幼なじみが宇宙人だった件について〜そんな彼女が俺をプロ野球選手に育成しようとしてくる〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
野球をやるのも好きだが見るのも好きな俺は寝る前にスマホでプロ野球の結果を見たりしていた。
「おー、今年はヤクエナキャッツ頑張ってるな」
俺達のスポンサーもとい、校長が東京の神宮を本拠地にするヤクエナキャッツ……愛称は猫ちゃんのチームが大好きらしいので注目しているが、別称で躁鬱球団とも言われていた。
基本弱いのがデフォなんだが、たまに覚醒したかのように優勝をかっさらう為、優勝と下位を躁鬱の様に繰り返す謎球団である。
ちなみに親会社はヤクエナという飲料を作っているメーカーで他の球団に比べると資金力があるとは言えないので、年俸も安くなりがちな球団でもある。
まあ功労者には手厚いけど。
そういうギャンブル性の強い球団なのである。
恐らく校長もギャンブルが好きなのだろう。
じゃなかったらマネージャー達に脅されても野球部新設及び野球施設を整えるなんてしないだろうし……。
中間テストは無事に突破。
成績的には秘境からやって来た天狗の蔵馬と勇者が赤点取りそうになっていたが、マネージャー達がテスト前に詰め込み勉強をさせたお陰でなんとかクリアしていた。
さてさて、そんな聖球学園野球部だが、他校との交渉をも担当している黒星がなんと合同練習の許可を取り付けたのである。
「合同練習と言っても、他所の高校のメンバーを借りて練習試合をさせてもらうという試みだからね」
ちなみにその高校の2軍メンバーから数人借りて2軍との練習試合を取り付けた感じである。
「先方にはメリットの少ない申し出を受けてくださったので、本当に感謝してよね。ちなみにその高校はここ数年プロを輩出している八千代総合高校だから」
「八千代総合高校か……」
俺も受験しようと思っていた千葉でも屈指のマンモス校であり、全校生徒の数は3000人近く居る。
野球部も部員数が90名近く在籍しており、野球部専用グラウンドも2面あるという充実ぶり。
若い監督は野球人口の拡大を教育者として掲げているので、今回の申し出を2軍で良ければと承諾してくれたのである。
「今週の土日にその学校に行って、土曜日は練習に混ぜてもらって、日曜日に即席チームで練習試合を行う……こんな感じだからね」
本当よく部員定員割っている野球部で練習試合組めるとか……黒星の手腕には脱帽である。
というわけで俺達は土曜日に及川先生が学校が管理しているマイクロバスを運転して、八千代総合高校に乗り込むのであった。
〜及川サイド〜
「いやぁ……本日から2日間よろしくお願いします」
「こちらこそ無理な申し出を受けてくださりありがとうございます」
高校に到着して、選手とマネージャー陣が八千代総合高校側の選手達に挨拶をする中、私は八千代総合高校の顧問兼総監督や他のコーチ陣に挨拶を行なっていた。
総監督は外部から引き抜きで雇われた人なのだが、他のコーチ陣も普段は教員として学校の授業を行なっているのだとか……。
人数の多い学校故に野球経験者も多く、教員だけで1軍から2軍までのコーチまで賄えるとは……流石の規模としか言いようがない。
「いやぁ聖球さんのところは皆1年生、今年の夏は辞退するとマネージャーの子から聞いていますが、秋からは連合チームで参加すると聞いています。野球人口が増えてくれるのは僕としても喜ばしいのでぜひ協力させてもらいますよ。それに2軍にいるけれど経験を積ませたい子は沢山いますし、即席チームなら自チームに居るとなかなか見れない適応力も見えてくるのでね」
監督さんが最低限試合を作ってくれるなら問題ないし、2軍の選手でもうちみたいに弱いチームでも気持ちよく勝てれば、自信に繋がって成長するかもしれない……という打算が顔に書かれているように思える。
あと私は他校の練習風景を観ることで、どんな練習をすれば良いのかの参考にしてくださいとも言われていた。
まあ女の素人監督のチームなら他校の評価は低いだろうな……。
あとマネージャー陣からこの高校と合同練習及び練習試合を組むメリットを事前に聞いていたが、この学校はマンモス校なだけありOBの人数も多い為、練習や試合を見に来る人が多いのだとか。
その人達経由でうちのメンバーに凄いのがいるぞって情報を広めて貰うことで、どんな選手が居るのか興味を持った高校が八千代総合高校みたいに合同練習と練習試合をOKしてくれる確率を少しでも高めたいのとのこと。
あとここの監督はプロスカウトとも繋がりがあるし、千葉の高校では人徳者として名が売れているので、合同チームに良さそうな高校を紹介してくれるかもという打算があるらしい。
合同チームでもそれぞれの高校の思惑があるので、条件が合致するところはなかなか無い為、少しでもよい条件にするのに、ぜひ今回の合同練習と練習試合は活用したい……と言っていた。
「うちのメンバーは練習について行けてるかなー?」
練習風景を眺めると、うちのメンバーもさっそく走らされているけど、皆息は上がってない様子。
投手陣もそうだけど化け物揃いの野手陣は基礎体力が違うからね……八千代総合の1年生達がバテている中、涼しい顔でペース上げているし……。
「これなら大丈夫かな?」
〜八千代総合高校2軍選手サイド〜
「うちの総監督がまだ合同練習の誘いOKしたって聞いた時はまた弱小誘ったのかよって思ったけど、うちの1年より根性あるじゃん」
「どうも」
投手をやっている俺は聖球の選手に声をかけた。
だいたい弱小校かつ人数足りてないところは投手も1人で回すのが殆どだけど、7人しかいないのに投手が3人もいることにまず驚いた。
それで3人とも綺麗な投球フォームで投げるんだ。
1年生でフォームが決まっている奴はいるけど、体に合ってないのにプロの真似をしたり、中学の指導者に強制されて画一的なフォームにされてしまっていて、修整を求められる場合が多いけど、聖球の1年達は選手の特性が最大限活かされているような……このままいけば伸びるだろうなっていう伸びしろ溢れる投球をしている。
それでいてだいぶ走り込んできたのだろう。うちの1年達より1回り下半身が太くなっている。
なかなか気合いの入った連中だ。
右投げの速球速いやつ(豊)はスピードガンで測ったら139キロ出していたから、1年のこの時期でその球速で、体が仕上がったら150キロ超える直球投げられるんじゃないか?
それに左投げのやつ(謙信)はストレートは平凡だけどスライダーとフォークのキレが良い。
うちの3年でもあそこまでキレのある変化球を投げられるのは少ないだろう。
アンダースローの奴(球児)もアンダースローにしては安定感があるし、使える変化球も多いから速球のやつ(豊)の次に中継ぎで出てきたら打ちにくいかもしれねぇな。
アンダースローの奴は普段はセカンドを守るって言っていたし、他の2人に比べると1段落ちる評価かもなー……でもコントロールは良いんだよな。
「うーん、何で聖球なんて部員足りないところにこいつら行ったんだろう。うちに来れば3年時には背番号貰えていたと思うし、速球の奴はワンちゃんプロになれるかもしれないけどな。プロに行った先輩もこんな感じだったし……」
そう思わずにはいられないのだった。