| チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 1年生 | 2 | 0 | 2 | |||||||
| 2・3年生 | 4 | 0 | 4 |
田中山の好投で無失点に抑える事が出来た1年生チーム
だが、ベンチの雰囲気はあまり良くは無かった・・・それは
「あのな沢村・・・外野をやった事が無かったにしてもバンザイはどうにかならんかったか?」
「2アウトだぞ?エラーしたらバッターランナーも足次第では3塁、最悪ホームまで帰ってくる可能性があった」
「前に落とすのと、後ろに逸らすのとじゃ意味が違ってくるんだって・・・」
「外野だと前で落ちてもライトを守っていた沢村がいるけど、後ろに逸らしたら誰もいないスペースをコロコロ転がっていく」
「今回は自分も事前に言ってなかったから悪かったけど・・・1アウトの重みは全然違うんだから慎重にプレーしてくれ」
「・・・・・・すみません」
ベンチに戻ってから白銀による説教が始まる
それを正座で聞く沢村である
「まぁまぁ、それくらいにしてあげなよ白銀」
流石にかわいそうだと思ったのか、黒髪の少年が白銀と沢村の間に入る
「平井・・・まぁお前ほどの選手がそう言うのなら・・・でもさぁ」
「あっさりスープみたいにさら~っと喉に流してあげなよ・・・」
「結果的に無失点に抑える事が出来たんだし」
「お前は何を言っているんだ・・・それを言うなら水に流すだろ」
「ふえ?例えとしては良かったと思ったんだけどな・・・」
「はぁ・・・まぁごめんな沢村」
「いやいや!悪いのは俺なんだし・・・ごめん!」
平井と呼ばれた少年がのんびりとした雰囲気にしたおかげで険悪なムードが和らいだ気がした
「てかさてかさ!沢村君だっけ?凄かったねさっきの送球!」
「自分も外野やってるけどさ、あれほどきれいな球筋は投げられないなぁ・・・」
「そ、そうか!?いや~それほどでも・・・」
平井に褒められ、沢村は照れて頭をポリポリと掻きだす
「気に入らない先輩を合法的に仕留められるんじゃない~?」
「・・・それって良くないよね?」
だが平井が黒い笑顔で物騒なことを言い出したので、春市が後ろからツッコミを入れた
「にゃははは!まぁそうなんだけどね・・・まぁ強豪校あるあるじゃん?」
「レギュラーじゃない人が裏でいじめるっていうのは・・・」
そう言う平井の瞳のハイライトは消えているようにも見えた
中学校時代にいろいろあったのだろうか・・・
「あったとしてもグラサンの眼光一つで消え失せるから大丈夫だって」
「白銀、お前も大概なこと言ってるぞ」
白銀は平井の説を一蹴すると、金丸が間髪入れずにツッコミを入れた
「というか・・・ごめん、平井・・・で合ってるんだよね?」
「お~そういや沢村君って自己紹介の時いなかったっけ・・・」
「俺は
「そうか!俺は沢村 栄純って言うんだ、よろしく!」
名前も知らない沢村が恐る恐る聞いてみると、平井は快く自己紹介を行ったので沢村も自己紹介を行う
「お~沢村、中学硬式なら東条が有名だけど、中学軟式なら平井の知名度は抜群だぞ?」
「そういう白銀だって俺が青道に進学するの忘れてたじゃん・・・」
「それにどれだけ試合で打っても雑誌の特集は岸とか藤倉とかに持っていかれたくらい影薄い方だし・・・」
「・・・正直すまん、確かに遠い記憶で平井が青道に行くって話をしていた記憶があったんだけど・・・」
「縁の下の力持ちというか、職人みたいでかっこよくない?」
「オメーがそれを言うんかい・・・」
「白銀って平井と知り合いなの?」
知り合いのように会話を行う白銀と平井に沢村が疑問を投げかけた
「ん?そうそう、愛知県でしのぎを削り合った仲だよ」
「俺が大空中学校っていう学校にいて、平井が明王中学校にいたんよ」
「へ~そうなんだ・・・」
白銀の説明に沢村は相槌を打つが、その反応は何も知らない感じであった
「おい沢村・・・まさか明王中学校を知らないとかじゃないよな?」
「へっ?ごめん・・・あんまり知らなくて、それにうちの中学校そんなに強くなかったし」
