高校に入学するまであかりは、
「基礎が固まってないんだから最初はフォーム矯正を続けるわよ。体に染み込むまでイメトレを続けるわ!」
ということで、受験終了から中学卒業、そして春休みが終わるまで、公園に集められては催眠スマホで催眠術を掛けられ、数時間にわたってイメージトレーニングをさせられ続けるのであった。
そして聖球学園の入学式……。
「去年まで女子校って聞いていたけど、男の数すくねぇ」
1学年120人のうち、男子が7名。
あかりよ……全員揃えても野球をする人数に足りてないんだが……。
「そんなのわかってるわよ。でも今私の伝手でそろえられた人員がこれだけだったの」
あかりとは同じクラスになり、クラスで愚痴を言うが、あかりは涼しげに受け流す。
入学初日なので、学校案内とかされるが、俺の印象としては設備は普通に整っているなって感じた。
室内練習場はあるし、野球のグラウンドもある。
ウェイトトレーニングができるトレーニング施設まで完備してるので至れり尽くせりって感じが凄い。
「でも野球部が無かったのにこの力の入れよう……ちょっと怖いんだけど」
「ふっふっふ……ここの校長も野球が大好きでね、野球星人との繋がりもあるし、ここの校長が願ったんだ。神宮にあるプロ野球球団で故障しないで投げたり打ったりできるスター選手を育成したいって」
「校長、乳酸飲料キメすぎだろ」
※神宮にあるプロ球団の親会社は大手飲料メーカー
「じゃあ早速私の仲間が集めたメンバーを紹介するから早速グラウンドにゴー!」
あかりに連れられてグラウンドに向かうとこの学校で7人しか居ない男子と女子が5人、そして女性の先生が立っていた。
「よーし、お前ら……言いたい事色々あると思うが、グッと堪えろ……私も被害者だから」
デカムチって感じの20代前半……大学生くらいにしか先生は見えない。
「えー、ここに居るマネージャー志望の5名……野球星人って多分聞いているかもしれないけど、事実です」
先生曰くこの宇宙人達は地球と友好な関係を持つ地球外生命体なのだが、性別が女しかおらず、現地生命体に野球を教え、野球が上手くなった男と子供を作る習性があるらしい。
「馬鹿馬鹿しいって思うだろ……でもガチなんだよ……というか集められた殆どのメンバーが普通じゃない何かを抱えているからな……正直に暴露していいぞ……という先生も実は魔法少女をやってる」
いきなりの衝撃暴露である。
先生曰く、最近流行りのダーティな魔法少女物ではなく、日朝系のゆるふわ魔法少女って感じで魔法のステッキ振り回して悪い人をやっつける……みたいな事をしていたらしいが、流石に20歳を超えると魔法少女って名乗るのも普通に不審者になっつきた。
そこで金稼ぐために球場のビールの売り子をしていたら、ここの野球星人達と校長に不思議な力を有しているねって言われてスカウトされ、あれよあれよと野球部顧問をやることに。
「野球のルールはプロ野球見てたから軽くは知ってる。ただ選手だったわけじゃないからノック(守備練習するときに球を打つ人)技術には期待するなよ」
ま、魔法少女!?
ムチムチの先生が!?
そんなん犯罪臭がやべぇ……。
見てみたい気持ちはあるけど。
次に自己紹介したのが自称野球星人のマネージャー志望の5人。
「遠い宇宙からやってきた」
「野球を広めるためやってきた」
「才能を磨くためにやってきた」
「野球星人レッド! 赤星ロア!」
「野球星人ブルー! 前川水星」
「野球星人イエロー! 七星あかり!」
「野球星人ピンク! 恋星桜」
「野球星人ブラック! 黒星凛」
「野球星人」
「「「「「ゴレンジャー!」」」」」
バン!
