ダイヤのA~気迫のFull Swing~   作:フリュード

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最後の夏、名門の明王中を4-5と1点差まで追い詰めたものの、その1点が遠かった大空中

全国出場が叶わなかった白銀は一足早い夏休みを満喫していた


第1話

「おう白銀、突然呼び出してすまないな・・・」

 

 

夏の大会から少し経ち夏休みも終盤に差し掛かったころ、白銀は顧問の蒔田に呼び出されて大空中の教室で二人で話し合っていた

 

「全然いいっすよ、それで話というのはやっぱり・・・?」

 

「おう、お前も引退して少し経つが・・・進路はどうなんだ?」

 

内容はもちろん今後の進路の事であった

 

「いやぁ・・・特に何も決めていない状態ですね」

 

「そうか・・・特に行きたい高校とかはないのか?」

 

蒔田にそう問われると白銀は少し考えるそぶりを見せる

 

「ん~・・・強いて言えば・・・親父と蒔田さんがいた母校っすかね?」

 

その瞬間、少し空気が張り詰める・・・心なしか蒔田の白銀を見る目が鋭くなる

 

「・・・それは本気で言っているのか?」

 

「うん・・・俺、青道に行ってみたい気持ちはありますね・・・」

 

蒔田の鋭い目線に白銀は意に介さず(?)決意が入り混じったような目で見つめ返す

 

青道・・・「私立青道高等学校」

東京都にある高校で、「打の青道」と呼ばれるくらい野球部が非常に強いことで有名な高校である

 

 

毎年都内でもベスト4に顔を出す程の名門校なので、部員数もその分多くなる

3年間補欠になることもあるのだ

 

ましてや愛知県から東京都へ野球留学の為に単身乗り込む

それにはそれ相応の覚悟がいる・・・だからこそ蒔田は口調も少し厳しくなるのだ

 

「キヨ・・・んん、親父さんはなんて言っているんだ?」

 

「へ?親父っすか?まぁ・・・」

 

 

 

 

 

『・・・おう一将、進路はもちろん青道高校だよな?準備は進めているからな~』

 

 

 

 

 

 

「なんて言っていましたね」

 

「アイツ・・・軽すぎるぞ・・・それで良いのかあのアホは」

 

白銀の父である白銀聖将(きよまさ)の言葉を蒔田に伝えると蒔田は頭を抱えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・というのも、聖将と蒔田は青道高校の同期で、ともに野球部で汗を流したメンバーなのだ

 

運命のいたずらか、自身が勤務している中学校に同期の息子が入学してきたのだからその時は驚いたのは今となっては懐かしい話である

 

「美代子さんは・・・あぁそうか、美代子さんも青道だから」

 

「はい、お袋も青道高校行きに賛成していましたね」

 

 

 

 

 

 

 

『あらカズ?進路だなんて・・・青道高校以外あるのかしら?』

 

以前白銀が進路相談したときの白銀の母、白銀美代子(みよこ)の発言である

つまるところ、拒否権なぞ無い状態なのである・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだよなぁ・・・まぁ、あの人も青道高校の野球部マネージャーだったからなぁ」

 

「え!?それは初耳でしたね・・・」

 

「そうだよ、その後キヨが社会人に入部して2年目には結婚したんだっけな・・・って白銀の両親の馴れ初めなんぞ今は要らんて」

 

「蒔田さんのきれいな説明付きのノリツッコミ、いただきやした!」

 

「うるせぇよ・・・まぁいいや、そうか・・・お前もその道に進むんだな」

 

白銀のイジりに軽く叱った後、どこか嬉しいような顔で白銀を見ながら蒔田は呟いた

 

「血は争えないんですよ・・・そういや今の青道高校の監督も確か?」

 

「あぁ鉄心が今監督やっているな・・・お前も知った顔だから安心するだろう?」

 

「いやぁ~鉄兄が監督しているのは安心するなぁ・・・まぁ、まだ青道に進学するとは決めていないのですがね。何分推薦が・・・」

 

