ダイヤのA~気迫のFull Swing~   作:フリュード

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ついに始まった紅白戦

初めて見る丹波のドロップカーブに1年生は手も足も出ない

だが白銀のアドバイスである『バッターボックスの立ち位置を捕手側に寄せる』というアドバイスが起因となったかは知らないが・・・

立ち位置を変えた結果、バットがミットに当たるという打撃妨害で出塁を果たしたのだった


第16話 1年VS2・3年 紅白戦②

1回表 1アウトランナー1塁

 

1番の岡は見逃し三振になったが、続く2番渡辺で紅白戦はおろか公式戦でもめったに見られない打撃妨害によってまさかの出塁を果たす

 

「おお!打撃妨害・・・珍しいものが見れたなぁ!」

 

OBは珍しい打撃妨害での出塁に感心し声を上げた

 

「チッ・・・」

 

三者三振を狙おうとしていた丹波は滅多に起きない打撃妨害によって出塁されたことにいら立ちを隠せないのか舌打ちをする

 

「くそっ・・・」

 

捕手もまさかの打撃妨害に痛む左手を抑えながら手を伸ばして捕球しに行ったことを悔やむ

 

2・3年生の中でもまさかの方法で出塁をされてしまい、幾分かダメージが生まれたようだった

 

 

 

 

「ねぇブンちゃん・・・こうなる事狙ってたの?」

 

春市はこうなることを見越していたのか、打撃手袋やフットガードを着けて打席に立つ準備をしている白銀に聞いてみた

 

「え?いやいやたまたまだよ!?自分もまさかあんな感じになるとは思わんかった・・・」

「自分が捕手寄りに立って打つから、ベース前で立つのとでは全然ボールの見え方が違うからさ」

「でも・・・バットがミットに当たって打撃妨害になるあのケースはメジャーとかではたまに見かけるけど、普通は捕球体勢とか気を付けるはずなんだけどな・・・」

 

そう言いながら白銀は木製バットを持って打撃手袋との感覚を馴染ませる

 

「確かに・・・でもバッターボックスも打者から見て横方向の立ち位置を気を付けるだけでもだいぶ違うんだね・・・*1上下方向は良く使っていたけど、*2左右方向はあまり使ったことなかったな・・・」

 

手を顎に添えて考える仕草を行う春市

 

「そそ、捕手寄りに立つことでボールをギリギリまで見極められるんよ・・・ベースからは離れるからゾーンは分かりにくくなるけどね」

「でもあのタイプのカーブも後ろに立てば怖さは無くなる・・・ただ問題は他に持ち球があるかどうか・・・かな?」

 

そう言うと白銀はネクストバッターズサークルに向かっていった

 

白銀は木製バットに錘を取り付けて軽く素振りをした後に屈伸を2回ほど行い、両足を伸ばして緊張とともに体をほぐしつつ戦況を見つめる

 

1アウトランナー1塁、バッターは3番高津

カウントは1ボール2ストライク、高津も白銀のアドバイスを実行しているのか捕手寄りで構えて丹波のボールに食らいついているが・・・そこは3年生、なかなか前に飛ばしてくれない

 

「(くっ・・・確かにカーブの軌道が見やすいけど・・・なかなか前に飛ばせない)」

 

左打者の高津なので、外からゾーンに食い込んでくるドロップカーブをここまでメインに投げているバッテリー

 

高津もかろうじてファールにしている状態だ

 

「(併殺が一番駄目だけど、無様に三振だけは絶対にしたくないっ・・・よし、来いストレート!)」

 

ここまでカーブをメインに投げているバッテリー、しかしあの縦に大きく割れるドロップカーブを容易に打つのは至難の業だ

今の自分に打てるのはストレートしかない、狙い球を決めた高津は再度深呼吸をした後に構える

 

しかし、それはバッテリーが分かっていない筈はない

 

次に投げた一球は・・・大きく上に上がる

 

「!?ドロップカーブ・・・でも今までとは若干内に寄っているような気が・・・!!!!」

 

瞬時にドロップカーブだと判断した高津は際どい所はカットしようと決める・・・が、今までとは少し軌道が違う

 

「やばい・・・懐に入ってくる・・・!」

 

今まで左打者に対しては「外→ゾーン内」というコースが多かった丹波のドロップカーブ

ここで「真ん中→内に入る」コースのドロップカーブを投げてきた

 

「やばい、外警戒していたからバッティングが窮屈になる・・・!!!」

 

振るタイミングがずれてしまったため、脇を締め切り、腕をたたむ窮屈なスイングになってしまう

それでも精一杯スイングを行うが、ボールは無情にもミットに収まる

 

パァン!!!

