現代ダンジョンで成り上がり!   作:ダンジョン厨

18 / 19
予約投稿をミスってました。
本日の投稿分です。


第十八話 暫定指定

 

 翌朝、晴人は協会支部の検査区画にいた。

 

 医療区画の白い天井ではなく、鑑定局の灰色の天井だ。

 壁際には魔力測定用の端末が並び、床には星骸質流路を再現するための細い溝が幾何学模様のように刻まれている。

 訓練場よりも冷たく、病室よりも落ち着かない場所だった。

 

 右腕の固定具はそのまま。左腕には測定用のパッチが三枚。胸元にも心拍と魔力循環を読む小型センサーが貼られている。

 

 晴人は検査台の椅子に座り、目の前の透明なケースを見ていた。

 

 ケースの中には、白い板状の素材が入っている。

 

 旧北柏レイクモール跡の門内から回収された、白色未登録構造片の破片だった。

 

「触らないでくださいね」

 

 白石がタブレットを操作しながら言う。

 

「触りません」

 

「本当に触らないでくださいね」

 

「信用ないですね」

 

「榊さんは、できないことをやろうとする前例があります」

 

「返す言葉がないです」

 

 白石は真面目な顔のまま、ケースの横にある遮断装置を起動した。

 

 透明な板の内側に、薄い青い膜が走る。

 物理的なガラスだけではなく、星骸質反応を遮断するための結界に近い装置らしい。

 晴人の視界には、ケースの周囲に何重もの警告線が浮かんでいた。

 

《白色未登録構造片》

 

《状態:隔離》

 

《接続:遮断》

 

《観測履歴:一致》

 

 晴人は奥歯を噛んだ。

 

 やはり表示される。

 

 普通の素材なら、ここまで明確な反応は出ない。協

 会が回収した魔物の爪や低純度星骸結晶では、せいぜい名称と危険度が出る程度だった。

 だが、この白い破片は違う。見ているだけで、表示の奥がざらつくような感覚がある。

 

「見えていますか」

 

「はい。白色未登録構造片。状態は隔離。接続は遮断。観測履歴が一致って出ています」

 

「観測履歴、ですか」

 

 白石の指が止まる。

 

「榊さん側の履歴なのか、構造片側の履歴なのか、判断が難しいですね」

 

「俺から見ると、向こうも俺を覚えているみたいで嫌です」

 

「研究者としては興味深いです」

 

「白石さん」

 

「不謹慎でした。少しだけ」

 

「少しだけなんですか」

 

 白石は咳払いをした。

 

 その背後には、朝比奈と篠宮が立っている。

 久我と御影はいない。二人はまだ医療確認と報告書作成の最中だ。

 晴人も本来なら休んでいるべきだが、白い構造片との反応確認だけは早急に必要だと判断された。

 

 篠宮が端末を見ながら口を開く。

 

「榊晴人さん。これから行うのは、接触を伴わない反応確認です。能力を意図的に深く接続する行為は禁止します」

 

「はい」

 

「表示が変化した場合、すぐに口頭で報告してください。痛み、吐き気、視界異常、耳鳴り、その他異変があれば中断します」

 

「分かりました」

 

 晴人は背筋を伸ばした。

 

 透明ケースの中の白い破片は、指二本ほどの長さしかない。

 だが、見ているだけで門の奥の冷たい空気を思い出す。

 足首を絡め取った白い床。閉じていく通路。壁面に走った、人間の言語ではない文字列。

 

 自分は、あれに見られている。

 

 そう考えると、胸の奥が少し重くなった。

 

「では、遮断を一段階だけ下げます」

 

 白石が告げた。

 

 ケースを覆う青い膜が、ほんのわずかに薄くなる。

 

 その瞬間、晴人の視界に白い文字が走った。

 

《接続要求を検知》

 

《照合中》

 

《登録種族:不一致》

 

《外部管理系干渉:微弱》

 

《観測対象:継続》

 

「出ました。接続要求を検知。照合中。登録種族、不一致。外部管理系干渉、微弱。観測対象、継続」

 

