学校のグラウンドには白銀と沢村しかいない状態・・・そう、することは一つ
久しぶりのキャッチボールである
だが実は学校のグラウンドにいたのは二人だけじゃないみたいで・・・?
「フハハハハハ!!!!久しぶりのキャッチボールだぜぇ~久しぶりにボールを持つから肩が軽い軽い!」
ビシュッ!バシッ!
「いや~やっぱり投げられるって最高だなぁ・・・っと!」
ヒュン!バシィン!
「ボールを投げる音とグラブに収まる音がこんなにも心地良いものだとは・・・走り続けて改めて分かるな・・・」
「そう!めっちゃ分かる!!!」
白銀と沢村にとっては遠投事件以来久しぶりに触ったボール
そのボールの感触を確かめるように投げている
沢村はしっかりと腕を円を描くようにしてから投げるのに対し、白銀は捕ってからトップの位置まで素早く持って行ってから投げる所謂「野手投げ」で投げており、ポジションでの違いをここで感じる事が出来る
「しかし硬球って投げやすいけども受けると痛いな・・・」
「まぁ軟球と違ってしっかりと硬球は縫い目が出来ているから指にかけて投げやすいのはあるね・・・」
「まぁ受ける時の痛みは慣れろ、キツイならウェブ部で捕球しなさい」
「へぇ~そうなんだ・・・でも良いじゃないか白銀はキャッチャーミットなんだから・・・」
そう言いながら沢村は投げた後に自身のグラブと白銀のミットを見比べる
沢村は家族から入学祝いで買ってもらった投手用のミ○ノの黒色のグラブ
対して白銀も同様に家族から入学祝いで買ってもらったハタ○ヤマのオレンジ色のミット
「ミットは関係ないだろ・・・捕り方の問題だわ」
「逆に素手感覚っていうのかな・・・あくまで個人の意見だけど捕球してからボールを持ち替える時にどこで捕ったのか把握したいから守備手袋を着けない素手でやる人もいるぞい」
「ちなみにワシも素手でグラブ着ける派だな」
「へぇ~野手ってそんな感じで考えていたのか・・・ん?」
沢村は白銀の話に感心しながら投げていると遠くから視線を感じたので沢村は視線を感じた方を見ると、目までかかるくらいの黒髪の高身長の少年が立っていた
「なななっ!?おま、いつからそこにいた!?」
「いや・・・二人がキャッチボールしているときからいたよ・・・」
「あん?どうした沢村・・・っておや、アイツは・・・」
沢村が叫びだしたので白銀もそこで初めてその少年の存在を認識する
その少年に白銀は新入生の自己紹介で見覚えがあった
『北海道、苫小牧中学出身の
「あぁ、君は確か・・・降谷君だったっけ?投手志望だったよね」
「ななっ!投手だと!!!」
投手と聞き、『ライバル出現!』と言わんばかりに冷や汗を出す沢村
「そういう君たちは・・・いつも変なベスト着けて走っている人たちだよね?」
「ぶっ!ど、どういう覚え方やねん・・・まぁ間違ってはいないけどね」
以前は『白銀塾の講師』なんて言われたことはあったが、『変なベストを着けた人達』と言われたのは初めてだったので思わず吹き出す白銀
「ねぇ、良かったら僕も混ぜてもらっても良いかな?」
「トイレ行ってたら置いてかれちゃって・・・」
「まぁ、自分が投げていない試合に興味ないけど・・・」
そう言い降谷はグラブを取り出し白銀たちの元へと近付いてきた
(・・・自分が投げていない試合には興味が無いか・・・二人とも投手だからか似てるな・・・)
「おうおう良いぞ良いぞ~二人とも投手だろ~俺に向かって投げてくれい」
「ありがとう・・・」
「了解!」
こうして、沢村・降谷と白銀のVの字でキャッチボールが始まった
「いやぁ~こうやって3人でキャッチボールするのも良いな~!」
「お~う、そうだな~」
(って言いつつも沢村の球筋、手元でグニャグニャ曲がるな・・・ポケットに収めるのも一苦労だ・・・)
笑顔で投げる沢村とは対照的に手元で多方面に曲がる「ムービングファスト」に四苦八苦する白銀
キャッチャーとしてのプライドだろうか、「パスっ」や「ペチン」といった情けない音を出さないために必死にミットを動かしているのが現状である
