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ワイワイと少年たちが遊ぶ声が響くなか、上空を悠々と飛び去って行く一台の飛行機。
「あっ飛行機!」
「「バイバーイ!」」
少年たちは知ることはない。
「うおおおおおっ!」
「やめろ!俺は受験生だ!」
「嘘つくんじゃねぇ!」
ショットガンによって体中に穴をあけられ、うろたえていた所にスタンガンを食らい、トイレでおびえていたものには機銃によってハチの巣にされる地獄絵図。そんな光景が広がっているだなんて。
<武器はランダムにお配りしております。それぞれ武器の性能を存分に引き出してください>
「ふざけるなよ!」
<!>
「こんなんで闘えるかよ!」
アナウンスをしていたCAにとっかかったのは坂本とシンに絡んできた中年。彼が持っていた武器はアルミ製のフライ返しで、まともな感性なら殺傷能力も防御力などもないと考えられる。
「武器を変えさせ’’ビシィッ!’’…えっ?」
文句を言っていた中年の腕を叩き、持っていたフライ返しが宙を舞う。CAはそれを素早くキャッチし、その勢いのまま中年の顔面をぶん殴った。
「ぐあっ!」
「いつ、いかなる時でも状況にも迅速に適応する。それが殺し屋です」
CAは気絶した中年に見せつけるかのように胸元から三発の銃弾を取り出した。
’’パン!’’
「ぐあっ!」
「⋯う~ん、こいつもハズレか。うわ、汚ねぇ⋯⋯」
軽やかな身のこなしで一撃で相手を仕留める者。
(試験官はおそらく、JCCの教員か学生のバイト。ということは年齢はおそらく二十代後半前後。その中から動きを観察して目星を付ける)
冷静に状況を分析する者。
(フフッ、アホらしい。最後に残った奴から奪えばいいのさ⋯)
潜伏し、漁夫の利を狙う者。
「お前は試験官か?」
(ちが「あっそ」あ⋯)
「ああ…人が多くて心が読みづれえな。頭いてぇ⋯」
心を読み、効率的に立ち回る者。
それぞれがそれぞれのやり方で、試験に立ち向かっていた。
「あれ?えっとこれ⋯どうやって使うんだろ?」
「こんなんでなにしろってんだよ⋯」
場面は晶とヒロのもとへ戻るが、二人は初期位置から大して動けていなく武器の取り扱いに四苦八苦していた。
「お?ラッキー♪弱えヤツらがいい武器持ってら!」
ガチャガチャとレバーを動かしたり、ひっぱったり丸めたりして武器に夢中になっている二人を見つけた受験生は正面切って仕留めようと近づいたが、うっかり晶の指はトリガーを引いた。
’’ガガガガガガガガガ!!!!!’’
「「うわあああ!」」
「「「ぎゃああああ!」」」
まともに構えていなかったので反動を抑えられずに振り回されて四方八方へ弾丸をばら撒いてしまった晶。誰にも命中はしていないものの、結果的に周りの受験生のヘイトを買ってしまった。
「すみません!わざとじゃないんです!」
「「殺さないで!」」
謝罪を口にながら銃口を向けられては抵抗する意思はなくなるだろう。
「チッ!あのガキども、ふざけた真似を!」
「晶伏せて!」
真面目にやっていないように見えた姿にイラついたのか、アサルトライフルを持った男達に一斉掃射される。なんとか座席を盾に身を隠すが身動きが取れなくなってしまった。
「あああどうしようどうしようどうしよう⋯⋯!」
「なにか遠距離⋯」
このままではジリ貧、息つく暇もない。一気に距離を詰めて素手で仕留めてもいいがこの弾幕の量、おそらく複数人でチームを組んでいる。晶のもとを離れるのは危険だ。
「大人しく出てこい!ぶっ殺してやる!!」
「男だけ出てこい!」
「女の子は見逃してやるから付き合ってください!」
「晶はオレのだ死ね!!」
マズイな、完全にあっちのペースだ。今オレが持っているのは輪ゴム一本だけ。
(ん?)
前の座席にいた銀髪の男性。まだ移動してなかったのかと思っていたら、彼が手にしている配布武器が目に映る。
(ボールペン?輪ゴムのオレが言えた口じゃないけどすっごいハズレ武器!)