 

「ストライク!バッターアウト!!!」

 

「くっそ・・・」

 

上を向き悔しがる高津、そのまま下を向きながらベンチに戻る

 

「白銀・・・あとは頼む」

 

「おう、任せとけ高津・・・」

 

その時、白銀とすれ違いざまに白銀にエールを送り後を託した

 

託された白銀はそう答えた後に錘を外してからバットマークを見た後に目を閉じて精神を統一する

 

「フゥ・・・」

 

目を開き、バッターボックスへと向かっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、白銀君が打席に入りますね!」

 

バックネット裏にある小屋の中から戦況を見つめていた部長の太田が、打席に入る白銀を見て若干声が弾む

 

「えぇ・・・この光景を両親に見せたかったですね」

 

非公式での対戦があったとはいえ、これが高校に入って初めての打席

 

青道高校OBである両親にも見せたかったなと残念な気持ちになるも、この初打席どのような結果になるのか楽しみな高島である

 

 

 

「おっ・・・雰囲気のある子が打席に入るぞ」

 

観客席で戦況を見つめていたOBも1年生にしては白銀が纏うオーラが違うのに気づいたのか、興味が沸いたようだ

 

「しかも金属が主流の高校野球で木製バットだぞ!?」

 

「おいおい・・・でもどんな打者なのか気になるな」

 

観客席からそんな声が聞こえ始める中、右打席の捕手側に立った白銀はいつものルーティンを始める

 

右足の置き場所、少し後ろに下げる左足の置き場所

両足がインサイドになっていることを確認し、そして少し両足を曲げてオープンスタンスになっていることを確認

 

そして深呼吸しながら、投手側から見て円になるように2、3回バットを回す

 

ヘルメットから鋭い眼光を覗かせながら、バットを投手側に正対するように立てて深呼吸をする

 

「・・・フゥ~」

 

両肩を2回ほど動かしてリラックスしてからバットを持つ手を胸元まで持っていく

バットのヘッドは少し投手側になるように倒す

 

一通りのルーティンを終えた後は、タイミングを取るようにバットを持つ手と左足を小刻みに動かす

 

 

「(来やがったなゴールデンルーキー・・・去年のことが頭にちらついて離れねぇ)」

 

木製バットだとという事に気付かないほどの白銀の存在感に捕手はこの打者をどうしようか考える

 

「・・・(来た・・・白銀との初対決・・・)」

 

一方、マウンドの丹波は白銀が放つ威圧感を真正面から受け続けていた

 

ヘルメットから除く鋭い眼光・・・甘い球は絶対に逃さないという強い意志を感じる

 

間違いなく1年の中でも異様な雰囲気を醸し出している

 

「(雰囲気にのまれそうだ・・・)」

 

もとは緊張しいな性格で物静かな丹波

 

早くも飲み込まれそうになるのを自分の中で食い止めている状態である

 

「(取り敢えず一球外すぞ・・・白銀の出方を確認だ)」

 

捕手はそうサインを出しアウトコースに構える

 

丹波は首を縦に振るとセットポジションに入る

 

そして投球動作に入り、白銀に対して投げた第1球

狙い通りアウトコースのボール一個分離れたキャッチャーの構えたところに来る

 

「・・・!」ピクッ

 

白銀は瞬時に見極めアウトコースのストレートを見送る

 

「ボール!」

 

B●

O●●

 

片岡がコールを行い、これで1ボール0ストライク

 

「(1球目はアウトコースに外してきた・・・でもな、いつ渡辺に見せたあのドロップカーブを投げてくるんだ?)」

 

白銀は1球目に投げたコースを見ながら打席上でのルーティンを始める

 

そして、構え始めたと同時に威圧感を出し始める

 

・・・おら来いよ

 

ドロップカーブが持ち球なんだろ?

 

さっき投げたボールを俺にも投げて来いよ

 

「・・・・・・・」

 

無言だが、ひしひしと伝わる圧力

丹波の首筋に汗が流れる・・・

 

(よし、インコースにカーブを・・・)

 

捕手をインコースへのカーブのサインを出すが、丹波は首を横に振る

 

(!?な、ならばアウトコースへの・・・)

 

まさか首を振られると思わなかった捕手はコースを変えてアウトコースへのカーブを要求するが、それも首を横に振る

 

(ま、まじか・・・確かにカーブを待っていそうだが、初対決だからアジャストはしてこない筈・・・)

(良くてファールになるくらいだろう、あれだけのパワーだったらヒットで儲けと考えているんだがな・・・)

 

とは言いつつも、続けてストレートを投げたくないというのがあるのかもしれない・・・捕手はサインを出すまでの時間が長くなる

 

