ウルトラマンブライト ULTRAMAN bloody fate 作:青眼究極竜
ナショナル・シティの柔らかな朝の光が差し込むDEOのメインオフィスでは、今後の地球の運命を左右しかねない、しかしどこか緊張感の抜けた決定が下されようとしていた。長年の間、地球外からの脅威を監視し続けてきたハンク・ヘンショウことジョン・ジョーンズの許可の元、先日目覚めたばかりのダクサム人であるモン=エルが、カーラの厳重な監督と付き添いを条件に、ついにDEOの施設の外へと一歩を踏み出すことになったのだ。地球という、彼にとってはあまりにも多様で騒がしい惑星の文化に触れるための第一歩として、カーラはまず、自分とカイリが共に暮らす自宅アパートへとモン=エルを招き入れることにした。外の世界に放り出す前に、最低限の身支度と地球人としての擬態を完璧に整える必要があったからだ。部屋のどこか生活感の漂うリビングのソファに腰掛けたモン=エルは、物珍しそうに周囲の家具や小物をキョロキョロと見回しながら、素朴な疑問を口にした。
「……へえ。なあ、前から少し疑問に思っていたんだが、君たち二人は姉弟だったのか?」
その視線の先には、キッチンカウンターの椅子に腰掛け、慣れた手つきでタブレットの画面をスクロールさせているカイリの姿があった。カイリは画面から目を離さないまま、片手に持った小さなカップから漆黒の液体を一口すすり、落ち着いた声で返事をする。
「そうだよ?姉ちゃん達話さなかったの?」
「うーん…まあそれどころじゃないし」
モン=エルは気まずそうに頭を掻いた。確かにあの時は、お互いに正体がバレたり、ダクサムとクリプトンの古い因縁で揉めたりして、それどころではなかったのだ。カイリはふーんとタブレットを見ながらコーヒーを片手に取る。その様子をじっと観察していたモン=エルは、それが地球の一般的な成人男性の洗練された仕跨なのだと勘違いしたらしい。彼は自分も地球人に上手く馴染んで見せようと、対抗心を燃やすようにカウンターへと歩み寄り、カイリのすぐ隣に置いてあった予備のカップへと大胆に手を伸ばした。中に入っているのは、カイリが自分のために淹れた、全く砂糖もミルクも入っていない純度百パーセントの濃厚なエスプレッソである。
「あっ!まって!ストップ!」
カイリが横目で止めに入るが、モン=エルの手の方が一瞬早かった。彼は地球の飲み物なんて大したことはないだろうと高を括り、景気よくその黒い液体を口の中に一気に流し込んだのだ。
直後のことだった。
ブフッ!
あまりの苦さにモン=エルが吹き出す。彼は自分の喉が焼け付いたのではないかと錯覚するほどの強烈な苦味に襲われ、顔を完全にクシャクシャに歪ませて激しく咳き込み始めた。流し込まれた超濃厚なエスプレッソの味は、コーヒーという存在すら知らないコーヒー初心者のモン=エルにはにがすぎたようだ。
「ゲホッ、ゲホッ!……こんなの飲んでるのか?君の義弟は⁉︎」
「あーカイリは牛乳嫌いだから…せめて牛乳飲むようにカフェオレにしてたらいつのまにかこうなっちゃったの」
カーラがもう手遅れのような仕草で説明する。子供の頃、アレックスやカーラから毎日怒られて渋々カフェオレにして飲むように教えていた結果、本人のこだわりが変な方向にエスカレートし、気付いたら砂糖もミルクも一切受け付けない偏屈なブラックコーヒー派になっていたのだ。そこからというもの、カーラとカイリのもとで地球のマナーについて教えるようになる。衣服の着こなしから、歩き方、公共の場での振る舞いに至るまで、彼がダクサム人であることを周囲に悟らせないためのカリキュラムだ。
「まずはヒゲと髪の毛ね…」
カーラが徐にメガネを外す。地球のハサミやカミソリでは、クリプトン人と同等の頑強な肉体を持つダクサム人の毛髪を剃ることは不可能だ。
「髪の毛と髭を剃るのも一苦労とは……」
