魔法少女リリカルなのは マジカル☆フェスタ 作:ヴィルヘルム星の大魔王
リリカル修学旅行なの!in沖縄①
私立聖祥大学附属小学校に通うバン達が、五年生に進級してから数か月後のお話。
夏休み間近の金曜日、誰もが待ちに待った一大イベントが始まる。
それは、修学旅行だ。行き先は、沖縄。しかも、三泊四日と、小学生にとっては長期的な旅になる。
「修学旅行、楽しみだね。なのは」
「そうだね、フェイトちゃん!」
「ふふ、私服で学校に来るなんてなんだか新鮮だね」
「そうね、すずか。公立の小学校じゃ、反対に制服登校が珍しいみたいだけどね」
「修学旅行に行けるなんて、二年前じゃ考えられなかったわぁ」
「初めての修学旅行、楽しみー!」
「はやて、アリシア、楽しみなのはわかるが落ち着け。すぐに体力が無くなるぞ」
「いや、眼の下に隈が出来てる人に言われたくないで」
図星である。はやての指摘通り、バンは、前日の夜から修学旅行が楽しみで仕方なく、興奮状態も相まって、あまり眠れなかった。
聖祥小の校庭には、数台のバスが並んでいる。クラスメイト達は、私立という事もあり、制服姿しか知らない。
この日だけは、修学旅行という事もあり、私服登校だ。
学校では見られないなのは達の私服姿を目の当たりにした男子たちにとって、眼福に等しい光景だった。バンだけは、休日になのは達と遊ぶことが多い為、普段と変わらない様子だ。いや、意気揚々としていた。
(ふっふっふ、俺は諸事情で乗り物酔いしやすい。だが、俺は酔い止めを飲んだ!なっはっは!乗り物など、恐れるに足らずよ!)
バンは、乗り物での移動に備え、事前に酔い止めを服用していた。勝利は我にありと、高らかに息巻いていたが、水泡に帰す。
「うっぷ」
「バン、お水飲む?私の席にあるエチケット袋も使っていいよ?」
「はぁはぁ、あ、ありがとう、フェイト」
「ううん、もし辛かったら、私が先生に言ってあげるから、安静にしていてね?」
バスの発車から一分後、バンは座席に背中を預け、がっくしと項垂れていた。隣の席にいるフェイトは、弱っているバンの背中を優しく摩る。献身的な態度は、通い妻を彷彿とさせる。
サービスエリアで小休憩の時間となり、バンは誰よりも早く下車し、トイレに駆け込んだ。
出発から一時間半後、バスは羽成空港に到着した。バスから飛行機へと移り、酔い止めが効かないことを思い知ったバンは、心の中で悲鳴を上げる。
(この悪夢から早く覚めてくれー!)
飛行機が空高く飛び上がった機内では、真っ白に燃え尽きた男子小学生が一人、項垂れていた。
ベテランのキャビンアテンダントは、彼の様子を見て、昔のボクサーアニメを思い出したとか。
「はい、皆さん。周りの方の迷惑にならないよう、固まってくださーい」
那覇空港ロビー内にて、学年主任が小学生集団に向かって声を掛ける。なのは達は、体育座りで大人しく聴いていた。アリシアは、慣れない飛行機でのフライトで小さく欠伸をする。バンは、飛行機での乗り物酔いでグロッキーになっていた。
「バンったら、大丈夫かしら」
「酔い止めの薬飲んでもダメなんて、難儀な体質やな」
「皆さん、飛行機の長旅お疲れさまでした。空の旅は楽しめましたか?」
『はーい!』
「良い返事ですね。では、これから18時の宿集合まで、クラス行動の時間にします。担任の先生方は、それぞれ確認と引率をお願いしますね」
ふと、修学旅行のしおりを確認する。初日のクラス行動は、シーサーづくり体験、お昼は沖縄料理。午後は、国際通りで班行動。沖縄ならではの新体験に、身体の内側からわくわくが止まらない。
「皆ー!ガイドさんと先生の後ろについてきてね」
バン達のクラスの番となり、一列に並び始める。空港出口を出て、指定バスに乗り込む一行。那覇空港からシーサーづくりの体験場に向けて、バスが発進する。
「うっぷ」
「バス酔い、次は飛行機酔い、そのまた次は、バス酔い。大変だね」
「バンの場合、厄介な体質よね。外の景色でも見たら、少しは気分が紛れるんじゃない?」
「ぜーぜー、そ、そうする」
