ぼっち・ざ・ろっく!×超かぐや姫!   作:matcha君

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暇つぶし

その日。

 

STARRYの仕事が一段落すると、

家元虎之助は「ちょっと出てきます」とだけ言って外へ出た。

 

向かった先は――

アニメイト。

 

店内はアニメやゲームグッズで賑わっている。

 

その一角には、

当然のように『月影』コーナーもあった。

 

黒を基調にした近未来風デザイン。

 

アクリルスタンド。

缶バッジ。

キーホルダー。

 

しかも結構減っている。

 

虎之助 「……売れてるな」

 

すると奥から声。

 

龍太 「お、来たか」

 

出てきたのは店長。

 

虎之助の兄、龍太だった。

 

家元龍太。

 

虎之助が『月影』である事を知る数少ない人物でもある。

 

虎之助 「売れ行きどう?」

 

虎之助が聞く。

 

龍太は頷く。

 

龍太 「順調順調。再入荷かなり回してる」

虎之助 「そっか」

龍太 「お前ほんと人気あるな」

 

虎之助は少し嫌そうな顔をした。

 

虎之助 「……実感ない」 「配信しかしてねぇからな」

 

だが龍太は途中で、

 

龍太 「あ、そうだ」

と思い出したようにカウンター下から何かを取り出した。

龍太 「これ」

 

机に置かれたのは――。

 

精巧なぬいぐるみキーホルダー。

 

黒いコート。

仮面。

青白いライン。

 

完全に“月影”。

 

しかも出来が良い。

 

虎之助 「……何これ」

 

虎之助の顔が真顔になる。

 

龍太も苦笑した。

 

龍太 「それな。会社に確認したんだけど」

虎之助 「作ってない?」

龍太 「作ってないらしい」

 

つまり。

 

完全な無許可グッズ。

 

俗に言う海賊版。

 

虎之助は数秒黙った後、

普通に言った。

 

虎之助 「兄貴、会社と一緒に訴えといて」

龍太 「やっぱり?」

虎之助 「名誉棄損の慰謝料とか全部あげるから」 「それで手を打とう」

龍太 「お前マジで金に興味ないな……」 「父さんも見習って欲しいよ(虎之助達の父親は金遣いが結構荒い)」

虎之助 「めんどい方が嫌」

 

虎之助にとって問題なのは、金ではなく“勝手に変な物を作られる事”だった。

 

特に。

 

虎之助 「これ変な品質だったら名前に傷付くし」 「視聴者から聞かれまくるし」

 

龍太は少し感心したように笑う。

 

龍太 「プロ意識あるじゃん」

虎之助 「……ただゲームしてるだけだし」

 

そう言いながらも、

虎之助は目つきだけは真剣だった。

 

話を終えると、

彼はそのまま店を出る。

 

そして珍しく、

少しぶらぶらしていた。

 

おもちゃ屋。

 

そこでは

プラレール

コーナーをぼーっと眺める。

 

最新車両。

 

レールセット。

 

立体交差。

 

虎之助 「……今こんなのあるんだ」

 

少しだけ見入る。

 

その後は服屋へ。

 

黒系パーカー。

 

機能性ジャケット。

 

シンプルな服を眺める。

 

だが結局買わない。

 

最後にスーパーで食料品を購入。

 

ゼリー飲料。

お茶。

おにぎり。

冷凍食品。

 

虎之助 「……STARRYの冷蔵庫入れさせてもらお」

 

最近、

家よりSTARRYにいる時間の方が長い気がしていた。

 

そして帰り道。

 

虎之助は静かに歩いていた。

 

だが。

 

(……付いて来てるな)

 

気付いていた。

 

後ろ。

 

少し離れた場所。

 

こそこそ尾行している気配。

 

バレバレだった。

 

虹夏 「静かに!」

喜多 「伊地知先輩声大きいです!」

リョウ 「あっ、見失う……!」

ひとり 「び、尾行って難しい……」

 

完全に

伊地知虹夏

達だった。

 

虎之助は気付いていたが、

あえて触れない。

 

STARRYへ戻った虎之助は、

買って来た食材を冷蔵庫へ入れさせてもらっていた。

 

鶏肉。

卵。

牛乳。

冷凍野菜。

 

虹夏が覗き込む。

 

虹夏 「ちゃんと自炊してるんだ」

虎之助 「……まあ」

 