モン=エルが観念したように椅子に深く腰掛けると、カーラはヒートヴィジョンでハサミを通さない鋼鉄の髭と髪を整えていく。彼女の瞳が妖しく赤く発光し、精密にコントロールされた熱線が一寸違わずに不要な毛髪を焼き切っていく。そしてお次は……着替えが始まる。リビングのパーテーションの向こう側へとモン=エルを押し込み、カーラが事前に用意していた地球の衣服の数々を次々と手渡していく。しかし、姉であるカーラの独特すぎる私服のセンスを知っているカイリは、これから起こるであろう大惨事を予感し、静かに天を仰ぐ……。
「あー…」
カイリの予感は、見事に逆中することとなった。モン=エルのセンスもまた地球に慣れていないせいか酷いものだった。最初にパーテーションの向こうから現れたモン=エルは、頭のてっぺんで髪を奇妙に結い上げた丁髷を結ってきたり、次の着替えでは変な文字が書かれたTシャツだったり、しまいには地肌が透けて見えるビニル素材でできたもう服と呼べるのかという格好をしてきた。
「"親しみやすさ"とか"威風堂々"とか書いてあるTシャツどこで見つけてくんだよ……」
流し込まれる最悪の視覚情報に、流石のカイリも呆れて何も言えなくなる。その後も何度かファッションショーという名のダメ出しを繰り返し、数十分が経過した頃、ようやくまともな足音が響いた。
「どう?」
やっと出てきたモン=エルにカーラは太鼓判を押す。
「バッチリ!カンペキよ!」
しかし、隣に立つカイリは目を細める。確かに先ほどの奇抜な服に比べれば遥かにマシではあったが、全体的にどことなく漂う、絶妙なダサさが醸し出されるそのファッション。カーラ特有の野暮ったいオフィスカジュアルが全体に滲み出ていた。
「モン=エル、姉ちゃんのセンスだからね。そのネクタイいらない。ベルトも変える」
とりあえず外を出歩くことができる程度の格好にはなったか……とカイリはため息をついた。
「後はメガネ」
カーラは自分の予備の黒縁メガネを差し出す。顔の印象を変え、正体を隠すためのマストアイテムだ。しかし、モン=エルはポケットから自信満主にレンズの真っ黒なサングラスを差し出す。
「僕にはこれがあるよ」
「そんなメンインブラックみたいなサングラスしてるやついないから」
「メン?イン?なんて?」
「もうちょい勉強しようか?」
「あーもういいの!カイリも!私みたいに人助けしたくなった時にメガネで誤魔化せる」
「カイリもしてるのか?」
「僕は…ほら、マスクだし」
カシュンとウルトラマンのメットが現れる。首元からナノマテリアルが瞬時に展開し、カイリの頭部全体を完全に覆い隠すフルフェイスメットが形成された。眼部が青白く発光する。
「あー」
モン=エルも納得しているようだった。それなら確かにメガネで顔を隠す必要はない。カイリがメットを瞬時に解除して元の素顔に戻すと、カーラが再びモン=エルの前に立ち、彼自身の新しい地球での身分について説明を始めた。
「マイクとして生活するならやっぱりメガネは必須よ」
「マイク?」
「そう、マイク貴方の名前よ、社会保障カードも作ったわ。信用情報も作ってるわ」
「なんのことかわかんない…」
ダクサムにはそういった個人の信用を数値化するような制度はなかったようだ。
「まあ地球で生活してれば嫌でも知るようになるよ」
カイリは多分を眺めて解説する。
「ああ…嫌な予感しかしない……」
カーラが張り切っている。いや張り切りすぎている。カイリは横目で見ながらこういう時は大体うまくいかないんだろうなぁと予測して深いため息をつくのだった。
その後、カーラとカイリは一度キャットコー・メディアへと向かった。キャットコーのボスであるジェームズにモンエルの件でお礼を言っていると、目の前に銀行強盗が現れ、カーラがスーパーガールとして相手をするも強盗は特殊な銃を持っておりカーラを圧倒。強盗たちが放った光線の余波により、ジェームズの父の形見であるカメラも粉々に壊れてしまう。事態を重く見てDEOに向かったカーラ、カイリも連絡を受ける。ウィンの調べで、その特殊な銃はアンドラニアンのフォトン銃であった。人間が宇宙人の銃を使っていた事を知る。
「強盗がどうやってそんな武器を?」
「カイリも気をつけて…私ですら命が危ないかも知れないんだ」
「ほんとだよ。フルチャージで撃たれたらカーラ…スーパーガールはやばかった」
ウィンがデータを見ながら解説する。いくらクリプトン人の頑強な肉体であっても、最大出力のフォトン光線を直撃されれば致命傷になりかねない。
