通算3度目の人生、平穏に過ごしていたら帰ってきた幼馴染と一緒に林業をすることになりました   作:妖怪種火寄越せおじさん

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 どうも。年中種火が足りず四苦八苦しているマスターです。
 種火だけでなく素材も足りません。

 復刻イベントが待ち遠しい……。


軽すぎて、何よりも重たい代償

――ッ何が……起きたのですッ!?

 

 コヤンスカヤ・タマモヴィッチは激痛と混乱に苛まれながら、何とか己の置かれている状況を把握する。

 視界の中、得られる情報。

 

 爆炎で煤けたカルデアスの廊下、許容量外の損傷によって塵と化すオプリチニキ。そして――舞い散る塵と煙の中に立つ、異形の影。

 

 微かに見えたのはさながらSFの強化外骨格の様なアーマーを身に着けた正体不明の男の姿。

 先程までいたであろう場所に目を向けるも既にそこに姿は無く、あのカルデア職員も見当たらない。回収して撤退したのだろう。

 

――オプリチニキは……駄目ですね。全滅してしまいましたか。

 

 追跡も不可。退去した筈のサーヴァントが隠蔽されていたことに加え、あの正体不明の男。

 想定外が多すぎる故に、深追いすれば手傷が増えるだけ。

 それを理解したコヤンスカヤは乱れた毛並みと服装を正しながら皇女の元へと戻っていくのだった。

 

「……この代償は、何れ支払わせて頂きましょう。狐は受けた怨は何時までも抱えるものです。精々、気を付けて下さいね?」

 

 先程よりも、より残酷で、より深い笑みを浮かべながら彼女は廊下の奥へと姿を消した。

 

 

 

 

 彼女を慕うサーヴァント達でさえ滅多に見たことのない切迫した表情を浮かべながら、藤丸立香はカルデア内の廊下を全速力で走っていた。

 

「先輩! シルビアさんのおっしゃってた地点まであと少しです!」

 

 マシュ・キリエライトのその言葉に地面を蹴る立香の脚に力が籠る。

 

――間に合え間に合え間に合え

 

――もう、もう失うのは嫌だ。

 

 

 彼――烏丸十蔵との付き合いは長い。

 幼少期からの付き合い。言葉にしてみればたったそれだけだが、その重みは言葉以上の物だ。

 過酷な聖杯探索を終えた今となっては殊更重みを持つ。

 そんな彼をカルデアに招待したのはサーヴァント、妖妃モルガン……否妖精女王モルガンの提言もあるが、何よりも彼女がそう強く望んだからでもあった。

 

 危険が伴うことは承知の上。しかし、それでも、彼と共に過ごしたいという思いはそんな理屈を押しのけて、彼を此処に連れて来た。

 しかし、いざ蓋を開けて見ればどうだ。

 匿っていた筈のシャドウ・ボーダー内には彼の姿は無く、更には職員が一人いないという。

 その情報を聞いて、最悪の想定が頭をよぎる。

 シャドウ・ボーダーから抜け出し、取り残された職員を助けに行ったのだ。

 

 故に、なし崩し的に救出した新所長のゴルドルフ・ムジークをシャドウ・ボーダーに押し込み、現状随伴できる最大戦力を以て捜索に当たっているのだ。

 

 もしも、十蔵が死ぬようなことがあれば。

 そんな最悪の『もしも』が何度も、いくつも浮かんではその度にその焦りが脚に力を送る。

 

 最も、その『もしも』は当の本人によって否定されることになるが、それは決して喜ばしい結果を齎すことは無かった。

 

「―――ッ! マスター、前方から誰か来ます。構えてください!」

 

 マシュのその言葉に地面を蹴る脚が止まる。

 随伴していた源頼光とレオニダスの二人が獲物を構え前に立つ。

 やがて接近する影。そこにいたのは―――。

 

「じゅう、ぞー…………?」

 

 逃げ遅れたという職員を抱えた、変わり果てた幼馴染の姿だった。

 日本人の特徴ともいえる黒い髪はすっかり白く染まり、黒に近かった茶色の眼球は宝石の様な赤い色に変わり、何よりも――四肢を、全身を装甲が覆っている。

 それはまるでSFアニメから飛び出したパワードスーツのようで―――しかしその顔立ちは慣れ親しんだ幼馴染に瓜二つであった。

 そんな存在が、その装甲の所々にあるバーニアを噴射させて此方に近づいて来る。

 

 状況を飲み込めない彼女の手前で止まった幼馴染に似たその人物は、噴出させていたバーニアを停止させカルデアの廊下に痕を刻みながら彼女達の手前で停止すると、口を開いた。

 

「立香」

 

 ほんの数時間前に聞いた時と同じ慣れ親しんだ声、慣れ親しんだ抑揚。

 立香の本能は残酷な判断を下さずにはいられなかった。

 

 

 目の前の人物は、十数年間の殆どを共に過ごした幼馴染であると。

 しかし、それでも脳はその事実を拒みたくて眼前に立つ人物に問いかける。

 

「十蔵、なの?」

 

 返答は直ぐだった。

 

「――――ああ」

 

 文字数にして、二つ。

 そのたった二つの文字数で、彼女は現実を受け入れざるを得なかった。

 

「十蔵さん、その姿は一体―――」

 

 戸惑ったマシュが彼に問いかけるも、変わり果てた幼馴染はそれを遮って口を開く。

 

「積もる話は後ででもできる。今は追手が来る前に、一刻も早くこの施設から脱出するべきだろう」

 

 

 

 

 

 

 斯くして彼女達は謎の勢力―――否、異聞帯からやってきた侵略者の魔の手から逃れ、南極から脱出することに成功した。

 成果としてはこれ以上ない程上々たるものだろう。

 

 カルデアの面々は誰一人として命を落とすことなく、そして戦力となるサーヴァントを多数抱えた状態。

 これから訪れる様々な苦難を、正史よりも容易に乗り越えられる。

 

 これ以上ない程のベスト。ダ・ヴィンチもホームズも、そしてカルデアの職員たちもそう思うだろう。

 しかし、それは藤丸立香にとっては何よりも重たい代償を支払って得たものであった。




簡易人物紹介。

藤丸立香:幼馴染が変わり果てた姿で現れた感想はどうだ? 感想を述べよッッ!!!

コヤンスカヤ:怒り心頭。
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