赤尾の忘れ物   作:節足甲殻

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 SAKAMOTO DAYSの二次創作全然ないから書いてやるぜ!
 感想や評価などよろしくお願いします。

 晶が可愛すぎるのが悪い。


第一次試験

―――おいヒロ厶。

 

会わなくなってからどれくらい経ったんだっけ。二人で雛鳥みたいに背中追っかけてたなあ。

 

―――お前は優しくて強いから守ってやれ。

 

あなたに教えてもらって強くなったんだもん。絶対守るよ。

 

―――まかせたぜ。

 

まかせてよ、リオンさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<まもなく、第一次試験会場に到着いたします。それまで快適な空の旅をごゆるりとお楽しみくださいませ⋯⋯>

 

「⋯くん⋯ロくん!」

 

 グワングワンと肩を揺さぶられる感覚がある。まったく一体全体誰なんだ?オレの睡眠を邪魔するヤツは。

 

「ヒロくん!」

 

「はいなんでしょう晶サマ」

 

 オレを眠りから覚ましたのは一人の少女。水色の髪に毛先には紫のグラデーション、大きくパッチリとした黄色い目。オレよりも大きいはずの160cmある身長は本人の気質のせいか小さく見える。その姿はまさに天使のようだ。

 彼女の名前は「赤尾晶」。この世で一番好きな人。

 

「何そのしゃべり方」

 

 失敬失敬、今から愛しい愛しい晶と一緒にハネムーンだってのに。

 空を駆ける1基の飛行機。その翼が向かうところは殺し屋専門の学校法人、『JCC』の編入試験会場。オレは最愛の付き添い人と共にそこへ向かっていた。

  突然だが日本の警察の犯罪検挙率は3割程度である。低すぎやしないかと思われるが、わが国では政府公認の組織、殺し屋連盟通称『殺連』が存在している。あらゆる犯罪は殺連によって排除、隠蔽などの処理されている。

 所属していれば好待遇の業務の斡旋や休日完備など、命の危険があるハイリスクハイリターンな仕事だ。勿論、だれでも殺連に所属できるわけではなく、承認試験を受けてプロライセンスを取得する必要がある。JCCは日本が誇る最大級の殺し屋学園であり、組織に入るための一番メジャーな手段だ。 

 

「急にガクって落ちてたから」

 

「ヘーキヘーキ」

 

 いらぬ心配をかけてしまったな、反省しなくては。

 

「緊張とか、してないの?」

 

「晶が隣にいるもん。微塵も感じんよ」

 

「もう⋯」

 

 あ、ちょっと顔赤くしてる。カワイイ。

 

「てかサカモトさん、卒業生だけど大丈夫ですか?」

「変装していく」

「セキュリティザルすぎません!?」

「チッ、うるせえな。新人がはしゃぎやがって⋯⋯⋯」

「どうせすぐ死ぬわ」

 

 二席ほど前からお気楽な会話が聞こえてくる。

 

「うわあすごいなあの人たち。緊張とかしないのかな?」

 

「見た限り記念受験とかそのへんのイメージあるね」

 

 そんな二人をみて不安になったのか、手元にあった合格祈願のお守りを握りしめる晶。彼女は優しいから弱気になっているのだろう。

 

「絶対、殺し屋になるんだから⋯」

 

「⋯⋯⋯」

 

 胸がキュッと苦しくなる。そんなことをさせたくはない。殺し屋になってほしくないが、オレじゃ彼女には敵わない。

 

「やめるなら今からでも間に合うぞ。このまま帰って晶のご飯が食べたいし」

 

「ううん、やるよ私。絶対に知りたいもん」

 

 人と目を合わせられない臆病な晶がしっかりとこちらを見る。トパーズのような美しい瞳はわずかな怯え以外の曇りがなく、覚悟が表れていた。

 

「⋯絶対、合格しような」

 

「うん、合格するよ」

 

 あの人の行方を知るためにも、必ず二人で合格する。

 だけど君はオレが汚させない。あの人の望みだもん。

 

「ほれ」「んっ」

 

 懐からココアシガレットを取り出し口に含ませる。甘いものにはリラックスさせる効果があるため少しは気が楽になるだろう。

 

「⋯ありがと」

 

「いーってことよ」

 

 頬を赤らめそっと手を握ってくる晶。⋯⋯⋯へ?手をにぎ⋯⋯え?