「大丈夫だよ。今度は2人でやろう。姉ちゃんと僕2人で負けたことないだろ?」
固い決意を込めて拳を合わせるカーラとカイリ。そこへ突然、DEOのメインモニターが激しいノイズと共にハッキングされる。画面に映し出された過激組織「カドマス」は再び声明を出した。彼らは宇宙人恩赦法で宇宙人の技術が悪い人間に悪用されていると社会に向けて訴えかける。その卑劣な映像を見つめながら、カーラたちは悪党に武器を与えたのがカドマス自身であると悟る。彼らは自らの主張を正当化するため、人間に危険な兵器を横流ししていたのだ。
事件の捜査がひと段落し、自宅へ帰るとピリピリというかイライラしているカーラ。リビングの空気は文字通り氷点下まで凍りついているかのようだった。家にはアレックスもいた。珍しくドーナツを片手に持ち、それを黙々と口に運んでいる。
「姉貴げん…気そうだね。というか昼間からドーナツ?」
「カーラにも同じこと聞かれた。まあなんとなく」
「あ、そう。で姉ちゃん機嫌悪いね…」
「まだ顔見てないのにわかるの?ウルトラパワーってやつ?」
「いや、部屋の空気がね…姉貴も姉ちゃんと住んでればわかるよ」
「あっそう、じゃあ理由は本人に聞いて」
すると向こうの部屋から激しい足音を立ててカーラがやってくる。プリプリと怒る態度に、なんとなくカイリは察しがついていた。
「マークったら!」
「マイクだと思うよ…」
「そう…マイク!マイクったらクビになりかけたの!」
カイリの予測した訂正でモン=エルの話題だとカイリは確信した。
「マイク?」
突然出てきた地球名に首を傾げるアレックスに対し、カイリが補足する。
「姉貴、モン=エルのことだよ。地球名ってやつ」
あーっと察するアレックス。カーラは両手を腰に当て、早く私の話を聞いてくださいと言わんばかりの態度である。
「いい話ても?」
「どうぞ姉ちゃん。続けて」
慣れた手つきでカイリはカーラに話を進めさせる。
「全っ然!マジメに仕事をしないの!彼本当に働いたことあるのかな?」
皮肉った文句まで出てくる。
「異星人だからよ」
「私は10代で地球に馴染む努力をしたわ!彼のIDを作る手配をしてインターンの手配までしたのよ!」
「それはまあ…」
「ああっ⁉︎あと!メガネまで用意したのよ!人助けをしたくなった時のために!必要なものは与えた筈なのに!問題ばっかり起こすの!」
「困ったわね〜」
アレックスもなんだかカイリの顔を見て察して、カーラの怒りを受け流すように返事をする。
「メガネは私が使えばいいけどって!ねぇ!2人とも!!聞いてるの⁉︎」
「聞いてる聞いてる」
「真面目に聞いて!!」
思いのほか怒り心頭だったようで、これ以上流すとまずいと察した2人は姿勢を正す。
「とりあえず姉ちゃん座ったら?」
カーラが椅子に腰をかけると、アレックスが静かに口を開いた。
「貴方を迎えた時…もちろんカイリもだけど…妹と弟ができて嬉しかった」
「宇宙人でも?」
「最高だわ。ただ私と同じことをさせたかったの。だから科学展に連れ出したわ」
「退屈だったわ」
「SF映画は最高だったね」
「ホラー映画は見せたわ」
「ホラー映画はムリ」
「ラブコメの何がダメだったわけ?」
「パンクだって聴かせたわ」
「カイリも同じことしてたわけ?どうかしてるわ」
あん時姉ちゃんも一緒になってやってたけど…ねぇ…とは口が裂けても言わないカイリ。そしてアレックスが続ける。
「でも最終的に諦めたわ。変な趣味もさせてるし変な音楽も聞かせた」
「イン・シンクは変じゃない!スゴイいけてる」
「それスタートレックのこと言ってる?」
カーラが記憶を混乱させていると、アレックスが鋭く指摘した。
「モン=エルは貴方じゃないわ。あなたのやり方は合わないの。それにモン=エルの所作にいちいち目くじら立てるのも今更よ。ダンバース家にはカイリってトラブルメーカーがいるじゃない。あなた私の代わりに毎日学校に呼び出されてるのよ?」
「じゃあアレックス、私の代わりに変わってくれる?」
「いやよ。というか問題起こすカイリにこの場で問題起こすなって言えないわけ?」
