午前中の行事も終わり、つかの間の昼休みに入ったのだが・・・?
青心寮 食堂
「いただきま~す」
白銀は笑顔で食事を始める前のあいさつを行い、食べ始める
午前中の練習も終わり、白銀を含めた部員の姿は食堂にいた
目の前には茶碗に大盛りどころか山のように積まれた米と野菜や肉などバランス良く考えられた沢山のおかず
遠くでは午前中ずっとタイヤを引きながらランニングを引いていた白銀と同級生の少年が
「うぷっ・・・」と吐きかけていた(いや、吐いていたか・・・?)のだが、この白銀という男は・・・
「すみません、2杯目ってどこで頂く感じですかね・・・?」
「ん?あぁこっちでご飯を装うから茶碗だけ渡してくれるかい?」
「あっ、分かりました~お願いします」
既に2杯目を頂こうとしており、食堂のおばちゃんにおかわりを要求していた
これには必死に山盛りのご飯を食べていた1年生はともかく、1年生に格の違いを見せようとしていた2・3年生もあまりの速さに驚愕していた
(おいおいおい・・・アイツ早すぎやしねぇか?こっちは必死になって食べているのに・・・)
(よく噛んでいるのか心配だな・・・練習後に白銀に聞いてみるか)
その姿に苦虫を嚙み潰した表情になる金丸とは反対に、お母さんみたいな心配をしている白州であった
「す、すごいねブンちゃん・・・もう2杯目いったんだ?」
白銀の隣で食事をとっていた春市はおかわりから戻ってきた白銀に口角を引くつかせながら話す
「いやいや~普段からこんな感じで食べてるからね・・・慣れちゃった♡」
「あぁ~そういやブンちゃんの両親って・・・」
そう言い春市は白銀の両親を思い浮かべる・・・
『おらおら春ちゃんと亮くん、もっと食わないと成長しないからな~』
『うふふ、お二人とも遠慮せずに食べてね~』
出張で両親が家を空けるため白銀家に泊まった時のご飯で
山盛りのご飯と大量のおかずを出されて困惑する小湊兄弟と
眩いくらいに笑顔の白銀の両親と嬉々としてガツガツ食べ始める白銀
「・・・あぁ、山盛りのご飯と沢山のおかず・・・うぅ」
「お~い春ちゃん・・・なんで食べているときに思い出すん・・・」
白銀家での食卓を思い出しつつ、目の前の食事を見てダブルパンチになったのか顔が真っ青になる春市に苦笑しながらも箸を進めている白銀であった
「へぇ・・・すげぇなあの一年・・・あれだけ早く食べたの初めてじゃないですかね・・・って何笑っているんですか亮介さん」
既に二杯目も半分くらいになっている白銀の姿を見て感心していたのは沢村の同室の先輩で先ほどまで罰走を科されていた倉持
その倉持も1杯目が終わりに近づいているので十分早いペースなのだが・・・
そんな中、桃髪でいつも笑顔を絶やさない倉持と共に二遊間を組んでいる青道高校セカンドのレギュラー『
「ふふっ・・・いや、あの光景懐かしくってね・・・カズ、変わってないね」
小学生の時に白銀家が愛知に引越すまで交流があった両家
そんな小学生時代のひとコマが蘇ったのか・・・
亮介が白銀と春市を見る目はいつもの雰囲気とは違い、温かい目をしていた
「おい小僧、どこへ行くんだ?」
昼休みも終わり2・3年生は昼からの練習が行われているのを見ていたところに一年生の能力テストがBグラウンドで行われるという事で白銀たちはスパイクを持ってBグラウンドへ行こうとしたところでそんな声が聞こえてきた
「・・・ん?沢村~どうした?はよ行くぞ」
「あ、白銀・・・いや、監督に呼び止められて・・・」
「あん?」
白銀は後ろを見ると午前中ずっと走らされており、昼にご飯ドンブリ3杯食べて吐いていた沢村が足を止めていた
その沢村の視線を白銀が辿ると片岡監督の姿があった
「白銀、お前は行っていいが・・・小僧、お前は参加しなくていい・・・暇なら走ってろ」
「えぇ!?なんで俺だけ・・・」
「おい沢村、もしかして遅刻した事謝ってないとかじゃないよな・・・?」
「・・・・あ」
片岡監督がかなりキレているのは雰囲気で察知したので、脳内で原因を探ったときに「遅刻の件」が出てきたので沢村に問い詰めると、沢村は顔を真っ青にした・・・ビンゴだった
「アホ!何していたんだ!普通自分の非は謝るもんだろ!昼間何しとったん!?」
「ごめん・・・ずっとトイレにこもって吐いててすっかり忘れてた・・・」
「っ~~・・・ちょっと来い沢村」
理由が理由なだけに強く言い返せない・・・
白銀は下唇を噛みつつも沢村の袖を引き監督の前に立つ
「監督・・・この度は同級生の不手際、誠に申し訳ございません・・・遅いかもしれませんがどうか許していただけませんでしょうか・・・ほら沢村!」
「申し訳ございませんでした・・・」
白銀と沢村が謝罪を行い二人で監督に対して頭を下げる
「ふん・・・俺に言われてから謝罪など遅い・・・そもそもなぜ白銀が主体で謝罪をしているんだ?」
(ぬぐぐ・・・た、確かにそうなんだけども!)
