コント『恐妻家』
とある夜、機動六課の民間協力者であるバンは、仕事帰りの友人ユーノを捕まえ、はしご酒を楽しんだ。
「管理局のばからろー!」
「じゃんじゃん愚痴を吐き出せ~!だはははは!」
時刻は、23時を回り、街の灯りがひとつ、またひとつと消えていく。酔っぱらって気分が天元突破した二人は、バンの家で呑み直すことに決めた。バンが住む家は、一軒家だった。この家には、バン以外に二人の同居人が住んでいる。金髪の同居人は、出張研修で留守である。
「バン君おかえり~!あ、ユーノ君もいらっしゃい!」
「なのは、お邪魔ふるよ~」
呂律が回らないユーノを見て、浴びる程呑んできたことが一目で分かり、なのはは苦笑する。バンは、なのはにおつまみの用意をリクエストした。
「なのは~、おつまみを用意してくれ~」
「はいはい」
適当な椅子にユーノを座らせるバン。缶ビール数本とチェイサーを用意し、飲み始めていく二人。そこに、なのはが、様々なおつまみを運んでくる。
「はい、おつまみどうぞ。じゃあ、ごゆっくり」
お盆を持ち、笑顔で退出する。だがしかし、なのはが持ってきたおつまみを目にしたバンは、不満げな声を出した。
「おい、なのは!乾物ばかりじゃないか!お前、こう、焼いたウインナーとか持ってこいよ!気が利かないなあ」
「まぁまぁ、ボクは大丈夫だから」
「悪いなユーノ、しっかし、なのはの奴、密かに管理局の白い魔王や魔砲少女って呼ばれてるんだって?考えたやつ、ネーミングセンス抜群だよな。まぁ、長い付き合いのオレからすれば、アイツは魔法少女(笑)だけどな」
酔いで口が回り、管理局のエース・オブ・エースを揶揄うといった、死に急ぐ真似をし始める。それを聞くユーノは、適当に相槌を打つばかり。その時、なのはがひょっこりと扉から顔を出した。どうやら、バンに用事があるようだ。
「ちょっと、バン君。こっちに来てもらえる?」
「何だよ、しょうがねえなぁ。まったくよぉ」
酒に酔っているせいか強気な態度を見せるバン。ユーノに軽く断りを入れて、自分を呼ぶなのはの元へと向かうのだった。
「えぇっと、その~、なのは様?」
「ふふ、どうしたのバン君?顔が真っ青だよ?」
なのはがいる廊下に出向いたバン。目の前にいるのは、ニコニコとした表情を見せるなのはの姿。一見、花のように愛らしい笑顔だが、背後から黒いオーラが滲み出ている。なのはの笑っていない眼を見て、顔が蒼褪めていくバン。小鹿のようにガクガクと震える膝を必死に抑え、恐怖を紛らわす。
「ねえ、バン君。さっき、私のこと何て言ったのかな~?」
「な、ななな、何のことやら、別になのはのことを白い魔王とか、少女としての年齢が曖昧な魔法少女(笑)とか、元17歳教信者とか言ってないぞ」
「全部、言葉として出てるよ?」
「あ、やべ」
墓穴を掘るバンの肩にそっと手を置くと同時に、なのはは握力を込めていく。バンは、肩が悲鳴を上げ、顔から血の気が引いていくのを感じる。彼女の怒りに触れ、魔王を降臨させた男の迎える運命は、OSHIOKIだと。
「ちょっとそこで、OHANASHIしようか?」
なのはは、バンの耳を引っ張りながら、奥の部屋へと連れ出す。逃げ出そうと藻掻くバンの焦りは虚しく、扉はバタンと閉まる。
そこからの御仕置きをダイジェストでお送りする。まず、胸倉を掴まれ往復ビンタ、次に、逆エビ固めからのアルゼンチンバックブリーカー、サーフボードストレッチとプロレス技を連続で繰り出す。そして、とどめのディバインバスターを放った。桜色の砲光が、扉の隙間から漏れ出る。
反省しなさい!ディバインバスター!