「僕がいつ問題起こしてるわけさ?」
「毎日学校抜け出してるでしょ!」
テストの点数揃えたり…欠席書偽造したり……とブツブツ文句を言われ、2人からの矛先が完全に自分に向きそうになるので、カイリは慌てて話を戻そうとする。
「カイリのことは置いといて、何が自分に合うか自分で見つけなきゃいけない。どれが本当の自分か…どうあるべきか…」
「彼にはカーディガンやメガネもやりすぎ?」
「僕ダサいって言ったよね?」
「カイリの言うとおりよ。それにそれは貴方にしか似合わないわ」
「そうね。ごめんありがとう。そう言えば私になんか言いたいことがあったんじゃない?」
カーラはアレックスに聞くが、まさにその時、玄関のドアがノックされる。扉を開くと、そこに立っていたのはルーサー社の若きCEO、レナ・ルーサーだった。
## 「突然ごめんなさいね」
「いいのよ」
「あー貴方は以前私を助けてくれた…」
「姉のアレックス…」
「FBIのアレックスダンバース捜査官です」
「で、こっちが弟の」
「カイリです…」
「なるほど…それで先週教えたファイトクラブのことあったでしょ?私も頼みが」
「なんです?」
「私もスーパーガールに会いたい」
今夜開催される富裕層向けの限定チャリティパーティーに、スーパーガールをゲストとして招待したいという申し出だった。ダンバース一家は何とも言えない複雑な表情を作るのだった。何故なら、カーラ本人がその場にいる以上、一人二役を完璧に演じ分けなければならないからだ。
そしてその晩。
部屋の明かりを落としたリビングで、カーラは腕を組むカイリに正座をさせられていた。
「で?快諾しちゃったわけ?姉ちゃんとスーパーガールでパーティに出席するって」
「……はぃ………」
「はぁ……長官に頼むしかないか?」
「それと……その……」
「何?」
「ウルトラ…ウルトラマンも一緒に…って…約束しちゃいました……」
「ハァ………このバカ姉ちゃん……1度赤い太陽に照らされてそのまま隕石に頭を打ちつけて地球を4周してきてくれ……少しはマシになると思うから……」
「このセイザ……て言うのちょっと辛いんだけど……」
馴染みのない正座はクリプトン人にも応えるようだった。
「全っ然反省してるように見えないからまだその体制で!」
数日後、カーラ、カイリはおこぼれでレナからの招待で華やかなパーティにやってくる。高級なドレスとタキシードに身を包んだ二人。
「カイリはスーツ似合ってるわ」
「姉ちゃんもそのドレス似合ってるよ」
「じゃあエスコート頼むわ」
「パーティでお行儀よくする監視の間違いね」
ニコニコとしたカーラだがカイリの皮肉に目は笑ってなかった。それからというもの、カーラとカイリはお互いにスーパーガール、ウルトラマンと入れ替わりながらなんとかレナを誤魔化してやり過ごしていた。会場の死角を利用した目まぐるしい入れ替え劇だ。
「姉ちゃん,あっちに餃子あったよ」
その言葉と共に、カーラはドレスの裾を翻してサッと人混みの奥に消えてしまった。
「行儀よくね…」
そんなカイリの言葉は聞こえるはずもなく、うっすらと人混みの奥に見える姉の影は、意地汚く両手に餃子の皿を持ち頬張る姿がそこにあった。あちゃーっと天を仰ぐカイリだが、すぐそばにモン=エルの姿も見かけた。モン=エルがどこかの国の王子であるかのような紳士のようにカーラの手を引き、優雅にダンスを踊る。
「いい加減な感じかと思ったけど意外と紳士かな?」
カイリの中でモン=エルの評価が上がった…少しだけだが……。
そこへ突然、先日から宇宙人の武器を使って強盗するマイナーたちが正面扉を爆破して乱入する。すぐさまカーラはスーパーガールへ、カイリはウルトラマンへと変身し、会場の上空へと舞い降りた。
「指輪!真珠、ダイヤ、金目の物全てよこせば死人は出ないぞ!」
金品を奪う強盗団の前に、二人の青い戦士が立ちはだかる。
「私達が来ないとでも?」
「心待ちにしてた…よっ!」
宇宙人の光線銃が一斉に二人に向けられ、強力なエネルギー弾が放たれる。
「僕が防ぐ!」