「へへへ⋯⋯」
ボールペンをカチカチしている彼の前に釘バットを持った受験生が現れる。太っているしボールペンだし格好の的だ。
「あっ!」
「危ない!」
そのまま頭を殴られ彼の脳漿が飛び散る⋯⋯
「あぶぶぶぶぶ!」
「「えっ」」
「いいペンだ」
ことはなく、太っているとは思えない俊敏性とペンの硬度を活かした連打によって瞬く間に気絶させた。
その光景を目にした受験生たちは同席していた一人を除いて言葉を失い、機内に静寂が訪れる。
「あんな使い方あんの?」
「この人、何者?」
てっきりオレたちと同じルーキーだと思っていた。しかしその考えは改めなければならないようだ。
「な、なんだあのデブ⋯!」
「きっと試験官だ!」
「銃弾寄越せ!」
その声を聴いて、オレたちを襲っていた銃弾の雨がやんでいたことに気づく。紛れもない、今がチャンスだ。
――――なぁ、あたしの同期にさぁ、ペンなり消しゴムなりを武器にする変わりモンがいんだけどよぉ~
――――なにそれ、銃とかナイフとか使ったほうが速くない?
――――そいつはさぁ、身の回りにあるもんを工夫して武器にすんだよ。
――――へ~
――――お前、もちょっと興味持てよ!
「これ、だっ」
中指と親指にゴムをひっかけてスリングショットのようにして、先ほど晶がばら撒いた際に排出された空薬莢をいくつか拝借し連発する。
「がっ」
「うげっ」
「ひぎっ」
薬莢は乱射していた受験生のアゴを捉えて命中する。何人かは脳震盪になったようで、その時に生まれた隙を逃さない。
「よっ」
椅子の間をすり抜け狼狽えている三人組の背後に回る。真ん中のやつは足で、両隣は腕を使って殺さない程度に絞め堕とす。
「~~~~~~~~!!」
「はい、おやすみ」
これで何とか状況は好転しただろうか。晶から離していた注意を戻すと彼女に銃口を向けているハチマキ男がいた。
「晶ァ!」
(マズイ、間に合うか⋯⋯!?いや、間に合わせる!)
簡易スリングを構えるがそれよりも早く、太った男性が晶を押しのけてペンを投げて上の荷台を開かせ、中に入っていたトランクをハチマキ男に落下させる。
「ああっ⋯⋯」
’’ダラララッ!!’’
頭を打ったショックで引き金を引いたのか、あちこちに弾をばら撒かれる。
「わっ」
太った男性は晶に弾が当たらないように椅子の影に姿を隠させ、ハチマキ男に近寄って一瞬で銃を解体して顔面をぶん殴った。
「なんだあの人⋯?」
今の攻防、いくらでも仕留めることはできたのに全員が気絶で収まってる。本当に殺し屋か?
「あの、助けてくださりありがとうございました!」
「⋯あ。あざした!」
「あった。コイツが試験官だ」
「え」
頭を下げる晶を見ることはせずにハチマキ男から銃弾を奪い取る男性。試験官だったのか⋯。
「ぜ⋯全然気づきませんでした。それにあの体術⋯⋯まるで歴戦の猛者のような…」
晶の指摘は的確で、新人であの動きをすることはよっぽどの天才じゃない限りは不可能だ。たとえいきなりペンを使って戦えと言われてもあそこまで流麗な動きをすることはできない。
「す⋯⋯すごいです!感動しました!同じ新人として尊敬します!」
男性の手を握りブンブンと上下に揺らす晶。うらやましい。
「ホント、さっきは助かりました。あなたの戦った姿を見て何とかオレも動けましたし、何より晶を助けてくれてありがとうございます」
「あなたを見てたら勇気が湧いてきました!うん⋯よし、私も頑張らなきゃ!」
「オレも。まだ試験官はいるだろうケド全滅されたら面倒。気張っていこう!晶!!」
「うん!!」
「そうか、頑張れ」
「「えっ?」」
晶と二人並び立って気合を入れなおした所に男性から俺と晶に一発ずつ銃弾を渡される。
「3つもいらない」
「ええっ!?」
「いやいやいや!何発持ってても得じゃないすか!たとえば、何個か隠して奪われてもいいようするとか⋯⋯」
「こんなのダメです受け取れません!」
「同じく!」
というわけで男性の顔面に押し付けながら返品した。
「私たち、憧れている人がいて。その人だったらきっと受け取らないと思うんです」
「そゆことなんで、オレたちは自力で手に入れます」
「似ても似つかないんですけどね。私なんか、チビで。殺し屋より家事とかしてるほうが向いてるってよく言われますし⋯⋯」
頭をかきながらチビで向いてないと自虐する晶。キミより小さいオレはどうしろと?
「なんだってやってみなけりゃ分からない」
「⋯優しいんすね」
「体形なんて関係ないって、証明してくれましたもんね」
「「⋯⋯⋯」」
「あっ違うんですごめんなさい!」
体形を指摘されてお腹をさする男性と頭頂部に手を置くオレ。⋯別に気にしてないからな?
遠く離れたグリーン席で本を何かを覗く者がいた。
「いいっすねぇ⋯⋯あのコ」
「ん!?何か言ったか!」
「⋯いえ?なにも」
ひどく冷たい目と、歪な笑みを浮かべて。
さ⋯最後の二人は一体何監督なんだ…?
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