入部初日から片岡監督とやり合った白銀
当然そのまま終わるはずもなく・・・
「馬鹿!なんであんなことをしたんだ!!!」
練習も終わり、着替えを終えて食堂へ行こうかどうかの時間帯
17号室から怒号が聞こえてきた
声の主は白州であった
「・・・・・・」
「し、白州・・・この役目は僕がするから落ち着いて・・・」
普段は寡黙で職人気質な性格である白州
そんな白州が声を張り上げて怒鳴る姿を見て怒りよりも逆に心配が勝ち白州をなだめる役割に移った楠木
言われてもおかしくない、そう分かっていたから白州達が飛び込んでくる前にユニフォーム姿のまま正座で待っていた白銀
「良いんです楠木さん・・・そう言われるだけのことを自分はしでかしたので・・・」
「白銀・・・」
「迷惑をかけてしまい、申し訳ございません・・・こんな自分の土下座で許していただけるのなら何度でもやります」
土下座を行い2人に謝罪をした白銀
「・・・勿体ない、あれだけの遠投が出来る奴なんてそうそういない・・・1年時の俺でもあそこまで投げられなかった」
白州も白銀の土下座を行いながらの謝罪を見て落ち着いたのかふぅ、と一息入れてから腰に手を当てて悔しさからか下唇を噛む仕草を見せる白州
「はは・・・いえ、白州さんにそう言っていただけて光栄です」
「でも自分は・・・友情を選んだんです」
「笑ってくださいな・・・少なくとも自分の性格は今の青道とフィットしていないのは分かっております」
白銀は顔を上げず土下座の姿勢を崩さない
「白銀って・・・友達思いの熱い奴なんだな・・・」
そんな白銀を見て楠木は軽くため息を吐きつつも、改めて「白銀一将」という男の一面を垣間見た楠木
「実はそうなんです・・・でもこの環境ではこういう性格って悪い方向に行くことくらいは分かっているんです・・・」
「でも・・・晒し者にされる友人を・・・放ってはおけなかったんですっ・・・!」
ところどころ語気を荒げるところがあり、白銀にとってはそれくらい許せなかったのが見て取れた
「顔を上げてくれ白銀・・・俺も親友を助けてくれたという点では、沢村には借りがある」
「親友・・・?」
白州の思わぬ発言に白銀は地面にこすりつけていた頭を上げて白州の方を見た
「川上っていう奴がいるだろう?あいつが東先輩に苛められていたんだ・・・」
「あっ、あの時シートで東先輩に馬鹿にされていたあの人ですか・・・?」
白銀が見学時に東にボッコボコに言われていた投手を思い出し、その選手か訪ねると白洲は頷いた
「あの時自分は何も言えなかった・・・助けてやれなかった」
「でも沢村や白銀は・・・それを良しとせず行動で示した」
「そういった面では・・・白銀、お前を尊敬するよ」
怒っていた先ほどの表情とは打って変わって笑顔が戻った白州
「まぁ~その対象が笑っていた選手じゃなくて監督という所はダメだよね」
「うぐっ・・・」
楠木は良い雰囲気になりそうだった所を釘を差すように叱る
「まぁ・・・着替えて、夕食を取ってから監督に謝りに行こう」
「そうですね・・・白銀もそれでいいだろう?」
「・・・はい、大丈夫です」
まずは夕食を取ろう、謝罪はそれからしっかりと行おう・・・
2人の先輩が笑顔でそう提案してくださったのを見て、白銀は部屋の先輩がこの二人で良かったと思った
だが、他の部屋の先輩はどうだろうか・・・
青心寮 食堂
「ねぇ?入部早々に監督に歯向かうなんてカズも随分と偉くなったもんだねぇ?ねぇ今の気持ちってどうなの?おしえて?」
「・・・・・・・・・」
食堂に入った途端、小湊亮介から熱いチョップが入った
正座する白銀と仁王立ちの亮介・・・先ほどの光景とデジャヴか?というくらいの光景が出来ていた
「りょ、亮介~?白銀は僕たちの方から話をしたからもう・・・」
「ごめんフミちゃん静かにしてくれる?今この可愛い後輩をいぢめないと・・・」