ウルトラマンは両手に光輪を発生させる。それを手首の鋭いスナップでクルクル回すと、光輪は瞬時に変形し、三日月状のスラッガー形態になる。さらにエネルギーを迸らせると、その二枚の刃の間が激しい稲妻状のエネルギーの鎖によって強固に連結され、光の鎖が引き絞られるようにしてチェインブレードの形態へと姿を変えた。ウルトラマンはそれを巧みに操り、右へ左へと新体操のリボンのように、あるいは鋭いヌンチャクのように、光の残像を何重にも描き出しながら激しく乱舞させる。クルクルとエネルギースラッガーチェインブレードを凄まじい速度で回して、マイナーたちの放つ強力な光線銃のエネルギーを完璧に防いでいく。
「カイ…ウルトラマンっ!そんなことできるようになったの⁉︎」
「伊達に修行してないよ!……はぁっ!」
ウルトラマンはエネルギースラッガーチェインブレードに光線銃のエネルギーを絡め取るように纏わせ、そのままマイナーたちに投げ返す。足元で激しい爆発が起きるが、強盗たちも執念強く、今度は逃げ惑う一般のパーティ出席者たちの方向へとわざと銃口を向け直した。
「これじゃあ逃げる人たちに当たる!」
思うようにスーパーガールもウルトラマンも動けない。人質を庇い、光線を肉体で受け止めながら、二人は次第に会場の壁際へと追い詰められていく。逃げ惑うパーティ出席者を守りながら次第に追い詰められていく2人。
「くたばりな、スーパーガール、ウルトラマン」
「くっ……」
取り囲まれるスーパーガールとウルトラマン。フォトン銃のエネルギーが最大出力へとチャージされ、絶体絶命の危機が迫る。その時、会場に高周波の衝撃波が走り、強盗たちの持つエネルギー銃が一瞬にして完全に無力化された。
「形成逆転かな…」
コントロールブースから、ウィンとレナが出てくる。ルーサー社の電磁パルス妨害装置によって宇宙人兵器の周波数を完全にシャットダウンしたのだ。武器を失った強盗たちは一瞬にして戦意を喪失した。ウルトラマン、スーパーガール、レナ、ウィン、ジェームズは会場でマイナー達を捉えて笑い合う。
後日、カーラはモン=エルに新たに街を知るようガイドを渡しにいき、彼が一人の地球人として歩む姿を温かく見守ることに決めた。アレックスは自らの想いに向き合うため、マギーの元へ向かう。
そしてカイリは――。
いつものように静かに目を閉じ、自身の左腕のブレスレットへと意識を沈めていた。
そこは、黄金に光り輝く精神空間。
「ゼロ師匠…」
『また訓練プログラムに来たのか?』
そこに現れたのは、本人の人格や口調を完璧に模した、ブレスレット内蔵の「カイリ教育用AI」としてのゼロだった。
「はい…僕はまだ力不足すぎる。人質がいる狭い空間では、自分の強力な技は周りを巻き込む危険がある。もっと技術を磨かないと」
『まあ、焦る気持ちもわかるがな…このプログラムだってお前が現実世界で見たもの、感じた物ってのはダイレクトにインプットされて進化する仕組みだ。お前がそういう「狭い場所での配慮と戦い方」に悩んでると思ってさ……ちょっととっておきの奴がいるぜ』
「とっておきの奴?」
AIゼロのホログラムがこっちだと半身傾ける。光の輪の中から、重厚な足音と共にゆっくりと現れたのは、左腕に真っ赤なメビウスブレスをつけたウルトラマン。カイリが現実世界で得た課題をAIゼロが分析し、アーカイブから呼び出した、ウルトラマンメビウスの戦闘・経験プログラムだった。メビウスはカイリの前に立つと、優しく、しかし確かな重みのある声で語りかけた。
『僕も、地球に降り立った最初の戦いでは、周りの建物をたくさん壊してしまって……仲間に「何も守れていない」って、ひどく怒られたんだ。だから、君が今回、あんなに狭い空間で周りの人たちのことを一生懸命に配慮しながら戦ったのは、本当に素晴らしいことだと思います。その優しさと、上手く戦えなくて悩んだ経験は、きっと君を本当の戦士に育ててくれますよ。僕の経験が少しでも役に立つなら、喜んで力になります!』
その温かい言葉と、自分と同じ失敗を乗り越えて地球との共存を果たした偉大な先輩のデータに、カイリの目には強い闘志が宿る。カイリもまた、大切な人々を完璧に守り抜ける本物の強さを手に入れるため、今夜も過酷な修行に励むのだった。