ウルトラマンブライト ULTRAMAN bloody fate   作:青眼究極竜

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Flash

DEO(特異生物対策局)の作戦室では、突如として奇妙な能力を発現させたシヴォンに関しての調査が行われていた。新体制となった組織の独特な緊迫感の中、ウィンとスーパーガールそしてウルトラマンのスーツに身を包んだカイリが見守る前で、静かに調査が進んでいく。

「シヴォンはフォートロズの元囚人じゃないのは確かよ…」

カーラがモニターに映し出される複雑なバイオデータを覗き込みながら呟くと、隣にいたウィンが不思議そうに尋ねた。

「クリプトン星にいたころ見たことは?」

「ない…大きな星だから全員と知り合いだったわけじゃないけど……」

「でもさ、四階のビルから落ちて無傷だったんだよ?そんなの君と君のいとことそこの彼ぐらいしか知らないし」

ウィンが親指でウルトラマンの重厚な肩を指す。血液検査などの詳細な結果が出るまでにはまだ時間がかかるため、彼らは室内の機材の間を少し歩きながら待つことにした。通路をゆっくりと歩きながら、ウィンが少し皮肉を交えて冗談めかして言った。

「じゃあ彼女が新しいこの街のヒーローになれば?」

「いじけちゃって……みんなの信頼はまだ取り戻せない?」

ジェームズが隣を歩くカーラの曇った表情を気遣う。レッドクリプトナイトの件以来、街の人々のスーパーガールに向ける目は未だに冷ややかだった。カーラは完全に自信を無くした様子で、がっくりと肩を落とする。

「思いつくことは全部やってみたのよ!それにそのカイ……じゃなかった…ウルトラマン抜きで1人でやって…昨日なんか…知らない人の家の家具を組み立てを夜中までやったのにまだ許してもらえない」

一瞬、焦ってウルトラマンの本名を言いそうになったカーラを横目に、ウルトラマンのマスクの下でカイリは、昨日の夜に姉の帰りが妙に遅かった理由にようやく合点がいった。(まさかスーパーガールともあろう者が、夜中に黙々と他人の家の棚や机を組み立てていたなんて……)と、少しシュールな光景を想像して溜息を漏らす。

