孫悟空でボスラッシュ! ――希望のなき世界に、希望になり得るか――   作:Henon

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第8話

 

輸送ヘリの機内は、狭く、騒がしかった。

 

ローターの振動が床から足裏へ伝わり、機体の壁が絶えず低く唸っている。

 

窓の外には、煙に濁った街の空が広がっていた。遠くの市街地では黒煙がいくつも立ち上り、夕暮れの光を灰色に染めている。

 

少女は座席に腰を下ろしたまま、膝の上に置いた二本の刀を見つめていた。

 

訓練場で振っていた木刀とは違う。それは鞘に収まっていても、その重さははっきりと分かった。

 

抜けば斬れ、深く入れば容易く命を奪える。怪人相手に持つ時とは、同じ刃でも意味が違った。

 

これまでの相手は、基本的に人ではなかった。

 

姿形が人に近くても、すでに人としての理屈が通じないもの。街を破壊し、人を襲い、止めなければさらに被害を広げるもの。

 

そういう相手なら、斬ることに迷いはない。

 

だが、今回は違う。

 

報告では、敵は武装した人間の集団だという。

 

銃を持ち、装甲車を動かし、戦車を進め、都市へ侵攻している。

断じて許される行為ではない。

 

止めなければならない…だが、それでも相手は人間なのだ。

 

彼らにも彼らなりの事情があるのかもしれない…

 

そう考えた瞬間、膝の上の刀がひどく冷たく感じられた。

少女の指が、鞘の上でわずかに動く。

 

隣に座る覆面の男は、その小さな動きを見逃さなかった。

 

彼はいつものように気の抜けた姿勢で座っていた。片目だけで窓の外を見ているように見える。

 

「緊張してる?」

 

何気ない声だった。

 

少女はすぐに否定しようとした。

 

「いえ……」

 

しかし、言葉はそこで止まってしまう。

窓の外に見える黒煙が、嘘を許してくれなかったのだ。

 

「……いえ。そうですね」

 

少女は小さく息を吐いた。

 

「緊張しています。初めてですから…人を相手にするのは」

 

機内の振動が、短い沈黙を埋めた。

 

「怪人なら、まだ分かります。止めなければ誰かが死ぬ。そういう相手なら、迷っている暇はありません。でも、今回は……」

 

少女は膝の上の刀を見下ろした。

 

「銃を向けてくる相手でも…人です。斬った瞬間に、取り返しがつかなくなる気がして…」

 

男は茶化さなかった。

 

普段なら軽く流すところだったかもしれない。けれど今の少女に必要なのは、雑な励ましではない。

 

「大丈夫」

 

男は静かに言った。

 

「俺も君も、殺さずに制圧できる」

 

「そう、でしょうか……」

 

「できるよ。君なら。」

 

少女は顔を上げた。

 

「…簡単に言いますね」

 

男は肩をすくめる。

 

「ま、訓練を思い出しなよ」

 

「……見ていなかったくせに」

 

「ええ…」

 

少女の表情が、ほんの少しだけ緩んだ。

 

緊張が消えたわけではない。人を相手にする怖さも、刀を抜く重さも残っている。

 

それでも、指先にこもっていた力はわずかに抜けた。

 

ーーその時、機体が大きく揺れた。

 

男の目が動く。

少女も即座に顔を上げた。

 

機内の通信機から、切迫した声が飛び込んでくる。

 

『接近警報!2時の方向、上空から高速接近中!』

 

直後、別の乗員が叫んだ。

 

『やばいッ!戦闘機だッ!』

 

窓の外を、黒い影が横切った。

 

雲の下を裂くような機影だった。翼下には兵装が見える。市街地上空を旋回していた敵機の一つが、こちらを捉えたのだ。

 

『回避する!掴まれ!』

 

機体が急旋回する。

 

少女の身体が横へ振られ、膝の上の刀が座席に当たって硬い音を立てた。男は片手で機内のグリップを掴みながら、窓の外を見た。

 

