一方、その浴室で白銀同様に監督からチャンスを貰った沢村
この二人は一体どうなっていくのか・・・紅白戦が始まろうとしていた
【青道高校 Aグラウンド】
紅白戦当日の早朝・・・誰もいないAグラウンドに一人の少年がすでに球場入りしていた
・・・白銀だ
「え~っと・・・野球道具はここに置いてと・・・はぁ~荷物が多すぎるぜ」
「複数ポジション守るって言ったとは言え親父たちもこんなにグラブ用意するか普通・・・」
木製バットが入ったバットケースやグラブ、野球用品が入った鞄を一塁側の一番端っこに置く
特にグラブは捕手用・一塁手・内野手用・外野手用のグラブを持参していた
「・・・硬式用なんて高かったのにさ・・・」
「だからこそプロに行って恩返ししないといけないなって改めて感じるな」
一つ4万円以上はする硬式用グラブ
それを複数ポジション守る白銀の為に両親から入学祝いとしてプレゼントしたものだった
「・・・うっし、まずはアップしてから素振りしますかね」
グラブを一通り触った後、白銀は軽くストレッチをしながらランニングに向かった・・・
「うお~・・・ねみ~」
「俺も全然眠れなかったよ・・・」
白銀が先に練習を始めてしばらくしてから、1年生がグラウンドへ向かっていた
(うぅ~緊張してきた・・・ゲーム機を持ってきたけど怒られそうだな)
(どこまで自分の実力が出せるか・・・)
(・・・眠いな)
春市・東条・降谷も今日の試合を待ちわびていたのか、表情は少し緊張していた(約一名は目を閉じかけていたが)
(ううう・・・青道に入って初めての試合・・・楽しみだぁ~~~!)
沢村は子供のようにワクワクしており、表情が緩みまくっていた
・・・ブゥン
するとグラウンドに近づくにつれて素振りをしているような音が聞こえ始めた
「ん?もう先輩たち、グラウンドで練習しているのか?」
金丸はその音を聞き、最初は先輩たちが先に練習しているのかと思った
しかしグラウンドが近づくにつれてその音が徐々に大きくなっていくと共にグラウンドには誰一人としていなかった
・・・いや、一人だけいた
ブゥン!ブゥン!!ブゥン!!!
とてつもない風切り音を奏でていたのは素振りをしている白銀だった
「まだ駄目だ・・・もっと・・・もっと強く・・・」
自分の世界に入っているのかブツブツ独り言を言いながら一つ一つのスイングを確認していた
「な・・・なんだありゃ・・・」
まるで何かに憑かれたかのようにオーラを出しながらとんでもないスイングを続けている白銀を見て金丸は背筋がぞくっとするのを感じる
『下手なボール投げてみろ、場外に飛ばしてやるからな』
先輩に対して言い放ったあの一言
それが決してブラフではない・・・白銀のスイングを見て金丸は確信した
(とんでもないスイング・・・ブンちゃんは昔からフルスイングをしていたけど・・・)
昔から白銀を知る春市は昔と変わらないフルスイングを貫いていてどこか変わっていないなと思いつつ、鬼気迫るスイングに金丸と同様の反応を見せる
「ン゛ン゛ッ!!!!」
ブゥゥゥゥゥゥン!!!
