幼なじみが宇宙人だった件について〜そんな彼女が俺をプロ野球選手に育成しようとしてくる〜   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1年目 秋季大会予選

 抽選会場……俺はチームを代表して赤星さんと及川先生の3人で秋季大会予選の抽選会に参加していた。

 

 こういうのは野口がやるんじゃないかとも思ったが、野口が、

 

「俺はキャプテンって感じではないからなぁ」

 

 と辞退し、なんか俺にお鉢が回ってきたのである。

 

 抽選会ではくじ引きをしてトーナメントのどこと当たるかが決まるのであり、俺は最初の方に引いた時は周りが殆ど空いていた。

 

 で、くじがどんどん進んでいき、俺の顔はみるみる青くなっていく。

 

 予選1回戦が夏の大会でベスト16だった高校、それを勝っても毎年いいところまで進む古豪というべき感じの高校2連チャン。

 

 予選だと3回戦まで全く強くなかったり、俺達みたいな連合チームと当たる可能性があったにも関わらず、強敵3連チャンである。

 

「俺のくじ運最悪じゃねぇか!」

 

「あはは、ドンマイ! でもここを勝ち進む事ができたら県大会は注目されるかもしれないね。まぁ引いてしまったものは仕方がないから」

 

 赤星さんは慰めてくれるが、やるしかないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「予選が始まったか……」

 

 俺は千葉県で雑誌の記者をしている染岡という者だ。

 

 担当部署が高校野球を中心に取り扱っているので、大会や注目高校には足を運んで取材させてもらったりしている。

 

「さてさて、1回戦で面白そうなところは……ん? 東海道大付属負けたの? しかも5回コールド(5回裏に10点差が付いた場合コールド試合となる)じゃねぇか……相手は聖球東南連合? 人数10人の連合チームに大差負け? ……ちょっと気になるな……次の試合を見に行ってみるか」

 

 というわけで俺は聖球東南連合チームを注目した。

 

 たまたまかもしれないが、連合チームが予選を勝ち抜き、県大会に出場できたら結構な注目は得れる。

 

 しかもそれが10人の最少人数でやりくりしているとなれば尚更だ。

 

「よっこいしょっと」

 

 前回の1回戦は見れなかったが試合の流れを記したスコア表のコピーは入手できた。

 

「それによれば……4番の勇者って子が1回から満塁ホームランを打って、そのまま打者一巡の猛攻で一挙に8点を先制、そのまま毎回点数を取って、投手も背番号7番の郷田って子が5回無失点で投げ抜いたのか……エースナンバーの子を投げさせてないんだな」

 

 試合が始まる前に会場に到着し、スコアボード(野球場のセンター後方にある大きなパネル 得点とかが書き込まれる)に先制と後攻が書かれていたが、今回は聖球東南連合が後攻らしい。

 

 今ちょうどノックを受けているが、今日はどうやらエースナンバー(背番号1番)の子が投げるみたいだ。

 

「えっと選手データによると星野球児右投げ左打ち……前回の試合ではセカンドで出場して6打数4安打でエラーも特に無しか……まだデータが殆ど無いな」

 

 ノックでは女性監督と補助にマネージャーらしき少女達が参加していて、守備の確認をしているが、これが中々上手い。

 

「へぇ、ショートは足滅茶苦茶速いな……打球反応も良くて守備範囲も広そうだ。キャッチャーは肩は普通か。いや連合チームって考えれば上出来もいいところだど……これはまぐれで勝ったチームでは無さそうだな」

 

 ノックも終わり、試合が開始される。

 

 先攻のチームのバッターが打席に立つ。

 

 ピッチャーの星野が投げ込んでいきあっという間に三振を奪う。

 

「へぇ、アンダースロー……バックネット裏から見てるからわかるけど、全然球が垂れてない……むしろホップしてないか?」

 

 テンポよく星野は球を投げ込み、3人の打者を9球で仕留めてみせる。

 

「三者連続3球三振……イマキュレート・イニングを初回から達成だと!」

 

 野球用語でイマキュレート・イニング……という言葉があり、三者連続3球三振を達成するとこの言葉を言われるのであるが、完全試合(無安打・無四死球・無失策で9回を1人の投手が投げきってチームを勝利させる)というのやノーヒットノーラン(無安打かつ1点も取られないで試合を終えること)並みに難しいとされる記録である。

 

 それを意図も簡単に達成するとは……。

 

「星野球児……想像より大物かもしれないな」

 

