「さて、じゃあ自己紹介も済んだところで、野口にピッチャー志望の3人の投球を受けてもらおうと思います」
あかりがいきなりそんな事を言い始めた。
「ち、ちょっとあかり」
「ふっふっふっ……妖怪とか忍者とか転生転移なんか無くったって原石は転がってたりするってところを見せてやりなさい!」
いきなり俺と謙信と豊の3人が投球をする羽目に……。
〜赤星ロアサイド〜
「あかりは特殊な人物よりも成長率を加味してメンバーを集めたって言っていたけど、あの3人の投手候補がそう?」
「うん、球児も豊も謙信も絶賛成長期真っ只中。ちゃんと栄養管理した食事と十分な睡眠が加われば、身長180や190超えも目じゃないから」
「なるほど……でも私が発掘してきた元プロの転生者野口もなかなかよ」
各々軽く準備体操とキャッチボールをした後に野口がキャッチャーミットを構える。
マウンドには星野球児が立ち、投球モーションに入る。
「へぇ……アンダースロー」
「催眠スマホを使って、その人物が最適な投球フォームを一発で見つけられる……それから2ヶ月半はそのモーションを体に馴染ませる期間に使ったけどね」
私の横で水星が特殊なカメラと計測器を用いて彼の技量を測る。
15球ほど投げてもらって計測結果が出てくる。
「計測でたよ」
計測器を覗き込んでみるとゲーム風の能力が表示されていた。
【星野球児】
右投げ左打ち
球速 115キロ
コントロール D+(57)
スタミナ F-(30)
カーブ 1
「地球の野球ゲーム風に数値を表したけどこんな感じだね」
「ふーん悪くないじゃん」
「ただこれ高校生基準での能力値だから」
ランクと数値の見方であるが、野球は野手能力と投手能力が存在し、投手が球速、コントロール、スタミナ、そして変化球。
一方で打者はボールをバットに当てるミート力、ボールを遠くに飛ばすパワー、足の速さの走力、肩の強さの肩力、守備の上手さの守備力に、ボールを確実に捕る捕球力というのが存在する。
あとは投げた球の回転数だったり、打った球の角度の傾向だったり色々あるが、そこら辺も見ることができる。
で、星野球児のデータを見てみると、強豪シニア出身でもなければ高校生成り立てかつ、球速が出にくいアンダースローで115キロも出てれば十分。
コントロールも悪くない。
「プロ仕様にすると数値が20から30下がるけど、高校生って考えるとコントロールは普通に戦えるレベルはあるね」
何より球児の球質がとても良い。
投げられた投球の回転数が多いと、ボールは重力で垂れることなく投げられた手の位置から直線でキャッチャーミットまでなぞることができる。
球速が速くても垂れる球は打者からしたら遅く感じるし打ちやすく感じる。
一方球の質が高いと伸び合った様に打者は感じるのである。
アンダースローは地面スレスレの手の位置からキャッチャーミットに投げ込むので、ボールがより浮き上がるように感じやすい投球フォームである。
下に落ちる球と相性が悪かったりするが、斜めや横に滑るような変化球を加えることでとても打ちにくい投手としてプロで大活躍した投手も過去にはいた。
あとアンダースローの投手は体が柔らかくないと投げれないため、普通の投手よりも資質に左右されやすいってのはある。
特殊能力でノビAとか◎と球持ち◯(打者からしたら体感球を速く感じやすい)みたいな能力を持っていると言っても良いかも。
続いて郷田豊が投げる。
「おお、スピード出てるね」
「投球フォームを矯正したら一気に速くなってね。元々キャッチャーをやっていたからある程度の肩は元からあったし、フォームが整ったことでコントロールも格段に良くなった。あとは筋力と手首の使い方を整えていけば本格派って言える投手に成れる素質はあるよ」
投手には色々なタイプが存在するが、基本速球派、軟投派、技巧派、本格派の4種類に分類されがちであり、本格派というのは長いイニング……投球回を長時間投げ続けることができるタフな投手に言われることが多い。
現代プロ野球選手だとエースと呼ばれる人がこれによく該当する。
最初に投げた星野球児はどちらかといえば軟投派や技巧派よりの投手であると言える。
【郷田豊】
右投げ右打ち
球速 132キロ
コントロール E+(48)
スタミナ D(55)
そして最後に投げる杉浦謙信は両者の中間的な投手であった。
【杉浦謙信】
左投げ左打ち
球速 120キロ
コントロール E(44)
スタミナ E(46)
スライダー2
シュート1
コントロールの目安としてEあればストライクゾーンに投げられる。
Dで低め、高めをある程度投げ分けられ、Cでストライクゾーンを4分割できる。
Bでキャッチャーミットの周りにほぼ投げられ、Aで9分割以上のストライクゾーンで勝負できる。
S以上で球1個とか半分の位置調整ができるって感じである。
ちなみにプロでも球1個の調整ができる人は稀である。
スタミナは数値プラス20から30の球数でおおよそ計算できる。
星野は50球全力投球したらバテるし、郷田は80球程度までは大丈夫となる。
ちなみに野球で9回まで投手が投げる投球数はおおよそ120球とされていて、甲子園を目指す球児達は120球全力で投げてもバテない体力を付けるのが目標とされている。
勿論もっと投げられれば良いが、全力投球すると肩や肘に蓄積疲労が溜まり、故障のリスクを付き纏う。
肩や肘が頑丈っていうのも本人の資質に左右されるのである。
「その点3人は大丈夫だ。中学3年間補欠だったから試合で酷似されることもなかったし、私が口酸っぱく柔軟やれって恐喝したから、体の柔軟性は滅茶苦茶ある」
あかりが言うには車に跳ねられたとしても怪我しない頑丈さを持っているって断言した。
「ナイスボール」
野口は3人の球を受け終わってこちらに戻ってきた。
「どうだった? 3人の球を受けて」
「軟式上がりで初めてで硬式球をあれだけ投げられれば上出来でしょ。3人投手としての素質は十分にあるよ」
前世でプロ野球選手だった野口がそう太鼓判を押すけど、そうなると3人でローテーションを組んで先発と中継ぎに分業するほうが良いだろうと意見も言ってくる。
高校野球は勝てば勝つほど日程間隔が詰まって投げなければならない。
弱い高校は一番強い投手を酷似して結果体力が回復しきれずに、戦力が充実した強豪校に敗れる……ていうのがよく起こる光景である。
野口も人数の居ない高校からプロを目指すプランを私から聞いた時は投手不足で負けるんじゃないかと不安を口にしていた。
しかし、しっかり試合を作れる(6回以上投げられる)投手が3人、しかもタイプが全然違うため、これなら相手打者を慣らさせる前に順番に交換して、試合を有利に進めることができるだろうとのこと。
「まぁ今は光るものがあるだけで全然だけどな」
釘を刺すことも忘れない。
「あかり、良い原石を連れてきたじゃない」
「でしょ、見る目あるのよ私は」