「たった一度の失敗でコツコツ築いてきた信頼が一気に消え去るなんてね」

「君のせいじゃないだろ。毒物の影響だろ?」

ジェームズが優しく慰めの言葉をかけるが、カーラは力なく首を振るばかりだった。

「世間は知らないわ。みんなもうこのSマークを希望の象徴とは思ってない」

重苦しい空気の中、カーラが悲観していると、ようやく検査結果の端末を持ったハミルトン医師が足早にやってきた。

「彼女の声が強力な音波として4階からの落下の衝撃を和らげたようね」

「つまり、この間から僕といい感じになってた子は宇宙人ってこと?」

ウィンが目を見開いて大真面目に尋ねるが、ハミルトン医師は即座に首を横に振る。

「いえ、DNA的には地球人よ」

その言葉を聞いたウルトラマンが、自身の出自をほんの少し重ね合わせるように、ふっと思いついた仮説を尋ねた。

「僕……私の様に宇宙人と地球人のDNAを掛け合わせてる可能性は?」

「え?ウルトラマンってハーフなの⁉︎」

驚愕のあまり声を裏返したウィンに、カーラが顔を真っ赤にして慌てて割って入る。

「ウィン…今はその話はいいから…」

「いいえ、正真正銘純地球人ね。奇跡か……」

ハミルトン医師がシヴォンのデータを指し示すと、ウルトラマンがさらに考察を深めるように口にした。

「まあ、人間の脳はほんの数%しか使われてない。飛び降りた死の危険から本能的に呼び起こされた…能力…と言うのは?」

「ウルトラマン確かにその可能性は高いわね。ただ現状――」

医師が科学的な説明を続けようとしたその時、背後の扉付近から、全てを聞いていたシヴォンの怒ったような甲高い声が響いた。

「ようは何もわからなかったんでしょ?お世話様っ!」

不機嫌そうに言い放ったシヴォンは、そのまま誰も止める間もなく部屋を出ていってしまう。慌ててウィンが「待ってくれ、シヴォン!」とその後に続いて追いかけていった。

残された作戦室の片隅で、カーラが周囲に聞こえないようにウルトラマンの腕を掴み、その耳元へ物凄い剣幕で耳打ちしてきた。

「宇宙人とのハーフ⁉︎私聞いてないんだけど!」

「そりゃ本当の父さんの話一度もしてないじゃん」

「ゼロじゃないの?」

「ゼロさんじゃないって!その話はまた今度してあげるよ」

「絶対しないやつ」

ジト目を向けるカーラだったが、そこで次の予定を思い出したように表情を引き締めた。

DEOでのシヴォンに関する調査がひとまず終了し、彼女が立ち去った後、カイリは一度スーツを解除して、いつもの真面目な高校生としての生活へと戻っていた。

これ以上姉たちに心配をかけまいと、カイリは授業中も先生の話を真面目に聞き、綺麗にノートを取り、優等生としての学校生活を実直に送っていた。しかし、相変わらず休み時間や授業中の合間には、カーラからの心配性が行き過ぎた過保護なチャットがいちいちスマホに届いていた。

『カイリ、学校の空気は冷えてない?』

『ちゃんと水分補給はしてる?』

カイリは授業の邪魔にならないよう、机の下でため息をつきながら「大丈夫だよ」と苦笑交じりにこっそり返信を送り続けていた。しかし、午後の授業を受けていたまさにその時、ポケットの中でスマホがこれまでとは全く違う、連続した激しいバイブ音を響かせた。驚いて画面を確認すると、カーラからの緊迫した短いメッセージが画面に表示されていた。

『カイリ!今すぐキャットコーに来て!』

ただ事ではない気配を察知したカイリは、すぐに先生に体調不良を申し出て早退の許可をもらうと、教科書をカバンに詰め込んで教室を飛び出し、全速力でキャットコー・メディアのビルへと向かった。

キャットコーのビルに到着したカイリは、エレベーターを乗り継ぎ、通常業務の賑やかなフロアからさらに一つ上の階へと足早に向かった。そこには、スーパーガールのヒーロー活動を裏から密かに支えるために、ウィンが個人的に借りているオフィス(仮)がある。

少し息を切らせながらカイリが部屋のドアを開けて中に入ると、そこにはカーラ、ジェームズ、ウィンの他に、見慣れない赤い服を着た青年が一人、ぽつんと立っていた。

「大丈夫カーラ?」

「ええ、シヴォンは?」

「マライアキャリーみたいな声で君を吹き飛ばしたあとすぐ逃げた」

ウィンの独特な例え混じりの説明に、カイリは思わず目を瞬かせた。

「吹き飛ばした?姉ちゃんを?」

「マライアキャリーはこっちの世界にもいるのか……」

呆気にとられる一同の中、ずっと不審そうにその見知らぬ青年を凝視していたジェームズが、警戒を隠さずに口を開いた。

「君は誰?」

その疑問は至極もっともだった。青年は人懐っこい、しかしどこか少し戸惑ったような笑みを浮かべて手を差し出した。

「やあ、僕はバリーアレン」

「ジェームズだ」

「彼はウィンよ。そして私の義弟のカイリ」

カーラの紹介を受けて、カイリは少し首を傾げながら手を挙げた。

「やあ。……姉ちゃんの新しいコレ?」

カイリが二人の顔を交互に見ながら恋人のようなジェスチャーをすると、バリーは慌てて両手を振って苦笑いしながら否定した。

「いや、ちょっとそう言うのじゃないんだよね……」

バリーは納得すると、今度はカイリの顔を不思議そうに見つめた。

「君カーラのか弟なの?ってことはカーラみたいに空飛んだりできるってこと?」

「あー……」と同時に言葉に詰まるカイリとカーラ。

カイリは(この人マジで誰? なんで姉ちゃんの正体知ってるの?)と目でカーラに猛烈に訴えかけた。するとカーラは真剣な目で(スーパーヒーロー)と視線を返す。

(マジ?スーパーガールってこと知ってるわけ?僕のことも?)