「・・・・・・すみません、タイム」

 

「ターイム!!!」

 

ボールを持つ時間が長くなったため、一度打席を外す白銀

 

「どうした~バッテリー・・・いくら4番とは言え、1年相手だぞ・・・」

 

「カーブで良いと思うのだがなぁ・・・」

 

 

「・・・OBは分からんわな、白銀の桁違いのパワー・・・」

 

そんなOBの声を聞いてか、ブルペンで座って戦況を眺めていた御幸はボソッと呟く

 

「確かにアイツ(白銀)が木製バットで打つのは驚いたけども・・・それでもかっ飛ばしてくる予感がするんだよなぁ」

「丹波さんも昨年の場外本塁打が頭に残っているだろうし、投げにくい感情があるんだろうな・・・」

 

とは言え、カーブを上手く使わないと抑える事が出来ないぜ?

 

御幸は一層厳しい表情になりながらマウンド上の丹波を見ていた

 

 

 

 

 

 

 

(・・・ここまでの配球を見ていて思ったけど・・・丹波さんはツーピッチの投手なんだろうな)

 

バットを握り感触を再度確認した後に、バッターボックスに入り独特のルーティンを始める白銀はある予測を立てていた

 

ツーピッチ」というのはいわゆる「主に2種類の球種だけで試合を組み立てる投球スタイルのこと」であり、成長途中の投手に見られる投球スタイルである

この投球スタイルは1つ1つの球種に対して制球力の向上に費やせる反面、打者からは予測されやすいため打たれやすいというデメリットがある

 

(肘の故障で2年の秋は全休していただけに、球種が増やせなかったんだろうな・・・でもその投球スタイルでライバル校を抑えられると思っているのか?)

 

仮にも最上級生であろう選手がそのスタイル(ツーピッチ)では後輩に示しがつかないだろ?

 

バットを立てて精神統一しつつ、丹波を見る白銀の目はより一層厳しいものになっていく

 

「・・・フゥ」

 

白銀の射貫くような目を見て丹波は帽子を深くかぶりなおし深呼吸を行う

 

「そうだ、逃げるな・・・抑えるんだろ?」

 

ブツブツと自分を鼓舞することをつぶやきながら捕手のサインを見る

 

最初に出たインコースへのカーブ・・・今度は首を縦に振る

 

「これが俺の最大の武器なんだ・・・」

 

そう言い丹波はセットポジションから投球動作に入る

 

「っふし!!!」

 

丹波は声が出るくらいに力を込めて投げる

 

投げたボールは白銀の方に向かってくる

 

(来たっ・・・!)

 

白銀はボールの軌道から瞬時にドロップカーブと判断する

 

(まずは横から見ていた時と実際に打席に立って感じたカーブの認識のズレを確認・・・)

 

白銀は上げていた左足をストレートと同じタイミングで地面に着地し、力を分散させないように体を開かないようにする

 

そしてボールの軌道が変わり捕手が構えるインコースに入ってくる

 

パァン!

 

「・・・ストライク!」

 

B●

S●

O●●

 

 

ギリギリベースに入っていたと判断し、片岡はストライクコールを行う

 

(・・・うん、ボールの軌道は大方予想通りかな)

(ストレートは()()()()()()()、あとはいかにカーブに対してアジャストしていくか・・・)

 

白銀は見送ったカーブのコースと軌道を確認し一度バッターボックスを外れ右手に着けている黒のリストガードのマジックテープを調整しなおし、軽くスイングを行う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なんか、嫌な見送り方をしたな」

 

「ボールの軌道を確認しているようにも見えたな」

 

「まさか・・・1年が丹波のカーブを打てるなんてことは無いよな?」

 

バッターボックスの立ち位置が捕手寄りとは言え、ボールの軌道を見極めるような白銀の見送り方に3塁側ベンチもひそひそと話し始める

 

 

(・・・くっそ、落ち着いていやがる)

(これで1ボール1ストライクだが、もう一球カーブ行くか・・・でもな・・・)

 

捕手の脳裏に浮かぶのは遠くからでも聞こえるくらいの爆音を奏でる白銀のフルスイング

 

それに白銀はここまでスイングを見せていない

 

(願わくばさっきの右打者(渡辺)みたいに仰け反るくらいのアクションがあったらよかったが・・・)

 

少し考える捕手

 

数秒考え・・・構えたのは外側、アウトコース

 

(外に逃げるカーブでカウントを取れれば・・・木製バットだ、先に当たってゴロになればめっけもんよ)

 

捕手はそのサインを丹波に出す

 

丹波も頷きセットポジションに入ってから投球動作に入る

 

「・・・ふしっ!」

 

再度力を込めて投げた丹波のボールは先程と同じく一度上に上がる

 

(ドロップカーブ・・・)

 

白銀も打撃動作に入りながら瞬時にドロップカーブと判断する

 

(しかもさっきとは違って外より・・・アウトコースへのドロップカーブだッ!!!)