知り合いが監督しているという事もあり、心強いなと思う反面・・・少し寂しい表情を浮かべる白銀

 

愛知県内№2である大空中だが、やはり知名度は明王中には劣ってしまう

それに打席の内容もあまり良くなかった(場外本塁打を打つ中学生がどこにいるのかという話は置いといて)ため最後の大会が終わってから暫く経っているが、推薦が来ていない状態である

 

「・・・だからってそれで終わっていいのかカズ?」

 

「・・・」

 

「一般入試で入る手もある、カズの頭なら難なく通過出来るだろう・・・それにお前、最近ソヨダ自動車で自主練しまくっているらしいじゃねぇか」

 

「それは・・・親父がソヨダでプレーしているので、その関係で使わしてもらっております」

 

「あの社会人の名門で練習で来ているんだぞ!?自信をもっと持てよ~!」

 

「監督・・・」

 

「それにな・・・何も推薦が無いから行けないってわけじゃない」

「俺たちは何度でも明王中という壁にぶつかったし、その分勝つために血反吐を吐くぐらい練習をしてきた」

 

「うげ・・・監督の青道仕込みの夏・冬の合宿は・・・きつかったっすね」

 

それを聞き、白銀は一瞬青い顔をして口元を押さえる

 

青道OBの蒔田監督が「現役時代にしていた」という合宿メニュー・・・それは「過酷」という一言では済まされないものであった

 

事前に監督が「吐くかもだから昼はあまり食うなよ」と警告したこともあり奇跡的に吐く者はいなかったが、保護者に通報されかねないんじゃないか・・・と思ったほどだった

 

 

「正直な・・・誰かは俺の母校に行って欲しいという思いはあった」

「その思いを・・・白銀、お前に託したいんだ」

 

蒔田の内に秘めていたその夢・・・「教え子を母校に送る」こと

その思いを・・・この中学の中で一番バットを振っていた白銀に託すことにした

 

「・・・そんな熱いこと言われたら、行くしかないじゃないですか・・・青道!!!」

 

「おう・・・頼むぞ・・・って言っているけど、案外帰ったらスカウトの方が来ているかもしれないぞ~?」

 

「そんなことある訳無いじゃないですか~でも・・・青道に行く為に・・・勉強、しておきます!」

 

そんなことをしながらこの後数分白銀と蒔田は談笑していた

その白銀の顔は・・・すっきりとした表情になっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うい~ただいま~」

 

「あら~お帰り一将」

 

「ただいま・・・ん?親父も帰ってきているんだ・・・それに女性ものの靴があるけど、誰か来てるん?」

 

蒔田監督との面談を終え、家に帰ってきた白銀

靴を脱ぐため足元を見ていたのだが、その時にこの時間帯なら置いてある筈のない父親のスニーカーとともに見慣れない女性ものの革靴が置いてあることに気付く

 

「ふふふ、ようやく来たわよ・・・青道高校のスカウトの方が!」

 

「えっ・・・えええ~?」

 

『もしかしたら帰ったらスカウトがいるかもしれないぞ~?』

 

「(そんなことあるんかいな・・・)ちょ、ちょっと待って・・・」

 

美代子がとびっきりの笑顔でスカウトの来訪を告げたため、白銀は慌てて鞄を玄関の邪魔にならないところに置いてから手洗いうがいを行ってからリビングに向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう一将、お帰り」

 

「ただいま、今日は早かったんだね親父・・・それに・・・」

 

さっそくリビングに入った白銀を迎えたのは椅子に座っている父の聖将と、テーブルをはさんで対面に座っている眼鏡をかけて髪の毛をポニーテールに束ねたいかにもキャリアウーマンといった風貌の女性だった

 

「初めまして白銀一将くん」

 

「は、はぁ・・・初めまして」

 

挨拶もそこそこにまずは座れと言わんばかりに美代子が手で催促するので白銀は父の隣に座る

 