だが虎之助の“料理出来る”はかなり怪しい。

 

本人基準で、

「焦がさなければ成功」

レベルである。

 

それでもコンビニ弁当ばかりなのが少し嫌で、

最近は頑張って料理を始めていた。

 

その後は普通にバイト再開。

 

ドリンク。

片付け。

スケジュール確認。

 

そして営業終了。

 

虹夏 「お疲れー!」

 

皆が帰り支度を始める中、

虎之助も鞄を持って帰ろうとしていた。

 

すると後ろから声。

 

リョウ 「……お腹空いた」

 

山田リョウ

だった。

 

嫌な予感しかしない。

 

リョウ 「お金ないから食べさせて」

虎之助 「嫌」

 

即答。

 

リョウ 「冷たい」

虎之助 「知るか」

 

虎之助はそのまま歩き出す。

 

だが。

 

リョウは後ろを振り向いた。

 

リョウ 「ぼっち、お願い」

ひとり 「へっ!?」

 

後藤ひとりが固まる。

 

ひとり 「えっえっ!? わ、私!?」

リョウ 「頼んで」

ひとり 「む、無茶振りぃ……!」

 

ぼっちちゃんはおどおどしながら、虎之助を見る。

 

ひとり 「あ、あの……」

 

虎之助は帰ろうとしていたが止まる。

 

ぼっちちゃん、めちゃくちゃ申し訳なさそう。

 

そしてリョウは後ろで普通に待機。

 

(ぼっちが頼んで)

 

虎之助は少し考えてから言った。

 

虎之助 「……分かった」

 

リョウの目が輝く。

 

虎之助 「『ぼっちちゃんだけ』いいよ」

 

沈黙。

 

リョウ 「やった……え?」

 

リョウが止まる。

 

リョウ 「……私の聞き間違い?」

 

虎之助は完全スルー。

 

虎之助 「行こう、ぼっちちゃん」

ひとり 「へっ!? あっはい!」

 

ぼっちちゃん、

流されるまま同行。

 

リョウは置いていかれた。

 

リョウ 「えっ」 「ちょっ」 「待って」「虎之助ぇぇぇぇぇ!?」

 

だが無視。

 

虹夏と喜多ちゃんは爆笑していた。

 

そして虎之助の部屋。

 

ぼっちちゃんはかなり緊張していた。

 

(男の子の部屋……!!)

 

だが中は意外と普通。

 

綺麗。

 

ゲーム機。

PC。

黒系の私物。

 

あと少しだけ月影グッズ。

 

虎之助 「座ってて」 カチ

 

そう言って虎之助はコンポのスイッチを入れたらヤチヨの音楽が流れた(和やかな洗脳)

 

ひとり 「は、はい……!」

 

虎之助は台所へ向かう。

 

そして夕飯作り開始。

 

メニューは――から揚げ。

 

ひとり 「えっ、から揚げ!?」

 

ぼっちちゃんの目が少し輝く。

 

虎之助 「好きなの?」

ひとり 「す、好きです……!」

虎之助 「そっか」

 

虎之助は少し嬉しそうだった。

 

料理自体はそこまで上手くない。

 

だが、

から揚げだけは何故か結構うまかった。

 

カラッと揚がる。

 

香ばしい匂い。

 

ぼっちちゃんは一口食べた瞬間。

 

ひとり 「お、おいしい……!」

虎之助 「よかった」

 

虎之助は少し安心した顔をする。

 

誰かが美味しそうに食べてくれるの、

思ったより嬉しかった。

 

ぼっちちゃんもかなり幸せそう。

 

ひとり 「なんか……家庭の味って感じします……」

虎之助 「家庭感ある?」

ひとり 「あります……!」

 

虎之助は少し考える。

 

自分ではよく分からなかった。

 

その後。

 

虎之助 「折角だしゲームする?」

ひとり 「えっ」

 

ぼっちちゃんが固まる。

 

相手は“月影”。

 

つまり実質ゲーム界の化け物。

 

ひとり 「む、無理ですって!!」

虎之助 「ちゃんと手加減するから」

ひとり 「月影さんの“手加減”信用できないです!!」

 

だが実際。

 

虎之助はかなり丁寧に手加減していた。

 

ぼっちちゃんが楽しめる程度。

 

でも自然に勝たせる。

 

その塩梅が異常にうまい。

 

ひとり 「えっ」 「勝てた!?」

 

ぼっちちゃんが驚く。

 

虎之助 「ナイス」

ひとり 「えっへへ……」

 

ちょっと嬉しそう。

 

その時だった。

 

ピンポーン!!

