金の亡者、泥舟の世界で大儲けする   作:鳥ささみ

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第十九話:宇宙の追尾監査(バルマー防衛線突破)

 

地球を遠く離れたラグランジュポイント5(L5)。そこは今、漆黒の宇宙を鮮血のようなビーム光と爆炎が染め上げる、人類存亡の地獄と化していた。

突如として出現した異星人エアロゲイターの巨大要塞「ホワイトスター」。連邦軍の主力宇宙艦隊を一瞬で紙屑のように葬り去ったその絶対的な絶望の前に、地球最後の希望として殴り込みをかけたのが、強襲揚陸艦ハガネとヒリュウ改の二隻であった。

「全機、突撃を緩めるな! 敵の防衛線を突破し、ホワイトスターへ肉薄しろ!」

ハガネのブリッジからテツヤ・オノデラ大尉の鋭い号令が飛ぶ。画面を埋め尽くすのは、不気味な自律回路で動く異星人の無人機メギロート、そして地球側の技術を歪めて模倣した機動兵器の群れ。激しい対空砲火の中、ハガネ隊の各機が死線を潜り抜けていく。

その最前線、敵の防衛陣形のド真ん中を、戦場の常識を真っ向から全否定する「純金」の光を放ちながら突き進む一機の特機があった。

「どきなさい! どきなさーーーい!! 我がゴールドミラー社の進路を塞ぐ不健全な障害物(メギロート)どもは、すべて一括でスクラップ(減価償却)にして差し上げます!!」

ゼニ・ゴールドミラーは、ゴールドミラー・プライムの操縦桿を怒りに任せて引き絞っていた。

金塊の大剣『ゴールド・インゴット』が宇宙空間を一閃する。テスラ・ドライブの暴力的出力を乗せた一撃は、エアロゲイターの不気味な人型兵器を装甲ごと圧殺し、眩い爆発へと変えた。

ゼニの戦う理由は、地球の平和でもなければ、人類の未来でもない。ただ一つ、自分を完璧にハメて全財産を持ち逃げした宇宙最高の詐欺師イングラム・プリスケンを捕まえ、その愛機『R-GUNリヴァーレ』を力ずくで差し押さえるという、血の吐くような「債権回収」の執念のみであった。

「CEO、前方から高エネルギー反応! 敵の新型機、および指揮官機と思わしき強力な精神波(念動力)を感知しました!」

コックピットのコンソールから秘書の悲鳴のような通信が入る。

硝煙の向こうから現れたのは、これまでの無人機とは一線を画す異形の巨大念動兵器。そしてその中心には、冷酷な神の如き威圧感を放つ地球侵略部隊の総司令官、レビ・トーラーの駆る超巨大兵器『ジュデッカ』の姿があった。

『地球の羽虫どもが……大いなるバルマーの意思の前に、すべて塵へと還るがいい』

レビの冷徹な、しかしどこか虚ろな声が広域通信に響き渡り、ジュデッカの周囲に展開された無数の光体が、ハガネ隊へ向けて一斉に絶望的な密度のレーザーの雨を降らせた。

「くっ、なんだあの圧倒的な手数と威力は……!? ヒーローアニメのラスボスじゃねえか!」

R-1のコックピットで、リュウセイが歯を食いしばりながら回避行動を取る。

しかし、今のゼニにとって、敵の総司令官の威厳など「我が社の不良債権回収を妨害する、ただの悪質な競合他社のCEO」に過ぎなかった。

「フン、バルマーの意思? 敵対的買収を仕掛けておいて、随分と尊大な企業理念(セリフ)を並べてくれますね、レビ・トーラーCEO!」

ゴールドミラー・プライムは、純金のオーラを排熱機構から激しく吹き荒らしながら、ジュデッカの放つ光線の一群をトロニウムの暴力的な出力のバリアで強引に弾き飛ばし、正面から突進した。

「いいですか、私は今、極めて機嫌が悪いのです! 表のDCは計画倒産、裏で投資していたSRX計画は監査入り(凍結寸前)、おまけに信頼していた専属チーフ(イングラム)には全財産を持ち逃げされて、我がゴールドミラー社は創業以来最大の経営危機(破産寸前)なんですよ! どこの馬の骨とも知れぬ異星人ベンチャーのトップに、私の残ったわずかなアセットを差し押さえられてたまるものですか!!」

『な、何者だ、あの金色の歪んだ存在は……!? 精神波に混ざる、この悍ましいほどの物質的執着(強欲)は……くっ、頭が……!』

ゼニの常軌を逸した「金返せ」の怨念が通信回線を通じて脳内に直接流れ込んできたのか、操られている少女レビは、一瞬だけ激しい頭痛に襲われたようにジュデッカの動きを鈍らせた。

「そこです! 経営の隙を突くのが商人の基本!!」

ゴールドミラー・プライムが『ゴールド・インゴット』を振り上げ、ジュデッカの防衛フィールドの一角を激しく叩き割る。その背後から、ゼニが作った隙を見逃さず、キョウスケのアルトアイゼンとハガネの主砲が連動して突撃を仕掛け、エアロゲイターの第一防衛陣形を見事に瓦解させていく。

「全機、このまま要塞内部へ突入するぞ! 遅れるな!」

テツヤ副長の怒号が響く。

「待っていなさい、イングラム少佐……! あなたの作ったリヴァーレの装甲の一片、ネジの一本に至るまで、私はパーツ単位で毟り取ってジャンク屋に叩き売ってあげますからね!!」

ホワイトスターの巨大なハッチが開き、ハガネ隊は激しい白兵戦を繰り広げながら、ついに要塞内部への侵入を果たす。しかし、その最深部で待ち受けるイングラムとの血を吐くような清算、そしてメテオ3の暴走という「人知を超えた最悪の経営破綻(セプタギン)」が待ち受けていることを、ゼニはまだ知らない。黄金の巨神は、借金取りの叫びを宇宙に轟かせながら、暗黒の要塞の奥へと突き進んでいく。

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