「まずは挨拶からね・・・私は青道高校の野球部で副部長を務めている高島と申します」

 

よろしくお願いします、そう言い手渡された名刺を白銀は見る

「青道高校 野球部 副部長 高島礼」確かにそう書いてあった・・・

 

「単刀直入に申し上げます、一将君・・・ぜひ青道高校に『よろしくお願いします』・・・フフッ、早いわね」

 

「いやぁ~両親から青道高校以外に入ることは許さんって言われていますからね・・・それに自分も推薦貰えないなら一般で青道高校へ入学しようとしていたところです」

 

高島は白銀の言葉を聞き嬉しさから頬が緩んだ・・・と同時に両サイドにいた両親がうんうんと頷いているのを見て家族ぐるみで相思相愛だったんだな・・・と感じた

 

「それに父の聖将さん、母の美代子さん共に青道高校の卒業生で、野球部出身・・・そんな方たちから生まれた息子さんをスカウトしない手はないです・・・それに所属していた大空中の蒔田監督も青道高校のOBなんですよね?」

 

「そうですね・・・あの人には凄くお世話になりました・・・」

 

「すごいですよね、こんなに青道高校の関係者が密集しているところなんて・・・あとこれは内緒ですが片岡監督からも最優先事項でスカウトしろとのお達しを受けていますからね」

 

高島はそう言い眼鏡をくいっと上げる仕草を見せた

 

「ほぉ?鉄心のヤロー、そんなこと言っていたんだな・・・」

 

「あの悪童の鉄ちゃんがね・・・嬉しいわね~」

 

両親は片岡監督の名前を聞き両親が懐かしみながらも笑顔を見せた

 

「ただそれだけでは・・・ただのコネ入学なんて言われてしまいます」

 

「そりゃそうですよ、俺だってそんな扱いされるのは嫌ですよ・・・」

 

コネの名前を聞いた瞬間明らかに不機嫌そうな表情見せる白銀

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『両親のコネで青道に入るんだろ?良いよなぁアイツ』

 

これは・・・入学して間もないころに先輩が言っていた陰口である

 

二度とそう言われないためにも必死にバットを振りまくり、ボールを追いかけてきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ、でもあの決勝戦で見せた場外本塁打・・・あの規格外のパワー、弾道は紛れもなく『アーチスト』としての素質を持ち合わせています」

 

「ほんのちょっと前までただの扇風機だったけどな・・・いまだにその名残はあるし」

 

「ついたあだ名が『ブンブン丸』だったわね・・・神奈川に住んでいた時の隣に住んでいた子にはブンちゃんって言われていたわね・・・」

 

「ちょっと!上げて落とすのやめてくれよ!?しかも懐かしいな、今それを言う???」

 

両親の容赦ない言葉という名の辱めに白銀は高島に褒められて有頂天になりかけていたところにどん底まで落とされた気分になった

 

 

 

「ふふっ、家族間で仲が良いのね・・・でも今はまだ粗削りだけど、貴方なら青道高校で4番を任せられる・・・そんな気がするわ」

 

「っ・・・あ、ありがとうございます・・・」

 

あの青道高校の副部長からそこまで言われるとさすがの白銀でも顔を真っ赤にして照れていた

 

「こいつを褒めるのはそれまでにして・・・それで練習見学はいつにしますか?」

 

「いや、それを言わんでもええやないかい・・・」

 

「ふふっ・・・それではですね、もう一人私が推薦している選手がいますので・・・」

 

(あれ?高島さんもこの空気に慣れてきた感じ?高校でもそれはやらないよね・・・?)

 

両親が白銀を弄る雰囲気に慣れてきたのを察知し、白銀は一抹の不安を抱えながらも話を聞くことにしたのであった・・・




白銀のモデルですか?

・・・言わなくても分かりますよね(笑)
中日でフルスイングを武器に活躍した背番号55の・・・あの人です
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