【青心寮 食堂】
「やべー遅くなっちまった〜・・・あん?」
部屋に野球用品を置きに行き、その足で食堂に駆け込んだ白銀
ガラガラと食堂を開けると、なにやら騒がしい
騒ぎの中心にいるのは・・・どうやら降谷のようだった
先輩たちが降谷を取り囲んで詰め寄っていたようだ・・・近くには御幸と沢村がいた
沢村は蚊帳の外状態で騒ぎの中心からは離れているようだった
(降谷の奴、なにか言ったのか・・・?)
そんなことを思いながらも食事を取りに行く白銀
「あっ!白銀〜遅いじゃねぇか!」
「・・・雰囲気がヤベェのに声をかけられるの凄いメンタルだな」
そんな雰囲気もどこ吹く風なのか・・・沢村が白銀の姿を確認するや否や大きい声で声をかけた
とは言いつつも・・・白銀以外が食べている中で一人白銀が食堂に入ってきたのだ
降谷とは違う意味で目立つのは仕方のない事だろう
「おいおい金丸・・・この状態はどういうことだよ」
「いや、降谷が御幸さんに「明日ここにいる誰にも打たせなかったら僕の球捕ってもらえますか?」って言ったんだ・・・そしたら先輩が詰め寄ったんだ」
「あぁ・・・そういう事か・・・」
状況が飲めない白銀は近くにいた金丸に話を聞くと、金丸は先程あった出来事をそのまま教えた
金丸からの話を聞いて状況を理解した白銀、すると・・・
「まぁ、御幸さんが無理なら白銀に受けてもらおうと思います・・・」
「はぁ!?白銀は俺のボールを受けるんだ!勝手なことを言うな!!!」
「・・・・・・あ、あいつら・・・」
すると降谷と沢村が今度は白銀の名前を出して言い合いを始めたため、白銀は巻き込まれる形になってしまった
「あのね降谷君沢村君~?僕を巻き込むのはやめてくださいね~?」
『す、すみません・・・』
白銀は二人の肩を組み黒い笑顔でお話をすると謝罪の言葉がすぐに出てきたのでお開きになる・・・筈だったが
「まぁ巻きこまれたんならその流れで言わしてもらいますかね・・・でもね先輩方」
そう言い白銀は二人の肩を組みながら先輩方の方を向く
心なしか白銀の目は殺意に満ちたような目をしていた
「うちの同期がアホなこと言ったのを咎めた立場で言っておいてなんですが・・・」
「夏の本戦まで3ヶ月しかないこの時期に1年の実力が見たいって言って部内での試合を組む理由を考えたことないんすか?」
―――特に投手陣
白銀の冷たい声が食堂内に響く
「こないだの試合でも16-10って野球とは思えないスコアたたき出していますしねぇ・・・」
「勝てたから良いってか?これがこないだの試合1回だけまだしも、これまでに何回か市大三高戦と同じような泥試合を展開していますよね~?」
「このザマで甲子園狙えると思っているんすか?」
「は、はぁ!?てめぇ後輩のくせにズケズケ言うんじゃねぇ!!!」
「先輩も後輩も関係無ェよ・・・そこまで言うのなら俺たち1年くらい無失点に抑えて貰わんと困りますなぁ?」
ただただ言われているだけの先輩たちではない、すぐさま飛び掛からんとする勢いで先輩の一人がブチ切れる
だが片岡監督にも臆さず言い返したメンタルを持つ白銀だ、そんな先輩のオラつき程度でへこたれるほど弱いメンタルを持っていない
「下手なボール投げてみろ、場外に飛ばしてやるからな」
先輩たちを前に白銀はそう宣言するのであった・・・
部員全員が食べ終わって、静かになった食堂
その中に丹波は一人座っていた
『夏の本戦まで3ヶ月しかないこの時期に1年の実力が見たいって言って部内での試合を組む理由を考えたことないんすか?』
『このザマで甲子園狙えると思っているんすか?』
「分かっている、分かっているんだ・・・でも言い返せなかったっ・・・」
新チームになってエースとして活躍すると誓った矢先の秋はヒジを痛めて投げられなかった
投げられなかった秋の分までチームの為に投げると誓って挑んだ春の市大三高戦・・・結果は4回8失点とズタボロだった
エースナンバーを貰いながら・・・自分では感じていたが他人から言われなかったことを真正面から、しかも1年に言われたのが屈辱でしかなかった
だが真正面から言ってきた1年も桁違いのパワーを誇る即戦力選手だ
だからこそ、奴を抑えて実力を示さないといけない
「今の自分がどこまで通用するのか・・・明日は自分の実力を出し切るだけだ」
「青道のエースは俺だ・・・誰にも譲らん!」
言われているだけの立場ではない
明日の試合で自らが青道のエースという事を誇示すればいい
丹波は決意を新たにすると食堂を後にした
【青心寮内 脱衣所】
「いってぇ~亮さんのチョップ地味に痛いんだよなぁ」
そう言いながら着ているシャツやズボンをかごに入れて風呂に入る準備をする
あの後、即座に亮介から「二度としないって言ったじゃん?」とチョップが入ったことで「生意気言ってすみません!」と3人で頭を下げたことで事態は収束した
だが同時に小声で「代わりに言ってくれてありがとう」なんてこと言われたことは白銀にとって嬉しかった
(亮さんは飴と鞭の使い方が秀逸なんだよなぁ・・・な~んてね)
そんなことを思いつつ風呂の扉を開けた白銀・・・
あるとそこには、涙を流しながら髪の毛を洗う沢村と湯船につかる片岡の二人がいた
「(どういう組み合わせだよ・・・)片岡監督と沢村、一緒に入らせてもらいます~」
「おぉ白銀か・・・良いぞ」
「その声は・・・白銀かッ・・・」
(なんで泣いているんだろうな・・・)
白銀は何故か泣いている沢村を見ながらその隣で体を洗い始めたのであった
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ふぅ~・・・」
沢村と白銀が洗い終えてもなお湯船につかる片岡
その離れた隣で浸かり始める白銀
片岡監督と対角線上に当たる風呂の端で湯船につかる沢村
この構図が出来上がった・・・片岡がいるせいか気まずい雰囲気が流れる
「そういや片岡監督、明日自分はどの順番で守る感じですか?」
この沈黙を破ったのは白銀だ
「あぁ、一応レフト・サード・ファースト・キャッチャーの順で行こうかと思っている」
「了解です~2イニングずつやる感じっすね・・・準備しておきますね」
「ふん、9回までやるとは言っていないぞ白銀」
「えっ、という事は1アウトずつで守備位置を変える感じですか!?」
「なぜその考えに至るんだバカタレが・・・」
(なぬ?という事は白銀は明日の試合に出るって事なのかぁ~~~~なんでだ白銀ェ!)