「ゆ、ユーノすまんな。なのはと話し合いが長くなっちまった」
OHANASHIを終えたバンは、ボロボロの身体に鞭を打ちながら、ユーノが居る場所へと戻る。
「ボ、ボボボク、そ、そろそろお暇しようかなぁ~」
「ユーノ君ったら、もっとゆっくりしていけばいいのに」
「い、いや、もう夜も遅いし、帰るよ!」
ユーノは、扉の先から聞こえていた二人のやり取りを耳にして、ガタガタと震えていた。そそくさと、逃げ出すように鞄を持ち出し、玄関へと駆けだしてしまった。魔王との二人っきりを恐れたバンは、ユーノカムバックと叫ぶも、服の襟を引っ張られる始末。
彼に残された手段は、唯一つ。ジャパニーズ流の謝罪、DOGEZAであった。
「本当にすいませんでしたぁぁぁぁぁ!」
「うふふふ」
ソファーの上で土下座をするバンと、静かに笑うなのは。酒に酔っていたとはいえ、口は災いの元であることをしっかりと身に染みたバンであった。女は強し。
コント『点呼』
朝の6時20分、機動六課に所属する若き四人のストライカーの上司であるヴィータは、点呼の準備を一人で始めている。彼女は、エリオ・キャロ・スバル・ティアナが寄宿している寮へ赴き、四人が寝ている大部屋の前に立つ。
「もうすぐ、点呼の時間だ。そろそろ、あいつらを叩き起こさないとな」
ヴィータは、起床ラッパを取り出し、マウスピースに口を付けた。軽快なラッパの音が鳴り響く。ラッパ音を聞いた三人は、素早く布団を畳み直し、急ぎ足で廊下へと飛び出す。
「日朝点呼!番号!」
「1!」「2!」「3!」
ヴィータは、指差し呼称で確認するが、廊下にいる人数が一人足りない。そう、スバルである。
「おい、一人足りないぞ!ティアナ!スバルはどうした!」
「熟睡中です!」
「ちゃんと起こしたのか?」
「声を掛けましたが、効果はいまひとつでした!」
「よし!アタシが起こしてくる!お前たちは待機してろ!」
ずかずかと、大部屋の扉を開けるヴィータ。スバルのベッドへと直行し、彼女の身体を揺さぶり、起こそうと試みた。
「スバル、起きろ!点呼の時間だ!」
「むにゃむにゃ、もう食べられまへんよ」
「定番の寝言を言ってんじゃねえよ、この寝坊助」
思わず、アイゼンで叩き起こそうと思ったが、それでは色々と面倒くさい事になるので、渋々とデバイスをしまうヴィータ。あれこれと悩んだ末、起床ラッパで起こすことに決めた。
仕方ないとばかりに、プァ~とペレス・ブラ―ドのタブーを演奏する。その瞬間、部屋の照明がピンク色に染まり、寝ていたスバルは上半身を起こした。
「ちょっとだけよ~」
そう口にしながら、スバルは布団をはだけさせ、太股から艶めかしく手を滑らせる。
「スバちゃんっぺ」
そして、二本指を唇に当て、投げキッスをぺっとする。その光景を見たヴィータは、黙々とラッパを床に置き、ごそごそと懐から何かを取り出す。それは、はやて特製のハリセンだった。
「あんたも好きねぇ~」
「いい加減にしやがれ!」
スパンッ!と小気味の良いハリセンの音が、スバルの頭に炸裂する。頭上にお星さまが回るスバルは、ばたんきゅーと倒れ、二度寝タイムに突入するのだった。
キャスト
『恐妻家』
高町なのは
四竜バン(主人公)
ユーノ・スクライア
『点呼』
鉄槌の騎士ヴィータ
エリオ・モンディアル
キャロ・ル・ルシエ
スバル・ナカジマ
ティアナ・ランスター