「は、ははは・・・」
楠木は必死になだめると亮介は黒い笑顔で制した
「全く・・・久しぶりの会話がこんな状況になるとは思いもしなかったよカズ・・・」
「うぐ・・・お久しぶりです亮介くん・・・」
亮介はどちらかというと会話ができて嬉しかった気持ちが強かったみたいだが、当の白銀は亮介の顔を見る事が出来ない
長年の付き合いで分かる、どす黒いオーラが出ているのが感じて取れるからだ
「まぁ、カズらしいって言ったらカズらしいんだけど・・・うちの春市を助けてくれたこともあったからね」
「でもそれをする相手は監督じゃないのは分かるよね?」
「はい、おっしゃる通りです・・・」
亮介の言う事は尤もなだけに何も言えない白銀
「こんなことしてたらさ、3人でプレーすることも夢のまた夢になっちゃうじゃん・・・」
「・・・亮介くん」
周りには聞こえない声、でも白銀には聞こえた
「・・・ま、やってしまったのはしょうがないんだしさ、その友人と一緒に償って戻ってくるんだよ?」
「め、珍し「その代わり次やったらただじゃ済ませないからね?」はい、重々承知しております・・・二度といたしません」
終始優しい亮介に珍しいと言おうとした瞬間顔を近づけ、どす黒い笑顔でそう言われたのでしっかりと目を見て約束をした白銀であった
青心寮 監督室
「監督、この度は部屋の後輩が粗相をしたことお詫び申し上げます・・・まことに申し訳ございませんでした」
部屋の長である楠木が片岡にそう言うと続けて白州と白銀が頭を下げ「申し訳ございませんでした」と深々と頭を下げた
白銀に至っては正座の状態から土下座を行いながら謝罪を行ったのであった
「・・・随分と絞られたようだな白銀」
「・・・はい、友人を助けるためとはいえ監督に対して楯突いた行為は間違っておりました・・・」
白銀のその姿を見て片岡は表情を変えることなくそう問いかける
「・・・分かった。だが白銀もあの場面で言った手前変える気は無いだろ?」
「はい、沢村と共に朝から晩まで走ります」
片岡は3人の謝罪を受け取ったようだが、白銀の練習参加は認めない方針は変えない方向のようだ
白銀もそれは分かっているのか、顔を上げた後に片岡の目を見てそう答えた
「・・・ふん、なら良い。だが白銀には他にも伝えたいことがあるから他の二人は外してくれないか?」
片岡は楠木と白州にそう告げると2人は「はい、それでは失礼します」と白銀に若干憐みの目を送りながら監督室を後にした
「・・・・・・全くカズ、お前は幾つになっても変わらんな」
「ははは・・・こういう性格なもんで。親父に似ちゃいました」
「フン・・・しかし睨みを利かす姿はキヨそっくりだったな・・・」
「あの場面でそんなこと考えていたんすか・・・」
二人が監督室を出て行き、片岡と白銀だけの二人になった状態になったのを確認してから、片岡が白銀に話し始めた
その声はどこか父親が息子に対して話すような声色だった
白銀の父である聖将と大空中の監督である蒔田は青道高校の同期であるが、同時に片岡も彼らの同期であり甲子園準優勝時のメンバーである
特に片岡と聖将は準優勝時のバッテリーで、公私ともに交流が今でもある
白銀が生まれた時も片岡は会いに行っており、この二人は白銀が赤ん坊のころからの付き合いである
「だがその正義感と責任感は必ずチームを救う・・・だが行き過ぎたそれらは時にチームの輪を乱す」
「今日のことは肝に銘じておくことだな」
「うす・・・」
「・・・確かにカズの言う通り青道高校の投手陣は正直言って良くはない・・・だからと言って今回の
「イチ教育者として、締めるところは締めなければならない。カズもそこは分かるな?」
「まったくもって仰る通りでございます・・・」
片岡とて野球部の監督のみならず国語の教諭を務めている教師の身分
一人の人間であると同時に教育者という立場であり、部のトップを務めているからこそ一つ一つの行動に諫めなければならないのだ
