目指せ野球星人   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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催眠スマホでフォームを覚えよう

「あなた達は野球星人になってもらいます!」

 

 俺達3人の目の前でいきなりそんな事をいう少女が居た。

 

 目の前でそう語る少女の名前は七星あかり。

 

 そんな彼女の話を聞く俺は星野球児(ほしの きゅうじ)。

 

 中学の野球部で3番手投手をしていた……言ってしまえば補欠投手である。

 

 決してエースと呼ばれる1番手投手等ではなく、球児という野球をするために名付けられた名前負けした雑魚投手だ。

 

 俺の両隣に居るメンバーも似たり寄ったりで、野球部だと2番手捕手……キャッチャーをしていた郷田豊(ごうだ ゆたか)と俺と同じ投手で背番号を争った2番手投手の杉浦謙信(すぎうら けんしん)。

 

 男3人にあかりを加えた4人は小学生の頃からの幼なじみで、あかりは野球部のマネージャーをしていたのだが、高校受験を控えたある日……ガキ大将だったあかりから招集がかかって公園に集められ、開口一番で野球星人になれって言われたのだ。

 

「実は私宇宙人なの!」

 

「中二病は高校入学までにしておけよ」

 

「馬鹿馬鹿しい……」

 

「俺達野球好きだけど、うまくないのはマネージャーだったあかり……お前が一番わかってるんじゃねぇか?」

 

「そう、そうなのよ。あなた達3人私的には凄い才能を秘めているのに、全然才能が開花する気配が全くない! 野球星人として見過ごせないのよ」

 

「そうは言われても……」

 

「というわけであんた達を野球星人に改造するために高校3年間を私に捧げてくれない?」

 

 そんな事を言われても……受験先も決まってるし……。

 

「信じてないでしょ……まぁいきなり言われても分からないのは仕方ないわ。だから私と同じ高校に行ってもらいます! 野球星人の力であんた達受験先が1つ増えてるから家に帰ったら確認して、受験しなさい」

 

 それだけ言ってあかりは帰ってしまった。

 

 俺達3人は顔を見合わせてどうするって話し合う。

 

「あかりの強引さは今に始まったことじゃねぇけど……どうするよ」

 

「帰ったら受験先が増えてるって……流石にないだろ……」

 

「だよなー」

 

 そんな話をしてから家に帰ったが、テーブルの上にこんな物が置かれていた。

 

【聖球学園受験票】

 

「マジ?」

 

 家族も何故かこの学校を第一志望で受験するんでしょって言われ、直ぐに4人のグループチャットで連絡を取り合った。

 

 球『あかり! どういうことだ?』

 

 豊『球児! お前のところにも届いていたか』

 

 球『豊お前もか』

 

 謙『お前らも来てた!』

 

 あ『ふっふっふ、野球星人の手にかかればチョチョイのちょいよ……あ、でも受験はしてね!』

 

 あかりはチャットの文字から意味深な事を呟くが、俺達はあかりをガン詰めする。

 

 あ『だから、あんた達の高校3年間を私にちょうだいって言ってるの、絶対に後悔させないし、頑張ればプロ野球選手として食っていけるくらいにはなると思うから! お願い!』

 

 あかりはどういう手腕で聖球学園の受験票を届けたのか、高校3年間という時間を預けるに値するのか、そんなに強くない軟式の中学野球部で補欠だった俺達がプロ野球選手に成れると本当に思っているのか……色々思う事はある。

 

 ただ……あかりは小学生の頃からの仲である。

 

「……結局そんなあかりに俺達3人は好意を抱いてるんだよなぁ……」

 

 俺は最終的に受験を受ける決意をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局俺は聖球学園と他2つの高校を受験して、聖球学園だけ合格。

 

 俺だけでなく豊と謙信も本命や滑り止めは落ちて、聖球学園だけに合格した。

 

 あかりの力なのか、それとも何か大きな力が働いているのか……薄ら怖いものを感じる。

 

「まぁ野球星人は神聖な試合結果やドラフトとかには干渉することが絶対に干渉することができないんだけどね」

 

 聖球学園への進学が確定した翌日、俺達は再びあかりに公園に集められた。

 