そんな沢村に金丸が問いただすと沢村は謝罪しながら何も知らないという
「まぁ~高校に入ったらそんな経歴は関係ないから気にしなくて良いよ~」
「そうだな・・・一応言うと沢村、明王中学校って自分らの代は全国大会で優勝しているぞ~」
「え・・・すげぇ奴だったのか平井は!」
平井は手をひらひら~とさせながら気にしていないそぶりを見せると、白銀は同意をしつつ沢村に説明した
それを聞いた沢村は目を輝かせながら平井の方を見る
全国大会は沢村も目標にしていただけに、その目標の大会で優勝しているとなれば話は違うのだろう
「いやいや、周りの選手が凄かっただけだよ・・・」
「3番センターでレギュラー、全国でも打率5越えだった奴がそれを言うんだ・・・」
「いや言わないでマジで・・・それでもインタビューはされないわ特集に組まれなかったんだから」
平井は謙遜するが、白銀が成績を言った途端に平井は間髪入れずに白銀に詰め寄るのであった
(全国クラスでも悩みはあるんだなぁ・・・)
(優勝して成績残してもインタビューされない、特集も組まれないって・・・)
沢村と東条はその光景を見て若干憐みの目を向けていたのだった
(なんか・・・ベンチ、誰も僕の方見てくれないな・・・)
(影が薄いから分かっていた話ではあるんだけど・・・)
一塁側ベンチで何やら話をしているのを見て、9番の田中山は何もアドバイスとかは無いのかな~なんて思いつつも右打席から少し離れた所で2・3年生の投手の投球練習を見る
2・3年生チームはこの回から丹波に代わって
「・・・んッ!」
腰付近でグラブを置くタイプのノーワインドアップから上半身が沈み込みつつ、横からボールを投げる
(サイドスローか・・・こういうタイプってスライダーは必ず持っているって相場は決まっている)
(ストレートもシュート回転が掛かったボールになりやすかったりするから、そこも要注意だな・・・)
田中山はフットガードを確認した後に素振りをしてタイミングを確認しながら相手投手の簡単な研究を行う
(取り敢えず・・・投手代わった回の先頭打者、球数稼いで相手投手の情報を引き出そう)
田中山は気を引き締めつつ投手に鋭い目で観察を行いながら素振りを行うのであった
キィン!
「ファール!!!」
一塁方向に打球が飛ぶが、ファールグラウンドに飛んで行ったためファールとなる
B●●
S●●
O
「フゥ・・・(よしよし、これで良い・・・)」
打球方向を見つめながら田中山は打席を一旦外し軽く素振りを行う
「おい、何球連続でファールになっている?」
「10球くらいじゃないか・・・なんか小湊みたいな打撃をしているな」
「投球はテンポ良く投げていて、打撃はいやらしく球数を稼がせるって・・・」
(ふふふ・・・そりゃだてに投手やっていませんよ)
(一番投手に嫌がられることをやりつつ、先頭打者としての役割を敢行しているだけですよ)
観客や3塁側ベンチからボソボソと聞こえてくる会話を聞き、内心にやりと笑う田中山
人畜無害そうな顔をしてこの男、やることが卑劣である
ここまで際どいコースはファールで逃がしつつ、球数を稼がせて相手投手の情報を引き抜いている
先頭打者としてこれ以上ない役割を田中山は敢行している
「くっそ・・・」
川上はなかなかアウトになってくれない目の前の打者に苦虫を噛んだような表情になる
(亮介さんみたいな打撃をしやがる・・・)
マスクを被る小野もこの打撃スタイルに1つ上の先輩である小湊亮介を思い浮かべた
彼もまたファールで球数を稼ぎつつ安打や四球をもぎ取る嫌らしい打者である
「・・・凄いな太郎」
セカンドを守っている木島は田中山の打撃技術に感心していた
実を言うと木島と田中山、この二人はルームメイトである
「亮さんがやっている技術を太郎も出来ている・・・負けていられないな」
(さて、ここまで投げたボールは・・・ストレートとスライダーかな?)
軽く素振りを行った後にスパイクの靴紐を結びなおす田中山は相手投手の情報を整理する
(大方予想通り、多分ベンチも・・・特に白銀君は気付いているはずかな?)