敵機がこちらへ機首を向けてくる。

 

 距離が詰まる。

 

 翼の下から、白い煙が伸びた。

 

『ミサイル発射!』

 

 パイロットの叫びと同時に、少女が立ち上がりかけた。

 

「私が――」

 

「待った」

 

男が片手で制した。

 

彼は機内のドアへ向い、ドアを開けた

風圧で機内が軋む。

 

外は地上まではまだ高さがある。普通なら、開けるなど正気の行動ではない。

 

だが、男は躊躇しなかった。

 

「…」

 

男の手が素早く動いた。

 

揺れる機内など最初からないもののように、指が迷いなく形を作っていく。

 

少女はその横顔を見た。いつも気だるげで、どこか人を食ったような男の目が、その瞬間だけ鋭く細められていた。

 

白煙を引いたミサイルが、視界の中で急速に大きくなる。

 

男は開いたドアの縁に片足をかけ、吹き込む風の中で身体を固定した。

 

そしてーー

 

「風遁――大突破ッ!」

 

次の瞬間、ヘリの横で空気が爆ぜた。

 

それは風というより、見えない防壁だ。圧縮された空気の塊が真正面へ叩きつけられ、迫っていたミサイルの軌道を横から強引に押し曲げる。

 

白煙の尾が大きく歪んだ。

 

ミサイルはヘリの胴体を掠める寸前で外れ、後方の空へ流されていく。数拍遅れて、遠くで爆発が起きた。

 

衝撃波が機体を揺らす。

少女は座席の手すりを掴み、踏み止まった。

 

「……今のは!」

 

「風で押しただけだよ」

 

男は何でもないように言った。

 

ただの風ではない。

 

空を裂いて飛んでくるミサイルの進路を、真正面から力任せに逸らすほどの風圧。ほんの少し角度を誤れば、ヘリを巻き込みかねない危険な技だった。

 

それを、この男は機内の揺れの中で当然のようにやってのけたのだ。

 

 パイロットの声が通信越しに飛ぶ。

 

『な、何をした!?』

 

「説明は後!」

 

男は短く返した。

だが、敵機はすぐに旋回してきた。

 

外れたミサイルを確認する間もなく、再びこちらへ機首を向ける。今度は高度を下げ、機銃の火線をこちらへ向けてきた。

 

機体の外装を弾丸が掠め、金属を叩く嫌な音が連続して響く。

 

少女の目が鋭くなった。

 

「今度は、私がやります!」

 

二本の刀を掴む。

 

今この瞬間に斬るべきものは、人ではない。

 

飛来する弾丸。

機体を裂こうとする火線。

 

それだけだ。

 

少女はドア際へ踏み込んだ。

 

「…無理しないでね」

 

「訓練を思い出せ、と言ったのはあなたです」

 

「おお、言うようになった」

 

狭い機内に、白い刃が走る。ローターの振動も、吹き込む風も、迫る弾丸も、その瞳の中では一本の線へ収束していた。

 

今斬るべきものは、人ではない。

 

弾丸とミサイル。

この機体を落とそうとする殺意だけだ。

 

少女はドアの縁を蹴った。

 

身体が、半ば機外へ出る。

風が全身を叩き、衣服が激しくはためいた。

 

「人符――現世斬!」

 

次の瞬間、少女の姿がぶれた。

 

白い軌跡が、機銃の火線を横切る。ヘリの胴体へ吸い込まれようとしていた弾丸が、空中で弾かれ、火花を散らしながら軌道を失った。

 

すべてを斬ったわけではない。

 

だが、機体の急所へ向かう弾だけを、正確に落としていた。

 

「お見事。」

 

その言葉に、少女は肩で息をしながらも、視線だけを向ける。

 

「……まだ、褒められるほどではありません」

 

「いや、十分だよ。あの揺れの中でそれだけやれれば大したものだ」

 

