マブラヴ世界でメカゴジラの中枢AIとか、どないせいっちゅうねん! 作:八雲ネム
「お着きになりました」
貧富の差があり、派閥や特定のメンバーで集まるコミュニティが発生する以上、富裕層向けの会館や高級会員制クラブと言うのはどうしても必要となるので、知る人ぞ知る会場は日本だけでも東京を中心にある。
桐生 大地が人間だった世界でも、そう言った閉鎖的で極少数の人しか入れないコミュニティがあったからには武家が存続し、太平洋戦争でも壊滅的な敗北を味わっていない世界ではより多くのコミュニティが存在し、東京では政財界における重鎮の人達が集まり、京都では斯衛に近い武家の人達が集まる慣習がある。
もっとも、今回の場合はそう言った慣習の他にも派閥やコミュニティのトップの人達がそれぞれの壁を越えて集まっているのだが、そうするにも理由があって部屋の扉を開け閉めする係の人が件の客が来た事をその場に居た人達に報告した。
その報告を受け、その場に居た全員が立ち上がって客を出迎える準備を整えると係の人が扉を開き、その客を迎え入れた。
「………」
その客の服装を見て、その場に居た何人かが感心したかの様に息を吐いた。
何しろ、客は人の形をした異星起源の技術の結晶でありながら和服でも洋服でもない服装、アトランティス文明で使われていたと思われる服装の中でも格式が高そうな服装だったからだ。*1
水と共に生きた文明である以上、布面積が少なくて露出が高いと思われていたが彼が着込んでいた服装は胸元が鳩尾辺りまで開いている一方、チュニックと呼ばれる長袖に脛まである丈の長い上着を着て、腰の辺りをベルトで締める形だった。
その上にコートを着ている為、何も知らなければ仮装大会の一部だと勘違いしてもおかしくないが、それを着こなしているのがメカゴジラとゴジラ・アースの要素を持ち合わせている張本人、桐生 大地ともなれば話が変わってくる。
その場に居る全員がゴジラ・アースを倒し、反乱軍と呼ばれる部隊を退けた実績から軽い緊張に包まれる中で、静かに入ってきた桐生に皇帝陛下が自ら発言した。
「ようこそ、おいで下さった」
「此度は、メカゴジラシティの代表として伺いました。桐生 大地と申します」
その発言に対して、彼がハッキリとした口調で返答をしてから一礼をしたので、その場に居合わせた人の中にはその時が歴史の転換点であり、後の暦となる宇宙歴1年だと主張する人が出る事になる。
桐生 大地 side
(驚いたな。名代が来ると思っていたが皇帝陛下に政夷大将軍、両者共に本人がこの場に来るか。素人目からすればテロをするには充分過ぎる程に絶好の機会。だが、先の戦闘で少数の兵を動かしても意味がないと分かっているはずだが、果たしてどうなる事やら)
会談に指定された部屋に入ると、老人と言って良いぐらいには歳を取っていながらも背筋がしっかりと伸び、日々の鍛錬を欠かしてはいないと思われる体躯をしている人物と、紫色の長髪を蓄えた年若い少女が待っていたのでそんな風に思ってしまった。
もっとも、ゴジラ・アースを討伐して取り込み、自分の物にした為に世界を丸ごと破壊できるだけの力を得た俺らに対して、そう簡単に失礼な態度を取れないのは彼らの方が熟知しているだろう。
逆にしがない民間人、しかも社会的には外れ値に値する記憶を持っている俺からすれば、メカゴジラ達の力があったとしても天皇と現役の首相を同時に相手にするかの様な緊張感があったので、自律神経などの活動を抑制して過度な緊張状態にならない様にした。
これに関しては、人間だった頃の感覚を忘れたくないと思って調整したのだが下手に人間の体に近づけ過ぎたな、と反省するのと同時に服装選びにも気を遣った。
何しろ、ゴジラ・アースはゴスロリでメカゴジラがプラグスーツ、俺が民間人としてラフな格好と言う格式高い会談に出るには不釣り合いな服装だった為、アースのゴスロリはヴィクトリア朝における欧州の社交界に出る様な服装に調整する一方で、メカゴジラはビルサルドの服装に着替えさせた。
プラグスーツ自体は、戦闘服と言う点において衛士強化装備と同じレベルで問題ないのだが、体の線が顕になる服装なので今回の様な会談の場では不釣り合いな事から、今回の会場に来る前に着替えさせた。
その為、白を基調としたシンプルながら合理的な服装を着させる事で会談に出ても変な文句を言われない様にした一方で案の定、当の本人からは不満たらたらだった。
なんでも、プラグスーツや衛士強化装備は俺の好みに合わせて着たのにと言う言い分だったので、俺も俺でかなり頼み込んで着替えさせる事にしたのだがその代わり、一日中俺に引っ付く権利をもぎ取っていった。
本来なら、もっと他の条件を提示しようとしたのだがゴジラ・アースの揶揄い半分のアイディアを出した瞬間、メカゴジラが食い付いてそれ以外では受け付けないとテコでも動かない姿勢を示した為、根負けして俺が折れる事にした。
これ以上、話を長引かせて条件が悪くなるよりかはマシかと言う妥協と、1日ぐらいなら抱っこちゃん並に引っ付かれても問題ないかと言う判断からだ。
そして、俺の服装は元日本人として
幸いにも比較的、マイナーなゲームであるもののセブンスドラゴンと言うゲームにアトランティス文明が登場し、バリエーションは少ない物の海と共に生きた文明に相応しい服装をしていた。
俺らを作った方のアトランティス文明において、彼らが着ていた服はゲームの方のアトランティス文明で着ていた服装に近かった事から、見知った服装があるのはありがたいと思って今は亡き、文明の代表者として恥ずかしくない服装で今回の階段に臨んだ。
「此度の会談において、まずは我が軍の一部が貴殿に迷惑を掛けた事を国を率いる身としてお詫びを申し上げる」
「その謝罪、確かに受け取りました」
「その上で貴殿は我が国との協定を結ぶと伺っているが誠か?」
「えぇ、本当です。今回の騒動は、双方の無理解が引き起こした事だと考えていますので提案させて頂きました」
会談に参加したメンバーの全員が着席した後、口火を切ったのは上座に座る皇帝陛下であり、反乱軍が引き起こした先の騒動に関する謝罪をしたのでその謝罪を受け取ると、今回の会談の主題について切り出したので肯定した。
腐っても国の代表が頭を下げる、と言う事はかなり重大な事なので下手に謙遜せずに受け取るのが吉と言うのが関係者の発言なので、その言葉に従ったのだが会談に於ける内容はほぼ決まっていると言っても過言ではない。
何しろ、協定自体の話はゴジラ・アースを撃破した直後から実務者レベルで始まっていて、今回の会談は基本方針はこの内容で良いですよね?と言う確認を行うのが目的だったからだ。
もっとも、反乱軍の暴発によってその首謀者達の判決やら何やらは行われていないし、集計すらまだ終わっていない状態なのでそちらの合意書は先の話になる為、まずは基本的な項目の確認から行われた。
次回投稿の第31話で第1章として一区切りさせ、その次の投稿で第1章の設定集を出し、第32話から第2章にしようと考えています。