龍姫は理想郷を作らない   作:龍姫の琴音

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第三話守護者の誕生

大賢者の先導で洞窟の中を進み続けると出口と思われる扉の前に辿り着いた

 

「琴音様、この扉の先が外につながっています」

 

「うん。ありがとう大賢者さん」

 

扉に手をかけて押すと扉の外側でガチャン!と音を立て扉が開かない

 

「あ、外から鍵がかけられている」

 

この洞窟にはヴェルドラが封印されている。そう考えれば鍵を付けておくのは当然だ

 

「鍵だと?我が壊してやろうか?」

 

腕を軽く振って前に出るが琴音がヴェルドラを静止する

 

「それもいいけど、洞窟内の魔物が外に出るのは生態系に異常が出そうだしここは私に任せて」

 

そう言って琴音は扉に手を当てる

 

「龍気術発動『混沌の大地』」

 

琴音の手から混沌が放出されると混沌は扉の隙間から外に出るとガチャンッ!と何かが地面に落ちる音がすると扉が開いた

 

「開いたよ」

 

「おぉ!凄いな琴音」

 

ヴェルドラを先頭にして三人が外に出ると洞窟を最後に出た琴音は洞窟の扉を閉めると足元に落ちている鎖を拾い上げると扉の取っ手の部分に巻きつける

 

「そういえば琴音、我を封じていた結界の解除やさっき使った龍気術とか言うやつは何だ?スキルか?」

 

ヴェルドラの質問に琴音はどう答えるべきか考える

この世界の言葉で言い換えるのならスキルと言って説明した方が早いが、ヴェルドラの知っている異世界人とは違うのを考えるとちゃんと説明した方がいいかもしれない

 

「まず、前提として私はヴェルドラが説明してくれた異世界人とは全く違うという事を理解してほしい

私は龍人族という生まれながらにして龍の魂を体に宿している種族なの。私の体には龍力と呼ばれるこの世界でいう所の魔力が流れている

その龍力を龍気に変換する事で龍人族は初めて龍の力を行使出来る。この術の名前が龍気術」

 

「なるほど。つまり龍気術とはこの世界でいう所の特殊能力(ユニークスキル)と言うわけか」

 

一回の説明ですんなりと理解する。最初に会った時に琴音と大賢者さんの正体を見抜いているし、ヴェルドラは意外にも頭がいいのかしれない

 

「私の龍気術は特殊で闇と光が複合した混沌属性。混沌属性に違う属性を合わせると属性毎に混沌の性質が変わるの」

 

「ほぉ、それは興味深いな」

 

琴音の説明を聞いてヴェルドラは面白い玩具を見つけたかのように口角が上がる

 

「さっき私が使ったのは混沌属性に地属性を合わせた“混沌の大地”。触れた物体を崩壊させる性質を持っているわ

その性質を利用して扉に付けられていた鎖の一部を崩壊させたと言うわけ」

 

「さらりと言っておるが物体を崩壊させるって普通に恐ろしい性質だな……他の属性はどうなるんだ?」

 

崩壊させると言う言葉に恐ろしさを感じながらもヴェルドラは他の属性にも興味津々に尋ねる

 

「まぁ、それはおいおい話してあげるよ」

 

ヴェルドラから視線を外し、森の方に向けると遠くから集団がやって来た

その者達は緑色の肌に子供ぐらいの小柄な体をしており見た目はゴブリンに似ており、集団の先頭にいる杖をついた年寄りは琴音達を見つけると膝をつく

 

「おぉ……この力は間違いありません。貴方様は暴風竜ヴェルドラ様」

 

「ほぉ、この姿になった我の本性を見抜くとはゴブリンにしては見所があるようだな。して、我に何の用だ?」

 

年寄りは他のゴブリンに視線を送ると全員がその場に座りヴェルドラの方を見る

 

「ヴェルドラ様、どうか我らの村をお救いくださいませ」

 

ゴブリン達は深々と頭を下げ、ヴェルドラに懇願する。ヴェルドラはしばし考えると困ったような顔をして琴音の方に視線を向ける

 

「琴音、こう言った場合はどうすればいいのだ?」

 

どうやらヴェルドラ本人は今の状況をイマイチ飲み込めていないようだ

 

「とりあえずゴブリン達が住む村に行きましょう。詳しい話を聞かないと私もどうしたらいいか分からないわ」

 

「なるほど。おいゴブリン共、お前達の村で詳しく話を聞かせろ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

ヴェルドラに礼を述べ、琴音達はゴブリンの村へと案内された

 

───

 

洞窟の入り口から少し歩いた場所にゴブリン達の村があったが村と呼ぶには小さく、建っている家もお世辞にも立派とはいえない

 

