リバーサル・イフコード   作:gp真白

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バッドエンドの向こう側

 

「死ねやぁッ!!」

 

狂気に染まった黒フードの男たちが、対人戦特化の鋭い暗殺剣を次々と繰り出してくる。

 

いくら俺たちが息の合った連携を見せても、相手は最悪の殺人ギルド『ラフィン・コフィン』の精鋭だ。じりじりと足場を削られ、俺たちのHPバーは少しずつ黄色(イエローゾーン)へと押し下げられていく。

 

「くそっ、キリがねえ……! 動きがゲスすぎる!」

 

ガクが激しい剣戟の中で毒毒しい刃を弾き、息を荒くする。

「慌てるな、陣形を維持しろ! サイのカウンターを起点にするんだ!」

レンさんが必死に長槍でナナへの射線を塞ぎながら声を張り上げるが、奴らの執拗な包囲網は確実に俺たちの隙を広げていた。

 

(しまっ――硬直が……!)

 

蜘蛛型モブとの連戦の疲労か、俺の放った大剣の斬撃が一瞬だけ深く入りすぎた。

 

そこへ、ラフコフのリーダー格の男が、歪んだ笑顔を浮かべて肉薄する。その短剣には、麻痺毒の怪しい光が灯っていた。

 

「ひゃはは! 終わりだ大剣持ちぃ! まずはお前を動けなくして、目の前で仲間を一人ずつ――」

 

誰もが最悪の結末を覚悟し、俺が歯を食いしばった、その瞬間。

 

――ガギィィィィィンッ!!!

目が眩むほどの鮮烈な火花が散り、俺の目の前に「黒」と「白」の閃光が割り込んだ。

 

「そこまでだ、ラフィン・コフィン!」

 

黒いコートを翻し、二振りの剣で男の短剣を完璧に叩き伏せたのは――キリトだった。

 

そしてその隣では、閃光の異名を持つアスナが、目にも留まらぬ細剣(レイピア)の連撃で周囲の黒フードたちをまとめて一歩後退させていた。

 

「キリト君、アスナさん!?」

 

ナナが驚き平伏すような声をあげる。

 

「遅くなって悪かったな、サイ。団長から、前線の仕様変更の調査を頼まれて来てみれば……やっぱりネズミが湧いてやがった」

 

キリト先輩は背中で俺にそう告げると、不敵な笑みを浮かべて二刀を構え直した。

 

アスナも俺の横に並び、優しく、けれど力強く頷く。

 

「サイ、あなたの『本当の剣』、私たちにも見せて」

「……っ、はい!」

 

胸の奥から熱いものが突き上げてくる。

孤独を脱した俺たち四人に、かつて孤独を知り、今や仲間と共に立つ最強の二人が加わった。これ以上の布陣がこの世界にあるか!

 

「レンさん、反撃の指示を!」

 

俺の叫びに、レンさんが槍を高く掲げて吠えた。

 

「全セクター、突撃! キリト、アスナに続け! 奴らを一網打尽にするぞ!」

 

戦闘の潮目が一瞬でひっくり返る。

キリト先輩とアスナの圧倒的な前線突破力に、ラフコフの連中が初めて明確な恐怖の顔を見せた。

「化け物め、引け! 一度退くぞ!」

 

逃げようとするリーダー格の男。だが、その退路に立ち塞がったのは、ガクとレンさんの完璧な挟み込みだった。

 

「逃がすかよ、大馬鹿野郎が!」

「そこだ、サイ!」

 

レンさんの槍が男の体勢を崩し、俺の目の前へと弾き飛ばす。

 

「これ以上……お前たちの思い通りにはさせない!」

 

俺は渾身の力で大剣を振り抜いた。男が必死に放った悪あがきの一撃を、俺の奥底のスキルが完全に捉える。

 

「『リバーサル・コード』――ッ!!!」

 

爆発的な反転衝撃。男は自分の放った攻撃の数倍の威力で吹き飛び、地面を激しく転がった。

 

HPは極限のレッドゾーン。だが、俺は剣を止めない。殺すためじゃない。こいつらを、二度と誰の命も奪えない場所へ送るために。

 

アインクラッドのシステムが、俺の強い意志に呼応するように輝く。

突如として、男たちの足元から光の鎖が這い出し、その肉体をがっちりと拘束した。対人戦(PvP)において、相手を殺害せずに無力化する、黒鉄宮の『監獄(プリズン)』への強制転送シークエンスだ。

 

「な、なんだこれは……! 離せ、離せぇっ!」

 

「二度と出てくるな。そこで自分の犯した罪を数えてろ」

 

ガクが吐き捨てるように言い、ナナが安堵の涙を流す中、ラフコフの残党たちは光の檻に包まれ、そのままシステム監獄の底へと消えていった。

静寂が戻った迷宮区。

 

「見事な連携だったよ、サイ、みんなも」

キリト先輩が剣を収め、すれ違いざまに俺の肩をポンと叩いた。

「一人で背負わないお前は、めちゃくちゃ強いな」

「……キリトのおかげだよ」

俺が少し照れくさそうに笑うと、アスナも嬉しそうに微笑み、「また前線でね」と言って、二人は風のように調査へと戻っていった。

 

「やったな、サイ!」

 

ガクが俺の首に腕を回してきて、レンさんも「ああ、最高の戦いだった」と肩の力を抜く。

 

ナナは静かに歩み寄り、俺の手をぎゅっと握りしめた。

「ありがと、サイ。……カナメちゃんも、きっと笑ってるよ」

「ああ……」

俺は大剣を背中に背負い、茜色に染まる迷宮の天井を見上げた。

かつて交わした二つの約束。

 

全員で生きて帰る。俺自身も、絶対に無事でいる。

もう、その約束が色褪せることはない。この最高の仲間たちと共に、俺たちはどこまでも、あの眩しい現実(リアル)へと向かって、力強く突き進んでいく。

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