 

ピンポーン!!

ピンポーン!!

ピンポーン!!

 

虎之助 「!?」

 

連打。

 

ぼっちちゃんが飛び上がる。

 

虎之助はため息を吐き、ドアスコープ…ではなくインターホンのモニターを見る。(ドアスコープは無いわけではないがインターホンがあるので使ってない)

 

そこに映っていたのは。

 

山田リョウ。

 

その隣に、

伊地知虹夏

喜多郁代。

 

虎之助 「……何してんの」

虹夏 『ぼっちちゃんだけズルい!!』

 

虹夏ちゃんの声。

 

喜多 『リョウ先輩が暴走した!!』

 

喜多。

 

リョウ 「お腹空いた』

 

リョウ。

 

虎之助は頭を抱える。

 

虎之助 「……保護者の許可は?」

 

虹夏 『お姉ちゃんの許可取った!』

喜多 『お母さんに聞いた!(ただし、喜多の母は厳しいので虎之助の家とは言ってない)』

リョウ 『私は取ってない』

虎之助 「お前は取れ」

 

結局。

 

虹夏がリョウの親に連絡し、許可を取ったらしい。

 

虎之助は諦めた。

 

ガチャ。

 

ドアを開ける。

 

虎之助 「……入っていいよ」

喜多 「やったー!!」

 

喜多ちゃんが真っ先に入る。

 

虹夏も苦笑しながら続く。

 

リョウだけは真顔で言った。

 

リョウ 「から揚げの匂いがする」

虎之助 「犬かお前は」

 

こうして虎之助の静かな夜は、

結束バンドによって一気に騒がしくなっていくのだった。

 

 

虎之助の部屋。

 

最初は「ちょっとだけ」のはずだった。

 

だが気付けば、

結束バンド全員で完全にゲーム大会になっていた。

 

喜多 「から揚げおいしい!!」

 

喜多が叫ぶ。

 

虹夏 「これ店出せるよ!?」

 

料理上手の伊地知虹夏も感心している。

 

リョウ 「毎日これ食べたい」

 

山田リョウ。

 

虎之助 「図々しい」

 

虎之助は即答した。

 

ぼっちちゃんだけは、もぐもぐ静かに食べながら幸せそうだった。

 

そして夕飯後。

 

「ゲームしようぜ!」

 

という流れになり、

始まったのは――スマブラ。

 

だが。

 

開始五分後。

 

虹夏 「待って強すぎる!!!」

 

虹夏の悲鳴。

 

虎之助の使用キャラは、

大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL

のキングクルール。

 

重量級。

 

だが動きが異常。

 

ボディカウンター。(クルールの大きなお腹で攻撃を反射する)

吸い込み。(パイレーツキャノンを打った後敵を吸い込めて捕まえると斜め上空へ吹っ飛ばす)

アーマー。(クルールのデフォルトの硬さ)

復帰阻止。(相手を埋められる四股踏みみたいな技)

 

全部完璧。

 

喜多 「なんでその距離当たるの!?」

喜多ちゃん。

 

虹夏 「空中で待ってるの怖い!!」

 

虹夏。

 

リョウ 「このワニ性格悪い」

 

リョウ。

 

虎之助は淡々としていた。

 

虎之助 「クルールは読み合い強いから」

虹夏 「説明が上級者!!」

 

しかも容赦ない。

 

メテオ。

 

下投げ。

 

王冠コンボ。

 

ぼこぼこ。

 

ただし。

 

ぼっちちゃん相手だけ、

妙に動きが甘い。

 

ひとり 「えっ」

 

ぼっちちゃんが驚く。

 

ひとり 「勝った……!?」

虎之助 「ナイス」

 

虎之助は普通に拍手。

 

だが。

 

実際は。

 

・絶妙に復帰ミスしたフリ

・反撃を遅らせる

・ぼっちちゃんの攻撃だけちゃんと当たりに行く

 

という超高等接待プレイだった。

 

しかも自然すぎて気付かれない。

 

喜多 「後藤さん強いね!」

 

喜多ちゃん。

 

虹夏 「覚醒してる!」

 

虹夏。

 

ぼっちちゃん本人だけ、

(あれ……? なんか私うまくなった……?)