琴音達は村の中央に建っている家に案内されると年寄りと、一体のゴブリンが琴音達の前に座り年寄りが口を開く

 

「ヴェルドラ様とそのお仲間様。ようこそ我が村へ。私はこの村で村長をさせていただいております」

 

「うむ!では早速、話の続きを聞かせろ」

 

「はい。我々ゴブリンは力が弱く、身を守るためにこのヴェルドラ様の縄張りであるジュラの大森林でひっそりと暮らしておりました

しかしある日、ヴェルドラ様の魔力が急激に弱くなった事で魔物の活動が活発になり森の外にいた魔物達がこの森にちょっかいをかけるようになったのです」

 

村長の話を聞き琴音は大賢者へ念話を送る

 

『大賢者さん、この森に住む魔物がヴェルドラの庇護下にいるのだとすればヴェルドラが森を出るとかなりまずい状況になる?』

 

『はい。具体的に言いますと新たな森の支配者になろうと様々な魔物がこの地を狙ってくるでしょう

そして、狙ってくるのは魔物だけではありません。周辺の人間が住む国も森の支配権を得ようと動き出す可能性があります』

 

『人間までもこの森を狙う可能性が……』

 

琴音の予想を超える事態に冷や汗をかく

 

『それに加え、現在のヴェルドラは人の姿となり魔力を抑えています

外部から見れば長年ジュラの大森林を支配していた暴風竜の気配が突如として消失したようにしか見えません。事情を知らない者達は暴風竜が死んだ、あるいは弱体化したと判断するでしょう』

 

その言葉を聞き、今回の騒動の原因は自分である事を自覚した

たとえ自分に原因があったとしても、あの時ヴェルドラの封印を解いた事に後悔はない。あのままヴェルドラを放置する事なんて出来ない

でも、自分の行動がこの森の均衡を崩た事は変えようもない事実だ。なら、封印を解いた者として責任を取らなければならい

ならば取るべき行動はもう決まっている。琴音はヴェルドラの方に体を向ける

 

「ヴェルドラ、話がある」

 

「ん?真面目な顔をしてどうした琴音」

 

「この森はヴェルドラがいたから守られていた

でも、私がヴェルドラの封印をといてしまったせいでこの森の均衡は崩れた。これから先、この森にはヴェルドラに代わって次の支配者になろうとする魔物が現れる

いや、魔物だけじゃなくて人間の国もこの森を狙ってくる可能性だってある」

 

そうなればこの森は戦場となり、そうなれば力の弱い魔物達は居場所を失い多くの犠牲者が出る

 

「私は、封印を解いた者としてこの森を守る責任がある。だから私はここに残ろうと思う」

 

琴音の決意を聞いたヴェルドラはニヤリと笑った

 

「なら、我も残るぞ」

 

「えっ!?」

 

予想外の返答に琴音は驚き目を丸くする

 

「三百年もの間ずっと閉じ込められていたんだよ。もうどこに行くのも自由なんだよ」

 

「だからだ」

 

ヴェルドラは楽しそうに笑う

 

「三百年ぶりの自由を我はお前と楽しみたいんだ」

 

「ヴェルドラ……」

 

「我はお前と共に世界を見たいんだ。お前が残ると言うのなら我もここに残る。それにだ」

 

先ほどの楽しそうな顔から鋭い目つきになる

 

「この森の支配者になったつもりではないが我になり変わってこの森を支配しようとする奴は気に入らん。お前がこの森を守りたいと言うのなら我も力を貸すぞ」

 

琴音はヴェルドラを自由奔放な竜だと思っていただが、今のヴェルドラの言葉には義理と情があった

 

「そっか」

 

琴音h思わず笑みを浮かべると肩の力が抜けた

 

「なら、手伝ってくれない?ヴェルドラ」

 

「おう!」

 

琴音は村長の方に向き直る

 

「村長、村を救ってほしいと言う願いは聞き入れます」

 

「おぉ……!それは本当ですか!?」

 

村長とそれを聞いていたゴブリン達の表情が明るくなる

 

「ですが、こちらにも条件があります」

 

「条件……ですか?」

 

村長の声が僅かに震える。自分達に支払えるものなんてほとんどない。そんな不安が村長の胸中に広がる

不安がる村長を見て琴音は優しく微笑む

 

「簡単な話です。私達は戦力を提供します。その代わり、この村を拠点として利用させてください」

 

「そのような事でしたら是非!どうか我らの村をお守りください」

 

村長は深々と頭を下げて琴音達に何度も感謝の言葉を述べた

こうして琴音達はジュラの大森林に住まうゴブリン村の守護者となった

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