通算3度目の人生、平穏に過ごしていたら帰ってきた幼馴染と一緒に林業をすることになりました 作:妖怪種火寄越せおじさん
身体は動かない。拘束されてる訳では無い。
呼吸音が響き渡る。口元に装備されている呼吸器から絶えず発せられていた。
『どうした■■■。バイタルが安定していないな。休息が取れないのか』
ぼやけた意識の中で、誰かの声が聞こえる。
懐かしい声。心が締め付けられる。
『まだ手術の痕が痛むのか』
違う……違うんだ。痛むのは身体じゃないんだ。
俺は、俺は貴方に……貴方を、手酷く裏切った。
『もし調子が悪いなら言え。都度調整する』
頼む。そんなふうに気遣わないでくれ。優しくしないでくれ。
貴方が優しく声を掛ける度に罪悪が俺の心を苛むから。
だからお願いだ
―――――炎よ俺を苛んでくれ。願わくばこの身を永遠に焼き続けてくれ。俺がそうしたように。
これは決して消える事のない、俺の記憶。俺の罪。俺の後悔。
カルデアスに来て大分経つ。
正直に言おう、クッソ暇。
何が暇かって、俺自身やることが無いのである。
立香はトレーニングやらレポートの作成とやらで忙しそうにしている中、俺はというと色々な検査とか試験を受ける以外は殆ど自由時間なのである。
なのでやることと言ったら部屋でゴロゴロするか飯食うか、或いはトレーニングするかの3択なのだ。
今は昼飯時なので立香を誘うべく、彼女の自室に向かっている途中。
「立香、今良い?」
『いいよ』
ドアをノックすると返事がすぐさまに帰ってきた。
許可を得たのでスライド式のドアを開けて中に入る。
視界に入る恐らく年月が長いからか本人なりのアレンジメントが加えられてはいるが、シンプルな部屋。
そしてシャツを脱いで上半身が露になった立香の―――。
「おっと失礼」
俺は慌てて部屋を出た。
幼馴染とは言え、その辺りのマナーは弁えているのだ。女子の着替えを見るべからず。
にしても立香さんや無防備じゃないですかね?
「ごめんごめん、他の人と勘違いしてた」
数十秒後、着替え終えて制服姿になった立香が出てくる。
いや、そこは普通に恥らお? 日本にいた頃はそんなこと……あったけど。俺がいる真横で着替えていたこともあったけどさ、もうちょっと恥じらいの心持と?
「それで、用事って何?」
「ああ、ウン。びっくりして忘れてた。昼飯の時間だから誘いに来た」
「そっか。もうそんな時間か。うん。わかった丁度話したいこともあるし、一緒に行こうか」
道中キリエライトさんも誘って食堂へ。
「あの、烏丸さん」
ほえ?
「その……これから起こることに驚くかもしれません。先輩がお話する内容に理解が及ばないかもしれません。それでも、気を強く持ってください」
え、え、え、何何々? 何が起きるの!? 怖いよ―!!
ま、俺が聞きたいことに直結するかも知れないし、そうでなくてもなんとなぁく察してはいるけども。
食堂に着くといつもよりも活気づいていることに気が付いた。
見ればそこには大勢の色々な格好をした人でごった返していた。
現代風なファッションをしている黒いひげのおっさん。
一つのテーブルを囲んでいる鎧姿の一団。
見覚えのあるピンク髪……アレはセーラー服着てた人か。
全身スーツ姿の刀をひっさげた女の人と、槍を持った女の人……退魔忍かな?
兎に角、コスプレ会場かと見紛うばかりの多種多様な格好の人間で溢れていた。
「……立香。これは一体?」
隣の立香に視線を見やるも、お昼が終わってからねとお預け状態。
仕方がないので、受け取り口に向かうとそこにはエロ……もといエライ格好の女の人が配膳を担当していた。近所に居たら性癖が歪むタイプの人だな。
幼いころの初恋だけど旦那さんが居て……みたいな。
「おっ、キミが噂の幼馴染クンかぁ! しっかり食べるんだよ!」
「アッ……ドウモ」
随分盛られてしまった……喰いきれるかこの量?
「どうも。ブーディカさん」
「マス……立香ちゃんはトレーニング終わりかい? ならキミもしっかり食べないとね!」
うおっ、すっげぇ量……俺の一日の食事量より多いんじゃねぇのアレ。
キリエライトさんは……彼女もほぼほぼ同じ量盛られてますね(白目)
飯を(気合で)食いきって、襲い掛かる眠気と格闘している俺に、立香が声を掛ける。
「十蔵」
いつものように間延びした呼び方じゃない。何か真剣な話をするときの癖だ。
真面目な雰囲気に重くなった瞼が一気に覚める。
立香の方を見ると覚悟を決めた目をしていた。
「話したいことがあるんだ」
「それはアレか、お前の身体が傷だらけの事にも関係あるのか?」
眼を見開く立香。いや、お前の上半身見たんだから気が付かないわけ無いだろ。
しかし、それも一瞬の事。無言で頷くと改めて口を開く。
「その、驚かないで一度全部聞いて欲しいんだけどさ――」
そう前置きを置いて彼女は話し始める。
人理継続保障機関フィニス・カルデアの目的。爆破事件。最後のマスターとなった立香と彼女が縁を繋いだ英霊達による、7つの特異点を巡る聖杯探索。
どれだけの時間が過ぎたのだろう。すっかり人が少なくなり、静まり返った食堂で立香は物語を語り終える。
「――以上が失われた1年間の真実。ごめんね。あまり信じられない話だけど」
はにかみながらそういう立香の笑みは、少なからず不安の色も見えていた。それを見守るキリエライトさんの表情も。
俺は、今までの情報を纏めながら一つの疑問を口にした。
「……取り敢えず、その話が本当だとして人理焼却とやらは回避されて、こうして世界は元通りに戻ったんだよな?」
「信じるの?」
「信じるも何も、お前が真面目な顔して嘘ついたことないじゃん」
冗談云う時は大概表情に出てるし、それに、ねぇ……。
「時代錯誤な恰好してる割にコスプレ感の無い連中目の当たりにして嘘だとは思わんよ……あの全身タイツ姿の二人はコスプレだって信じたいけど」
俺の言葉に誰と誰を創造したか「あー……」みたいな顔で気まずい様子で目を逸らす立香。
話が逸れたな。
「で。疑問なんだが、世界は元通りになったのに俺が此処にいる理由はなんだ? これから何が来る?」
本当に職場見学でしたーじゃないだろうな。
此処数週間見てても職員の様子が切羽詰まってるし、2,3日前から一層ピリピリしている様子だった。
ありゃ予想できている『非常事態』に対処する組織の空気感だ。
「……昔から十蔵はそういうところ勘が鋭いよね」
勘というか経験の賜物なんだけどな。
「――それは私から説明しましょう」
俺達の会話に割り込むようにして涼しくも威厳のある声が耳を打つ。
振り向くとそこには――あの時のおもしれー恰好してた銀髪の女の人がいた。
あの赤単色のシャツではなく、肌面積の多いドレスの様な服装に黒い王冠を頂くその姿は冷徹な女王然としていた。
「我が名はモルガン。近い将来お前たちが訪れる異聞帯の王。妖精国の女王です」
簡易人物紹介
主人公:■を■■■男。
モルガン陛下:悪口(?)は全部ばれている。私服があれなだけで普段はバチッと決めている。
全身タイツの2人:誰師匠と何処何氏の棟梁なんだろうなぁ……(すっとぼけ)
次回:序/2017年12月31日になります。書きたいシーンがようやく書ける……。