「……ねぇ、扱いが雑すぎない?」
牢屋に連行されるまではまだ良かった。だが、ただでさえ狭い牢屋に六人全員を押し込むのは普通に考えてあり得ない
「琴音様!そんなことより俺っちはもっとあの店を楽しみたかったす!」
血涙を流すような勢いで涙を滝のように流しながらゴブタは琴音の羽織を引っ張る。二人の様子を見てカイジンは申し訳なさそうな顔をする
「すまねぇな。俺が短気を起こしちまったばっかりにみんなを巻き込んじまって……すまん」
深々と頭を下げた
「ヘッ大丈夫問題ないさ」
「オヤジさんが気にすることないですよ」
「うんうん」
仕事仲間の三人はあまり気にしていないようだが、琴音は裁判を受ける事を懸念していた
「カイジン、念のために聞いておくけど大臣に手を出したからって死刑にはならないよね?せっかく仲間にした名工が処刑されると私が困るんだけど」
「いくら何でもそこまではいかないだろう。せいぜい、罰金ぐらいで済むだろう」
普通に考えて、殴った程度で死刑になるとは思っていない。だが──殴ったのカイジンを目の敵にしているベスターだった事だ
「ベスターは貴方の事を目の敵にしていたけど何か因縁でもあるの?」
カイジンは少し黙ると静かに口を開いた
「俺はこの国の王ガゼル・ドワルゴに仕えていたんだ。七つある王宮騎士団の、その一つの団長だった」
さらりと王宮直属騎士団で団長を務めていた事を話すが、その肩書きだけでどれほど優秀だったかはすぐにわかる
「奴はその時の俺の副官だった。俺は庶民の出に対してあっちは公爵の出でな。庶民の出である俺の部下になったのが面白くなかったのだろう。当時からよく衝突していた」
確かに庶民が上で公爵が下なんてベスターからしたら屈辱以外の何ものでもないだろう
でも、庶民の出でありながら団長になったカイジンも凄いが、地位を見ずに、実力を見てカイジンを団長にした上層部の判断も凄いと思う
「そんな時だ。功を焦ったベスターは計画の一つだった魔装兵計画がポシャっちまった
ベスターは軍の幹部を抱き込み、嘘の証言まで用意して自分の失敗を隠蔽して全ての責任を俺に押し付けた。で、俺は責任を取って軍を辞めたって訳だ」
話を終えて琴音は納得したように腕を組む
「なるほどね。で、ベスターは未だにカイジンの事を目の敵にしているのね。随分としょうもない奴ね」
「そうだな。ただ、ベスターは根っからの悪人ってわけじゃないんだ。俺とは馬が合わなかったが、あいつが研究熱心で努力家だって事は知っている。功を焦ったのも王の期待に応えようとした結果だしな
俺がこの国を出ていけばあいつも少しはマシになるかもしれないしな」
罰金で済む程度なら琴音の仲間になる事はなかった
でも、ベスターの事を考えれば国から出て行く事は結果的にベスターのためでもある。責任を押し付けられて、追放された後もあれだけの仕打ちを受けてもなお、ベスターの事を気に掛けるとは……本当に、つくづくお人好しな人だ
「だからよ琴音の姐さん、世話になるぜ」
「こちらこそ。頼りにさせてもらうよカイジン」
「それなんですけど……」
二人の会話にガルムが口を挟んできた
「俺達もカイジンさんについて行きます」
「そうっす。カイジンさんと一緒に働けるならどこでも行きます」
「うんうん」
「お前達……」
口には出さないが、表情から嬉しそうなのがわかる
「琴音の姐さん。俺たちもついて行ってもいいかい?」
「こき使われても構わないって言うならまとめて面倒見てあげる」
琴音の言葉に三人は嬉しそうに頷く
こうしてカイジンと、その仲間である三人も正式に仲間を迎え入れた
狭く、月明かりし届かない牢屋の中は不思議と空気は明るく、笑い声が響く。新たな仲間を迎えた琴音達は明日への期待を胸にその夜を過ごした