バンには悪いが、いつも、休み時間に騒がしい彼が乗り物酔いで大人しくなることに有難いと思いつつも、少し物足りないと感じるアリサたちだった。
先ず訪れたのは、那覇市内にある琉球工房。ここでは、沖縄の守護獣シーサーの焼き物を自分好みの色に染め上げる体験を味わえる。
バスから下車した瞬間、バンは乗り物酔いから復活した。先程まで乗り物酔いに振り回されていた姿はどこにいったのか。今では、沖縄の外に大はしゃぎしている。
「よっしゃー!俺、復ッ活!」
「はぁ、一気に騒がしくなったわね」
「まあまあ、アリサちゃん。でも、私は元気なバン君のほうがいいかな」
アリサは、バンの騒がしさに頭を抱える。すずかは、元気になったバンを優しい目で見ていた。
「すげー!はやて、なのは!見てみろよ、獅子みたいな生き物がいるぞ!」
「さっきまでバス酔いしていた人とは思えんわ」
「昔から乗り物に乗っている時だけ弱いよね」
「二人とも、あのシーサーの顔を見ろよ!おっかない顔してるよな、アリサみたいだ!」
「ねえ、バン?今、あたしに対して何か失礼なこと言わなかったかしら?ン?沖縄でもお仕置きが必要かしら~?」
「どうどう、落ち着いてアリサちゃん」
アリサは、バンの失言を耳に挟み、指の骨をポキポキと鳴らす。なのはは、バンに制裁を与えようと動き始めたアリサの怒りを宥める。バンは、二人の様子を他人事のように眺めていた。はやては、デリカシーが無い彼を冷ややかな目で見つめ、溜め息を吐く。
「バン君は、本っ当にアリサちゃんを怒らせる天才やな。まあ、ええわ。あれは、シーサーっちゅう。沖縄の守り神や」
「へえー!はやては物知りだな!シーサーは、ザフィーラみたいなもんなのか?」
「さあ、わたしはよう知らんけど、似たようなもんちゃうん?守護獣という点では、一致しとるな」
「フェイト!シーサーだって!顔いかついね!」
「お姉ちゃん、バンと似たようなこと言ってるよ」
はやての腕を引いて、シーサーの像に興奮するバン。同じく、興奮状態のアリシアも妹のフェイトの腕を引っ張っていた。姉妹の微笑ましい様子に、クラス中の男子が、尊み秀吉の姉妹百合と拝む。
「アリシアは、好奇心旺盛。アイツは、ただのバカよ」
「し、辛辣だね。アリサちゃん」
「にゃはは、沖縄でも相変わらずだね」
辛辣なアリサの意見に何も言えないなのはとすずか。先生からの入室合図で、騒がしさは収まり、シーサーづくりがスタートするのだった。
琉球工房では、様々なシーサー人形を選び、各々の好きな色に染めていく色塗り体験が行われた。クラスメイトたちは、ワイワイと楽しそうに作業している。
「ねえ、フェイト。それってもしかしてアルフ?」
「うん、アルフのオレンジ色をイメージしたんだ」
アリシアは、隣でフェイトが塗っているシーサーの色に気付く。彼女が塗っているシーサーの色は、彼女の相棒であるアルフの橙色だった。
「むむむ、この色は、こうして、ベタ塗りにならないように」
「あはは、アリサちゃん。職人みたいだよ」
負けず嫌いなアリサは、シーサーの色を完璧に再現しようとしていた。その様子を見て、自分の好きな色で自由に染めるすずか。
「おい、みんな見ろよ!ち〇ちすこう!ち〇ちすこうだって!いっだ!?」
「うるっさいわね!公共の場で何口走ってんのよ!このバカバン!」
「だって、本当に書いてあんだぜ!」
「アンタね、いくら、ちんすこうの名前が、ち、ちん…に似てるから。って、乙女に何言わせんのよ!」
店員らしき大人達は、バンとアリサのやり取りを微笑ましそうに眺めている。はやては、顔を真っ赤にしたアリサを羽交い絞めして、怒りを宥める。
「アリサちゃん落ち着くんや。バン君も、そろそろいい加減にせんと沖縄の人に怒られるで?って、ほんまにち〇ちすこうやないか!?」
「「「はやて!?」」」 「「はやてちゃん!?」」
件の商品を見たはやては、バンの言葉が間違いでないことに驚愕する。
ちんすこう騒動から三分後、アリサ達は紅芋タルトを試食し、出来立てのサーターアンダギーに舌鼓を打っていた。外でシークワーサージュースを飲んでいたバンは、空になったカップをゴミ箱に捨て、再入店した。