(いや、カイリのことは話してない)

二人が超高速で激しく視線を交わしていると、その妙な空気を察したジェームズがすかさずフォローを入れた。

「まさか、カイリはカーラの義理の弟だ」

「それで、どう説明すればいいのかな?まあ、頭ではわかってるけど…」

「言ってみて?」

ジェームズが優しく諭すように促すと、カーラは意を決したように、驚くべき真実を口にした。

「ええっとバリーは…別の世界から来たの」

その答えに、カイリは少し驚きつつも、自身の持つ光の巨人の力や、かつて出会ったゼロという前例を経験していたため、多元宇宙の存在をすんなりと納得した。しかし、オタク気質のあるウィンは椅子から飛び上がらんばかりに興奮し始める。

「マジで?それ、凄すぎない?だって多元宇宙論は正しいってことでしょ?」

「まだ信じられない。異星人の私でもね」

「え?」

バリーがカーラの言葉に驚きの声を上げる。カイリが何気なくその理由を付け加えた。

「姉ちゃんは惑星クリプトンの宇宙人なんだよね」

「宇宙人っ⁉︎」

「こっちの世界には別の宇宙人も⁉︎」

「こっちの世界ってどう言う意味?」

バリーの発言の端々に含まれる奇妙なニュアンスに、ジェームズが敏感に疑問を抱く。

「それは…まって!」

バリーは部屋の隅にあったホワイトボードの前に立つと、マーカーを手に取り、多元宇宙論についての簡単な解説を始めた。地球がいくつも重なり合い、少しずつ異なる位相に存在している図を描きながら説明していく。

「それぞれが異なる周波数で振動してるからそれぞれは見えない」

「でもものすごい速さで移動することができるのなら時空の境界に裂け目みたいなのができて別の世界に行けるってこと?」

ウィンの専門的な問いに、バリーは「ああ」と嬉しそうに頷く。しかし、ジェームズが現実的な疑問を突きつけた。

「けどそんなに速く移動できないだろ?」

「ふッ……それはどうかな?」

バリーが不敵に微笑んだ瞬間だった。部屋の中に激しい黄色の稲妻の光が走り抜けた。あまりの風圧にデスクの上の書類がブワッと舞い上がる。カイリはその超高速の動きを、ウルトラマンとしての高い動体視力で粘り強く目で追っていた。身体の反射速度では到底追いつけない速度だが、彼が光速に近い速度で部屋を往復し、一瞬で部屋の外に出て戻ってきたことだけは認識できた。

「マジか…速ええ」

カイリが呆然と呟いた時には、すでにバリーは何事もなかったかのように元の位置に立っていた。精度高く練り上げられた彼の能力に驚く間もなく、カイリを含むその場にいた4人の手には、なぜかまだ冷たさが残るアイスクリームがいつの間にか握られていた。

「ウソッ!超速い!」

「実を言うと粒子加速器が爆発した夜雷に打たれたんだ…そして、スーパーヒーローになった…」

バリーの告白を聞き、ジェームズは彼の能力を納得しつつも、カーラとの距離感の近さにどこか複雑な嫉妬混じりの感情を隠せない様子で言った。

「ようは君にも正義の味方なんだな」

「そうだね」

「そりゃすごい」

少しトゲのある、イラついたようなトーンのジェームズ。バリーはその妙な男の嫉妬を敏感に察知し、助けを求めるようにカーラへ視線を送った。

だが、当のカーラといえば、そんな男たちの複雑な心理機微などこれっぽっちも感じていなかった。

ペロペロ。

完全に緊張感のない馬鹿面を晒して、手元のアイスクリームを夢中で舐めている。

そのあまりに緊張感のない様子を見かねたカイリが、近くのデスクからどこからともなく取り出した硬いクリップボードで、カーラの頭をすぱんとはたいた。

「いったぁ…ちょっと何するの!カイリ!?」

実際には鋼鉄の肉体を持つカーラに痛みなどあるはずもないが、彼女は驚いて頭を押さえながら実の弟に抗議する。

「流石にね……」

カイリは呆れたように肩をすくめ、憐れみの目をジェームズに向けながら大きなため息をついた。ジェームズはただただ肩を落とする。

そんな重苦しい空気を破るように、ウィンが再び元気よく手を挙げた。

「じゃあ世界の間を自由に行き来できるってこと?」

「いやできない。ここに来たのは偶然だ。前にも偶然タイムトラベルもした」

「いいね?スタートレック的な?」

「それでボーグなんて呼び出されても困るんだけど?」

カイリがウィンのマニアックなSF例えにすかさずツッ込みを入れる。

「クリプトン星人よりも怖いかもね。we are the borg resistance is futile(我々はボーグ抵抗は無意味だ)ってね。でもカイリ、僕はTNGよりTOSなの」