またいつもの軽い声だった。

けれど、そこには茶化しではない響きがあった。

 

妖夢は少しだけ目を伏せ、それから再び窓の外を見る。

 

敵機は、さらに攻撃を加えるかに見えた。

 

だが、次の瞬間、機首を上げた。

 

黒い機影は大きく旋回し、こちらから距離を取っていく。撃墜できないと判断したのか。それとも中央市街の戦況を優先したのか。

 

いずれにせよ、戦闘機は引き返していった。

 

機内に、短い安堵が流れる。

だが、それも一瞬だった。

 

パイロットの声が、申し訳なさそうに通信へ乗る。

 

『申し訳ありません!我々がお送りできるのはここまでです!これ以上接近すれば、機体ごと落とされます!』

 

機体は大きく旋回しながら高度を落とし始めた。

中心部まではまだ距離がある。

 

だが、これ以上ヘリで進めば、敵の対空火器と航空戦力の餌食になるだろう。

 

男はドアの外を見ながら、軽く手を上げた。

 

「いや、助かったよ。ここまで運んでもらえれば十分だ」

 

少女も短く頭を下げる。

 

「ありがとうございます!」

 

『別のA級ヒーローも今到着したようです!…ご武運を!』

 

その声と同時に、ヘリが低空で安定する。

 

ドアの外には、崩れた道路と、黒煙に覆われた市街地が広がっていた。遠くでは爆発音が続き、建物の間を逃げる人々の姿が見える。

 

同時に、敵兵の影もあった。

 

避難する市民とそれを誘導する治安部隊。

そして…銃を構え進軍する兵士。

 

それらが、区別のつかないほど入り乱れている。

 

ここから先は、ただ敵を倒せばいい場所ではないようだ。

 

男は横目で彼女を見る。

 

「行ける?」

 

少女は、黒煙の奥を見据えた。

 

そこには、まだ見ぬ誰かの戦いの気配があったからだ。

 

奥で、異様なほど大きな衝撃が走る。空気が震え、ヘリの機体まで微かに鳴った。中心部では、明らかに通常の戦闘ではない何かが起きている。

 

少女は短く息を吸った。

 

迷いは、すでに消えていた。

 

人を相手にする恐怖がなくなったわけではない。

刀の重さが軽くなったわけでもない。

 

けれど、今この場で自分が何をすべきかは、もう分かっていた。

 

斬るためではない…

 

斬らせないために、殺さないために。

守るために。

 

少女は二本の刀を握り直し、黒煙に覆われた市街地を見据えた。

 

「いきましょう!」

 

彼女は叫ぶ。

その声には、先ほどまでの硬さとは違う芯があった。

 

「――カカシさん!」

 

カカシは片目を細めた。

 

「了解。行こう、妖夢ちゃん。」

 

次の瞬間、二人は同時にヘリから飛び降りた。

 

黒煙へ向かって。

崩れかけた街へ向かって。

 

これから来る絶望の未来に、抗うように。

 

ーー

 

指揮車両の中は、重苦しい沈黙に包まれていた。

 

モニターには、中央通りの惨状が映し出されている。黒煙はまだ晴れず、炎はビルの割れた窓の奥でちらついていた。道路には、砲塔を失った戦車や炎上する装甲車が、まるで巨大な獣の死骸のように横たわっている。

 

そんな地獄の風景の中、何かがそこに立っていた。

 

通信兵の声が、震えながら車内に響いた。

 

『総攻撃の効果、認めずッ!』

 

一瞬、誰も反応できなかった。

 

戦車砲、機関砲、ロケット弾、航空機からのミサイル。さらには洋上戦艦の主砲まで投入したのだ。中央通りごと吹き飛ばすつもりで放った総攻撃だった。

 

それなのに、目標は倒れていない。

 

画面の中で、山吹色の道着を着た青年は、まだそこに立っていた。

 

「ありえない……」

 

幹部の一人が、かすれた声で呟いた。

 

