幼なじみが宇宙人だった件について〜そんな彼女が俺をプロ野球選手に育成しようとしてくる〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
八千代総合との練習試合を終えて帰ってきた俺達は、試合に勝てた喜びと、2軍の選手とはいえちゃんと戦えたことへの満足感があった。
勇者なんかはホームラン4発もぶち込んだからさぞ気持ちよかっただろう。
「まだまだここで満足していたらプロになんかなれないからね! 全員課題あり!」
例えば俺の場合は、練習で投げるのと試合で投げる違いからスタミナの消耗が激しく、もし守備や打撃もやっていたら、とてもではないがスタミナが保たなかっただろう。
豊はコントロールがまだ不足、投手陣だと1回しか投げてないけど全打者三振だった謙信だけが野球星人のマネージャー達は納得していなかった。
「目標たけぇなぁ。うちらを褒めてくれてもええんやで?」
「褒めるところは褒めるわよ。ただ足りない部分はちゃんと伝えないとね」
「そういうもん?」
「そういうもの。プロ野球選手で高い給料貰いたいんでしょ。だったら今のレベルで満足しちゃ駄目だから」
「へいへい」
忍者だけど若干チャラい服部も納得したらしい。
学園に帰った俺達は試合の反省をしながら練習をするのだった。
6月のある日。
梅雨が始まり室内練習が主になるため、練習効率が落ち気味の季節。
ロードワークも難しいからその分体育館の一角を借りてシャトルランをやったり、シャドーピッチング……タオルを使った投球練習やマネージャー達が作ってくれていた室内の投球練習場で、立体映像を用いたストライクゾーンが可視化されたバーチャルトレーニングをやったり……。
あとウェイトトレーニング……マシーンを使った筋トレも行い、筋肉を付ける練習もしていたのだが、ある日室内練習場の横に小屋が建てられ、そこで練習をしなさいとマネージャー達から指示された。
「14畳くらいの広い部屋だな……床は畳か」
「柔道とかやるにはちょうど良い広さかも?」
「はい、皆さん注目! ここでは効率よく自重トレーニングや体幹トレーニングをするためのトレーニング施設です。1回に入れる人数は7人……今の部員数と同じにしたから」
「トレーニング施設って自重や体幹はどこでもできるじゃん」
するとあかりがチッチッチと指を振りながら説明を続ける。
「この施設は宇宙人が星間移動をするために絶対必要な重力の調整装置が組み込まれていて、擬似重力を体験できる施設になっているの」
つまりGを上げたり下げたりできる装置なのだとか。
宇宙飛行士がやる訓練だぞ……。
「実際重力トレーニングをやることによる効果は脳の活性化が主になるね。脳から筋肉に指令を行う伝達速度が速くなる効果が実証されている。筋肉を肥大化させる……というより野球に必要な動体視力や反応速度の向上、あとは体幹による深層筋肉をより効率的に鍛えられるからスタミナを付ける面でも重要だね」
勿論最初は1.5Gからスタートし、卒業までに4Gに耐えれるようになれば上々とのこと。
人間はサイヤ人の様に100Gとかには体が耐えられないからね……とのこと。
野球星人がいるならサイヤ人も居そうだが……、
「今のところ発見されてないよ」
らしい、いきなりSF展開が始まらなくて安心した。
とりあえずやってみようということで、体験してみることに。
ズンと体が重く感じる。
通常の重力の1.5倍……確かにこの状態で筋トレしたり体幹したりするのは辛そうである。
勇者とあかりはピンピンしているが。
「はい、じゃあトレーニングしていくよ。まずはプランクの体勢30秒×5よーい、スタート」
さっそく始まるが、普通に筋トレしているのとは違う辛さがある。
更に効率を高めるために酸素濃度調整マスクを俺達しているのでよりキツイ。
プランク5セットしただけで全身から汗が噴き出してくる。
「次ドローインね」
仰向けになって膝を立て尻を締めて寝そべるドローインの体勢。
その状態で背中を反らせてキープし、お腹周りの筋肉を鍛えていく。
一般の人はぽっこりお腹を解消するのに良い体幹トレーニングだ。
これだけでなく色々な体勢の体幹トレーニングをしていくが、30分もすると、限界を迎えて、動けなくなってしまった。
投手陣は全滅、野手陣はまだ余裕があるっぽい。
この空間で寝そべっているだけでも鍛えられるので、俺達投手陣は寝そべって回復に専念させてもらう。
1.5Gでも滅茶苦茶辛い。
1.5倍で体感普通の練習の3倍くらい辛いのだ。
こりゃ体が鍛えられるハズだ。
あかりが近づいてきて、
「投手陣は朝練と夕方のトレーニングで体幹12種各5セットをこなすのノルマね。走るのもそうだけど、今はこっちのほうが効率良いし……勿論晴れていたら走らすけど」
「「「うっす……」」」
あかりの笑みが鬼の様に見えてしまうのだった。
「今日もクタクタまで練習やったなぁ……」
「飯食わないと」
6月中旬になった頃、俺達の体に大きな変化が起こっていた。
「球児、なんか背が伸びてないか?」
「野口の方こそなんか急激に身長伸びてね?」
そう身長や体全体の肉付きがどんどん良くなっていっているのである。
最初の頃はどんぶり飯1杯食べるのがやっとだったのに、最近は常にお腹が空いてくる。
どんぶりお代わりも自然になってきて、前からよく食べていた豊と勇者はご飯お代わり3杯もするようになっていた。
自分達は食いトレをしているつもりはないのだが、食わないとお腹が空いて、逆に腹痛になってくる。
朝練終わった後にマネージャー達が色んな具入りのおにぎりと補給クッキーを作ってくれているが、間食としてそれを食べてやっと見たいな感じ。
「球児君、どんどんたくましくなってるよね」
「筋肉がついたっていうか……身長も伸びて」
クラスの女子達からも注目の的である。
悪い気はしないが鼻を伸ばしているとあかりに教科書で引っ叩かれるのでほどほどに。
そんな体の変化は球質にも変化を与えてくれていた。
「よっと」
スパーン
「ナイスボール」
前より力を入れなくても速い球が投げられる様になってきたのである。
力み……とは違うけど、気持ち余裕を持っても球速も球威も出るため、球を投げられると、スタミナの消耗が段違い。
入学してから2ヶ月ちょっとで球速が17キロも向上して、現在132キロ前後を投げ込めるようになっていた。
流石に球速がグングン伸びているのは今だけだと思うが、豊はマックス144キロを計測したし、謙信も139キロまで球速が伸びている。
この伸び幅は驚異的である。
これもあかり達マネージャーがいつも変な練習道具を開発してきて試してくるせいかもしれないが、まぁ楽しいので良しとしよう。