 1回で見れた球は全球伸び上がるストレート。

 

 球速を計測したら132キロ……アンダースローということを考慮すれば十分に速度は出ている。

 

「アンダースローやサイドスローだと140後半が出ればプロ級だからな。そう考えるとまだまだかもしれないが……」

 

 1回裏の攻撃が始まり、聖球東南連合の1番打者は蔵馬。

 

 初球を狙っていたのか、綺麗にはじき返してセンター前ヒットを放つ。

 

「おお、いいバッティングだ」

 

 2番は服部……、

 

「おいおい、蔵馬君……リード(ベースから離れて次の塁に近づく行為)が大きすぎないか?」

 

 すかさず投手は牽制球を投げてくるが、投げた瞬間にスタートを切っていた。

 

 ファースト(一塁手)が投手の牽制球を受け取り、セカンドに球を投げようとした時、二塁のベースカバーをしようとしたショートとセカンドが入る前に盗塁が成功していた。

 

「どんだけ足が速いんだよ……これじゃあ普通の高校生だと走らせ放題になるぞ」

 

 超俊足の蔵馬に驚きながら、投手は一旦落ち着き、打者に1球目を投げる。

 

 すかさず蔵馬は三盗を試み、捕手が三塁に投げる途中で悠々とセーフ。

 

 ヒット1本かつ、投手が1球投げただけで三塁まで進まれたらたまったものではない。

 

 内野は前進守備を行うが、打者の服部は次に投げられた変化球を地面に叩きつけ、打球を高いバウンドにして前進していた内野手の頭を超える。

 

 三塁ランナーの蔵馬は勿論セーフだし、服部も一塁を駆け抜けてセーフ。

 

 そして3番にレフトを守っている郷田が入る。

 

 すると服部も盗塁を仕掛けてセーフ。

 

 郷田が外野を抜ける二塁打を放って服部を本塁に返して聖球東南連合が既に2点を奪っていた。

 

 そして4番上林勇者。

 

 ガキーン

 

 金属バットとは思えない音を響かせて打球は45度の角度でどこまでも飛んでいき、場外に消えていった。

 

 この一発で投手の心が折れたのか、パニック状態になってしまい、5番キム、6番野口、7番チンの3人に連続四球を与えて投手交代。

 

 8番のラジは次の投手が抑えたが、9番杉浦が外野の頭を超えるタイムリーツーベース(二塁打)を放って走者一掃。

 

 これで7点が取られる。

 

「おいおい、ここのチームも決して弱くはねーぞ……」

 

 部員数30人以上いて、トーナメント運が良ければ夏の甲子園予選でもベスト4に残ったりする程度には実力がある高校なのだが、そんな高校を聖球東南連合は容赦なく蹂躙。

 

 1回に15点を先制し、2回の星野の投球でもだれも星野の球を打ち事ができない。

 

 3球三振記録は途切れたが、2回でまだ20球しかなげてない。

 

 相手投手陣は既に80球以上投げており、2回持たず3番手投手が動員される以上自体。

 

 2回10点、3回8点、4回14点で5回表の攻撃を完璧に封じ込めて、5回53球全打者三振の完全試合達成である。

 

「おいおい、強いどころの話じゃねぇじゃねぇか! これは台風の目、いや、関東大会でも上位に行ける実力はあるぞ」

 

 しかも春の甲子園大会には秋季大会県本戦(関東大会代表選抜戦)出場できれば21世紀枠という特別ルールで春の甲子園に行けてしまう可能性があるのである。

 

 そんな高校を他の出版社に先んじて取材していれば、記事は多く売れるし、社内で特別ボーナスが貰えるかも! 

 

「こうしゃおれねぇ! さっそく聖球東南連合の監督に接触しないと……」

 

 と席を立とうとした瞬間に黒髪の美少女が俺に声をかけてきた。

 

「すみません、私こういうものでして……」

 

 名刺を渡されると聖球学園野球部マネージャー兼スカウト担当と書かれていた。

 

「記者さんですよね? 房総スポーツの?」

 

「よ、よくご存知で」

 

「もし良ければ後日練習を見に来ませんか? 今は選手も疲れているのと1年生が殆どでインタビュー慣れしてないため、求められる言葉は出てきませんよ」

 

「……なるほど……練習を見に来てもいいのですか?」

 

「ええ、部員ともども待ってますので、一報を入れていただければ」

 

 なんとも不思議な雰囲気のマネージャーがいたものだ……。

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