 

「あっ⋯あきらっそのっ⋯⋯手⋯⋯⋯」

 

「⋯いつもは自分から触れてくるじゃん。⋯⋯偶には、私からでも」

 

 はにかむ彼女を眼前にしてオレの思考力は吹っ飛んだ。

 

「あ゛ーもうかわいい!!」

 

「ちょ、ちょっと!ひ、人前だよ⋯!」

 

「見せつけたるわ!こんなかわいい生き物水族館にもいねぇよ!」

 

「もう⋯⋯//」

 

 こちらも痛くならない程度に握り返し、抱き着きたい気持ちを全力でこらえながら彼女が驚いた拍子に口から落ちたシガレットを口に含む。甘すぎる。でもそれがいい。

 

「オイ⋯⋯!ガキども!!!」

 

「んあ?」「ひっ」

 

 可愛すぎる晶を見つめながらカリカリとシガレットを食べているところに強面のハゲが割り込んできた。なんだテメェ晶がおびえてんじゃねぇかどつきまわすぞ。

 

「テメェ等⋯ここがどんな所かわかってんのか!?」

 

「オレとこの子のハネムーン会場」

 

「ぶっ殺すぞテメェ!!」

 

 まったく⋯⋯糖分不足かな?この光景を見ても理解ができないのかと憐みの視線を向ける。

 

「あ⋯あのそのえっと⋯⋯⋯」

 

「うっぜぇなテメェも!もっとハキハキしゃべれや!」

 

 唾をまき散らしながらクスリでもキメてるかのような反応を見せるハゲ。恋人どころか家族もいなさそー」

 

「テメッ」

 

「言っちゃってる!言っちゃってるから!」

 

「あれ声に出てた?」

 

 だとしたら事実を口にしてしまい申し訳ない。気にしていただろうに、シガレットをあげよう。美味しいぞ。

 

「ナメた態度とりやがって⋯⋯いいぜ!だったらてめぇの女の顔ズタズタにしてやる!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ」

 

 堪忍袋の緒が切れたハゲが晶につかみかかろうとするが、万力のような力で腕を阻まれる。

 

「はっ?」

 

「ハゲ、オレも少し言い過ぎたなぁとは思ったんだよ」

 

 彼はいつの間にか晶とハゲの間に立っていた。

 

「なのによぉ」

 

「ん?トラブルっすかね」

(あの動き⋯⋯)

 

「いくら事実とはいえさぁ、そんなキレるもんかね?試験前でピリピリイライラしてるだろうケド、それを人にぶつけるのは違うじゃねぇのか?しかも、オレじゃなくて晶に対してでよぉ」

 

「なっ、何を「もしも」ヒッ」

 

「これから先晶に髪の毛一つでも触れてみろ」

 

「もし触れたら」

 

 彼は光のない目でハゲを見上げ、宣言する。

 

 

 

「ダルマさんにしてやる」

 

 

「ヒロ君!」

 

「ハイっ!」

 

 爆発寸前の少年に対して少女が一声かけると、少年はハゲを投げ捨てて笑顔でしゃがみこんで少女を見上げた。

 

「私は、大丈夫だから。もう平気だよ」

 

「でもぉ………」

 

「でもじゃない」

 

「うぅ」

 

((((あの娘何者だ⋯⋯!??))))

 

 あれだけ強い殺気を放っていた少年が親に叱られている子供のように大人しくなった、その事実を目にした受験生はあの少女は何者だと勘繰る。

 

「いい?私たちには他人を気に掛ける余裕なんてないの。新人だし、そんな実力もない。私もあなたも、自分のことだけを見よう?」

 

「⋯ヤだよ、オレ。晶だけはほっときたくないよ。晶が受けるって聞かないからオレもこの試験を受けたんだし、晶がいないとオレはダメだし」

 

「ヒロ君⋯⋯」

 

「オレ、晶と離れたくない、一緒にいたい。大好きなんだ。だから晶を傷つけるような奴は近づけたくない」

 

((((このリア充が!!!)))