・・・というかそうでもしないと親指を突く危険もあるのだ、そりゃ必死でポケットに収めるようにするだろう
(でもよ~く見ているとギリギリまでリリース時に指がかかっているから球持ちが良くキレがあるボールを投げるんだよな・・・ボールの回転数どれだけの数値が出るんだろうか・・・)
白銀はそう思い、かつて愛知県のプロ野球チーム『名古屋ワイバーンズ』で活躍したとあるレジェンド左腕投手を思い浮かべた
その投手はストレートの球速はMax130キロ後半ながら球持ちが良くキレのあるストレートと伝家の宝刀とも言われた右打者から逃げるように変化する『スクリュー』のコンビネーションで数多くの名打者から三振を量産し、投手最高の栄誉とも言われる『沢村賞』を獲得した実績を持つ
その投手と沢村が一瞬重なって見えた・・・
(背番号34だったらなお良し・・・ふふっ、多分沢村はブチギレるだろうが・・・)
プロ野球を見たことが無いと言っていた沢村からしたらこの提案は即却下されるだろう
(でも球質的には『死神』の方かなぁ・・・あの人もストレートの球質はムービングファストだったって言ってたし・・・)
なんだかんだで名古屋の往年のレジェンド投手の特徴を知っている白銀
・・・愛知県に移住してからすっかり名古屋ワイバーンズのファンになっているのはここだけの秘密・・・なのかもしれない
「何笑っているんだよ白銀ェ!」
「あぁ~すまない沢村、ちょっと思い出しちゃって・・・ね!」
「何ぃ!?それ俺の事かぁ!?」
「いやいや違うって・・・(まぁ合っているけども・・・)」
白銀はそう言いながら今度は降谷に投げ返した
「肩温まってきたから、少し本気で投げるね・・・」
「お~う、こいこい・・・」
そう言い降谷はゆったりとしたフォームから真上・・・オーバースローで投げる
ゴォオオオオオオオ!!!
「!?!?(こ、こいつは・・・!!!)」
少し本気で投げるって言っていたのに、ボールがデカく見えるくらいとんでもない勢いで白銀に襲い掛かる
『剛球』とも言うべきか・・・瞬時に浮き上がるように伸びてきた
パァァァァァァァァン!!!
乾いたミットの音が辺りに響いた
・・・降谷のボールは白銀のミットに収まっていた
(かぁあああ、とんでもねぇボール投げやがる・・・150は出ているんじゃねぇか・・・?)
ジンジンと手のひら全体に痛みが走る・・・しかし手のひら全体に痛みが走るという事は白銀はしっかりとポケット部で捕ったという事になる
『おらおら!キャッチャーたるもの動体視力を鍛えまくるぞ!!!』
昔から聖将によって鬼のように鍛えられた動体視力が役に立ったのである
「・・・くぅ~降谷君良いボール投げるじゃねぇか~ほれ、次は沢村だぞ~」
「あ、あぁ・・・(な、なんだよコイツのボール・・・)」
「し、白銀くん・・・大丈夫!?」
しかし表情を悟られないようにミットの中にあるボールを沢村に投げる白銀
沢村は降谷の投げたボールに戦慄しながらも投げ返されたボールを捕っていると、どこか焦った表情の降谷が白銀に駆け寄ってきたのである
「あん?な~に心配してるんだ・・・俺とてキャッチャーやってたんだ・・・」
「同級生のボール捕れないなんて情けない真似はしねぇよ・・・」
「あ・・・ご、ごめん」
「いいよいいよ~ささ、キャッチボール再開しようや」
(自分は・・・御幸先輩なら自分のボールを受けてくれると思って
(まさか自分の球を捕れる人がこんな近くにもいたなんて・・・)
中学時代、自分のボールを誰も受けてくれる人はおらず一人で壁当てしていたあの頃
「世代ナンバーワン捕手」なら自分の球を受けてくれる・・・そう思い上京し青道高校に入学してきた
でも同級生に自分の球を捕れる選手がいた・・・それだけでも降谷の気持ちが高揚するのを降谷自身でも感じていた
「もう一球、しっかり投げるね・・・」
そう言い降谷は再度オーバーハンドからストレートを投げ込む
パァァァァァァァァン!!!
そのストレートは再度白銀のミットに吸い込まれた
(凄い凄い・・・僕のストレートを受け止めてくれる人がいるっ・・・!!!)