田中山は一塁側ベンチをちらっと見ると白銀は田中山がこっちを見たのに気づいたのかサムズアップポーズを田中山に対して行った
【一塁側ベンチ】
「さすがだな田中山・・・」
「あぁ・・・まさに先頭打者の鑑だな」
田中山にサムズアップポーズを行った白銀は田中山がこんな打撃が出来るのかと驚いていた
高津も驚きつつも田中山の打撃を褒めていた
「ここまで投げたボールはストレートとスライダー・・・なのか?」
「スライダーは真横に曲がる変化球だからな・・・分かりずらいけどたぶんそうじゃないかな?」
白銀と春市は相手投手の持ち球分析を行う
「でもこの投手もツーピッチ疑惑が高いな・・・その分ストレートがシュート回転している可能性も高いから実質3つか?」
「しゅーとかいてん?」
沢村は聞きなれない言葉が出てきたため白銀に聞いてみる
「あぁ・・・名前の通りで、ストレートが利き手方向に曲がる「シュート」という変化球みたいに曲がる事のことを言うんだ」
「普通なら強い縦回転がかかるストレートなんだが、ごくまれに中途半端な横回転が掛かったストレートを投げる投手がいるんだ」
「そういう中途半端な回転って打者にとっては非常に打ちやすいんだよね」
白銀がシュート回転の説明を行うと、東条が付け加える
「なるほど・・・あの人がそれを投げている可能性が高いの?」
「まぁ、さっきの説明は
「サイドは横から投げるから指もリリース直前までは横向きになっているんだよね・・・」
白銀がボールを持って回転の掛け方を実践しながら沢村に説明する
「そうか、上から投げる俺とは違って横から投げるから投げる時の指の向きも変わってくるのか」
「そそ、だからどうしてもシュート回転しやすくなるんだよね・・・」
沢村も沢村なりに納得したのを見た白銀はそう締めくくった
「でもシュート回転しやすいからこそ、サイドハンドのストレートは打ちづらいんだよね金丸?」
「あぁ・・・ストレートの性質を持ち合わせながら手元で曲がるから打ち辛いったらありゃしない・・・」
東条と金丸はサイドハンドの投手との対戦経験があるのか苦い顔をする
「後は、打席で感覚をすり合わせながらになってくるかな・・・」
白銀はそう言い田中山の打席に注視し始めた
「ファール!」
B●●●
S●●
O
「ぬぐぐぐ・・・」
これで15球目、気付いたらカウントもフルカウントになっている
川上もなかなかアウトが取れない中でコースに投げ続けているが、田中山がことごとくファールにするため打ち取る事が出来ない
(踏ん張るぞノリ!先に集中切れた方が負ける!)
小野もジェスチャーで川上を鼓舞する
(うーん、低めにしっかり来るな・・・甘いボールがなかなか来てくれない)
打席を一旦外した田中山はバットのロゴマークを見ながら、これまでの配球を整理する
(でも、勝負球はアレかな?)
(もう先頭打者としての役割は果たしたから、今度は自分が打つ番)
(狙い球が来るまではいつも通り粘る・・・)
狙い球を定めた田中山はバッターボックスへと戻る
捕手寄りに立つのではなく、左足がベースの中心部位と同じ位置に立つ感じで少し投手寄りに立つ
肩幅よりも少し足を広げつつ足を曲げながらバットを肩に乗せる
「プレイ!」
プレイのコールとともに、バットのヘッドを少し投手寄りに倒しながら、頭の高さと同じ位置でバットを構える
「(・・・よし、このボールで終わりにしよう)」
小野がサインを出すと川上もこくりと頷き、投球動作に入る
左足を上げ、着地してから右腕が大回りにならないように、コンパクトにしつつ体が開かないようにギリギリまで閉じることを意識しつつリリース時に開放するように横から投げ込む
田中山も投げる直前に左足を上げてタイミングを取りながら顔の後ろ付近にバットを持っていく
(勝負球は・・・)
((最後は・・・))
(((アウトローへのスライダー!)))
川上が投げたボールは寸分狂いなくアウトローへと横へ曲がりながら吸い込まれていく
(来た・・・アウトローへのスライダー!!!)
田中山は左足を着地させた後に、軸足である右足を後ろに下げる
(えっ・・・
小野は田中山の行動に驚愕しているとアウトローへのスライダーの軌道に田中山のバットが入り込んだ
(バットのヘッドが離れないようにしつつ、ボールの内側にグリップが来るように・・・!!!)
最短距離でゾーンに来るボールに対してバットを出しに行く
田中山が幼い頃からずっと好きだったプロ野球選手の動画を繰り返し見て練習した技術
(アウトコースは・・・前で捉える!)
カキィィン!
綺麗な金属音とともにライト方向へライナー性の打球が飛んだ
「おおお!良い打球が飛んだぞ!」
観客も田中山の打球に歓声が上がる
「く・・・っそぉ・・・!!!」
右中間に飛んで行った打球にセンターの選手とライトに入っている二年生の
「おおおお!!!!右中間割った!長打コースだ!」
「田中山ぁ!
一塁側ベンチが田中山の長打に歓声が沸くなかで、白銀が打球を見ながら田中山に大声で指示を出した
田中山も一塁ベースを蹴って二塁へと向かいながら右中間の様子を確認する
(・・・くっ!微妙な位置にいやがる・・・)
ライトの三村がボールに追いつこうとしていたため、田中山は瞬時に判断を迫られる
(後は・・・後続の選手に託そう)
そう判断し、田中山はスライディングをすることなく二塁を陥れた
「スタンディングダブル!!!」
「ナイバッチ田中山!!!」
一塁側のベンチから田中山を称賛する声が次々と挙がった
「へへっ・・・少しは役に立てたかな?」
田中山の技が光ったツーベースで一年生チームがこの試合始めてチャンスを迎えたのであった
フリュードです
新キャラ、平井光則が登場です!
元ネタとかあの選手との関係は・・・とかいろんな想像をしていただけると幸いです
さて、田中山の職人技が光り、チャンスを迎えた一年生チーム
この後が凄く楽しみですね・・・
ちょっと・・・技術マシマシにしすぎましたかね