「僕は別にtngとかケルヴィンタイムラインとか…ってそう言う話をしてるんじゃなくて…ってバリーの世界にスタートレックあるの?」

「あるよ」

バリーはオタクたちの会話に楽しそうに笑いながら、指を二本ずつに分けるお馴染みのバルカン挨拶のポーズをして見せた。

「まあでも、自分の意思といつか力できたのは初めてなんだ……戻る方法がわかるまではこの世界に足止めだ…」

「バリー、大丈夫よ!私たちがついてるわ!絶対戻れる」

カーラがバリーを力づけようと、彼の肩を親しげにポンと叩く。

「アッいっつ」

「あっごめん!」

無自覚なクリプトン人の怪力で叩かれたバリーが顔をしかめ、カーラが慌てて手を引く。

「それよりもお腹すいたな。僕1日に一万キロカロリー取らなきゃいけなくて……」

その尋常ではない消費カロリーを聞いたカーラとカイリは、同時に顔を見合わせた。そして息をぴったり合わせて、二人口を揃えて尋ねる。

「ドーナツ好き?」

「みんな好きでしょ?」

「私達いいお店知ってる!」

「そう、じゃあ行こう!じゃあね2人とも後で!」

バリーの手を引くようにして部屋を出ようとするカーラ。少し遅れて歩いていたカイリは、部屋に残るジェームズの横を通り過ぎる際、ボソッと哀れみの声をかけた。

「ジェームズ…姉ちゃんの鈍感度はブラックホール並みだから…」

「うるさい!」

背後からすべてを聞いていたカーラの鋭い怒声が飛んできて、カイリは首をすくめて駆け足で部屋を出た。

ドーナツ屋に向かう前、カーラは「私、仕事を片付けておかないと!」と言って、上司であるキャット・グラントのオフィスへとバリーとカイリを伴って立ち寄った。部屋にはすでにウィンとジェームズも先回りして待機している。

「キーラ!生きてたの?」

「グラントさん、助けてもらった――」

「言われなくても知ってるわ、あなたはニュース速報のネタになってるんだから。確かにウッチの元社員が復讐の鬼と化したわけだけども……」

キャットはデスクの後ろから、相変わらずの威圧感で鋭い視線を投げかける。

「この街に新たなヒーローが現れたことは朗報ね。スーパーガールのライバルになるかしら」

「ライバルってことは……ないんじゃないでしょうか?」

「じゃあスーパーガールの手下2ってこと?」

「手下2って……」

「そうよ、手下1はウルトラマンでしょ」

「手下ぁ?」

その不名誉な格下げワードに、後ろに控えていたカイリが過剰に反応して思わず大きな声を裏返した。すかさずカーラが誇らしげにフォローを入れる。

「ウルトラマンは…その…相棒ですよ!」

その言葉に、カイリは少し満足げに胸を張り、マスクがなくても相棒と言われて素直に嬉しさがあった。

「ふーん……」

品定めをするような鋭い目で、キャットはカイリとバリーを交互に見つめる。

「んで、5人とも何をぼさっと突っ立てるわけ?ファミリードラマでも始めるつもり?フルハウスみたいなシットコムでもここでやってごらんなさい?アンタたちクビよ。でその2人はだれ」

「従兄弟と弟です」

「僕はバリーアレンです。従兄弟ではないです」

「あ、カイリダンバースです。弟なのは本当です」

「なに?キーラの弟似てないわね〜まあいいわ、私はスピード男の写真が欲しい。後キーラさっきの出来事は私がいいというまで黙ってなさい。あ、早速ニューヒーローに名前をつけなきゃ。候補はビューンかブラー」

「フラッシュでしょ?」

バリーが控えめに、自身の本来のコードネームを提案するが、キャットは一瞬でそれを一蹴した。

「却下、もっとミステリアスで興味をそそられる名前でブラーで決まり」

(ダサいなぁ…)

カイリの小さな、しかし確実なぼやきをキャットの耳は聞き逃さなかったが、彼女は鋭く睨みつけるだけで、それ以上の追及はせず話を切り上げた。

「男子は行って女子は残る。はい行って!」

有無を言わせぬ女王の圧により、4人は一斉にオフィスから追い出されてしまう。部屋を出る際、カイリがカーラに向かって「先に店行って待ってる」と声をかけると、カーラはオフィスの中から「持ち帰りで!」と大きな声で追加の注文を付け加えた。

