翌日……朝アラームをかけていたが、それよりも10分前に目が覚めた。
「んん……やべぇ……めっちゃ眠れた……二度寝いらないくらい一瞬で目が覚めているし、体の疲れが全くない」
早速昨日あかりから受け取った枕と毛布の効果が出ているのか、快眠アンド疲労回復効果がヤバい。
朝から元気に活動できそうである。
スマホを見ると部のグループチャットに連絡が来ていて、6時起床、6時30分にグラウンドにユニホームではなくジャージで集合と書かれていた。
で、朝食前にクッキーを数枚食べてから来るようにって言われたので、寝起きのプロテインと一緒に補完クッキーを食べ、顔を洗ったりしてから野球グラウンドに向かう。
「おはよー諸君!」
朝からマネージャー陣は元気いっぱいである。
ちなみに昨日の雰囲気で何となくマネージャーの力関係というか性格がわかってきたが、赤星さんがマネージャーの中でもリーダーポジション、活発なあかり、クール系の黒星さん、のほほんとしている恋星さんに真面目そうな水星さんって感じ。
あと幼なじみの3人以外はあかりのことを七星って呼ぶ。
水星さんだけ下の名前だけど、星のつく方の名前で呼んで欲しいって言っていた。
あかりは気にしないらしいけど。
「さてさて、今日から本格的に野球の練習が始まっていくんだけど、朝練は足を鍛える練習をメインにしていきます……というか全員メニュー違うから。練習メニューを管理する水星が説明してくれます! じゃぁどうぞ」
「えー、赤星から説明代わりまして水星です。ちなみに朝練には顧問の及川先生は来ません。先生も本職の授業の準備とかがあるのと及川先生はノックもまともにできないので、ノックの練習をしてもらうため、正直お飾り以上の価値はありませんので悪しからず」
及川先生も他のメンバー並みに練習させられるらしい。
で、水星さんが各々の練習メニューを発表していく。
朝練できる時間は6時半から7時45分までの1時間15分だけ。
となるとできることも限られてくるが、その時間を最大限活かすメニューを考えてきたとのこと。
俺は練習靴を履いてとにかく走り込みをしろって言われた。
投手はとにかく走る。
野手よりもスタミナを要求されるので中学時代も野手の倍は走らされたが、ここでも走らされるらしい。
「普通に走ったんじゃ本人の意識次第で手を抜くことも可能なので、ここで登場するのが特性ランニングシューズになります!」
あかりからシューズを受け取って履いてみると、丁度いいサイズで走りやすそうである。
「足ツボを刺激することでこのシューズを履いている間疲れを感じづらくなります。ただこれはメインではありません」
野球で言うスタミナとは体力とは少し違い、複数の要素が合わさって投球回数をこなせるスタミナが身につく。
1つは有酸素運動による全身持久力を伸ばす方法。
肺活量と全身の筋力を強くすることで、疲れにくい体を作るという目的がある。
これの練習方法は30分から1時間の長距離走、及び100メートルのインターバル走、そして坂道ダッシュ等複数の走り方をすることで効率よく鍛えることができる。
プールトレーニングなんかも効率的だ。
次に筋持久力を付ける方法。
昔はスクワットとかが一般的だったが、現在では故障リスクを軽減し効率よく筋持久力が付けられる自重や体幹トレーニングなんかが主流である。
そしてメンタルを整えるというのもスタミナを伸ばすのに重要と言われている。
投球リズムを乱したり、力んでしまえば余計スタミナを消耗するので、これも大切。
「球児の朝練はこれも付けてもらいます」
テッテレー有酸素マスク!
一見普通の黒い布製のマスクに見えるが、あかりの説明によると、マスクをしている感覚はほぼ無く息苦しくも無いらしいが、酸素濃度を調整して高所トレーニングをしているのと同じ効果を得られるらしい。
「とりあえず球児の課題はスタミナ不足だから、朝練では徹底的に走り込んでスタミナを付けてもらいます。学校の敷地内にあるロードワークコースが1周30分目安で周り切る事を目標に走っていこう。それが終わったら100メートルダッシュ10本と坂道ダッシュ10本でだいたい朝練の時間は終わると思うから。まぁ球児だけじゃなくて豊と謙信もこの練習の比率を多くするけどね」
だそうだ。
というわけで各々練習メニューを指定され、準備体操をしたら練習開始。
俺はとにかく走るのだった。
豊と謙信も一緒のメニューであかりが監視役。
俺達がペースを緩めようとすると激を飛ばしてくるし、何なら俺達と同じペースで走って息を切らすことすらない。
あかりは運動はできる方だと思っていたが、本当に人間ではなく種としての性能が違ったりするのだろうか……。
俺以外のメンバーのメニューは野口が弱肩をなんとかするためのチューブトレーニング。
ゴムチューブを使って投げ込む動作をすることで肩の筋力を付けて強く遠くに球を投げられるようにする筋力トレーニングである。
投手でも球速を上げたい場合はチューブトレーニングをすることがある。
というかよく投手がやる練習方法である。
他3人はマネージャーが1人1人に付いてトスバッティングをやっていた。
下手投げでトスを上げてもらい、動いている球を打つ練習方法である。
結構トス側も技術がいるのだが、マネージャー陣は絶妙な球をトスして天狗、勇者、忍者の3人がボールを打っていく。
その際これまた特殊なバットを使っていた。
ミート力強化バット。
別名スリムバット。
普通のバットは持ち手が細くなっていて、芯付近は太くなるように作られているのだが、ティーバッティングで打つ時には持ち手と同じくらいのスリムなバットで打撃練習をすると、ボールを芯で捉えなければ全く打球が飛ばないのである。
カキーンではなく芯以外だとカスっとかコンとかの全然迫力の無い音がする。
その音と手の感触で芯に当たっているかどうかを確認することができるし、マネージャー陣が逐一打撃フォームが崩れていれば指摘をして修整を繰り返して練習をしていた。
そんなこんなで朝練の1時間15分はあっという間に過ぎていき、朝食を食べて授業を受けに校舎に行くのだった。