「あんた達3人にはオッタニさんみたいな最強の二刀流……いや、守備もしながらだから三刀流を目指してもらうわ」

 

「オッタニさん!? 伝説のメジャーリーガーじゃねぇか」

 

「目指すのも烏滸がましい存在だぞ……」

 

「ひぇ……」

 

「そう、そんな存在にあんた達は目指すの! 私が野球星人の技術を使ってあんた達を改造していくから……さて、そうと決まれば論より野球! というわけで野球星人の超技術で作ったアイテムで基礎固め!」

 

 あかりはポーチからスマホを取り出した。

 

「ジャジャーン催眠スマホー」

 

「「「催眠スマホ!?」」」

 

「そう、煩悩だらけのエロい事を考える幼なじみの男子諸君なら絶対にエロい事に使うって確信してるけど、残念、野球星人が作るアイテムは基本野球に関することしか使えません!」

 

 あかりの説明では、この催眠スマホを使うことで、自分が一番投げやすい、打ちやすい投球フォームと打撃フォームを無意識下で体に覚え込ませる用途があるのだとか。

 

「はい、じゃあ催眠催眠」

 

 ピカッとスマホが光ると視界が暗転するのだった。

 

 

 

 

 

 

 意識が戻ると、何故かマウンドの上に居た。

 

 誰か分からないキャッチャーがそこに座り、強そうな打者がこっちを睨みつける。

 

「……」

 

 明らかに強打者相手に投げられる球なんか今の俺に無い。

 

 キャッチャーがじっと構えている。

 

 怖くて逃げ出したい気持ちをグッと堪えると自然と体が動き始めた。

 

 俺はいつも上から振り下ろすオーバースローという投球方法をとっていたが、俺の体は地面スレスレの斜め下……アンダースローという横下から投げる投球方法で、ボールを放り投げた。

 

 いつもコントロールが出来ていなかった球が、伸びる上がる様な美しい軌道でキャッチャーミットに吸い込まれる。

 

 パン。

 

 乾いたミットの音が響き渡る。

 

 バッターは俺の球を空振りしてひっくり返っていた。

 

 過去一気持ちがよい投球ができた。

 

 

 

 視界が再び暗転し、今度はバッターとして打席に立っていた。

 

 言っちゃ悪いが、俺は打者として才能は投手より劣ると思っていた。

 

 中学時代の打率は0.115……10打席立って1本ヒットを打てれば良い程度だし、練習でもホームランを打った事は無かった。

 

 緊張しながらバットを構えるが、体が勝手にバントの構えをする。

 

 ああ、ここでも俺はバントをするのかと思ったが、ピッチャーが投球モーションに入った瞬間にバットを引いてヒッティングを行った。

 

 カキーン。

 

 バットを引いてボールを見るが、バントの構えから引く瞬間に両目でボールを上手く捉えることができるのか、縫い目までくっきり見えたのである。

 

 力の抜けた力みの無いスイングはボールをバントの芯でとらえ、俺から見て右側……ライト方向に一直線にボールが飛んでいった。

 

 ライトの守備位置よりも深い場所……外野フェンスに球が直撃し、打球がコロコロと転がる。

 

「走れ!」

 

 どこからか声が聞こえ、俺は慌てて走り出す。

 

 一塁を踏んだ時、体がグッと加速するような感覚がする。

 

 二塁で止まろうとすると三塁ランナーコーチが腕をぐるぐる回して走れと叫ぶ。

 

 二塁も踏んで三塁を目指す。

 

 いつもよりも腕が振れ、足が前に進む。

 

 ズザー。

 

 流れるようなスライディングで三塁に到達すると、俺は声のする方向にガッツポーズをした。

 

 そしてポーズを取った体勢で再び視界が暗転し、目の前にあかりが居た。

 

「どうだった? 体に本当にあったフォームを掴んだんじゃない?」

 

 気がつくと全身から大量の汗が出ていた。

 

 俺は横を振り向くと豊と謙信の2人もハーハー息を切らしていた。

 

 でも凄く達成感がある顔をしていた。

 

「ね、これで上手くなった感覚を掴んだんじゃない?」

 

 俺は夢のような体験に確かな感覚を覚えるのであった。

 




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