 白石の表情が変わる。

 

 篠宮も端末へ視線を落とした。

 

「こちらの計測値にも変動があります。構造片側の星骸質濃度が微増。遮断膜内で完結していますが、榊さんの魔力循環にもわずかな同期反応が出ています」

 

 朝比奈がすぐに言う。

 

「中断して」

 

「まだ許容範囲です」

 

「白石さん」

 

 朝比奈の声は低かった。

 

 白石は一瞬だけ迷い、すぐに遮断を戻した。

 

 青い膜が濃くなる。

 

 表示が薄れた。

 

《接続:遮断》

 

《照合:中断》

 

 晴人は息を吐いた。

 

 自分でも気づかないうちに、肩に力が入っていた。

 左手の指先が冷たい。痛みはない。

 だが、門の中で流路操作をした時に似た、細い糸で神経を撫でられるような不快感が残っている。

 

「榊、状態は」

 

 朝比奈が問う。

 

「軽い寒気と、指先の冷たさがあります。頭痛は昨日より弱いです」

 

「検査はここまででいいわね」

 

 それは白石ではなく、篠宮に向けた言葉だった。

 

 篠宮は数秒だけ端末を確認し、頷いた。

 

「十分です。少なくとも、白色未登録構造片が榊さんの固有能力に反応することは確認されました」

 

「俺が反応させているんでしょうか」

 

 晴人は聞いてしまった。

 

 聞かない方が楽だったかもしれない。だが、知らないままでいる方が怖い。

 

 篠宮は曖昧に慰めなかった。

 

「現時点では断定不能です。あなたが構造片を起動しているのか、構造片があなたを識別しているのか、あるいは双方に接続経路が成立しているのか。どれも可能性があります」

 

「そうですか」

 

「ただし、あなたが意図的に危険を発生させた証拠はありません」

 

 篠宮はそう言った。

 

 責めるためではなく、事実を区切るための言い方だった。

 

「今回の救助においても、白色構造片の活性化は救助対象側の高出力魔力使用が直接の引き金と見られます。あなたの存在だけで即時変質が起きたわけではない」

 

 晴人は少しだけ呼吸が楽になった。

 

 けれど、完全には軽くならない。

 

「でも、俺がいなかったら、あれは出なかったかもしれません」

 

「それも断定できません」

 

 篠宮は変わらぬ声で返す。

 

「だからこそ、暫定指定です」

 

 白石がタブレットを晴人に見せた。

 

 そこには新しい記録欄が開かれている。

 

 榊晴人。D級探索者。未分類固有発現者。攻略支援適性あり。実地支援有効。白色未登録構造片との反応確認。監査部承認制。単独行動禁止。原典遺物携行不可。観測対象。

 

 文字が含む意味、そのどれも重かった。

 

「観測対象って、協会の管理区分なんですよね」

 

「はい」

 

 白石が答える。

 

「処分ではありません。研究対象という意味だけでもありません。危険性と有用性がどちらも高く、通常の探索者分類では扱いきれない場合に付与される暫定区分です」

 

「普通ではないってことですね」

 

「普通のD級探索者ではありません」

 

「それは、喜んでいいのか微妙です」

 

「ええ、私もそう思います」

 

 白石は率直だった。

 

 晴人は少し笑った。

 

 その時、検査室の扉が開いた。

 

 入ってきたのは久我だった。

 左頬に小さな絆創膏を貼り、腕にも包帯が巻かれている。応急処置だけで済んだらしく、足取りはしっかりしていた。

 

「失礼します。榊の検査が終わったと聞いたんですが」

 

 久我は篠宮と白石には丁寧に頭を下げ、それから晴人を見るなり眉をひそめた。

 

「顔色悪いぞ」

 

「久我よりはマシだ」

 

「俺の顔色は普通だろ」

 

「絆創膏ついてる」

 

「顔色の話だろ」

 

 久我は晴人の隣まで来て、透明ケースの中の白い破片を見た。

 

 その表情から軽口が消える。

 