 

「うわ、坂本さん以外みんなおんなじ思考してる……」

 

 ついさっきまで獰猛なオオカミのような覇気をまとっていたのに、いきなりさみしがりな子犬みたいな願望を口に出した少年をみた観客の心は一つになっていた。

 子犬のような少年に対し、少女は宝石を潤ませながら慈しむ。

 

「私も一緒にいたいよ。でも、今回は自分の力だけで生き残らないとダメだから。頼ってばかりじゃ、いられない」

 

「⋯どうしても?」

 

「どうしても」

 

 少年の脳内にいくつかの考えが逡巡する。

 

「⋯⋯⋯⋯わかった。ごめんね、怖がらせちゃって」

 

「私もごめんね、強くいっちゃって⋯⋯」

 

 少年が気落ちしながら席に座りなおし、少女もオドオドした様子に戻る。

 

(やっぱり、言い過ぎちゃったかな⋯⋯)

 

 少女は少年に対し強く申し訳なさを感じているようで、何とも形容しがたい空気が流れる。

 

「ん」

 

「⋯⋯っえ?」

 

「ん!」

 

 落ち込んだ少女に少年がぶっきらぼうにシガレットの箱を差し出す。戸惑いながらも一本少女が取りだすと、徐に少年は口を開ける。

 

「あ!」

 

(え⋯⋯まさか)

 

「あ!!」

 

((((こいつ、あーんをねだっている!?))))

 

 数秒前までどんよりとした雰囲気だったのにいきなり甘酸っぱいアオハルの空気になり、少女を含めて再び受験生の心が一つになった。

 

(あのガキどんなメンタルしてんだよ!?叱られてたばっかじゃん!)

 

 前の席から覗き込む金髪の青年の指摘はもっともだ。意趣返しのつもりなのだろう。

 

「⋯よ、よし!」

 

 目をぐるぐるさせてシガレットを握りしめていた少女は覚悟を決め、頬を叩いて脳をクリアにする。

 

「あ、あ~~ん⋯⋯⋯」

 

「!!!」

 

 頬を赤らめて左手を添えて少年の口へゆっくりと運び、震える右手は少年の口を捉える。

 

「はむっ⋯」

 

「うぅ⋯//」

 

(((かっわいいあの娘⋯)))

 

 少年に餌付けする構図をCA含め、機内の全員から見られていることを自覚している晶は全身から火が出るような羞恥心に襲われていた。

 

「元気になった?」

 

「もう⋯⋯恥ずかしいよぉ⋯⋯⋯」

 

 晶は膝を抱き抱え、顔を埋める。ヒロと呼ばれた少年は満足げにシガレットを口に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(うまい)

 

「あの子供達、スゴかったですね。男の子の方はフィジカルハンパないですし、女の子の方はその男の子をあっという間に制御してましたし」

 

「尻に敷かれるタイプだ」

 

「いや、それは違う気が⋯⋯まあ、はい」

 

 先ほど晶とヒロに新人と言われていた弁当を食べる金髪の青年と太った銀髪のおじさん二人組。その正体は新人などではなかった。

 

「坂本さん、帽子だけじゃやっぱバレますって。懸賞金もかけられて顔割れてますし、なにより坂本さん自身のオーラが⋯⋯」

 

「太っているからバレない。それに、あの坂本太郎がこんなに弁当を食べるというイメージはないだろう」

 

「それはそうっすけど⋯」

 

 坂本と呼ばれた男、その正体はかつて伝説と呼ばれた殺し屋「坂本太郎」その人だ。彼は引退して家庭を築いて幸せに暮らしていたが、何故か自分に十億もの懸賞金をかけられてしまったため、家族との生活を守るために奔走することになった。現在は新たなる情報を得るためにすでに卒業したJCCに再受験している。

 

「このJCC編入試験、どんなレベルのやつらが集まってるんすかね」

 

「編入試験は正規入学よりもレベルが高い。さっきの子供みたいに、プロレベルのやつはゴロゴロいる。あまり気を抜くな、シン」

 

「はい!」

 

 弁当を五箱以上平らげた金髪の青年、彼の名は「朝倉シン」。かつて坂本とバディを組んでいた元殺し屋。今は坂本同様足を洗っており、彼と同じ目的で編入試験に受験している。自身の師匠ともいえる坂本に心酔していて、行動の節々に彼へのリスペクトが垣間見える。

 

「あいつら、試験前に食いすぎだろ⋯⋯」

「あれ何個目だ?」

「大食いチャレンジじゃねえんだぞ」

「ねー晶ー。オレたちも弁当食べるー?」

「私はあんまりおなか空いてないかな⋯⋯」

 

 ちなみに坂本は十箱近く食べている。

 

「よお」「ん?」

 

「お前らあのガキどもみたく新人か?えらくリラックスしてんじゃねぇか」

 

「なんか用か?おっさん」

 

「口の聞き方が鳴ってねぇガキだな。一つ忠告しといてやるよ⋯⋯」

 

 弁当を頬張っているところに現れたのは派手な赤いシャツと白いズボンの中年男性。どうやら緊張のかけらもない坂本たちをいびりにきたらしい。

 