と少し混乱していた。

 

そして次。

 

押し入れから出てきたのは、

懐かしの

New スーパーマリオブラザーズ U

入りWii U。

 

虹夏 「うわっ懐かしい!!」

 

虹夏が盛り上がる。

 

喜多 「まだ持ってたんですね」

 

喜多ちゃん。

 

虎之助はゲームパッドを持った。

 

虎之助 「俺バディやる」

 

つまり。

 

地面を作ったり、

敵を止めたりするサポート役。

 

プレイヤーは。

 

・マリオ:喜多ちゃん

・ルイージ:ぼっちちゃん

・黄キノピオ:虹夏

・青キノピオ:リョウ

 

そして虎之助が裏方支援。

 

これが異常にうまかった。

 

ぼっちちゃんが落ちそうになると、

即座に足場。

 

敵に囲まれると、

タッチで拘束。

 

危険な穴には先回りしてサポート。

 

特にぼっちちゃんへの支援が手厚い。

 

ひとり 「うわぁぁぁ落ちる!!」

 

ポン。

 

足場出現。

 

ひとり 「た、助かった……!」

虎之助 「進んでいいよ」

リョウ 「神……?」

 

リョウは気付いていた。

 

(ぼっちへの介護が厚い)

 

だが面白いので黙っていた。

 

部屋は大盛り上がり。

 

笑い声。

 

悲鳴。

 

虹夏 「待って待って踏まないで!!」

喜多 「先輩邪魔ぁ!!」 「リョウさん人投げないで!!」

虹夏 「これ協力ゲームだよね!?」

 

気付けばかなり遅い時間になっていた。

 

そして解散。

 

……のはずだった。

 

だが。

 

外。

 

ゴォォォォォォ!!

 

突然の豪雨。

 

窓を叩く雨音。

 

虹夏 「うわっ!?」

 

虹夏が驚く。

 

スマホ通知。

 

電車運転見合わせ。

 

喜多 「えぇぇ!?」

 

喜多ちゃん。

 

幸い。

 

虹夏と喜多ちゃんは近所。

 

リョウは親が車で迎えに来た。

 

虹夏 「じゃーねー」

喜多 「また遊びましょう!」

 

だが。

 

残ったのは――。

 

後藤ひとり。

 

ひとり 「…………」

 

沈黙。

 

ぼっちちゃん、

顔面蒼白。

 

ひとり 「か、帰れない……」

 

外は土砂降り。

 

時間も遅い。

 

不幸中の幸いとして明日は休み。

 

虎之助は少し考えてから言った。

 

虎之助 「……泊まる?」

 

ぼっちちゃんの思考停止。

 

ひとり 「へ?」

虎之助 「嫌なら虹夏ちゃん呼ぶけど」

ひとり 「い、いやっ……!!」

 

反射的に否定。

 

そして自分で赤面する。

 

ひとり 「ち、違っ……嫌じゃなくて……!!」

 

虎之助は少し困った顔をした。

 

虎之助 「じゃあ布団出す」

ひとり 「お、お世話になります……」

 

ぼっちちゃん、人生初レベルで緊張していた。

 

男の子の家。

お泊まり。

 

一方虎之助は。

 

押し入れから予備布団を出しながら普通に考えていた。

 

(……歯ブラシ足りるかな)

 

豪雨の夜。

 

部屋の窓を叩く雨音が、

ずっと響いていた。

 

そんな中、

後藤ひとり

はスマホを両手で握りしめ、

ガチガチに緊張していた。

 

ひとり 「も、もしもしお母さん……」

美智子(ひとりのお母さん) 『ひとりちゃん!? 大丈夫!?』

ひとり 「う、うん……電車止まっちゃって……」

 

母親へ事情説明。

 

しかも。

 

“男の子の家に泊まる”

 

という人生イベント付き。

 

ぼっちちゃんの声はどんどん小さくなる。

 

一方その頃。

 

虎之助は全く気付いていなかった。

 

普通に。

 

虎之助 「予備の歯ブラシあったかな……」

 

ごそごそ。

 

押し入れ確認。

 

布団確認。

 

タオル確認。

 

完全に来客対応モード。

 