「これが、あの白いやつか」

 

「破片だって」

 

「見てるだけで嫌な感じするな」

 

「御影さんがいたら、もっと嫌な顔しそう」

 

「だろうな」

 

 篠宮が久我へ視線を向ける。

 

「久我蓮司さん。あなたにも後ほど聞き取りを行います。主に戦闘時の構造反応と、榊さんの支援指示についてです」

 

「分かりました。必要なら今でも話せます」

 

「後ほどで構いません。まずは休息を」

 

「ありがとうございます」

 

 久我は丁寧に返し、それから晴人へだけ声を落とした。

 

「で、何か分かったのか」

 

「白い構造片が俺に反応するのは、かなり確からしい」

 

「お前が悪いって話じゃないだろ」

 

「まだ何も言ってない」

 

「顔に出てる」

 

「そんなに?」

 

「出てる」

 

 晴人は少しだけ視線を逸らした。

 

 久我は椅子を引き寄せ、勝手に隣へ座った。

 

「榊。お前が気にするのは分かる。あれが出ると危ないのも分かる。でも、昨日のあれは、向こうの探索者が高出力で撃ったのが直接のきっかけだろ」

 

「うん」

 

「お前は止めた。道を見つけた。拘束を外した。帰り道も残した」

 

「それは、そうだけど」

 

「だったら、そこまでを覚えとけ。危ないかもしれない部分だけ切り取ってバッドにはいるなよ」

 

 久我の声は、いつもより少し静かだった。

 

「俺たちは、お前が危ないから一緒にいるんじゃない。お前が必要だから一緒にいる。危ない部分があるなら、そこは俺たちが見る」

 

 晴人は言葉に詰まった。

 

 朝比奈も白石も篠宮もいる前で、いつものように軽く返すことができなかった。

 

「……ありがとう」

 

「礼はいい。それと、次からは倒れる前に休め。そんなんじゃいつまで経っても本当の探索者になれないぞ」

 

「それは本当に努力する」

 

「努力じゃなくて実行しろ」

 

「はい」

 

「なんで急に敬語なんだよ」

 

「怒られてる気がしたから」

 

「怒ってんだよ」

 

 久我がそう言うと、白石が小さく咳払いをした。

 

「仲が良いのは分かりましたが、検査区画なので声量は控えめにお願いします」

 

「すみません」

 

 久我はすぐに頭を下げた。

 

 晴人も続けて頭を下げる。

 

「すみません」

 

 朝比奈がわずかに息を吐いた。

 

「榊。検査が終わったら、作戦会議室へ移動します。昨日の事案について、正式な振り返りを行うわ」

 

「はい」

 

「久我も参加。御影も医療班の許可が出次第合流します」

 

「了解です」

 

 作戦会議室には、昨日の門内記録が大きな画面に映されていた。

 

 晴人の構造記録端末から抽出された地図。御影の感知報告。久我の戦闘ログ。朝比奈の監督記録。救助対象三名の位置情報。高出力魔力反応が発生した地点。そして、白色未登録構造片が活性化した範囲。

 

 地図上で見ると、白い構造片は晴人たちを狙って一直線に迫ったわけではなかった。

 

 高出力反応の発生地点を中心に広がり、既存の通路を閉じ、濃い星骸質流路に沿って伸びている。

 だが、その一部が晴人たちの撤退経路へ異様な速さで回り込んでいた。まるで、出口を予測して塞ごうとしたように。

 

 白石が説明する。

 

「構造片の活性化には、高出力魔力反応が大きく関与しています。ただし、榊さんの能力使用地点周辺でも微弱な反応増幅が確認されています。特に流路操作を行った直後、構造片の再活性化が発生しました」

 

 晴人は画面を見つめた。

 

 女性探索者の足を解放した地点が赤く示されている。

 

「俺が流路を変えたから、反応したんですね」

 

「反応はしました。ただし、拘束解除そのものは成功しています。高出力破壊を行っていた場合、救助対象の負傷はより悪化していた可能性が高いです」

 

 朝比奈が頷く。

 