その後、事態は急転する。シヴォンと手を組み、能力をさらに引き出されたライブワイヤーが刑務所から脱走したという最悪の一報が入ったのだ。

ウィンの指令オフィスで、バリーと共に買ってきた大量のドーナツを文字通り貪り食っていたカイリの元に、ガチャりと勢いよくドアを開けてカーラが入ってきた。

「力を貸して!」

ジェームズとウィンが弾かれたように立ち上がるが、カーラの真っ直ぐな視線は最初からバリーに向けられていた。カイリは「僕も行く」と自分に指をさしてアピールするが、その指はカーラの手によって瞬時に、隠すように力づくで押し下げられた。

ライブワイヤーが明確にグラントを狙っており、さらにシルバーバンシィとなったシヴォンの音波能力もあるため、流石のスーパーガールでも一人では街と人々を守りきれない。だから同じヒーローであるフラッシュに手伝ってほしい、というのが彼女の必死の願いだった。もし協力してくれたら、元の世界に戻る方法をDEOの技術も使って全力で探すという条件を提示し、カーラとバリーはがっちりと握手を交わした。

交渉成立だった。

二人に続いて戦いに行こうとするカイリだったが、カーラは振り返り、厳しい姉の顔でピシャリと言い放った。

「カイリはお留守!」

結局、第一回戦に向かったスーパーガールとフラッシュだったが、二人の連携がまだ噛み合わず、ライブワイヤーたちの手強い猛攻の前に一時撤退を余儀なくされたと、カイリは後からウィンを通じて苦い報告を聞かされることになった。

オフィスで焦燥感に駆られながら待機していると、カイリの携帯に直接連絡が入った。画面に表示されたのは、新長官となったルーシー・レーンの名前だった。ルーシーは長官に就任した際、政府の最高機密データからウルトラマンの正体がカイリであることを知らされていたのだ。ちなみにその事実を最初に知った時、彼女はカーラの正体を知った時とは全く違い、あまりの衝撃と信じられない現実に白目を剥いていたらしい。

『カーラとバリーがナショナルシティ公園に向かったわ!カーラには悪いけどカイリ、あなたの力が必要よ。行って!ウルトラマン!』

ルーシーの切迫した、しかし信頼を込めた声に応え、カイリは制服の襟元に手を伸ばした。衣服の下に隠された、自身のルーツであるネックレスのクリスタル。それにそっと触れ、自身の光の意志を込める。

瞬間、眩い光がカイリの全身を包み込み、ULTRAMAN SUITが瞬時にビルドアップされるように彼の肉体を覆った。重低音の駆動音を響かせ、ウルトラマンとなったカイリは、オフィスの窓を蹴ってナショナル・シティの空へと弾丸のように飛び立った。

現場である公園の広場に到着したウルトラマンの目に飛び込んできたのは、民衆やヘリコプターを庇ってライブワイヤーの強烈な高電圧の電撃をまともに受け、制御を失って地上へと真っ逆さまに墜落していくスーパーガールの痛々しい姿だった。

風を切り裂き、超音波をあげるほどの速度で急降下したウルトラマンは、激突寸前でカーラの身体をガシリと両腕で受け止めた。そして、自身に宿るウルトラマンの光の力を全身に漲らせ、凄まじい落下の衝撃を強引に相殺しながら、静かに地面へと着地した。

「カイリ……なんで来たの?」

腕の中で、激しい電撃のダメージに苦しげに息を吐くカーラ。ウルトラマンはマスクの奥の目を輝かせ、静かに、しかし力強く告げた。

「そりゃあ、相棒だから」

カーラを安全な芝生の上にそっと横たわらせると、ウルトラマンはゆっくりと立ち上がり、不気味な叫び声をあげるシルバーバンシィと、全身から稲妻を放つライブワイヤーの二人に向き直った。