「戦艦の主砲まで加わっているんだぞッ!」

 

誰も否定しなかった。

いや、否定できなかったのだ。

 

彼らは全員、見てしまっていた。都市の一角を抉り飛ばすはずだった巨大な砲弾が、あの青年の前で、爆発することすら許されずに砕け散る瞬間を。

 

将軍はモニターを睨みつけたまま、低く問う。

 

「奴は……S級ヒーローか?」

 

通信兵が慌てて端末を叩いた。

 

「ヒーロー協会の公開データ、既知のS級、A級上位の記録を照合中です」

 

画面に検索結果が流れていく。

だが、どれも一致しない。

 

通信兵の顔色が悪くなった。

 

「……該当なし。データベースには確認できません」

 

「つまり、未登録だと?」

 

「はい。少なくとも、協会登録ヒーローではありません」

 

車内にざわめきが広がった。

 

登録ヒーローならまだ分かる。S級なら、まだ理解の余地はある。この世界には、常識外れの力を持つヒーローや怪人が存在する。

 

それは彼らも承知していた。

 

だが、あれほどの力を持ちながら記録に存在しない。

 

それは、作戦計画の外側から現れた何かが、都市制圧作戦そのものを破壊しているということだった。

 

その時、別の通信が割り込んだ。

 

『緊急報告!周辺区域より複数のヒーローが接近中!』

 

将軍の目が鋭くなる。

 

「数は?」

 

『四名!いずれもA級ヒーローと推定!』

 

「A級だと?」

 

『ですが、普通ではありません!各方面で部隊の封鎖線を突破中!凄まじい速度です!』

 

モニターの一部が切り替わる。

 

別区域の映像に、炎のような髪をした男が映った。崩れた車両を飛び越え、銃撃の中へ迷いなく踏み込みながら、兵士たちを次々と制圧していく。

 

別の画面では、白と緑の影が駆け抜けていた。

 

剣閃が走るたび、銃座が沈黙し、兵士たちの武器だけが断ち落とされる。静かな動きだったが、その動きは明らかに常人離れしている。

 

さらに別の映像では、片目を額当てで覆った男が、煙の中で印を結んでいる。

風が巻き、火炎が弾け、土煙が兵士たちの視界を奪い、部隊の連携そのものを崩していた。

 

将軍の拳が、静かに握られる。

 

「……もはや、潮時か」

 

その声には、怒りよりも先に、作戦が崩壊していく現実を認めざるを得ない冷たさがあった。

 

中央通りの未確認個体は、通常兵器では排除できない。

そのうえ、周辺から上位ヒーローたちが突破してくる。

 

このままでは都市を制圧するどころか、こちらが包囲されるだろう。

 

将軍は、車内の奥へ視線を向けた。

 

そこに、一人の老人が座っていた。

 

白衣を着た痩せた男である。

 

無線の悲鳴にも、兵士たちの焦燥にも、戦況の悪化にも、まるで興味がないようだった。膝の上の端末を操作しながら、モニターに映る山吹色の青年だけを見ている。

 

その目は、歓喜に近い目だった。

 

「博士」

 

将軍が呼ぶ。

老人はゆっくりと顔を上げた。

 

「ふむ……生身であれほどとは、実に興味深い」

 

その声は、戦場にいる者のものではなかった。

未知の標本を前にした研究者の声だ。

 

将軍の声が低くなる。

 

「博士…切り札を出してくれ」

 

その一言で、車内の空気がさらに沈んだ。

 

通信兵の手が止まり、幹部たちが顔を上げる。

博士は、薄く笑った。

 

「良いのかね?」

 

穏やかな声だった。

 

「都市が跡形も残らなくなるぞ?」

 

将軍は沈黙した。

だが、それは迷いゆえの沈黙ではない。

 

「もはや、通常兵器で奴を止めることはできん」

 

将軍はモニターを見る。

中央通りの青年は、こちらへ向かって歩いている。

 