痛いところ・・・というか当たり前のことを突かれて、内心悪態をつく白銀
・・・暇なら走ってろ!気に入らんなら来なくていい・・・永久にな
そう言い残しその場を去ろうとしていいた
こうなった片岡はテコでも動かない
謝罪をしても意思が変わる事は無かった
「っ・・・ごめん、沢村・・・沢村?」
事態を好転させる事が出来ず、白銀は沢村に謝罪をするが当の沢村は青い顔をしながらも下を向いており声を発していなかった・・・その直後
「うあぁあああああああああああ!」
「うおっ!あっぶな・・・」
自身の気持ちを吹き飛ばすように沢村は叫びだしたので白銀はとっさに耳をふさいだ・・・
だが、片岡監督はその大声で去ろうとした足を止めた
「ね、寝坊をした事やその事で謝罪しなかったのは自分に非があるので言い訳はしません・・・でも!」
エースになるためにここに来ているんだ!その気持ちだけは誰にも負けません!!!
「沢村・・・」
大きな声でそう宣言した沢村
白銀はそれを聞き、先ほど再会した時の会話を思い出す
『おろ?午前中走りまくっていた沢村君じゃないか~久しぶり~』
『ああ~!お前は白銀!久しぶり!』
午後からの練習の為にグラウンドに向かっていたところで白銀がオエオエ言いながら歩いている沢村を見つけ声をかけていた
沢村も白銀のことを覚えていたらしく互いに会話を始めた
『しかし結局青道来てるんじゃん・・・どういう心境の変化?』
白銀がそんな疑問を投げかけると沢村は「へへっ」といい鼻をこする仕草を見せる
『うん・・・どうしてもミットに入った乾いた音が離れなくて・・・自分がここに入ったらどこまで成長出来るのか・・・そんな気持ちが芽生えてさ・・・』
『でも仲間を置いて自分が東京に行くなんてできない・・・そんな自分を仲間が『行ってこい』って背中を押してくれた』
『あいつらのためにも・・・成長した姿を見せたい。だから
白銀にそう話した沢村の表情は屈託のない笑顔だった
「ふん、くだらん」
そんな沢村の宣言を片岡はバッサリと切り捨てる
「くだらないってなんだよ!俺は真剣に!!!」
「ちょ、沢村!タメ語はあかん!!」
とうとう沢村がキレてしまい、ついタメ語で言い返してしまったので白銀は注意をする
だが、それを聞いた片岡は沢村の前まで歩み寄り、殴るかと思った瞬間その位置からボールを投げる
そのボールは100mくらいの距離はあるだろうグラウンドのフェンスまで届かせた
「エースと言ったな小僧?ならば言葉は要らん、
「ホームベースからあのフェンスまで90m・・・届けば練習の参加を認める」
「その代わり届かなかったら投手は諦めてもらうからな」
ざわざわざわ・・・・
(おいおい・・・無茶言うなよ、沢村のムービングじゃ・・・)
白銀は沢村のボールの質を知っているだけに厳しい要求に冷や汗をかく
90m投げる、遠投記録が平均50m前後の中学生には到底厳しい要求なのである
「・・・はっはっは!流石名門!分かりやすくて良い・・・あのフェンスを越えればいいんすよね!」
そんな白銀の心配をよそに沢村は自信たっぷりにそう宣言する
周囲からは「無謀だ」「自己記録何mだ」と突っ込まれていたが、沢村はどこ吹く風
・・・投手をやる沢村にとっては、やるしかない
だからこそ腹をくくったのだ
「赤城中学出身、沢村栄純!いきます!!!!」
そう言い助走をつけて投げた沢村だったが・・・案の定ムービングの特性が出てしまったのか、90mまであと少しのところでカーブがかかってしまう
そうしてそのボールは・・・惜しくもフェンスまで届くことは無かった
「・・・ふはははは!大事な遠投でカーブ投げる奴なんて初めて見たわ!!!」
「は、腹いて~~~!!!」