店内で散策していたバンは、店角の隅に鎮座していたある商品を目にする。
「こ、これは!」
バンは、『お色気ドロップ娘』なるジョーク系商品を眺めていた。修学旅行のグループ班で男なのは、バン一人だけ。アリサたちに見つかれば、非難轟々の嵐なのは目に見えている。バンは、家族用に買う紅芋タルトやちんすこうをカモフラージュとして、箱と箱の間に隠す。そして、足早で男性店員がいるレジに向かい、会計に出した。
「…会計お願いします。あと、袋も一枚お願いします」
「…毎度あり。袋は3円です」
レジ担当のおじさん店員は、同じ男として彼の行動を察し、速やかにバーコードに商品をスキャンする。ちんすこうと紅芋タルトの間に例の商品を詰め、鮮やかな手捌きで、合計金額を伝えた。
「合計、3581円です」
「4001円で」
「お釣り420円です。ありがとうございました」
袋を受け取り、会釈するバン。その時、オジサン店員は、彼に向けて、密かに親指を立てる。
(少年よ、グッドラック)
(感謝します)
バンは、その意思を受け取り、静かに親指を立てた。任務を無事に遂行した彼は、ほくほく顔になる。
なのはは、そんな彼の背中を見つけ、後ろから声を掛ける。
「バン君~!お土産買ったの?私も紅芋タルト買ったんだ」
「ぎくっ!?お、俺もちんすこうと紅芋タルト買ったぜ」
「ぎく?どうしたの?汗凄いよ?」
「あ、ああ、さっきまで外にいたから汗がひかなくて」
「そうなんだ、熱中症にならないように気を付けようね」
「…なのは、熱中症をゆっくり言ってみてくれ」
「ふぇ?いいよ。ねえ、ちゅうしよ…って、何言わせるのー!」
熱中症をゆっくりと言い始めるなのはだが、途中で言葉の真意に気付き、彼の胸をポカポカと叩く。実際は、魔力で身体強化している為、軽やかな音に比べて、肉体のダメージがでかい。
各自買い物を終えた七人は、新たな店を目指して、歩道を歩く。目的地は、曲がり角の先にあった。
曲がり角を曲がろうとした瞬間、顔にぽよんとナ二かがぶつかり、後ろにたたらを踏む。バンにぶつかった謎の女性は、尻餅をついていた。バンは、速やかに謝罪する。
「わひゃあ!?」
「うおっと、すいません!お怪我はありませんか!?」
「あいやー、こちらこそごめんね~。きみこそ、怪我はない?」
バンの謝罪に対し、気にしないでと、軽く手を振る女性。地面から立ち上がる女性の姿は、桃色髪のうちなーぐちな女子高生。しかし、彼女には、大きな特徴があった。
((((((この人、お胸が大きすぎる!?))))))
その女子高生の胸部は、なのは達の顔より大きい豊満で、ロケットのような長乳だった。動く度に、乳房がたゆんたゆんと揺れている。
「うわ、でっか…いでででで!?」
声に漏らしたバンの右耳をアリサが、左耳をすずかが引っ張り、爪先を強く踏み付け、折檻する。耳たぶを抓られ、爪先を踏まれたバンは、痛みに悲鳴を上げた。
「はいたい、わーらびんちゃー!あーしはナッちゃん!よろしくねー!」
「はいたいってなに?」
「スポーツの試合で負けることだろ?」
「それは敗退やで」
「ああ、冷たいモノ食べると沁みて痛いよな」
「それは、歯痛いや」
「ああ、釣り上げられて興奮している真鯛のことね」
「それは、ハイ鯛や…いや、ハイ鯛ってなんやねん!アホか!」
「流石、関西人。三連ツッコミをこなすとは、中々やりおる」
「えへへ、それほどでもあらへんで?」
「なに、おバカ漫才やっているのよアンタたち」
バンのボケに、はやてが乗っかり、漫才を始めた。アリサは、事態を収拾させるべく、バンの頭頂部をスパンッと叩いた。ナっちゃんは、その様子を見て、ニコッと笑う。
「これも何かの縁だがや〜。あーしが、国際通りのおすすめスポットを案内するさ〜。いちゃりばちょ~で~」
ナッちゃんの自己紹介を受け、アリサ等も自己紹介を始める。七人の名前を聞いたナッちゃんは、嬉しそうに名前を呼んだ。
