「――よく来たな、ゼニ・ゴールドミラー。そして、ハガネ隊」
ホワイトスターの最深部、異世界の結晶構造と連邦の最新技術が歪に融合した巨大な要塞の心臓部。
冷徹な静寂が支配するその空間で、漆黒と紫の凶鳥『R-GUNリヴァーレ』は、無機質な不気味さを漂わせながら浮遊していた。そのバイザーの奥で、イングラム・プリスケンのガラスのような瞳が、突入してきた一行を見下ろす。
「イングラム少佐……! なんで、なんであんたほどの人が、俺たちを、地球を裏切ったんだよ!」
リュウセイのR-1が、怒りと絶望に震える声を通信回線に乗せる。ライもアヤも、かつて信じたチーフの冷酷な佇まいに、未だ言葉を失っていた。
誰もが悲痛なシリアティ(緊迫感)に包まれる中、その重苦しい空気を時速数百キロの暴論でぶち破る黄金の巨神が、前に躍り出た。
「イングラム少佐ァァァァァァーーーーーーッ!!! よくもまあ、そんな『計画通りにアセットを回収しました』みたいな澄ました顔でそこに浮いていられますね!!」
ゼニ・ゴールドミラーは、ゴールドミラー・プライムのコックピットでシートベルトが引きちぎれんばかりに身を乗り出し、マイクが割れるほどの声量で大絶叫した。
「裏切った理由? 地球の未来!? そんなものはどうでもいい、後回しです! あなたが私から騙し取った、我がゴールドミラー社の天文学的な開発資金(ゴールド)、高純度レアメタル、そしてヴァルシオンの重力制御特許データを今すぐ全額耳を揃えて返しなさーーーい!!」
『フフフ……。相変わらず強欲な男だな、ゼニ。お前の出した資金とオーパーツは、このリヴァーレを「真の完成」へと導くための最高の潤滑油となった。私の任務(収穫)は大成功だ』
イングラムは表情一つ変えず、残酷なほど美しい笑みを浮かべた。リヴァーレの全身の装甲が展開し、ゼニの資本によって爆速かつ完璧にデバッグされた『重力歪曲フィールド』が、空間そのものを歪ませながら放射される。
「潤滑油だと!? 他人の血税をなんだと思っているのですか! あなたが裏でこそこそ私の金(アセット)を湯水のように使って組み立てたそのリヴァーレは、最初から最後まで、我が社の担保(所有物)ですよ! 組織のトップたる者が、別市場(バルマー)への亡命で借金をチャラにできるなどと、そんな甘いビジネスモデルが通用すると思ったら大間違いです!」
ゼニは怒りで前髪を掻き毟りながら、操縦桿を限界まで叩き付けた。
「いいでしょう! 支払う意志がないというのなら、文字通り力ずくで民事差し押さえ(執行猶予なし)を執行して差し上げます! おい、お前たち、ジャンク債(Rシリーズ)ども!!」
「ジャ、ジャンク債って俺たちのことかよ!?」とリュウセイが気圧されながら叫ぶ。
「あいつが正真正銘の『宇宙最高の詐欺師』だと分かったのでしょう! ならばこれ以上、メンタル崩壊(債務超過)を起こしてウジウジしている暇はありません! あいつに騙し取られた開発の成果(SRX)を完璧に完成させて見せなさい! ハードウェアはイングラムが執念で仕上げていったのです、あとはお前たちの不健全な精神(ソフト)さえ噛み合えば、無敵の特機(最高のアセット)になるはずです!!」
ゼニの「金返せ」という身も蓋もない怒りの咆哮は、皮肉にも、イングラムの裏切りによって絶望の底にいたリュウセイたちの目を覚まさせる最大のカンフル剤となった。
「……そうだ。イングラム少佐、あんたが俺たちをどう利用しようとしたかは知らねえ。だけど、俺たちのRシリーズは、あんたに奪われるための道具じゃねえ! 俺たちの力だ!!」
リュウセイの念動波が爆発的に跳ね上がる。それに応呼し、ライとアヤの精神波が一本の線へと繋がっていく。イングラムが逃げる直前まで完璧に組み上げていた合体プログラムが、パイロットたちの覚醒によってついに駆動を始めた。
「いくぞ! ライ! アヤ! ヴァリアブル・フォーメーションだ!!」
光の濁流の中、R-1、R-2パワード、R-3パワードが宇宙の法則を書き換えるように融合し、天下無敵のスーパーロボット『SRX』がホワイトスターの闇の中にその雄姿を現した。
「フフ、ハハハ! 見なさいイングラム少佐! これが我が社の投資の真の成果、真の合体(黒字転換)です!」
ゼニは狂喜乱舞しながら、ゴールドミラー・プライムの大剣『ゴールド・インゴット』を抜き放った。
「さあ、未完成の不良債権は消え去りました! 監査の時間です! 覚悟しなさい、イングラム・プリスケン!! 我が社のゴールドの重みを、その身に刻み込みなさい!!」
完成したSRXの圧倒的な念動爆発と、全財産を失った大富豪のドス黒い債権回収の執念が完全にシンクロし、ハガネ隊はリヴァーレに向けて総攻撃を開始した。宇宙の命運をかけた決戦は、ゼニの算盤を武器にした猛攻によって、いよいよ最終局面へと突き進む。