「っ・・・あ・・・」
沢村はあまりの出来事に声を出せずにいた
途中までは良い感じで伸びていただけに最後の変化が勿体なかった・・・
それに加えて沢村をバカにするような笑い声・・・白銀は友人がそんな状況になって黙っているほど大人ではない
「おい・・・ボールよこせ・・・」
「え?ヒッ・・・ど、どうぞ!!!」
ドスの聞いた声で近くにいた部員にボールを要求する
部員は白銀のどす黒く異様なオーラにビビりあがり秒でボールを渡した
「ふん・・・約束通り投手は「オラアアアアア!!!!!」・・・何?」
片岡が沢村に投手を諦めるように言おうとしたときにもう一人声を出しながら遠投を行う姿を確認した
白銀だった・・・・
ビュ―――――――――――――――――ン・・・・・ガシャン
白銀が投げたボールは片岡同様にフェンスに直撃した
「うわぁあああ!?ふぇ、フェンスに当たった!?」
「火の出るような遠投だったぞ・・・何m飛んだんだ!?」
「しかもホームベースよりもかなり後ろから投げなかったか!?」
「ふぅ・・・監督、これで沢村の投手参加、認めてくれますよね?」
白銀の大遠投を見た同級生が今度は驚きでざわめく中、白銀本人は片岡の前に立ちこう言い放った
「ふん、これはお前が投げただけで小僧の投手としての練習参加とは関係ないだろ?」
「いやいや、沢村と二人で謝罪した時点で
片岡の鋭い眼光にも一歩も引かず応戦する白銀
突然の口論に周囲は「おい、止めないとまずいんじゃないか・・・?」と顔を青くし始める
「白銀、言っていること滅茶苦茶だって分からないか?それにどうしてここまで小僧に固執するんだ?」
「そりゃ「投手沢村」に大いなる可能性を秘めていると思っているからですよ・・・それにそもそもな話としてこんな事が出来るくらいに青道の投手陣って
「・・・・・・」
「・・・・・・」
数秒、片岡と白銀の睨み合いが続いた
青道高校は「打の青道」と呼ばれるくらいに打撃に特化した名門校
だが、「打」と異名がつく反面「投」はというと・・・お世辞にも良いとは言えないというのが本音である
なので青道高校の試合はいつも乱打戦に持ち込まれることが多いのである
『かぁ~鉄心の野郎やきもきしてるだろうな~14-11って見事な乱打戦なこと・・・』
父の聖将がパソコンで青道高校のスコアを見て頭を掻きながらはぁ~・・・とため息をついていたのを白銀は何度か見たことがある
白銀がこのような行動を起こした要因
一番は笑いものにされる友人を放っておけなかった事
しかしもう一つは青道の投手陣の事情を知っているからこそ、投手陣がレベルアップする可能性を狭める行為だけは絶対に阻止したいというチーム面での思いも白銀にはあった
「・・・沢村~、走りに行くぞ」
「えっ?ちょ白銀!?」
睨み合いの時間を止めたのは白銀の方だった
睨むのを辞めた白銀は沢村と一緒にランニングに行く準備を行う
能力テストを受ける気は無いようだ
「俺はともかく、白銀は関係ないじゃないか!!!」
「・・・い~んだよ沢村、俺たち親友だろ?」
心配そうな沢村に白銀は笑顔を崩さない
「沢村の練習参加が認められるまで俺も走るさ・・・という事で、2人仲良く走ってきま~す」
呆気にとられる周囲を尻目に白銀は沢村を連れてランニングしに行ったのであった
漢白銀、沢村と走ることを選ぶ
という事で・・・皆さんお気に入り登録、誠にありがとうございます
原作とは少し違うようにしたいなと四苦八苦しながら執筆を行っております
お気に入り登録数が主人公のモデルの背番号である「55」を超えたので次は「555」を目指していきたいと思います
どしどし評価・感想もお待ちしております!