幼なじみが宇宙人だった件について〜そんな彼女が俺をプロ野球選手に育成しようとしてくる〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
〜聖球野球部マネージャーサイド〜
「さてさて、私達野球部の初陣だから選手達には頑張ってもらいたいところさん」
「じゃあ始めますか」
「ええ、始めましょうか」
あかりと恋星はゴソゴソと椅子とテーブルを出して紙で作られた解説席というのを置く。
「えー、そろそろ始まります聖球野球と八千代総合野球部2軍Bチーム連合チーム対八千代総合野球部2軍Aチームとの試合。スコアラーのじゃんけんに負けたあかりと」
「恋星で実況解説をしながら試合内容を録画していこうと思います」
5月中旬の日曜日。
午前中は今日も八千代総合野球部にお邪魔させてもらって即席の守備練習をさせてもらい、練習試合。
うちのメンバー以外は2軍の2年生が中心。
一方でAチームは3年と2年生で固められたメンバーであり、実力的にはAチームの方が八千代総合のメンバー的には上である。
そんな不利を抱えてうちのメンバーがどれだけ戦えるか見ものだ。
ちなみに赤星は監督がまだ試合経験が無いので作戦コーチ役としてベンチ入りしていて、サインを監督に指示出す役割。
黒星は練習試合を見に来た八千代総合のOB達の相手をしてコネ作り、スコアラーは水星がしているので、余った2人が実況解説役としてベンチ外から撮影中である。
『プレイボール』
『『『『『お願いします』』』』』
「さぁ始まりました先攻はAチーム。守備は連合チームとなります。こちらのピッチャーはアンダースローの星野」
「変化球が多彩なピッチャーです。試合を作ることができるか」
1回表……こちらの守備では星野打たせて捕るピッチング。
1番、2番の打者を得意のシンカーでバットに詰まらせて内野ゴロに打ち取っていく。
3番打者には外野の深い位置まで飛ばされたが、俊足蔵馬(天狗)の好守備で3者凡退。
上々の立ち上がりでスタート。
1回裏、こちらの攻撃では、1番蔵馬は三振したものの2番服部(忍者)がショートの深い場所にゴロを転がし、内野安打で出塁。
「さっそく投手の癖を読み取って盗塁に成功! あっと! 三盗にも果敢に挑み、これまた成功! 内野安打だったのがいきなり1アウト3塁のチャンスに」
「やっぱり服部君は足も速いけど忍者らしく相手の嫌なところを突いてくるねぇ。投手の動作を盗むのも上手だし」
「さて3番野口、ランナーを返せるか」
カキン
投手が投げた投球を綺麗にセンター前にはじき返して1点先制。
そして次のバッターは4番上林勇者。
ガキーン
「いったー! 初球から振り抜いた打球はレフトの頭上をライナーで飛び越え、フェンスを超えていく! 初打席初本塁打! やってくれました勇者!」
3点先制したもののこの回は後続は倒れてチェンジ。
2回に入っていくのだった。
〜八千代総合OBサイド〜
「へぇ、聖球に野球部ができたんですか……お、連合チームが勝ってるのか」
「あ、小林さんこっちこっち」
「どうも鳴尾さん」
OB達は1軍も今日の午後から練習試合を行うので、そのついでとして2軍の練習試合も見に来ていた。
現在得点は2対6で連合チーム優勢である。
「うちの2軍はピリッとしなかったのか? 出来立ての野球部に負けているようじゃ1軍では使えないよ」
「それがそうとも言えんのですよ」
「と、言いますと?」
「聖球さんの守備に入ってるセンターとショートの子、それにDHの4番の子が大活躍でね」
「ほうほう」
「センターとショートの子は足が速くて守備範囲が広くて好守備を連発、そして4番の子が3打数3安打3本塁打で圧倒的な打撃成績を残しているんだよ」
「へぇ……1年生?」
「そう、1年生。うちの2軍の3年生が引きずり下ろされちゃってね……今2軍の2番手の子が投げているよ」
「聖球のピッチャーの方は?」
「1人目(星野球児)は3回投げて1奪三振1失点。今2番手の子(豊)が投げているけど1年で140キロ出てるよ」
「おお、そりゃ凄い。うちの1軍のエースがマックス142キロだからそれとあまり変わらないのは凄いな」
「それでいて偶にチェンジアップを混ぜてくるのが厄介でね。四球でランナー出して盗塁、バント、犠牲フライで1点返したけど、正直2番手の子に抑え込まれちゃってるよ」
「あちゃ……打撃陣も課題が残るねぇ」
「おや? 6回で2番手降板か3番手が出てきた」
「……投球練習だと普通の左投手に見えますが」
「うん、球速があるわけでもなさそうだし……1番手のアンダースローの子みたいに変則投手でもなさそうだな」
『プレイ』
しかし、試合が再開すると、3番手(謙信)はスライダーとフォークで投球を組み立てて、次々に三振を奪っていく。
直球は130キロ前後と打ち頃であるが、ストライクゾーンのギリギリにしか投げ込まず、甘く感じる球は殆ど変化球で、狙いがつけられずにきりきり舞い。
あっという間に三振、三振また三振。
「へえ……1年生であそこまで変化球を扱いこなせるとはいいピッチャーですね」
「どちらかと言うとその投球を組み立てている捕手も上手いですよ……捕手の子(野口)も2安打してますし」
「へぇ……」
野球部OB達は母校の2軍の情けなさより、聖球選手達が1年生ながら頑張っているのに感銘を受けていた。
「あの若い女性が監督さんか」
「ノックは正直下手くそだったけど、選手育成の手腕には優れているのかもしれませんな」
「いや、1年生であれだけやれるのならスカウトしてきた線も拭えないが……いやぁうちに来てくれていればなぁ」
「ノーマークの選手ばかりなので難しいでしょう。うちではなく他校に取られてますよ」
〜マネージャーサイド〜
「勇者打った! ライトフェンスを超えて着弾」
「そして7回裏時点で点数が2対9の7点差になったことでコールドゲーム成立! 試合終了!」
今日の試合の選手達の成績がこちら
野手
蔵馬 4打数2安打2盗塁
服部 3打数2安打1四球3盗塁1打点
野口 4打数3安打打点1打点
勇者 4打数4安打4ホームラン打点7
投手
星野 3回被安打3四死球1失点1奪三振1
郷田 3回被安打1四死球1失点1奪三振2
杉浦 1回被安打0四死球0失点0奪三振3
予想以上に活躍できた試合結果であった。
練習試合が終わったので今日は夕方で合同練習……とはいかず、午後一で撤収である。
「黒星、どうだった? 良い伝手は取れた?」
「いや、OBの人達からの感触は良かったけど、それでどうこうなる感じでも無かったからね」
「そっか……まぁ練習試合とはいえうちのメンバーが活躍して勝利できたのは良かった」
「ただ打撃も守備も投球も今回は運が良かった面が大きい。勇者の素材は超高校級だからこのまま伸ばしていけばいいけど、投手陣は勇者に打たれないようにするのが今後の課題でしょう」
「となると更にトレーニング負荷をかける必要が出てくるよね……ちょっと早いかもしれないけど練習負荷を1段階上げるあれを作りますか?」
「作っちゃいましょうか!」
というわけでマイクロバスの中でも賑やかな私達であった。
選手達は疲れて帰りのバスの中で爆睡だったけどね……。