「現場判断として、榊の選択は妥当です。あの状況で他の手段は限られていた」

 

 篠宮も否定しなかった。

 

「監査部としても、流路操作を問題行動とは見なしません。むしろ、今後の運用条件を定める上で重要な成功例です」

 

「運用条件、ですか」

 

「はい」

 

 篠宮は資料を切り替えた。

 

 画面に、いくつかの項目が並ぶ。

 

 榊晴人の実地投入条件。監督探索者の同伴。高出力攻撃型探索者との編成制限。白色未登録構造出現時の撤退基準。支援装備の追加。構造記録端末の常時携行。帰還札の二重登録。門内通信補助機材の優先配備。

 

 晴人はその一つひとつを読んだ。

 

 制限は多い。

 

 だが、完全な停止ではない。

 

「俺、まだ現場に出られるんですか」

 

 思わず聞くと、朝比奈が答えた。

 

「条件付きでね」

 

「出してもらえるんですね」

 

「出してもらえる、ではなく、出る必要があると判断されたのよ」

 

 朝比奈の声は淡々としていた。

 

「あなたの能力には危険がある。同時に、あなたの支援で救える命がある。協会はその両方を見た。だから、管理して使う。綺麗な話ではないけれど、現実的な判断ね」

 

「はい」

 

「不満?」

 

「いいえ」

 

 晴人は首を振った。

 

「むしろ、ありがたいです。怖がられて終わりじゃなくて、ちゃんと使い方を考えてもらえるなら」

 

 篠宮が静かに言う。

 

「あなた自身が、最も慎重である必要があります」

 

「分かっています」

 

「では、暫定指定後の初期検証として、数日以内に低危険度環境での流路操作再現試験を行います。実地ではありません。協会管理下の模擬流路です」

 

「はい」

 

「また、原典遺物《NULL/BLADE》についても、今回の反応を受けて再調査対象となりました。ただし、あなたへの返却予定はありません」

 

 晴人は少しだけ肩を落とした。

 

「返却は、まだ駄目ですよね」

 

「当然です」

 

 篠宮が即答する。

 

「あなたの現在の状態で、あれを再使用させる判断はあり得ません」

 

「分かっています」

 

 分かってはいる。

 

 それでも、あの刃のない柄が頭に浮かんだ。

 白い構造片の流路を断つ力。接続を切る力。

 もし持っていれば、昨日の撤退は楽になったのかもしれない。

 だが、同時にもっと大きな反応を呼んだ可能性もある。

 

 今の晴人には、まだ扱えない。

 

 久我が隣で小さく言う。

 

「顔」

 

「また出てた?」

 

「出てた」

 

「分かりやすいな、俺」

 

「今さらだろ」

 

 会議室の扉が開き、御影が入ってきた。

 

「遅れました」

 

 朝比奈が振り返る。

 

「体調は?」

 

「医療班から短時間なら許可をもらいました。昨日の感知記録について、補足できます」

 

「座りなさい」

 

「はい」

 

 御影は晴人の向かい側に座り、画面の白い構造片の範囲を見て、少し眉を寄せた。

 

「やっぱり、嫌な感じですね」

 

「感知ではどう見えていましたか」

 

 白石が聞く。

 

「生き物ではありません。でも、ただの壁でもないです。近い言い方をするなら、見られている場所、です」

 

 晴人は思わず顔を上げた。

 

 御影と目が合う。

 

「榊くんの近くで強くなる、というより、榊くんが気づくと向こうも気づく感じがしました」

 

 会議室が静かになった。

 

 白石がゆっくりと記録する。

 

「榊さんが観測することで、相手側の観測も成立する可能性……」

 

 篠宮が言う。

 

「見つけることが、見つかることでもある」

 

 晴人はその言葉を胸の中で繰り返した。

 

 自分の能力は、見る力だと思っていた。

 

 危険を見る。構造を見る。敵を見る。帰る道を見る。

 

 だが、見るということは、向こうへ視線を伸ばすことでもある。もしその先に、こちらを見返す何かがあるなら。

 

