通算3度目の人生、平穏に過ごしていたら帰ってきた幼馴染と一緒に林業をすることになりました 作:妖怪種火寄越せおじさん
所詮は妄想供養の駄文です。なので手心を……手心をくだちぃ。
オジサンヲイジメヌンデ……
空港を出て電車に乗り、目的地へ。駅のホームを抜けると感じる少し湿っぽい空気、見覚えのある文字が書かれた看板。行き交う人々。
命を懸け、耐え難い犠牲を払って取り戻して日常に藤丸立香は涙が出そうになる。
「先輩、大丈夫ですか?」
隣に立つ後輩、マシュ・キリエライトの声で我に返り携帯――に見せかけた通信端末を起動する。
「ダヴィンチちゃん聞こえる?」
『もちろんだとも。この天才の手にかかれば世界中どこでも通信できる端末なんて朝飯前さ』
朗らかで快活な音声が端末から聞こえる。
レオナルド・ダ・ヴィンチ。万能の天才であり、現在立香の所属する組織を暫定的に指揮している人物。
通信の感度をチェックした彼女は、少し真面目な声色で立香に今回の目的を改めて説明する。
『立香君。今回の里帰りだけど、他にも目的があることは理解しているかい?』
その言葉に立香は故郷に帰って緩んだ気持ちを引き締める。
「――ええ。私の幼馴染、烏丸 十蔵の身柄を
言い切って、立香は少しの間沈黙する。
例え彼の為であろうとも、平穏な生活から引き離すような行為をすることへの、罪悪感。
長い付き合いのあるマシュはその微妙な間からソレを察してしまい、何とも言えない表情で見つめる事しかできない。
『……君が躊躇う理由は十分に理解しているつもりだ。けど、このままでは下手をしたら――』
「――わかってる。そうなる前に、十蔵を連れてきます」
諭すようなダ・ヴィンチの言葉を遮り、覚悟を決めた立香は改めて目的を口にする。
いくつかの注意事項と、残された日数を告げてダ・ヴィンチは幸運を祈ると通信を切った。
「マシュ、じゃあ行こっか」
横にいる相棒に声を掛ける。
はい、先輩。といつもの返事を聞くと、雑踏の中へ足を踏み入れるのだった。
「悪いね。こっちの都合に付き合わせて」
自宅から歩いてすぐの駅前のマック。後から合流したキリエライトさんと俺と立香の3人はいた。
「ううん、気にしないで。連絡も無しで急に来たのが悪かったから」
「そう言ってくれるとありがたいよ」
うん、ありがたい。ありがたいんだけどさ。
「それにしたって距離が近くないか?」
久しぶりとは言え、俺の隣に座るのは如何なものかと思うのだが。3人座れる席とは言え、少々狭いし何より隣に座るにしては密着しすぎである。
「何を言ってるのさジューゾー。いつもこんな感じだったじゃん」
そうかぁ?
……そうかなぁ……?
………そうだったかもしれん。半年会わなかったせいで距離感がリセットされただけか。
「あの、先輩」
「どうしたのマシュ?」
「この方、その……いつもこんな感じなのですか?」
「(無言で頷く)」
いややっぱり違うな離れろ少し距離を置け。
腰を動かして立香たちの身体を押す――が、動かない。
見ると涼しい顔をしながらテーブルに肘を置いて抵抗していた。
――コイツ……ッ!
20秒くらい静かなる攻防を繰り広げていたものの、1ミリも動かないので白旗を上げ目の前のバーガーセットに手を伸ばす。
「で、どうだったのさその……仕事ってのは。いきなり担任から『藤丸君は急遽一身上の都合で退学することとなりました。彼女は今国連の関連組織で働いています』なんていわれたもんだからクラスが阿鼻叫喚だったぞ」
主に女子連中が。
幼馴染だから何か知ってるだろうみたいなノリで話したこともねぇ連中から質問攻めでストレスマックスだったわ。
「アハハ……ごめんね。私にも急なことだったから」
「まあ、それも2ヵ月で大分収まったが」
それまでは本当に地獄だった。
「ま、そんなことは良いとして、どうだったのさ。ほら、部外者には言えないことは置いておいてさ」
正直、そんな残り火の匂いとべったり染みついた血の匂いからして碌でも無い事に巻き込まれたんだろうけど。
隣のキリエライトさんも含めて、な。
「うーん……色々あった。かなぁ」
………………フーン。
「そ」
正直それしか言えない。ただ、碌でも無いながらもソレだけじゃないのはなんとなぁく分かった。
うらやましい限りだよ。全く。まかり違っても本人の前で口にしちゃいけないけど。
「そういえばすぐに戻るって聞いたけど、どれくらいの『すぐ』なのさ」
折角久しぶりに会ったんだし、この妙な雰囲気を変えたくて話題逸らしの為に何気なく呟いた。つもりだった。
ほら、その間家でダラダラ過ごすとか、何処に行くとか計画を立てたいじゃん? その為に聞いたんだけど……二人の雰囲気が更に湿り気を帯び始めて気が付いた。
――あっ、これ話題のチョイスを間違えた。いや、わからんて。これが地雷だなんてわからんて。
そんな後悔を他所に立香は飲んでいたカップをテーブルに置いて、俺の方を向く。
「あのね、十蔵。提案があるんだけどさ
ウチの職場を見学して見ない?」
かくして俺は日本を離れ、遠く離れた極寒の地、「人理継続保障機関フィニス・カルデア」に向かうことになり―――その後に訪れる人理漂白、そして異文帯の誕生を目撃することとなる。
妄想ぢからが続く限り、投稿を続ける所存ですので宜しくお願いします。