渾身の力を出し切り、放った白銀のフルスイングは青心寮にまで届いているんじゃないかとも思うほどの物凄い風切り音だった・・・
「・・・フゥ、こんなもんか」
それが最後の素振りだったのか、汗を腕でぬぐう白銀
そして後ろを振り向いたときに白銀の方を見ている同級生たちの姿を認めた
「・・・あん?あぁ~皆来ていたのね、おはよう~」
「あ、あぁ・・・おはよう」
さっきまで鬼気迫る表情でフルスイングを連発していた時とは180度違う朗らかな表情に困惑しながらも挨拶を返す金丸
「相変わらずスゲェスイングしてるな白銀!」
「お~う沢村、俺は生涯フルスイングがモットーだからね~」
目を輝かせながら白銀に近づいて話す沢村
白銀はケラケラと笑いながら返した
「・・・と、言っていたら先輩方が来たよ」
そう白銀が言い不敵な笑みを見せる
金丸たちが後ろを振り向くと3塁側のベンチに荷物を置く2・3年生の姿が
「まま、金丸達も荷物置いて準備してきなはれ」
「あ、あぁ・・・ありがとう」
白銀がベンチに行くように促すと金丸達はベンチの方へと歩き始める
「ブンちゃん、木製は慣れた?」
「いやぁ~ある程度は慣れたかな・・・」
「金属時代から回転を掛けながら打っていたからそんなに感覚がズレるとかは無かったかな」
白銀は木製バットを見ながら春市の問いに答える
入学前、小湊家でお話をしたときに「高校では木製バットで打つ」と話をしており、木製バットを打ち方などのアドバイスを春市から乞うていた
「・・・キャリア的にはブンちゃんよりも長いからさ、分からないことがあったらいつでも聞いてきてよ」
「そうだな・・・まだまだ使いこなせていないところがあるから、また聞きに行くわ~」
そう言うと二人もベンチの方へと戻る
その時に、白銀はふと三塁側のベンチを見ると2・3年生が白銀の方を見ているのに気づく
「・・・ふん、いい気になっているのも今のうちだぞ」
好戦的な目を向ける白銀であった
ざわざわ・・・がやがや
「日曜日だからか、ギャラリーが多いな・・・」
「OBとか記者が来るんだよなぁ・・・あぁ~緊張してきた、昨日眠れんかったんだよな」
「俺も緊張して6時間しか眠れなかったな・・・」
「いやちゃんと寝てるやないかい・・・」
9時を過ぎると、ベンチの後ろでOB達の話し声が聞こえ始める
その声を聞き、白銀がたくさんのギャラリーに驚いていると金丸は頭を掻きながら寝不足を告白する
白銀はそんな金丸を勇気づけようとしたのか、快眠エピソードを披露したが不発に終わった
「・・・入部して1ヶ月、皆はこの紅白戦の意味は分かってるよな?」
白銀は三塁側のベンチを見ながら1年生全員に問う
「パイセン達があぁも睨んでるけども・・・16対10の乱打戦を演出した投手陣だ、どこか付け入るスキはあるはずさ」
白銀がそう言い見つめる先にはいつでも準備万端と言わんばかりに闘争心丸出しの2・3年生がベンチに座っている
「でもよ・・・打てるか分からんぜ白銀?」
「諦めたらそこで試合終了だぞ金丸?」
「だけど逆に『打の青道』だからな・・・投手陣は、うん・・・」
「いやいやそこは何か盛り上げることを言ってよ・・・」
某有名バスケ漫画の名台詞を使いつつ、遠い目をし始める白銀に投手陣を代表して東条が苦笑しながら突っ込む
「・・・分かってるさ、どうなるか分からない」
「でも、今の実力を見せるだけ・・・やり切るだけさ」
どんな結果になるか分からない、それでも自分を貫く姿勢を見せる東条
「・・・そうだな、という事だ皆!」
「とりあえず、自分の実力を出し切れたって言えるくらいこの試合で全力を出し切ろうや!」
『お、おう!』
白銀がそう言うと1年生全員が返事をする
昨日の殺意マシマシの目で言い放ったビッグマウスやあの鬼気迫るスイングを見てから1年生の中では「怒らせてはいけない人物」と認定されているようだ
「とりあえずどんな点数になってもな・・・弱音だけは吐くな、声を出し続けよう」
あのグラサンに、今の実力を見せてやろうぜ
そういう白銀が見つめる先には審判防具を着けた片岡がいた
「準備は良いか?」
『はい!』
暫くしてから片岡が一年生がいる1塁側のベンチまで来た
「1年生には
『分かりました!』
1年生からの返事を聞いた後に白銀の方を向く片岡
「白銀、お前には捕手・内野・外野を守ってもらうからな、守備変更については各自伝える・・・」
「最初はレフトを守ってくれ」
「了解っす・・・基本1アウトずつの交代ですか?」
「そんなことしていたらお前の身が持たんだろ・・・」
片岡の連絡に対し、昨夜のお風呂でのボケを再びかました白銀だったが、金丸に突っ込まれる
そもそも、あっけんからんと言う白銀だが、基本一つのポジションを守る他の1年に比べて負担がかなりデカいはず
それを一切顔や言動に出さない白銀である