ガシガシと重厚なアーマーが擦れる金属音を響かせ、両手の指をポキポキと威嚇するように鳴らす。

「ずいぶんと"相棒"のスーパーガールを可愛がってくれたじゃないの?」

胸のカラータイマーが、彼の怒りに呼応するように静かに、しかし激しく輝き出す。

「きっちりお礼はさせてもらうか?僕とスーパーガールの利子は高いよ?さあて反撃開始と行こうか!」

ウルトラマンが両手を胸の前で交差させると、その手の中に眩い高エネルギーの光を放つ八つ裂き光輪が出現した。それを見たライブワイヤーが、狂ったような高笑いを上げて指先から太い電撃を直線的に放つ。青白い激しい雷光がウルトラマンの胸部装甲を直撃した。

「アンタもパワーアップしてるみたいだけど………それ、今の僕に効かないんだよね」

激しい火花が周囲の地面を焦がす中、ウルトラマンは微動だにしなかった。精度高く練り上げられたカイリ自身の光のエネルギーの前には、その程度の電撃は全く効果を成さなかった。

予想外の事態に「な、なんなのこのブリキ野郎は……!」と怯むライブワイヤーに対し、ウルトラマンは手中の光輪をさらに巨大化させると、まるで輪投げでもするかのように勢いよく投げつけた。回転しながら空気を切り裂き飛び交う光輪は、ライブワイヤーの身体をぐるぐると光の縄で簀巻きにするようにして、その自由を完全に拘束した。

「キィヤアアアアアッ!!」

今度はシルバーバンシィが、周囲のガラスを一斉に粉砕するほどの、鼓膜を狂わせる超音波の叫び声を放ってきた。ウルトラマンは瞬時に二つの光輪を目の前で組み合わせ、強固な光のシールドを展開してその破壊的な音波を完全に防ぎきる。

叫び声を維持するシヴォンの背後から、赤い稲妻が横から凄まじい速度で飛び込んできた。フラッシュが超高速の強烈なタックルをシルバーバンシィの脇腹に見舞い、その叫び声がピタリと止む。

「もう諦めたら?アンタら勝ち目ないよ?」

ウルトラマンが静かに降伏を促すが、拘束されたライブワイヤーは目を血走らせて激しく抗議した。

「ブリキ野郎が!指図は受けないよ!」

彼女は自身の全エネルギーを暴走させ、強引に光輪のエネルギーを電気の過負荷で破ると、再び執念の電気攻撃を周囲に放とうとする。しかし、二人が次の一歩を踏み出そうとしたその瞬間、想定外の方向から大量の水が激しい勢いで浴びせられた。

「な、何これっ!?」

激しい水流がライブワイヤーとシルバーバンシィを直撃する。ライブワイヤー自身が体中から放っていた最大出力の電気が、浴びせられた水を媒介にして、自身とシルバーバンシィの身体に大電流となってそのまま逆流した。

「アアアアアアッ!!」と激しく感電した二人は、全身からバチバチと激しい火花を散らしながらその場に崩れ落ち、完全に気絶して動かなくなった。

大量の水を浴びせたのは、近くに急行していた本物の消防車のホースを握る、人間の消防士たちだった。それはかつて、レッドクリプトナイトの影響下にない、街の人々のために命をかけて戦っていた本来のスーパーガールが、その身を挺して救ったことのある消防士たちだった。

「立てるか?スーパーガール!」

民衆の前にゆっくりと身体を起こしたスーパーガールに、消防士がそっと温かい手を差し伸べる。彼女がかつて命をかけて守った「信頼」が、巡り巡って彼女の危機を救ったのだ。

その美しい光景を見た周囲の市民たちから、ぽつり、ぽつりと温かい拍手が沸き起こり、やがてそれは広場全体を包み込む大きな歓声へと変わっていった。

民衆からの心からの拍手と大歓声に祝福され、スーパーガールは再び、このナショナル・シティの誰もが信じる希望の象徴へと戻ったのだった。

事件が完全に解決し、夕暮れ時の広大な滑走路に並び立つウルトラマン、フラッシュ、そしてスーパーガールの三人。バリーが元の世界に帰還するための準備が整いつつあった。

「本当に成功すると思う?」

カーラの少し不安げな問いかけに、バリーも「どうかな?」と曖昧な、しかし自信に満ちた回答を示す。

「ただライブワイヤー達が手を組むのを見て以前、僕の世界でやったことを思い出した。僕たちも文字通り力を合わせてみないか?君達と僕のスピードを掛け合わせるんだ。君たちが僕の背中を全力で押してくれたらまた時空の壁を突き破って家に帰れるかも」

