幼なじみが宇宙人だった件について〜そんな彼女が俺をプロ野球選手に育成しようとしてくる〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「はい、じゃぁ房総スポーツの記者さんが来てくれました!」
「「「「よろしくお願いします」」」」
黒星という少女に連絡先を貰い、その日のうちに連絡を入れると、翌日には取材に来てもらって大丈夫とのことだったのでお邪魔させてもらった。
まだ大会中なので練習の邪魔になるから遠慮したほうが良いかとも思ったが、俺が取材の許可が出た日は本来なら休日で練習が無い日だったらしいので、大会中だから軽めの調整練習をする程度なので、取材に来てもらって構わないとのことだった。
「投手陣が投球練習するのでどうぞ」
とブルペンに案内してもらった。
「マネージャーも壁役(ブルペン捕手のこと)を?」
「ええ、うちは人数がいないのに投手が3人もいるので、キャッチャーが足りないのでね。マネージャーが持ち回りで壁役をやっているんですよ。こっちが正捕手の野口君です」
「野口です。今日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします。見てたよ、2回戦全打席安打……」
「勇者に比べるとまだまだですよ」
そう言うが、彼……野口君のフレーミングの技術(補給してから僅かにミットをズラす技術 上手だと審判に有利な判定を貰いやすい)は試合を観させてもらっただけで抜群に上手い事がよくわかる。
あれで星野君も数球ストライク判定になっていたからな。
投球練習が始まり、星野君、杉浦君、そして郷田君が投げ込みを始める。
「ほう……それぞれ特徴のあった良い球を投げますねぇ」
驚いているのが顔に出ないようにするので必死だ。
なんだこいつらの投球……本当に1年生か?
星野君はアンダースローから伸び上がる球を投げてくるが、これは初見じゃ打てない。
認識している場所からボール3つか4つ分上を振るイメージじゃないとバットが空を切るだろう。
星野君は2回戦コールドゲームだったから完全試合に記録されないが、5回パーフェクトのピッチングを続けていた。
捕手である野口君のリード面に助けられたのはあっただろうがそれでも十分に甲子園で投げ抜けるピッチャーだろう。
次に郷田君。
最速144キロの直球にバッターの手元で僅かに曲がり、芯を外したり詰まらせるカットボールとツーシーム。
それにタイミングを外させ、球2個分沈む球速100キロ代のチェンジアップも強力だ。
そこに空振りを取れる縦に落ちるスプリットもあるのだから、捕手の野口君は組み立てが楽しいだろうな。
最後に杉浦君は恐ろしいほど曲がるスライダーとフォークが武器のピッチャーか。
球速も135キロ以上を安定して投げられているし、調整投球で最速140キロなら上出来だろう。
特にスライダー……40センチ近く曲がってるんじゃないだろうか。
プロ野球選手でも30センチ曲がれば1級品、メジャーで活躍する投手のスライダーが40センチ、50センチと言われているので、既に40センチ曲がるスライダーは打者は頑張っても打てないだろう。
そこに30センチ近く落ちるフォークボールが組み合わされば、まず高校生は打てない。
しかも横で教えてくれている黒星さん曰く杉浦君は技巧派のピッチャーで、コントロールがこの3人だと一番高いらしい。
既にストライクゾーン9分割をして全力投球でも投げ抜く事が出来るし、変化球のコントロールも問題ないとのこと。
ただ現状の体のできてない状態でスライダーを多投すると肘が飛ぶ(壊れる)可能性が高いので、変化球は投球数に制限をかけているとのこと。
「これは記事にはしないでくださいね」
「ああ、それは勿論」
「次縦スライダーいきます」
「よし来い」
変化球……杉浦君に注目がいきがちだったが、星野君何球種持っているんだ?
ストレート10球投げたあとは全部別の変化球を投げているが……。
「彼軟投派の変化球ピッチャーなんですよ。現時点で10球種使い分けてますから」
「そりゃすごい……で、実戦で使える変化球は何種類なんだ?」
「いえ、実戦で使えるレベルが10種類ですよ。ちなみに2回戦はストレート1本で投げ抜いちゃいましたけど」
「実際打席に立ってみても良いかな」
「ええ、どうぞ」
なかなかブルペンの中に入らせてもらって、更には打席に立つというのは許されない場合が多いが、聖球学園野球部は快く立たせてくださった。
で、実際に星野君のストレートを見てみると、打席の方が浮き上がって見えるし、手首のスナップが独特で、最後に強いスピンを球に掛けているのが分かるのだが、一見すると変化球にも見えてしまう。
しかし綺麗なバックスピンだ。
風切り音が聞こえてきそうなほどの球で、スピードガン上だと130キロかもしれないが、プロの投げる150キロに近い体感速度を感じる。
正直郷田君よりも球が速く感じるんじゃなかろうか。
「星野いいピッチャーでしょ」
「ああ、いいピッチャーだ」
「俺も球受けてて楽しいですし、手札が色々あるのでリードしやすいんですよ」
「なるほど」
この投手陣に捕手としての能力が見ただけでも高い野口君……打撃に注目がいきがちだが、本質的には投手のチームなのかもしれないな。
投手陣の練習を見たあとに打撃練習を観るが、ここでもなんとマネージャー達がバッティングピッチャーを行なっていた。
「しかも結構な球速が出ているし」
ピンク色の髪の子140キロ投げてないか?
赤髪の子も一級品のカーブを投げているし……。
「うちはマネージャーも戦力ですよ」
「すごい練習をしているな」
投げ込みを終えた投手陣と捕手の野口君も打撃練習に参加し、これがまた皆いい打球を飛ばすんだ。
「外野で球拾いをしている女性陣は?」
「あれは野球部のファンの女子達ですね。マネージャー募集は今年はこれ以上してないんですけど、野球部の男子に惚れた子達が力になりたいと球拾いを手伝ってくれてるんですよ。中には良い感じに進展してる子も居て」
「へぇー本当に学校が総力を挙げて野球部をバックアップしているんだ……なんとも独特なチームだ」
スパーンと上林勇者君が特殊なバットで打撃練習をしている。
よく見ると他の選手もコブが2つ付いている様な木製バットで練習している。
「バレルバットか」
プロ野球選手や強豪校がミート力や長打力を身につけるために練習に取り入れられるバットで、打撃練習でもトスバッティングとかで使うのが一般的だが、彼らは普通の打撃練習で使っていた。
「金属バットでなくていいのかい?」
「ええ、試合では金属バットを使いますが、未来を見据えて木製バットに早めから慣れさせておくのがうちの練習方法です。あと練習なので規格品を使う必要はないですし」
「なるほど」
どこかで安く入手しているんだろうな。
公式戦で使えるようなバットとかは高いからなぁ……。
幾ら野球部を押している学校でも予算的に厳しいだろうし……。
打撃練習では勇者君も素晴らしかったが、野口君のバットコントロール力も素晴らしい。
身長が伸びてパワーが付けばドラフトに引っかかるかもしれない逸材だと俺は思うが……。
「あくまで俺は記者だからな……この選手達が有名になる手助けができれば……」
まぁこっちとしても部数稼がないと商売やってられないのでね。
取材した数日後、3回戦が行われていたが、今度は杉浦君が投げて、5回コールドゲーム。
少し注目が集まっていたところに俺の書いた聖球野球部特集の記事が書かれた雑誌が販売されるのであった。