(俺を置いて試合に出るのか!俺と一緒に走っていたあの日々は嘘になるのかぁ~)
白銀と片岡が明日の試合の事について話をしているのを聞いて沢村は内心裏切られたと涙を流す
「・・・おい」
すると片岡がふいに沢村に声をかけた
「白銀とともにタイヤを引いて何日になる?」
「・・・さ、三週間ですかね」
片岡から聞かれるとは思っていなかったのかギギギッ・・・と錆びたロボットのように片岡の方を向きながら答える
「ウエイトベストにも慣れてきましたし、白銀と話し合ってタイヤを2つ3つ着けてやろうか考えていましてね~!」
「いや~~~自分の成長が恐ろしい!」
「・・・フン、俺が現役の頃はトラックのタイヤを引いていたんだがな・・・」
「と、トラッ・・・!?」
「ウエイトベストを着ながらトラックのタイヤを引くのも良くないか白銀?」
「それ良いですね~今度持ってきてもらえるようにお願いします~」
「し、白銀!?」
片岡が現役時代は今よりも大きいトラックのタイヤを引いていたことに驚き、有頂天になっていた沢村は黙ってしまった
白銀はそんな中トラックのタイヤをちゃっかり頼んでもらうことに成功していた
再び沈黙が流れる・・・
「・・・お前、一度も試合を観に来ていないようだな」
「どうしてだ?」
沢村は片岡に真っすぐ見つめられながらそう言われ、本当のことを言おうか悩んだが片岡監督に催促されたため観念して言い始める
「・・・自分以外の誰かが・・・マウンドに立ってる姿なんて見たくねぇーっス・・・」
「・・・何?」
「沢村・・・」
沢村の独白は続く
「自分の力を試す為に地元の仲間を裏切ってここに来たのに・・・他の誰かが活躍している姿を心の底から応援することなんて出来ないです・・・」
「それに・・・」
そう言い白銀の方を向く沢村
「白銀が・・・バカなことをしでかした自分の為に一緒に罰を受けて、一緒に走ってくれている・・・」
「自分だけじゃウエイトベストでのトレーニングやいろんなメニューなんて思いつきもしなかった」
「観ている暇なんてないくらいに毎日が充実しているんです」
「おぉ・・・嬉しいな。そんなことを思ってくれていたんだな」
メニューを組んでよかったと胸がいっぱいになる白銀
「だから・・・他の誰かがマウンドに立っているのを応援するよりも、自分がそのマウンドに立つ為に・・・」
少しでも自分に出来る事を行って強くなりたいんです
『エースになるためにここに来ているんだ!その気持ちだけは誰にも負けません!!!』
「・・・ふっ」
沢村の独白を聞き片岡の口角が上がる
フフッ・・・フハハ・・・
突然片岡が笑いだすと同時に立ち上がった
「小僧が・・・
そう言い湯船から出る片岡
「誰にもマウンドを譲らないその気持ちが・・・今の2・3年生には足りないのかもしれないな・・・」
そう言うと片岡は白銀の方を向く
「カズ・・・お前が小僧を推す理由が何となく分かった気がする」
「そう言っていただけて何よりですよ・・・」
「フン・・・小僧、明日グラブを持ってグラウンドへ来い!」
「もう一度だけチャンスをくれてやる・・・その馬鹿正直な思いに免じてな!」
片岡は沢村にそう言うと浴場を出て行った
「・・・え?さっきの話って・・・」
「おう、良かったな沢村・・・これで晴れて二人とも明日の試合に出られるぞ」
片岡が出て行ったことで二人きりになった浴場内
片岡が身体を拭き着替えを終えて浴場を出て行ったと思われる扉が閉まる音を聞いてから話し始めた
「う、嘘じゃないよな・・・?」
「あぁ、そうだな・・・俺たちはチャンスを貰えたんだ」
白銀がそう言うと突然震えだす沢村
ここまで一緒にいた白銀がそれな何を意味するのか瞬時に理解したため背後に忍び寄る
「や・・・やttうごごご・・・」
「は~い騒ぐのは試合で活躍してからな・・・取り敢えず明日の試合・・・」
全力を尽くしていこう
沢村の口を塞いでいた手を放してから言った白銀の決意に沢村は深く頷いた・・・
こうして無事、明日の試合に出場するチャンスを頂く事が出来た二人であった
無事、試合への出場のチャンスを得た二人
これから大活躍のターンだッ(多分)!!!
そしてお待たせしました・・・次回は試合回です
配球も考えないと・・・下手したら白銀は全打席本塁打にしてしまいそうで・・・
そうなったらミートEどころじゃねぇ・・・
アンケートの方もありがとうございます!
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1年夏、白銀はどこに守ってほしいですか?
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