「一応オーダー表はこんな感じだからな・・・白銀に渡しておく」
「は、はぁ・・・分かりました(一応見習いの身なんだがなぁ・・・)」
片岡からオーダー表を受け取る白銀
・・・名指しで受取役に指名されオーダー表を受け取る白銀だが、一応1ヶ月前に片岡と言い合いをして見習い部員になっていた身である
| 1 | 右 | 岡 |
| 2 | 中 | 渡辺 |
| 3 | 遊 | 高津 |
| 4 | 左 | 白銀 |
| 5 | 三 | 金丸 |
| 6 | 二 | 牧野 |
| 7 | 一 | 長岡 |
| 8 | 捕 | 谷内 |
| 9 | 投 | 東条 |
「・・・(よ、4番・・・)」
1年生チームとは言え4番に据えられた白銀
見習いだったこともあり下位の打順だと持っていたのかもしれない
「最初のスタメンはこれだが、1、2イニングごとに選手交代を行うからな・・・」
「え?でも俺は・・・」
「白銀、さっきも言ったがお前は複数ポジションを守ってもらうから基本交代は無いと思っておけ」
「う、うす・・・」
そう言うと片岡はグラウンドへと戻っていった
その際、「よ~く見てろよグラサン!!」と沢村の声がベンチ横から聞こえてきたので、片岡が纏うオーラが若干怒気が混じったのは言うまでもない
「・・・ということで、スタートはこれで行くよん」
オーダー表を貰った白銀は一年で円陣を組み、オーダーを読み上げる
「さっきもグラサン言ってたけど、基本は1、2イニング交代ね・・・グラサンの方から交代の指示があるから各自アップは済ませておいてな」
『了解』
「・・・見習いが偉そうに仕切るなって言わないんだね?」
「白銀、監督と先輩にあれだけ言い返せるメンタルを持っている奴に楯突くやつがいると思うか?」
「えぇ・・・高津そんなこと思っていたんかい・・・」
やけに素直に言う事を聞くので、不思議に思った白銀がそう聞くと、やや細身の黒髪短髪の1年生である
「にゃははは・・・まぁ、気を取り直して・・・」
白銀は一瞬笑った後に表情を切り替える
「まぁ試合前に言う事ではないと思うが・・・この試合は大差で負けるかもしれない」
「・・・そうだね、相手は青道で1、2年間みっちり練習をした先輩だからね」
真剣な表情で試合前から結果の話をする白銀に1年生全員の表情が曇るが、東条は冷静に分析をしつつそう答える
「だからとりあえずな・・・さっきも言ったが」
自分の実力、持ち味をまずは精一杯出し切ろう
「俺はポジションの関係で最後までやるからこんなこと言うのはどうかとは思うが・・・」
「1、2イニングの短い中かも知れない、でもその中で自分に出来ることをやろう」
「あぁ・・・そうだな!」
金丸は白銀の意見に同意する
以前までだったら絶対無かった光景だ
「この際、点差は関係無い・・・どれだけ自分たちの野球が貫けるかだ」
「パイセン達に一泡吹かせてやろうや」
『おう!!!』
「さて、肩組んで肩組んで・・・」
そう言うと一年全員で肩を組み始める
「この目つきの悪い金丸が「青道ファイ!」って言うから俺たちは「おー!!」って言おうな」
「了解・・・」
「なんで俺!?・・・はぁ」
任命された金丸はいったん呼吸を整えてから声を出す
「青道!ファイ!」
「オオオオオオオオオ!!!!!!」
不安をかき消すかのように1年生の声がグラウンドに響いた
真価が問われる1年生対2・3年生の試合が今、幕を開ける・・・
フリュードです
文字数の関係でいったんここで切らせていただきました・・・試合まで行きたかったっ!
さてさて・・・総合評価が400ptに到達しました
ひとえに皆様のおかげです・・・ありがとうございます
1年の中心に立っている白銀。一方で空気になりかけている一年の主要メンバー
もう少し自分に文才があれば・・・
自分も沢村と同様に弱さを認めて前に進まないといけませんね
次回から正真正銘・・・試合回です!
感想・評価の方もお待ちしております・・・よろしくお願いします
※アンケート、締め切らせていただきます
ありがとうございました!!!
※よろしければ活動報告も見てくださいな
1年夏、白銀はどこに守ってほしいですか?
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捕手
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一塁手
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三塁手
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外野手
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作者に任せる