ぼっちちゃん側だけ異常にドキドキしている。

 

そして問題は――風呂だった。

 

虎之助 「……先どうする?」

 

数秒の沈黙。

 

そして。

 

ひとり 「ど、どうぞ……!」

 

ぼっちちゃんが真っ赤になりながら言う。

 

だが虎之助は即首を振った。

 

虎之助 「いや無理」

ひとり 「へ?」

虎之助 「女子の残り湯使うなんて俺には出来ない!」

 

真顔。

 

ぼっちちゃん停止。

 

ひとり 「えっ」

 

今度はぼっちちゃん側が慌てる。

 

ひとり 「い、い、い、家元くんの残り湯を使うなんて私こそ無理ですっ!!」

虎之助 「なんで!?」

ひとり 「なんでってぇぇぇ!!」

 

軽い論争開始。

 

お互い本気で譲らない。

 

虎之助は真面目すぎるし、

ぼっちちゃんは意識しすぎている。

 

数分争った結果。

 

虎之助 「……じゃあ俺が先入る」

ひとり 「は、はい……」

 

決着。

 

虎之助は本当にすぐ上がった。

 

髪を適当にタオルで拭きながら出て来る。

 

虎之助 「どうぞ」

ひとり 「は、はい……!」

 

ぼっちちゃん、

また緊張。

 

虎之助はその間に、

客人用の布団を並べ始めた。

 

部屋に二つの布団。

 

少しだけ近い距離。

 

ぼっちちゃんは風呂から戻ると、

それを見てさらに緊張する。

 

(お、お泊まりしてる……)

 

現実感がすごい。

 

だが虎之助は普通。

 

完全に自然体。

 

虎之助 「電気どうする?」

ひとり 「だ、だ、大丈夫です……!」

虎之助 「そっか」

 

その後。

 

静かな時間。

 

外ではまだ雨。

 

ぼっちちゃんは少しずつ落ち着いてきて、

ぽつりと聞いた。

 

虎之助 「……家元くんって、家族どんな感じなんですか?」

 

虎之助は少し考える。

 

そして普通に答えた。

 

虎之助 「ブルガリア出身の大相撲元大関で現在部屋の親方の父さんと料理人の母さんいて」

ひとり 「うん」

虎之助 「兄貴二人」

ひとり 「お兄さん二人!?」

虎之助 「長男が龍太で、次男が龍星兄ちゃん」

 

ぼっちちゃんは静かに聞いている。

 

虎之助 「弟が虎太郎で、妹がほしの」

ひとり 「大家族……!」

虎之助 「あとじーちゃんとばーちゃん」

 

かなり賑やかそうだった。

 

虎之助は少し懐かしそうに続ける。

 

虎之助 「兄貴は野球やってる」

ひとり 「あっ、アニメイトの……!」

虎之助 「うん」「龍星兄ちゃんはサッカー」

ひとり 「スポーツ一家……!」

虎之助 「虎太郎も空手やってる」

 

ぼっちちゃんの目が丸くなる。

 

虎之助は少し笑う。

 

虎之助 「なのに俺だけ真逆」

ひとり 「え?」

虎之助 「ゲームばっかやってるし」

ひとり 「い、いやでも……」

 

虎之助は肩をすくめる。

 

虎之助 「家だと俺だけインドア寄りだった」

ひとり 「……嫌じゃなかったんですか?」

 

ぼっちちゃんは少し不安そうに聞いた。

 

自分だったら、

比べてしまう気がしたから。

 

だが虎之助は首を振る。

 

虎之助 「別に」

ひとり 「え?」

虎之助 「嫌われてた訳じゃないし」

 

むしろ。

 

家族は普通に接してくれていた。

 

スポーツ一家の中で、

一人だけゲーム好きでも。

 

父親も、

兄達も、

「お前はそういう奴」

として普通に受け入れていた。

 

ひとり 「……なんか、いい家族ですね」

 

ぼっちちゃんが小さく言う。

 

虎之助は少しだけ考えてから、

 

虎之助 「……まあ、うるさいけど」

 

と答えた。

 

でもその言い方は、

どこか嫌そうじゃなかった。

 

ぼっちちゃんは少し安心した。

 

こうして話していると、

虎之助もちゃんと普通の高校生なんだと思えたから。

 

そして部屋には、

雨音だけが静かに響いていた。

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