龍姫は理想郷を作らない   作:龍姫の琴音

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第十四話封印の代償

第十四話

次の日、カバル達はブルムンド王国へ報告するために一度帰還する事を決め、シズはここでカバル達と別れて森を一人で抜ける事になった

 

琴音は大賢者と共に村の外まで見送りに出た

 

「シズさん、短い間でしたが一緒に旅が出来て良かったです」

 

「私も貴方達とパーティーを組めて楽しかった」

 

別れの挨拶を終え、それぞれが歩き始めようとした、その時だった

 

シズの足が止まると急に苦しみ出し、体から炎が薄らと放出しているのが見えた

 

「あぁぁぁぁぁ!」

 

「琴音様、魔力が不安定になっています」

 

シズは自分で自分の体を強く抱きしめて内側に溜まっている魔力を押さえ込もうとするが収まる気配がない

 

(このままだとみんなが……)

 

抑えようと考える程に魔力は不安定になっていき暴発の寸前までいった時だった。シズは誰かに優しく包み込まれるような感覚を覚える

 

「焦らない。まずは呼吸を整える」

 

琴音の声がシズが失っていた冷静さを取り戻していき、言われた通り呼吸を整える

 

「次に体から力を抜いて私に体を預ける。シズは心を落ち着かせる事に集中して」

 

琴音の言う通りに体を琴音に預ける事で全身から余計な力が抜け、不安定だった魔力も少しずつ落ち着いていき、完全に魔力が安定すると体から放出されていた炎が止まった

 

「とりあえず安定はしたかな」

 

安全を確認して琴音はシズから体を離す

 

「琴音様、あまり無茶をするのはお止めください」

 

「あはは……体にダメージが来るのは私も予想外だったかな」

 

着物は所々が焼けており、シズを抱きしめて接触していた腕や顔の一部は焼け爛れている

 

「ほっといても治るから大丈夫でしょう」

 

話している間も怪我をした箇所はゆっくりではあるが治癒していっている

 

「ありがとう琴音」

 

足元をふらつかせながらシズは立ち上がり琴音にお礼を言う

 

「安心するのはまだ駄目。私がやったのは一時的なものだから次に不安定になったら……確実に死ぬよ」

 

その言葉にシズは分かりきったような顔をするに対してエレン達は目を見開く

 

「助かる方法はないんですか!?」

 

エレンの質問にシズが口を開く

 

「私は召喚者なの。私を召喚した人なら方法を知っているかもしれないと思って旅をしていたんだけど……もう時間がないみたい」

 

打つ手なしと言うが琴音はシズが助かる方法があるのではないかと大賢者に尋ねる

 

「大賢者さん、何か方法はある?」

 

「原因は二つあります。その二つを解決すれば問題ありません」

 

「だってさ」

 

助かる方法があるという大賢者の言葉にシズの瞳に希望が宿る

 

「その方法を教えてください」

 

「その前にお尋ねします。シズ、貴方が契約している精霊は何ですか?」

 

「炎の上位精霊イフリートです」

 

「分かりました。まず、原因の一つはその仮面です

その仮面は上位精霊ですら封じ込めるほどに強力です。ですが、長年封じ込まれていた事でイフリートの魔力は行き場を失い、貴方の体に蓄積され続け、結果として制御出来ないでいるのです」

 

強力な封印は確かに効果はあった。だが、長期的な封印は逆に自分の首を絞める事にもなったと言うわけだ

 

「そして二つ目は貴方の修行不足です

今までイフリートの封印をその仮面に任せていた事で自分自身でイフリートを制御しようとしなかった。その結果が今の状況です」

 

「はい……」

 

自分でも薄々気づいていたのか図星を突かれたようでシズは落ち込んだ様子を見せる

言っていることは正しい。だが、オブラートに包まずに事実だけを突きつけるのは大賢者がスキルとして効率だけを重視しているせいなのだろう

 

「まずは体に溜め込んだ魔力全て放出する事が最優先事項です。その後、仮面を使わずにイフリートの魔力を抑えたり溜め込むのではなく体に魔力を流す要領で体外に定期的に放出する事です」

 

「魔力を……流す?」

 

今まで魔力を抑え込むことしか考えてこなかったため、それ以外の発想ができなかったのだろう

 

「おーい!琴音」

 

声と共に琴音の横にヴェルドラが隕石のように降ってきて着地する

 

「何やら物凄い魔力を感じたが何があったのだ?」

 

「あ、ちょうど良い所に来たね」

 

「?」

 

何の事か分からずにいると琴音は足元に龍気を広げる

 

龍王の不可侵領域(ドラゴン・テリトリー)

 

その場にいた全員が混沌に飲み込まれ、白と黒だけの空間に閉じ込められる

 

「ここは私が作り出した空間

この空間では、内側で起きた現象は一切外へ漏れない。逆に外からの干渉も完全遮断される。この中でなら周りを気にせずに全力で戦えるよ」

 

「戦うって彼と?」

 

シズは先ほどやってきた男の方に目を向ける

 

「そう。多分、シズは自分より強い相手でも人の姿していたら全力を出せないと思うんだ。だから……ヴェルドラ、本気で相手してあげて」

 

「!!!!」

 

シズを含めた四人が琴音の言葉に耳を疑う。ヴェルドラは琴音の意図に気づくとニッ!と口元に笑みを浮かべると魔法を解き、元の姿に戻る

 

「魔力を一気に発散させるなら、それを受け止められる相手が必要だからね

それに、最近ヴェルドラが暴れたいってフラストレーションを溜めていたからついでに発散させてもらうにもイフリートはちょうどいい相手だしね」

 

シズは琴音の真意を理解した。自分の命を救うため、本気で戦える相手としてヴェルドラをぶつけてきた。なら、それに応えるためにシズは仮面を静かに外しヴェルドラへ向けて剣を構えた

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