砕けた道路の上を、一歩ずつ。

 

総攻撃など、最初から意味がなかったかのようにーー

 

「作戦が破綻した以上、切り札を使う他ないだろう」

 

「ふふっ」

 

博士は喉の奥で笑った。

 

「いいだろう」

 

端末に指を滑らせる。

 

直後、指揮車両の後方で低い駆動音が響いた。車内の照明が一瞬だけ落ち、外部モニターの一つに、L市外縁部の映像が表示される。

 

輸送車両群の中央に、巨大なコンテナが置かれていた。

 

厚い装甲板に覆われ、幾重もの固定具で封じられている。それは兵器を守るための格納庫というより、中にあるものを外へ出さないための棺に見えた。

 

固定具が一つずつ外れていく。

 

重い金属音が、通信越しにも響いた。

 

博士は、楽しげに呟く。

 

「安心するといい」

 

最後の認証が解除される。

 

「私の傑作は、S級ヒーロー上位との戦闘を想定したものだ」

 

コンテナの側面が開いた。

白い冷気が漏れ出す。

 

その奥に、人影が立っていた。

 

人間に見える。

 

身長も、体格も、外見だけなら兵士と大きく変わらない。だが、その立ち姿には人間らしい揺らぎがなかった。

 

呼吸も、瞬きさえしない。

ただ、閉じた瞼の奥で、何かが起動するのを待っている。

 

兵士の一人が、ごくりと喉を鳴らした。

その音が、通信機を通して指揮車内にまで届いた。

 

博士は端末へ最後の命令を入力した。

 

「起動」

 

人影の目が開いた。

赤い光が、ゆっくりと灯る。

 

だが周囲の兵士たちは、一斉に後ずさっていた。

 

「目標を入力する」

 

博士が言った。

端末画面に、中央通りの映像が表示される。

黒煙の中、山吹色の青年が歩いている。

 

人造人間の赤い瞳が、その方向を見た。

 

ーーほんの一秒。

 

それだけだった。

次の瞬間、コンテナ内部の床が砕けた。

 

映像が激しく揺れる。

 

拘束具が弾け飛び、冷却配管が裂け、白い蒸気が爆ぜるように噴き出した。

 

「な――」

 

現地の兵士が叫ぶより早く、人造人間はコンテナの外にいた。

 

誰も動きを見ていない。

 

ただ、さっきまで奥に立っていたはずの影が、気づいた時には数十メートル離れた位置に立っていた。

 

そこからさらに一歩。

 

地面が陥没した。

 

遅れて、通信兵が叫ぶ。

 

「人造人間、移動開始!」

 

速い。あまりにも速い。

 

車両でも、航空機でもないのに桁違いな速度だ。

 

地上を走る人型の兵器が、都市の道路を一直線に駆け抜けている。

その通過後だけが、遅れて破壊されていく。

 

アスファルトが割れ、車両や建物が吹き飛ばされる。

 

それが通り過ぎた後で、破壊だけが街に残る。

 

「中央通りまで、あと三十秒!」

 

「三十秒だと……!」

 

「訂正、二十秒!」

 

通信兵が青ざめた。

 

「さらに加速しています!」

 

モニター上の赤い点が、中央通りへ向かって跳ねるように進んでいく。

 

消えては、現れ、また消える。

映像も、センサーも、肉眼も、その速度に追いついていなかったのだ。

 

黒煙に包まれた中央通り。

 

その奥に、山吹色の青年の姿が映る。

人造人間の赤い瞳が、その一点を捉えた。

 

『目標確認』

 

機械音声が、低く響いた。

 

『排除する』

 

博士は、モニターの前で愉悦に口元を歪めた。

 

「さあ、見せてもらおう」

 

赤い点が、さらに加速する。

 

「私の傑作に、君がどこまで届くのかを」

 

そして博士は、喉の奥でくつくつと笑ったのだった。

 

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