と後ろでカラフルな爆発が起こる。
多分色の由来は髪色であろう。
赤髪、青髪、金髪、ピンク髪、黒髪……野球星人なんて名乗ってなければ皆美人で可愛いのに……。
周りの皆も引きつった笑みを浮かべるしかない。
「野球技術の伝道者! 原石磨くが最大の喜び! それが野球星人! 日本各地から面白そうな野球の原石集めて来ました! ……普通の野球部だと監督やコーチの権限が強くてマネージャーが技術指導をするなんてもってのほか! なのでここの校長を脅……ゲフンゲフン、交渉してメンバーを集めてもらいました! 拍手」
リーダーらしき赤星が皆に拍手を促すが、まばらである。
「とまぁ野球星人側の自己紹介は以上、次男子達」
「お、おう……」
俺、豊、謙信の3人が普通に自己紹介をしていくが、なんか周りと空気が違う。
「じゃあ俺……野口勝也。中学は北佐倉シニアでキャッチャーをやってました。親の干渉が凄かったんで、全寮制のこの学園に入学を決めた……では駄目かな」
野球星人の女子達が睨んでいる。
「はいはい、分かりました。えー15年前、プロ野球選手だったある男が居ました。その男はキャッチャーフライでフェンス際の打球を処理しようとして飛び込んだ際にフェンスと激突。その時に首をゴリッとやってしまいそのままポックリ。気がついたら転生してたってわけ」
「転生者ってことか?」
「そうなる。ただこの体は体型的に恵まれているとは言いづらく、見ての通り身長は150センチ……肩も鍛えてはいたんだが強いとは言えなくてな……だからシニアでも2軍に甘んじていたんだ」
そりゃその身長だとパワーも期待できないだろう。
ただ前世での死に方が強烈だったので今でもプロ野球の事件簿に記録されている俺でもその事件を聞いたことがあった。
若き正捕手が不慮の事故で死亡……それからその球場は更にクッション性の高いフェンスに変えたり色々していたらしいが……。
捕球技術(ボールを捕る能力)には自信があるとのこと。
続いて糸目の胡散臭そうな雰囲気をしているチャラ男。
「うち、服部二郎っていう忍者の末裔ですわ……時代錯誤もよいところで、うち忍者になるために育てられたんですけど、それを勧めてた親父がポックリ亡くなって……どうしたもんかって悩んでたらそこの水星はんがプロ野球選手目指せって。プロ野球選手って稼げるんやろ? 野球全然詳しくないけど、一から教えてくれるってことで勧誘受けました」
今度は忍者かよ……やべぇな。
ただ残り2人はもっとヤバい。
「異世界帰還者の上林勇者です。勇者やってました! 日本に帰ってこれたと思ったら元の日本じゃなくて、戸籍が無くなったりしていて途方に暮れていたらピンク髪(恋星)の家に居候させてもらって……野球は異世界に行く前にやっていたけどブランクあるので許してください」
異世界帰還者ってなに!?
え、魔王でも倒したってこと?
めっちゃ爽やかイケメンだし顔面偏差値たけぇ……。
最後は人間でもなかった。
「あの……蔵馬北斗って言います。京都の山奥の妖怪がいっぱい住む村で隠れて生活していた天狗なんですけど、ダム建設が始まって途方に暮れていたら仲間を保護する対価として僕が野球をやることになりました。プロ野球選手になれば大金稼げて、仲間と暮らせる居場所を購入できるくらいの金は手にはいるって言われたので……邪な理由ですみません」
見た目普通の少年だけど、服を脱いで背中を見せると黒い大きな翼が生えてきた。
妖怪って本当にいるのかよ……。
「さてさて、自己紹介が終わったところで目標を発表していきます。それは……」
「「「それは……」」」
「ここに居るメンバー全員プロ野球選手になること! それにはドラフトに引っかかるような成績を大会で残す必要があります」
「で、素人だったり、野球経験あっても下手だったり……現状戦力になるの野口だけだから、1年目夏の甲子園予選は捨てる。人数も足りてないからね。動き出すのは秋季大会からになるね!」
赤星が語るに、できれば夏の甲子園予選も出れたら出たいけど、試合に出せるレベルに到達できてなかったら容赦なく捨てるらしい。
で、秋季大会には連合チームで出場できるように調整するとのこと。
「ここ千葉県は群雄割拠のエリアだからね。強い高校が毎年のように変わるし、ベスト8までがほぼ団子。ここに一石を投じるよ!」
というわけで俺達の初顔合わせだった。