風呂から上がった俺達の前に、マネージャー達が脱衣所を出たところの通路に日焼けマシーンの様な円柱状のカプセルを取り付けていた。
「あかり……何してんの」
「何ってマッサージマシン取り付けてるの。色々作るものがあるから今回は3基しか作れなかったけど」
お前は色々な道具を作るキテレ◯大百科の主人公かってツッコミを入れようかと思ったが、宇宙人設定を踏襲するならケロ◯軍曹とかの方が設定としては合ってそうだな……。
「とりあえず今日投げた3人……球児と豊と謙信はこのカプセルに入って体のケアをしてね」
「お、おう……」
他のメンバーはマネージャー達にマッサージをしてもらえるので、羨ましいなって思いながらもマッサージマシンの中に入った。
すると液体が注入されていき、溺れると扉を叩くが、ロックされていて出れなくなっていた。
息を留めていたが、苦しくなり、液体の中で咳込んでしまったが、何故か呼吸ができる。
すると目の前のモニターにあかりが映し出されて、
『安心して、液体の中でも呼吸が出来るようになっているから。逆に吸い込むように深呼吸するとよく体に馴染んで疲れが取れていくから』
あかりの説明によると、特殊な液体と様々な場所から振動と電気が流れているらしく、筋肉の疲労回復は勿論、肘や肩等の関節部分の炎症を治したり、消耗品である肘や肩を治癒する効果もあるのだとか。
あと成長期に使うと身長も伸びやすく、筋肉もつきやすい体質に改善してくれるのだとか。
『投手は一定の筋肉以上は肩や関節の可動域を狭めるから故障のリスクや逆に出力が低下するっていう人もいるけど、筋持久力……白い筋肉とも言われるやつ……あれが全身に纏ってないと、長いイニング投げられるスタミナは繋がないし、太ももとかの血液の循環を補助する様な筋肉は沢山あった方が疲労の蓄積にも影響するし、血液循環が良ければ結果全体のパフォーマンス向上になるから高校生ではガンガン体を大きくするべし!』
そう力説された。
10分ほどすると液体が抜けていき、タオルで体を拭かなくても大丈夫なほど速く乾いた。
そのまま服を着てみると確かに体全体が滅茶苦茶軽い。
「おお……こりゃすげーわ」
「私達も毎回マッサージできるわけじゃないからこれを皆で順番に使ってね」
「「「おう」」」
そのまま夕食となり食堂へと移動する。
「ねぇ、男子だよ」
「え、かっこいいじゃん」
「声かけてみない」
食堂は女子の寮生達と一緒に食べる。
ただ、野球部のメンバーは全員食事にノルマが課されていて食いトレが導入されていた。
と言ってもマネージャー達が言うに食いトレは吐くまで食べる必要は無く、いかに成長のエネルギーを最大量摂取できるかが大切と説明された。
「正直大量の丼飯をただ量をかき込むっていうのは前時代的。今の食いトレは何回かに分けて量を摂取するのが良いんだよね」
だから朝昼夕の3食を腹8分目くらいまで食べるのは勿論、そこから休み時間や練習の合間に食べる間食の回数も重要になってくるのだとか。
「あと何をどれだけ食べるかも重要になってくる。偏った物だけ食べてると栄養バランスが崩れて成長の阻害になるし」
あと入学前にあかり達に尿検査をされて、その人に足りなくなりがちな栄養素を補給するためのアイテムもマネージャー達は作ってくれていた。
「テッテレー補完クッキー」
色々な見た目のクッキーでチョコチップだったりジャムが塗られていたりして甘くて美味しい。
「夕食後の寝る前はどうしても沢山食べると胃を動かすことになって睡眠の質が低下するから、これを食べて空腹をしないでほしい」
とのこと。
ちなみにここの食堂の飯は普通に美味かった。
今日は豚汁にとんかつ、ひじきのマリネに漬物が少々とせん切りキャベツ。
それに山盛りのご飯。
これが練習後の体によく染みる。
食事を終えて、男子寮に戻る。
「1年間は1人部屋!」
全寮制なので勿論男子寮もあるんだが、まだ出来立てホヤホヤなので寮の決まりもほぼ無ければ、部屋も1人部屋である。
まぁ洗濯物とかは自分で全てやらなければならないが、先輩の分をやらなくてよい分楽である。
明日の準備をしていると、部屋がノックされて誰かが来た。
「謙信か豊か?」
そう思って扉を開けるとあかりだった。
「おま、ここ男子寮だぞ」
「野球部員の部屋に限りマネージャーもその部屋を訪ねることOKなの……はい、じゃぁこれ」
そう言って枕と毛布が渡された。
「枕と毛布?」
「そそ、夏場は涼しく感じるし、冬は暖かく感じる毛布……肌触りもいいんだけど、毛布と枕を組み合わせることで睡眠の質を劇的に高めるのだ!」
あかりの説明によると枕の中に脳波をいじくる電波を出す装置が仕込まれていて、目を閉じて十数秒で深い眠りに誘ってくれるのだとか。
「睡眠の質が劇的に向上するし、睡眠障害があろうが爆睡間違いなし、そして向上した眠りにより疲労回復は勿論、朝の目覚めもバッチリ! そして成長ホルモンの分泌を助けるから、身体成長待ったなし! 爆睡してるから成長痛の痛みもほぼ感じなくて済むからね! 野球星人印の安眠枕と毛布セットで100万のところ球児に限りお値段無料!」
「お、おう……ずいぶん気前が良いな」
「マネージャーとして今年のメンバー全員プロに連れて行くし、活躍させるって決めてるから、成長への投資には全力を尽くすのがマネージャーってもんよ! 寮の消灯時間は22時だからそれまでどうするかよく考えてね」
「じゃぁこの後また催眠術をかけて練習することは可能か?」
「やっぱり私が見込んだ選手ね。豊も謙信も同じ事を言っていたわよ」
「あいつらもか……」
俺はあかりから布団を受け取ると、ジャージに着替えて室内練習場に向かうのだった。
室内練習場に向かうと豊と謙信だけでなく、勇者、忍者、天狗、そして野口の全員が揃っていた。
「やっぱり全員揃うんだな」
「僕と忍者は野球の技術に関してド素人だから練習しないと……勇者はブランクを取り戻すのに、野口も打撃感覚を磨く感じ」
そう天狗が教えてくれた。
「はいはい、熱心な高校球児を持ててお姉さん嬉しいよ」
そこにマネージャー達がやってきた。
「催眠術をかけて肉体に動作を叩き込む。イメージトレーニングの延長線だから全部の練習をすることができるけど、実際に動いて確認していくしかないのが催眠トレーニングの欠点だね。まぁ絶対にケガをしない練習だから丁度いいけど」
「はいはい、催眠かけるから並んでー」
恋星さんが催眠スマホを持って近づいてきて、俺達に催眠をかけていく。
するとまた場所が暗転して大きな球場に立っている自分がいるのだった。
「お疲れ、脳疲労凄いと思うからクッキー食べて」
1時間近く催眠トレーニングをしていたら、頭の方が処理落ちして限界を迎えた。
そりゃ鮮明に空想して体を動かしているんだから脳疲労が半端ないだろうが、いつも以上に疲れた……。
「うん、今日の催眠は実際に体が動いていたからね。催眠かけながら動作をすることで反射で動けるようにしないとね!」
俺達は渡されたクッキーを頬張る。
甘いいちごの味が頭に染み渡る。
「さて、明日も朝練があるからもう一回シャワーを浴びるか、体を拭いてゆっくり休みなー」
「「「うっす」」
赤星さんにそう言われて今日は解散になるのだった。