうしようもないって要素が大きいですけどねぇ」
「一応、馴染みやすい様に貴方がしていたゲームの中で世界観が最も近いゲーム内の空間を用意したのだけれど?」
「そう言った配慮も含めて、ですな。前世では、会社的にどうだとか言われても個人の生活まで侵食される事はありませんでした。ですが、今の状況を体験してみると平気で踏み潰せる程度の格差を見せ付けられている形ですからねぇ」
前世では、個人的な気質からうだつが上がらなかったとは言っても決して人に認められる様な生き方はしてこなかったものの、不満が少ない生き方を選んだ結果だった上にその気質は今でも変わってはいないと思っている。
変わった点は、奇跡的な確率を2連続で引き当てた結果として一個人としては重大すぎる責任を背負う立場であり、本音を言ってしまえば逃げ出したい所ではある。
ただ、その一方でうだつが上がらなかった俺が偶然の産物だったとは言ってもメカゴジラの一部になり、人類史に名前を残す様な活躍ができる喜びもあると言う何とも複雑な気持ちが渦巻いている状態だ。
人間の心情ってホント、複雑で面倒って思った俺の考えを読んだのか、金髪ツインテ少女がある提案をして来た。
「貴方の言い分も分かったわ。そう言うと思って他のゴジラ、貴方の世界で言うモンバス版ゴジラやモスラにも話は付けて置いたわ」
「疑う訳じゃないんですが、大丈夫なんですか?」
「最初は戦う羽目になるから注意した方が良い」
「ありがとうございます。かなり助かります」
彼女の言葉でかなりホッとした。
何しろ、モンバスゴジラはオキシジェンデストロイヤーや極低温に耐えた挙句にバーニング化してモンバスギドラを倒している為、彼と覇権を争って殺し合う場合はこちらの損害もかなり出ると覚悟する必要があったからだ。
殺し合いにならず、怪獣プロレスに収まるのなら向こうが納得する形に持っていければ、少なくとも敵対関係にならずに済むのでそれだけでかなり助かる。
「それじゃあ、地球をよろしくね?」
「途中で降りたくなったら、その時は魂と共に徹底的に破壊してあげるわぁ」
「人間体の調整、お願い」
「うっす」
その為、恐怖心はあるが最後までやってやろうじゃねぇかと決意を新たにすると、話が終わった様子なので彼女達からのエールを受け取ると意識が浮上する感覚を感じ取った。