 

そんな中、2球目のドロップカーブの軌道よりも外側に入っていると判断し、アウトコースへと狙いを定める

 

軌道が変わる前に白銀の左足が地面に着く

 

(まだ溜めろ・・・ボールの軌道を想像しながらフルスイングの準備だ)

 

地面に左足がついてもなお溜めの姿勢を維持し、ボールの軌道を脳内で描きながらスイングの準備を行う

 

(・・・今だ!!!!)

 

軌道が変わると踏んだその瞬間、全身で捻転の動作を行いフルスイングを行う白銀

 

ボールも同じタイミングで軌道が変わりアウトコースへと向かうが・・・その軌道上に白銀のバットが入り込んだ

 

ガシャン!!!

 

タイミングはドンピシャだったがボールの下を振ってしまったせいか打球はバックネットにかなりのスピードで飛んで行った

 

「っ~~~くっそ・・・次だ次!」

 

ドンピシャだっただけに、仕留め損なったこの結果に悔しがるが、すぐさま切り替えて、一度打席を外してスイングを軽く行う白銀

 

規格外のパワーとは裏腹に中2の途中まで扇風機だったこともありミート力はこれからといった所である

 

B●

S●●

O●●

 

(・・・あっぶね)

 

3球目はファールとなり、これで1ボール2ストライクと追い込んだが・・・ここへきて風すらも巻き込んでいくと錯覚する白銀のフルスイングに捕手は冷や汗をかいた

 

(でもこれで追い込んだ・・・ここまで2球続けてカーブを投げた、となれば・・・)

 

捕手は迷いなくインコースに構える

 

球種は・・・ストレートだ

 

(最初の1球は外しているし、2球続けたカーブで追い込んでいるこの状態)

(見逃すか空振りになって・・・終わりだ!)

 

丹波も同じだったのだろう、捕手のサインに頷きセットポジションに入る

 

(これで・・・終わりだ!!!)

 

渾身のストレートをインコースに!

 

「・・・ッああっ!」

 

ボールに気持ちを込めるように叫びながら投げる丹波

 

指に縦回転がかかった綺麗なストレートがインコースに襲い掛かる!!!

 

(よし!これで三振だ!!!)

 

良いストレートが来た為、三振を確信する捕手・・・

 

 

・・・しかし、バッテリーは知らない

 

白銀の基本の狙いはストレートであることに

 

(良いストレートだ・・・でもな、どれだけ凄い投手でも所詮はツーピッチ投手)

(カーブの軌道さえ分かれば後はこっちのもんなんだよ・・・だからよ)

 

まずはそのストレート、シバキ倒す!

 

コースを確認した白銀は先程よりもスイングの始動を早くする

 

(バットの角度、腕・脚・顔の位置・・・よし後は・・・)

 

ボールをよく見て・・・フルスイングだ!!!

 

先ほどと同様に全身で捻転動作を行い、フルスイングを行う

 

始動を早くした分、インコースに差し込まれることは無い

 

後はボールを芯に捉えつつ・・・回転を掛けるように打つ!

 

 

 

 

 

カァアアアアアン!!!!

 

木製バット特有の打球音が球場に響いた

 

 

「・・・・・・えっ?」

 

丹波と捕手は打球の方向であるレフトの方を見た

 

 

「・・・・・・フッ」

 

白銀は打球を確認し、確信したかのようにバットフリップ・・・は行わなかったが左手で高々とバットを掲げた

 

 

 

 

 

 

「おいおい嘘だろ・・・!?」

 

2・3年生チームのレフトを守っていた麻生(あそう) (たける)は打球を確認しながら追いかける・・・

だが、すぐさまフェンスに到達する・・・打球はまだはるか上である

 

 

 

 

綺麗な弧を描いた白銀の打球はフェアゾーン内、防球ネットの一番上に当たったのであった・・・

*1
ベースに近付くか遠くなるか

*2
マウンドに近付くか、捕手側に寄るか




フリュードです

気付いたら登録者数800人越え&総合評価1200pt越え
皆様のおかげです・・・本当にありがとうございます!!!

さて、始めて本格的な対決描写でしたが・・・簡単に打たせすぎたのかなぁなんて思ったり

でも先発を任される名門のエースであろう方がこの時点でツーピッチ(当時)ですからね・・・

よろしければ感想&評価の方お待ちしております

対決描写、もう少し頑張っていきます
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