龍姫は理想郷を作らない   作:龍姫の琴音

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第十二話旅立ちの判決

次の日

琴音達は裁判所へと移送された。中では兵士達が厳重な警備にあたっており、重苦しい雰囲気が漂っていた

 

「ガゼル・ドワルゴ王のご出馬である」

 

カイジン達が膝をつくと、足音を響き渡らせ笛の音と共に鎧を着た英雄王ガゼル・ドワルゴが現れ席に着いた

 

(英雄王……確かに雰囲気だけで強いのは伝わってくるわね)

 

すでに暴風竜と対面している琴音からすれば圧倒的な威圧感はない。だが、姿と立ち振る舞いだけを見ても英雄王と呼ばれる理由が伝わってくる

 

「これより裁判を始める。一同、起立」

 

膝をついていたカイジン達が立ち上がる。裁判の流れを知らない琴音とゴブタは立ったままでも裁判が続くのは琴音達がこの国の住民ではないからなのか、もしくはただのオマケだと思われているのかもしれない

 

昨夜、カイジンから聞いた話だと被告人は王の許しなく発言する事が認められていない。なので、代理人を立てるのが普通なのだが……

 

今、目の前で弁護してくれるはずの代理人はベスター達が店で飲んでいた所にカイジン達がやってきてベスターに暴行を加えたと発言している

 

「買収されたな」

 

「でしょうね」

 

カイジンは想定していなかったのだろうが琴音にとっては予想通りの展開だった

チラッと横目でベスターを見ると頭に包帯、顔には大きなガーゼを当て、右腕を骨折したかのように吊っている

 

退屈な三文芝居を見せられている事に辟易しているとベスターが前に出る

 

「ガゼル王よ。お聞き届けいただけましたでしょうか?この者達への厳罰を申し渡しください」

 

ベスターが最後に発言すると、裁判官達は話し合いを行い、それからしばらくして裁判官は判決を言い渡す

 

「主犯カイジン。この者は鉱山での強制労働二十年に処す。そのほか、共犯者共は鉱山での強制労働十年に処す」

 

言い渡されたのは理不尽極まりない判決だった。琴音はこの場で暴れてカイジン達全員を連れて国外へと逃走しようと考えたその時だった

 

「待て!」

 

ガゼル王の声が裁判所内に響く

 

「久しいなカイジン、息災か?」

 

ガゼル王がカイジンに声をかけた。カイジンはすぐに膝をつく

 

「はっ!」

 

カイジンに続き、他の者達も膝をつく

 

「カイジン、答えてよろしい」

 

裁判官はカイジンが発言する事を許す

 

「はっ!王におかれましてもご健勝そうで何よりでございます」

 

「カイジンよ。余の元に戻ってくる気はあるか?」

 

ガゼル王の発言に琴音はカイジンを見る。カイジンが何を思い、どう答えるのかをただ見守る事だけにした

カイジンは顔を上げ、ガゼル王を見る

 

「恐れながら王よ、私は既に主を得ました。この契りは私の宝であります。この宝……たとえ王の命令とあれど手放す気はありませぬ!」

 

前に仕えていた主の元に戻れるというのにカイジンはガゼル王ではなく琴音を選び、堂々と宣言した

 

「貴様!無礼な!」

 

兵士の一人が声を上げるとその場にいた兵士達全員が武器を一斉に構える

 

ガゼル王は立ち上がり手を挙げると兵士達は武器を収める

 

「判決を言い渡す。カイジン及び、その仲間を国外追放とする。余の前から消えると良い!」

 

厳しそうに言っているが、要するに新しい主の元で頑張れという激励なのだろう。カイジンは何も言わずに涙を流し、それを見つめるガゼル王からは寂しさを感じ取れた

 

琴音は大きく息を吐くと歩き始める。琴音の行動に周りの兵士達が武器を構えるが琴音は構う様子なくカイジンの前に出てガゼル王を見る

 

「ジュラの大森林、テンペストの守護者・琴音。貴方が彼らを手放すなら私が彼らを迎え入れても文句ないよね?」

 

「……」

 

ガゼル王は何も言わずに琴音の言葉だけを聞く

 

「餞別代わりに貴方達がゴブタの隙を見て入手したポーションはあげるわ。完全再現出来るように精々頑張って研究する事ね」

 

鉱山でゴブタに渡したポーションの残りはあの場にいた兵士が秘密裏に回収しており、琴音はそれをあえて見逃した

ポーションの性能を見て誰かが接触してくるかと思っていたがカイジン達が仲間になってくれたおかげで今ではもう不要な物だ

 

裁判が終わり、カイジン達は国を出るための荷物を纏めた。全ての準備が終わる頃には夕方になっていた

門の前に行くと弟のカイドウがカイジン達を見送るために待っていた

 

「兄貴、元気でな」

 

「迷惑かけたな。お前も元気で」

 

「琴音の姐さん、兄貴を頼む」

 

「仕事さえしてくれれば不自由な思いはさせないから安心して」

 

琴音の言葉を聞いてカイドウは安心する

 

「これより判決に従い、カイジンとその一味を国外追放とする。早々に立ち去れ!」

 

カイドウ達は国の中に戻るとゆっくりと門が閉まった。もう、この国には二度と来る事が出来ないという事は夜の蝶にも行けなくなると思うと名残惜しい

 

「それじゃ、行きますか」

 

カイジンとその仲間という最高の名工達を連れて琴音達はテンペストへの帰路につく

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