《観測継続》

 

 昨夜から残る文字が、また頭をよぎった。

 

 朝比奈が静かに言う。

 

「なら、榊に必要なのは、見る訓練だけではないわね」

 

「どういう意味ですか」

 

 晴人が聞く。

 

「見ない訓練よ。あるいは、深く見すぎない訓練」

 

 朝比奈は画面の白い構造片を指した。

 

「あなたは今、危険があるほど必死に見ようとする。それ自体は間違いではない。でも、相手がこちらの観測に反応するなら、何でも覗き込めばいいわけではない。必要な情報だけを取り、必要以上に接続しない。これを覚えなさい」

 

 晴人はゆっくり頷いた。

 

 全部を見るのではない。

 

 全部を背負うのでもない。

 

 今度は、見すぎないことも覚える必要がある。

 

「分かりました。訓練します」

 

「返事だけは良いわね」

 

「実行もします」

 

「期待しておくわ」

 

 久我が横から小さく笑った。

 

「見るなって言われて見ない練習か。お前に一番向いてなさそうだな」

 

「否定できない」

 

「まあ、俺が隣で止めてやるよ。お前が変な顔で固まったら、引っ張る」

 

「頼む」

 

「任せろ」

 

 御影が微笑む。

 

「私も言うね。嫌な感じがしたら、すぐ止める」

 

「ありがとうございます」

 

 晴人は二人に頭を下げた。

 

 怖さは消えない。

 

 自分が何に繋がっているのか、白い構造片が何を見ているのか、まだ何も分からない。協会の暫定指定も、観測対象という言葉も、軽くはならない。

 

 それでも、ひとつだけはっきりしている。

 

 一人で抱える必要はない。

 

 会議の終わり際、篠宮が最後の資料を開いた。

 

「今回の件を受け、旧北柏レイクモール跡D級門は一時封鎖されます。等級再評価が完了するまで、一般探索者の立ち入りは禁止です」

 

「救助された三人は、なぜあそこにいたんですか」

 

 晴人が尋ねると、篠宮の表情が少しだけ硬くなった。

 

「報告外の侵入です。所属パーティからは、低危険度区域での素材回収を目的にした無許可行動と申告されています」

 

 久我の目が鋭くなる。

 

「無許可で入ったんですか」

 

「調査中です」

 

 篠宮は言葉を選んだ。

 

「ただし、彼らが使用していた火炎系星骸兵装は、本来D級門の外周素材回収に必要な出力を超えています。別の目的があった可能性もあります」

 

 会議室に、また別の重さが落ちた。

 

 白い構造片。

 

 晴人の能力。

 

 そして、無許可で入り込んだ探索者たち。

 

 単なる救助事案では終わらない気配がある。

 

 朝比奈が資料を閉じた。

 

「榊、今日はもう休みなさい。考え込むのは明日からでいいわ」

 

「はい」

 

「久我、御影も同じ。報告書は最低限で構いません」

 

「了解です」

 

「分かりました」

 

 会議室を出る時、晴人は一度だけ画面を振り返った。

 

 白い構造片の広がりが、地図上に残っている。

 

 それは出口を塞ぐようにも、何かへ導くようにも見えた。

 

《外部観測指定:継続》

 

《推奨:休息》

 

《補足:過剰接続を避けろ》

 

 晴人は苦笑した。

 

「言われなくても、今日は見ないよ」

 

 久我が横で聞き返す。

 

「何が?」

 

「表示に、休めって言われた」

 

「能力が一番まともなこと言ってるな」

 

「否定できない」

 

「じゃあ従え」

 

「ああ」

 

 三人は並んで廊下を歩いた。

 

 晴人の足取りはまだ少し重い。けれど、昨日よりもまっすぐだった。

 

 観測対象。

 

 危険因子。

 

 攻略支援者。

 

 どの言葉も、今の自分の一部なのだろう。

 

 なら、逃げずに扱い方を覚えるしかない。

 

 見えるものを使うために。

 

 そして、見てはいけないものに、呑まれないために。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。