「なるほどー。アリサてゃ、すずかてゃ、なのはてゃ、アリシアてゃ、フェイトてゃ、はやてゃ、
バンてゃねー。みんな、良い名前だよー」
「あはは…私だけ捻りないやんけ」
「呼びやすくていいぞ、はやてゃ」
バン達の臨時ガイドを請け負ったナッちゃんは、彼らを平和通り商店街を案内する。店頭に飾られた豚の顔を燻製にしたチミガーを見て、すずかは小さな悲鳴をあげた。次に案内された沖縄のアイス屋では、シークワーサー味、雪塩味、紅芋味のアイスを互いに食べ比べしあう。バンとの間接キスを狙いに、餌を貰う雛鳥のようにあーんと口を開ける六人。バンが頼んだアイスは、黒糖味だった。ナッちゃんからのあーんを貰い、外にいた男性連中から羨ましく見られていたのは、余談である。
「すっごい楽しいー!さすが、ナッちゃんガイド!」
「気に入って貰えて、嬉しいよー」
一通り、食べ歩き、ベンチで一休みするバンの班。スポーツドリンクで水分補給していたバンの背中を、ナっちゃんが見つめていた。そして、頭に電球を浮かべて、動き出す。
「えいっ!」
「ほわぁっ!?」
むにゅりと背中に伝わる柔らかさに、バンは素っ頓狂な声を上げる。ナッちゃんが、バンの背中に豊満な乳房を押し付ける悪戯をしていた。男子小学生の背中に押し付けられた乳房は、円状に広がり、背中の面積からはみ出ている。そのせいか、腕にまで胸の柔らかさと布越しの温もりが伝わる。ナッちゃんは、「にしし」とイタズラ的な笑みを浮かべ、バンの顔を自身の胸に埋めた。
「むごっ!?ふごが!?」
「バンてゃは、からかいたくなる可愛いさだね~うりうり~」
「ちょっ!あんた達、何やってんのよ!」
「バン君め!ナッちゃんの大っきい胸で窒息なんて、まったく羨まけしからんわ!」
「はやてちゃん、本音が漏れてるよ?」
「バン君?少し、頭冷やそうか?」
「バン、そんなに大きい胸が好きなの?なの?」
「むう~!バンのお胸星人!」
「ふぉれば、ふぁるぐふぇーふぁろ!」(俺は悪くねーだろ!)
ナっちゃんの突然の行動に声を荒げるアリサ。その光景を羨ましがるはやて。はやての言葉に苦笑するすずか。
冷たい眼差しでバンを見つめるなのは。首を横に傾け、嫉妬で瞳のハイライトが消えるフェイト。風船のように頬を膨らませ、バンに不名誉な称号を付けるアリシア。三者三様の様子に、バンは胸の谷間の中で反論した。
「ふぁーなーせー!」
むにゅり!むにゅむにゅん!もぎゅっ!
ナっちゃんによる乳地獄で呼吸が限界を迎えそうなバンは、両掌で顔を爆乳から押し離そうと動く。傍から見れば、彼女の乳房をがっしりと押し掴む形となり、途中から彼の胸中に下心が無かったとしても、それが火に油を注ぐ事態へと変わる。既に、全員のハイライトが消え去った。哀れなり。
バンの行動で我慢の限界に到達しそうな、なのは達は、怒髪天を衝く勢いで、どす黒いオーラを放出する
ギラギラな太陽が燦々と照らす国際通りは、バン達がいるエリアだけ、真冬のように気温が低下し始めた。
この異常現象に、観光客たちは困惑する。
「寒っ!?さっきまで暑かったのに、急に寒くなったんだけど!?」
「おかしいな、天気予報だと気温が30度超えているのに」
(ガタガタガタガタガタ!!さっきから悪寒が止まらない!?)
背後から集中的に突き刺さる六人の冷たい視線が、バンの身体をゾゾゾと震え上がらせる。恐怖のあまり、バンの顔が蒼褪めていく。まさに、修羅場である。近くのベンチで様子を見ていた沖縄旅行中の愉悦好き神父は、愉悦に満ちた表情で後方腕組みしていた。愉悦部は、おとなしく麻婆豆腐でも食っていろ。お供の青髪男は、なのは達のどす黒いオーラが生み出した一瞬の黒雲による落雷で黒焦げになる。この人でなし!
「あ!落雷で青髪の男性が焼け焦げている!」
「沖縄の夏は天気が変わりやすいもんな」
ナっちゃんのイタズラで唐突な修羅場を迎えることになったバン。バンの運命は如何に、そして、無事に宿まで戻れるのか!
FGOの沖縄特異点イベントで話題を呼んだ。キジムナーのマジムン、なっチャンをゲストにしました。ビジュアルを見た瞬間、癖に刺さったぜ。