「それって挑んでるの?私達に?レースを?」

「そんなとこだ」

バリーの少しお茶目な挑戦に、ウルトラマンがスーツの拳を軽く合わせた。

「姉ちゃん、受けて立つよ」

「ついて来れるかな?ウルトラマンにスーパーガール」

「覚悟してよね、フラッシュ」

カーラはこれから別れる友人に対し、寂しげな、しかし心からの微笑みを浮かべ、青年の目を見つめた。

「寂しくなるわ、バリーアレン」

「僕もだ、カーラダンバース、いやカーラゾーエルかな?それに君もヒーローとはねカイリ」

バリーの言葉に、カーラはウルトラマンの肩を組んで誇らしげに笑った。

「本当よね〜まあお陰でウルトラマンとは息ぴったりなのだけども」

「宇宙人コンビなんてかっこいいよね」

バリーが笑うと、三人は互いの世界の平和と健闘を称え合うように、言葉を交わさずとも伝わる強い絆で固く抱き合った。

「さて、行こうか……」

「困ったらいつでも呼んでね。私とカイリが助けに行くから」

「そりゃあ心強い」

それぞれがスタートラインにつくように、滑走路の端へと並ぶ。スーパーガールとウルトラマンが飛行のための光のエネルギーを全身に滾らせ、フラッシュの身体には激しい黄色の火花がバリバリと走り出す。

「レディ……goっ!」

その合図とともに、三つの眩い光の筋が爆音を響かせて滑走路を猛烈な速度で駆け抜けた。凄まじい速度の風圧が周囲の空気を歪め、スーパーガールとウルトラマンが全エネルギーをかけて、光速に達しようとするフラッシュの背中を背後から全力で押し出す。その瞬間、極限まで高まった速度によって空間に目映い青白い時空の裂け目が出現し、赤い光の弾丸はその中へと吸い込まれるように消えていった。

さよなら、バリー・アレン。また会う日まで。

その日の夜。

カイリはウルトラマンの光の飛行能力を抑え、静かにナショナル・シティの美しい夜空をゆっくりと滞空していた。

高度を保ちながら、暖かな街の灯りを見下ろす。彼の鋭い視線の先、カーラのアパートのベランダで、カーラとジェームズが互いのこれまでの不器用なすれ違いを埋めるように、非常にロマンチックなキスを交わしているのがハッキリと見えた。

(やっとか……。二人とも本当に遠回りしすぎなんだよ)

色々あった姉のプライベートがようやく一つの実を結び、平穏に向かうことに、カイリは胸の内で深い安堵を覚え、マスクの下で優しい笑みを浮かべた。これで街も、家族も、ようやく本当の平和を取り戻せる――そう確信した、まさにその時だった。

「う、あ……っ!? が、は……っ!!」

突如として、頭の中心を極太の針で何度も抉られるような、脳が内側から破裂するかと思うほどの凄まじい激痛がカイリを襲った。あまりの激痛に視界が真っ赤に染まり、飛行のバランスを崩して空中できりもみ状態になる。スーツのシステムは何の異常も検知していない。これは外部からの物理的な攻撃ではなく、カイリ自身の脳、精神に直接作用している未知の強力なシグナルだった。

冷や汗を流し、痛む頭を両手で必死に押さえながら、カイリが必死に焦燥とする視線を地上へと落とした瞬間、彼の目に信じられない、そしておぞましい光景が飛び込んできた。

つい数分前まで、それぞれの意志で楽しそうに夜の街を歩いていたはずのナショナル・シティの市民たちが、誰一人として言葉を発さず、笑いもせず、まるで精密にプログラムされた機械、あるいは完全に統率の取れた巨大な軍隊のように、全く同じ歩幅とタイミングで一斉に同じ方向へと機械的に歩き始めていた。

車を運転していた者たちは一斉に車を乗り捨て、レストランにいた者たちもスプーンを置き、その全員がロボットのように虚ろな目で、何者かに精神を完全に支配されているのは明白な状態で、不気味な足音だけを響かせて行行進していた。

静まり返った街の中を、狂気的に行進する無数の市民たちを見下ろし、カイリの背中に、かつてないほどの冷たい絶望の戦慄が走り抜けた。

 

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