「この試験の倍率は40倍以上。試験内容は毎年変わるから何が起きるかわからねぇ。ベストコンディションで挑まねぇと死ぬぜ、お前ら」

 

「ふーん、あっそ」

 

(スープうまい)

 

「晶晶。あんなこと言ってるけど体調大丈夫?」

 

「うん!ばっちり!」

 

「お前らみてぇな奴は真っ先に死ぬ!死にざま見届けてやるぜ!ついでにそこの黄緑髪のガキもだ!」

 

「えっオレも?」

 

「リア充は死ね!」

 

 中年は捨て台詞を吐きながら坂本のスパゲティをかっくらい、嵐のように過ぎ去っていった。

 

「あいつ殺します?」

 

「いい。スパゲティは帰ってこない」

 

 メチャクチャ悲しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「可哀想、あのお兄さんたち」

 

「うん、ひどい⋯」

 

 場所は戻ってヒロと晶。先の一部始終を見ていた彼らは坂本たちに同情していた。

 

「あの人たちだって私たちと同じ新人で、きっと緊張してるのに。なんであんな⋯⋯」

 

「人にあーだこーだ言っちゃうのは余裕がない時だったりするから、大方あのおじさんも緊張してたり、浪人とかしてんだろうね」

 

 ちなみにあの中年は五回浪人している。

 

(あっ!ダメだ、さっき私が言ってたじゃないか。ほかの人に同乗してる余裕なんてない。少しの気のゆるみが死に直結する世界、絶対受かって殺し屋になるんだ⋯!)

 

「お菓子あげてこようかな」

 

「逆に緊張しちゃうかもしれないからやめよう?」

 

 身を引き締める晶と空気が読めないヒロなのであった。

 

 

 

<え〜JCC受験生の皆さま、このたびは当機をご利用いただき誠にありがとうございます!只今より私水野の方から、前もって皆さまに受験内容をご説明させていただきます!>

 

 締まらない問答を繰り返していると船内アナウンスが流れ始める。ついに試験が始まるのだ。

 

<今受験生の皆さま361人の中に、試験官が複数名潜んでおります>

 

「「「「!?」」」」

 

<試験官はそれぞれJCCの刻印が入った特殊な銃弾を持っています。皆さまには試験官を見つけて、奪ってください>

 

「じゅ、銃弾を奪えって……」

 

 JCCの試験官、彼らはすでに入学している上級生かプロの殺し屋。受験生の中にはプロレベルもいるとはいえ実力はピンキリ。アマチュア以下がほとんどな受験生には高い壁だ。

 

「しつもーん」

 

 誰もがざわつく機内で、紙マスクをつけた黒髪の青年が声を上げた。

 

「銃弾を奪う時、殺してもいい?」

 

「もちろんです。できれば、ですが」

 

 その発言を皮切りに、空気が一変する。

 

<それでは皆さま>

 

 

 

 

 

 

 

 

Have a nice fright (良い空の旅を)

 

 

 

 瞬間、受験生たちの目の前にナイフやハンドガンなどの多種多様な武器が天井から吊るされて落ちてくる。

 

「⋯マジか?」

 

「いきなりっ⋯!」

 

「⋯⋯う」

 

 

 

「「「「うおおおおおおおおお!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと、えーっと⋯この銃どう使うの!?」

 

「そこスライドさせるんじゃない?」

 

「わかんないよぉ⋯!」

 

「オレらこんなの触ったことないしね⋯⋯」

 

 晶が手にしたのは制圧力抜群、弾が100発以上装填されている大型のライトマシンガン(L M G)。しかし扱いが難しいクセモノだ。

 

「死ねリア充!」

 

「お前が死ね!」

 

 モタモタしているところに中華包丁を持ったデブが斬りかかるが、ヒロのパンチ1発で吹っ飛んだ。

 

「クッソ、あんな配布武器の方がよかったなぁ⋯!」

 

「そうだ!ヒロくん武器なんだった!?」

 

「⋯⋯驚きなよ?」

 

 彼の手に握られていたのはオレンジ色の輪を為している紐が一つ。

 

「わ⋯輪ゴム?」

 

 どっからどう見てもただの輪ゴムだった。

 

「ちなみにこれ1本だけ」

 

「それって」

 

「うん」

 

 方や扱い方がわからない武器、方やおもちゃにもならない日用品。

 

「「⋯超ハズレ武器!」」

 

 命を懸けた試験だというのに、晶とヒロは絶望感しかない滑り出しになった。





 ハゲに対して髪で触れたらっていうクソデカ煽り。
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