「おぉ~良いボールだ・・・けど高めにかなり浮いているぞ~降谷ァ!もう少し肩の力抜いて投げろ!」
「後は球のリリースも真上から投げるんじゃなくて視界からギリギリ見えるところでまずは投げてみろ~一番は真上から前に45度くらいって言いたいけど・・・」
最後何を言っていたのかは聞こえていないが、降谷の頭の中では「受け止めてくれる」の思いでいっぱいになっていた
「沢村もリリースポイントを意識して投げろ~どこで投げれば低めに行くか高めに行くか自分で判断しろ~!」
「えっ?りりーすぽいんとってなに?」
「おま、マジで言ってる・・・?」
沢村はいつもの沢村であった
こうして二人のタイプの異なる投手のボールを受け続けていた白銀であった
「さてさて、もう少ししたら帰ってくるだろうからここいらにしますか・・・」
白銀がそう言うと3人はゆっくり投げ始めクールダウンを行い始める
「ぜんっぜん駄目、構えたところに来ないわ人の言うこと聞かんわ・・・」
『す、すみません・・・』
片付けを終えた後、倉庫の横で以前の光景とは反対に腰に手を当てている白銀と正座で話を聞く二人が出来た
「ま、とりあえず降谷も今後はウエイトベストでランニング、しましょうや」
「うえっ、あのベストを着けてランニング・・・?」
ランニングと聞き、一瞬にして表情が変わる降谷
「当たり前や・・・ランニングっていうのはスタミナだけじゃなく打撃や投球において一番重要である下半身を鍛える為に必要な練習だ」
「先発として長い回を投げる一番のコツは正直な話、100球や120球とか一定の球数に「投げ慣れる」ことではあるけど、それを支えるための下半身や体幹っていうのは必要になってくる」
「今のままじゃ全然ダメ・・・沢村もそうだがこのままではエースとは程遠いな・・・御幸さんにも受けては貰えないだろうなぁ~」
「むっ・・・でも僕には白銀が「それがなぁ、捕手やろうか迷っているんだよね~」え?そうなの?」
「えっ!?!?そんな立派なミットを持っているのに!?」
沢村もそれは知らなかったのか降谷と同様に驚愕していた
そりゃそうだ、この世界に同世代であの剛球を初見で受ける事が出来る選手がどこにいるのか
「まぁ同じポジションにあの御幸一也がいるからね・・・ポジション争いに敗れれば最低でも1年ちょっとはベンチにいる可能性がある」
「そりゃ捕手にはこだわりたい・・・でも自分の持ち味は『打撃』だから他のポジションでも守れるようにはしてきたんだよね」
「もちろん正捕手の座は狙っているぞい、まぁ・・・あとは監督の判断に任せる感じかな」
ミットをポンポンと叩きながらそう話す白銀
少し複雑そうな表情をしつつもその顔には決意じみたものも感じてとれた
「ま、受けて欲しいときはいつでも言ってくれい、俺くらいならいつでも相手になるから」
「うん、その時はよろしく・・・」ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
「俺も俺も!よろしくな!!!」
「・・・おう、よろしくな」
いずれ青道の投手陣を引っ張っていくであろう2人からそう言ってもらえるのは白銀にとっても嬉しかったのか少し照れた表情をしていた
(今後さらに成長していくだろうな・・・置いて行かれないように俺も捕手の練習、もっとしないとな)
「さて、降谷はともかく俺たちはまだ見習いの身だ・・・帰ってきて汗だくじゃなかったらどやされちまう」
「さっ、今からランニングだ・・・ウエイトベストとタイヤを用意だ!」
「よっしゃー!!!やるぞおーーー!!」
「ま、マジで・・・(ガーン)」
こうして白銀たちは降谷を半ば強制的にウエイトベストを身に着けさせて、いつものランニングメニューをこなし始めた
部員たちが帰ってきたころには降谷は真っ白になっていたとか・・・
ワイバーンズ、企業名というか既存のチーム名が使えないからこそ「パワポケダッシュ」のあのチーム名は頼りになりますね(シーガルズとかジャガーズとか)
皆さんも「プロ野球チームの名前どうしよう」となっていたら「パワポケダッシュ」のチーム名に頼りましょう
あと、途中出てきた選手たちのモデルはお判りでしょう・・・あえて言いません
さてさて・・・ここ最近1時間ごとのアクセス数が多いなと思っていたら実は日間ランキングに載っていたんですね
ひとえに皆様のおかげです・・・この場を借りて感謝申し上げます
ありがとうございます!
ただ同様にまだ野球小説のメインでもあるがっつり描いた試合描写が無い状態なのでしっかりと試合描写も文字に起こして書き切らないとだめですね
くそ雑魚ナメクジの表現力しか持っていませんが、精いっぱい頑張ります