『常闇を穿つ影の王(シャドウ・ブレイズ)』   作:トート

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9: 光と影の最終決戦

「アハハハハ! 消え失せろ、人間ども! この姿こそが真の神、世界そのものの光だ!」

神殿の中央に現れたのは、全高数十メートルに及ぶ、眩い白銀の輝きを放つ異形の化神だった。

かつての皇帝ゼニスの面影は消え去り、人工太陽『ゼニス・コア』の全エネルギーが剥き出しの暴力となって凝縮されている。彼が動くたびに、超高熱の熱波が周囲の空間を焼き焦がし、白銀の大理石がドロドロとガラスのように融け落ちていく。

それはまさに、世界を永夜のディストピアに陥れていた、理不尽な光の支配そのものの顕現だった。

化神となったゼニスがその巨大な腕を振り下ろすと、空間を切り裂くような高密度の光の刃が、ハルトとフィリアを目がけて幾重にも殺到した。一撃一撃が地上の都市を一つ消し飛ばすほどの絶対的な質量。

「ハルトさん、来ます……!」

フィリアがハルトの背中をしっかりと支え、自らの聖なる魔力を彼の体内に注ぎ込む。

「へっ、どれだけデカくなろうが関係ねぇ。図体がデカくなった分、生まれる『影』も特大サイズだろ!」

ハルトはフィリアを片腕で守りながら、漆黒の大剣『シャドウ・ブレイズ』を構え、正面からその光の刃の嵐の中へと飛び込んだ。

ハルトの肉体は、化神ゼニスが放つ眩い光によって生み出された、神殿のあらゆる巨大な「柱の影」を一瞬で跳び回った。

『限界突破の影炎(シャドウ・オーバーフォース)』を完全に手なずけたハルトの神速は、もはや光の化神の巨大な質量をもってしても捉えることはできない。ハルトは光の刃を紙一重でかわしながら、残像となって着実にゼニスの足元へと肉薄していった。

しかし、追い詰められた皇帝ゼニスの狂気は、最も卑劣な手段を選んだ。

「小癪な羽虫が……! ならば、まずはそこの女から肉塊にしてくれるわ!」

化神ゼニスの千の手が一斉に蠢き、ハルトではなく、彼の背後で魔力を供給していたフィリアへと照準を合わせた。ハルトを誘い出すための、あまりにも醜悪な人質トラップ。空間を蒸発させる極大レーザーの群れが、無防備なフィリアを目がけて一斉に放射された。

(しまっ――!)

ハルトは即座に彼女の元へ影移動しようとした。しかし、ゼニスの放った絶対的な『光の檻』がハルトの周囲の影を一時的に焼き尽くし、一瞬だけ彼の動きを拘束したのだ。

光の濁流がフィリアを飲み込もうと迫る。神が仕掛けた、これ以上ない胸糞の悪いバッドエンドの再現。

だが、皇帝ゼニスは致命的な勘違いをしていた。

フィリアは、ただハルトに守られるだけの、無力で曇るだけの少女ではなかった。

「私はもう、あの暗闇の中で泣いていた聖女ではありません……! ハルトさんと一緒に、未来へ進むと決めたんです!」

フィリアが翡翠色の瞳を強く見開き、両手を前に突き出した。

彼女の魂の底から溢れ出たのは、システムに搾取されていた偽りの光ではなく、ハルトへの絶対的な信頼が生み出した、純度100%の『真なる聖なる輝き』だった。

ドガァァァァン!!!

フィリア自身が放ったまばたきすら許さぬ純白の障壁が、化神ゼニスの極大レーザーを真っ向から受け止め、完全に相殺してみせたのだ。

それどころか、彼女の放った光は神殿全体を眩く照らし、化神ゼニスの巨大な巨体の背後に、これまでにないほど濃く、巨大な「決定的な影」を作り出した。

「な、何だと……!? 生贄の分際で、この私の光を弾くだと……!?」

ゼニスが驚愕に目を見開いた、その一瞬。

「よくやった、フィリア! 最高の光だ!」

光の檻を力ずくで引きちぎったハルトが、フィリアが作り出したその巨大な影の中から、爆発的な紫黒の神火を纏って飛び出してきた。

「お前のその汚ぇ手、二度とフィリアに向けるんじゃねぇよ!」

空中へ高く跳躍したハルトは、大剣『シャドウ・ブレイズ』を両手で高々と振り上げた。

大剣の刃には、フィリアの放った光を吸収し、何倍もの熱量へと膨れ上がった究極の影炎が、激しく収束している。

「オラァッ!!!」

ハルトの咆哮とともに振り下ろされた紫黒の刃は、化神ゼニスの巨大な右腕を、その因果ごと根元から完璧に切り落とした。

ズガァァァァン!!!

切り落とされた巨大な光の腕が、床に激突して激しく爆散し、神殿の半分が吹き飛ぶ。

「ぐ、あああああああッ!? 私の腕が、神の肉体がぁぁああッ!?」

化神ゼニスは言語を絶する悲鳴を上げ、その巨体を大きくよろめかせた。

ハルトはしなやかに着地し、フィリアの隣へと滑り込むようにして並び立った。

二人はしっかりと手を繋ぎ、目の前でのたうち回る巨大なラスボスを、恐れることなく見据えた。

「ハルトさん、次で終わりです……! あの男の魔力核が、胸の奥で完全に露出しています!」

「おう。2人で一緒に、あいつのクソみたいな支配にトドメを刺そうじゃねぇか」

ハルトの黒髪と、フィリアの金髪が、互いの魔力の共鳴によって美しく光と影の衣を纏って揺れる。

どんな卑劣な罠も、二人の揺るぎない絆の前には1ミリも通用しなかった。

物語はいよいよ、世界を永夜から解放し、本当の朝を呼び覚ますための、次回・第10話の『最終決戦のクライマックス』へと突き進んでいく。

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