テンペストを出発した琴音達はドワルゴンに向かうため、アメルド大河に沿って北上した
しばらく走り続けると陽が沈み始めたので野宿の準備を始めた
焚き火を囲み、持ってきた肉が焼き上がるの待っている間に琴音は以前ドワルゴンに行った事があるゴブタにドワルゴンについて聞いてみた
「正式には武装国家ドワルゴンという名称っす。天然の大洞窟を改造した美しい都でドワーフだけじゃなくてエルフや人間もいっぱいいるっす」
「異種族が暮らしている国……テンペストと似たような国ね」
「ドワーフ王のガゼル・ドワルゴンは英雄王と言われる人物で国民にものすごく慕われてるっす」
「英雄王……ヴェルドラが聞いたら真っ先に勝負を挑みそう……連れて来なくて良かった」
ヴェルドラを村に残した選択はどうやら正解だったらしい
この話を聞いたら「面白そうではないか!」と言って飛び出しかねない。琴音が安堵しているとリグルが追加の情報を口にする
「ドワルゴンは中立の自由貿易都市で、あの地での争いは王の名において禁じられているのです。武装国家ドワルゴンはこの千年、不敗を誇りその強大な軍事力がそれを可能としているのです」
「英雄王に千年不敗の軍。普通に考えれば敵に回す方が愚かね」
もっとも、相手が誰であろうとテンペストに危害をくわえるのなら話は別。英雄王だろうとテンペストを守るためだったら全力で叩き潰す
話が終わると頃には、肉が焼き上がり食事を済ませると見張りを残して眠りについた
次の日、カナート大山脈を越えると目的地であるドワルゴンが見えてきた
琴音はドワルゴンの近くにある森でランガの背から降りる
「リグル達はここで待っていてくれない?」
「えっ!?どうしてですか?」
自分達も付いていく気だったリグルは困惑した
「大勢で行ったら目立つからよ。それに案内役にゴブタを連れて行く。ゴブタもそれで良い?」
「はい!任せるっす!」
琴音は人間の姿をしているがリグル達は見た目で魔物と判断される。全員で行くと怪しまれる可能性があるのでここは少数で行った方が国内で動きやすくなる
リグルは渋々と納得して琴音とゴブタを見送った
ドワルゴンの城門の前まで行くと大勢の人間や魔物が入国するために長蛇の列を作っていた
「入国のチェックは厳しそうね……」
「中に入れば自由に行動できるんすけどね……」
中に入るまでどれぐらい時間がかかるかなと考えていた時だった
「お、こんなところで魔物発見♪」
後ろを振り返ると人相の悪い二人組がこちらを、というよりはゴブタを見ていた
「まだ中じゃねぇし、ここなら殺しても良いんじゃね?」
二人組は武器を取り出しこちらに向けてきた
「国に入る前に騒ぎを起こしたくないんだよね……」
先に並んでいる人達も不穏な空気を感じ取ってざわついている
このまま騒ぎが大きくなると自分達にも騒ぎを起こした責任が及ぶ可能性がある。そうなれば交渉にも影響が出るかもしれないのでなんとしてでも避けたい
「ゴブタ、私が話したルールは覚えている?」
「は、はいっす!」
「この場合、どうすれば良いかわかる?」
「えっと、自分達が命の危険に晒されているから全力で抵抗する……ですか?」
「正解。でも、ここで騒ぎを起こすと私達の目的に支障が出る」
琴音とゴブタが平然と会話している事に痺れを切らした二人組が怒鳴る
「おぉぃ!さっきから無視してんじゃねぇぞ!」
「舐めた態度取っているとぶっ殺すぞ!」
武器を持って二人が襲いかかると琴音は鞘から龍葬を僅かに抜く
「
龍葬から目に見えない龍王の圧が解き放たれる
その圧を浴びた二人はまるで巨大な龍に睨まれたかのような錯覚に襲われ、2人の顔色が恐怖で一瞬にして青ざめた次の瞬間、糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた
「こうやって無力化する」
「おぉ!」
感心する声を出す。すると門の方から門番と思われる者達が数人やってきた。どうやら騒ぎを聞いた誰かが通報したらしい
現場に到着した門番達は倒れている二人組と平然としている琴音達を見比べる
「君が彼らを?」
「私は何もしてませんよ。彼らが急に倒れただけです」
「……そうか」
門番は琴音が嘘をついている事に気づいている。だが、それを証明する証拠がなく、周りにいた人も琴音と同じように「突然彼らが倒れた」と証言が一致したため門番は小さく溜め息を吐く
「とりあえず、この二人はこちらで引き取ろう」
気絶した二人は門番達が連れて行き、琴音達は何事もなかったように列へと戻る
それからしばらくして、ようやく自分達の番に回ってきた。門番は琴音達に幾つか質問を行い、問題なしと判断されてドワルゴンへと入国した