「・・・あのクセ球をどうやったら90mまで届かせるか」
「はい?」
「あの柔らかい肩関節と腕の振り・・・2年後にはどのような選手になっているか・・・」
「・・・それを導くのが
「ふん、まずは強くなりたいという個人の意思だ・・・
「・・・今はまだ、ですね・・・」
「それまではとことん走らせておく・・・白銀も同様だ」
「それは勿論っす・・・最近走っていないですからね~良い機会ですよ」
「前向きな所も変わっていないな・・・」
そういう片岡の口角は笑っているようにも見えた・・・すると
コンコン、ガチャ
「片岡監督、明日の試合ですが・・・って」
ちょうど高島と部長である
椅子に座る片岡監督とその前で正座する白銀
「あ~えっと・・・お取込み中でしたか?」
「いえ、ちょうど片岡監督への土下座を終えたところです」
「何馬鹿なことを言っているんだ・・・」
太田が気まずそうに監督に問いかけると代わりに白銀がきりっとドヤ顔でそういうので突っ込む片岡監督
「まぁ良い・・・白銀、お前も下がっていいぞ」
「う、うす・・・ちょ、ちょっと待って・・」
ちょうどこれから話し合いという事もあり白銀を帰そうとする片岡
だが、もぞもぞと足をしきりに気にする白銀
片岡もそれに気づいたのか白銀の後ろに回る
「まぁ良い、まずは椅子に座ってから痺れを取れ・・・」
「え?ちょ待って・・・待って監督!?無理に立たせないで!いだだだだ!!!」
白銀の両脇を抱え込むと無理に立たせて痺れた足を引きずりながら自身が座っていた椅子に連れて行く片岡であった・・・
「・・・・それでは失礼しました、お休みなさいませ・・・」
痺れが取れた白銀は監督室の前で一礼をしてから監督室を後にした
「ぬぐぐ・・・あのヒゲめぇ・・・俺に恥かかせやがってぇ・・・」
おまいう案件であるが、17号室に帰る道中で険しい顔をしながら片岡監督を恨む白銀である
「・・・さ~て、これからランニング、頑張っていきますかね・・・あまり好きじゃないけど」
頭の後ろで手を組みながらこれからを考える白銀
どうせならランニングシューズを履きつぶしてやるか・・・なんて思いを抱きながら白銀は自分の部屋へと帰っていったのであった
監督室
「なんかさっきの白銀とのやり取り、親子喧嘩みたいな感じでしたね・・・?」
白銀が去った後の監督室、片岡の対面に座る太田が微笑ましい表情でそう言う
『おい鉄兄、無理やり座らせるのは感心しないぞ・・・?』
『うるさいぞカズ・・・その分痺れが取れるのも早いだろ?』
『ぬぐぐ・・・あ、ありがとう』
「・・・すまない、忘れてくれ」
「ふふふ・・・幼い頃からの知り合いなんですからもう少し砕けても良いんじゃないですか?」
高島はくすくすと笑いながらそう提案するが片岡は「それをするのは良くない・・・」と否定する
「グラウンド内では選手と監督であってそういう関係を見せると他の選手に示しがつかなくなる」
「確かに白銀君も監督の呼び方が全然違いますからね・・・そこらへんはわきまえているんでしょうね」
太田部長がそう言うと片岡も「そうだな・・・」と短めに返す
「ところで沢村君と白銀君は・・・?」
「あぁ、しばらく練習には参加させない・・・白銀にもそう伝えてある」
「そ、そうですか・・・」
この話題はこれ以上にするべきだと判断したのか、高島はその疑問を聞いた後は明日の打ち合わせに戻っていったのであった・・・
こうして、激動の入部一日目は終わりを迎えたのであった・・・
片岡監督みたいな部員思いの教育者って他に誰かいるんでしょうかね・・・
自分は原作内で凄く好きなキャラクターの一人です
それでは、また次回もまたみていただけると幸いです・・・
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