魔王様なら残業中です。   作:ポチエナ

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魔王様なら戦闘中です。

ベルヴェデーレは元老院に来ていた。

普段であれば元老院への道のりなんて足が重くて仕方ないが、今日に限っては魔王らしく威厳を撒き散らして門をくぐった。

 

受付で名乗るとVIP応接室に通される。

この部屋の骨をギチギチと圧迫するような空気も今日のベルヴェデーレには効かない。

 

本日のベルヴェデーレは魔王軍の責任者ではなく、魔界守護担当魔族筆頭として気合を入れてここに来ていた。

 

スッと音を立てずに応接室のドアが開く。

古くなり、開け閉めするたびにギリと音を鳴らす魔王軍の施設とはえらい違いだ。

 

「すみません、待たせました。」

 

「いえ、本日はお時間いただきありがとうございます。」

 

入ってきたのは対人類大臣、吸血鬼のアルフレド。

 

魔王軍統括司令官であり第14代魔王である特級死神ベルヴェデーレの上司にあたる傑物は、嫌味なほど高級なスーツを見事に着こなしていた。

 

「で、ご相談とは?」

 

「勇者についてです。」

 

アルフレドが顔をしかめつつソファに座る。

ベルヴェデーレはこいつホントマジで顔に出すなよと思った。

 

「勇者ですねぇ…元老院でも悩みの種ですよ。

魔王軍のほうで越境侵攻するというのは聞いてますが、問題が?」

 

「ええ、侵攻は可能ですが輸送力に問題があります。

備蓄量は問題ありませんが、前線に届ける手段がありません。」

 

アルフレドが足を組む。

 

「ふむ、それで?」

 

「民間人の臨時招集と運用を許可していただき、その旨の発令を願いたい。」

 

「なるほど…そういう相談ですか…

現状…んー肌感覚ですが厳しいでしょうな。

今の元老様は市民感情至上主義ですからね。

何か戦えそうなデータはあります?」

 

「こちらです。」

 

ベルヴェデーレはカバンから1束の資料を取り出す。

総務部のアルゴスに「魔王様も人使いが荒いですなァ…」や「魔王様に言われちゃあ老骨に鞭打つしかないでしょうなァ…」や「グルル…」や「ガルル…」と言われながらも作らせたものだ。

 

しかし頼めばやってくれるもので、侵攻作戦に必要な輸送力、確保できた輸送手段毎の作戦成功率まで細かにまとめられている。

 

「ふむ…」

 

アルフレドは組んでいた足をなおし、前傾になり両手で資料を持ち上げる。

 

「そしてこちらも」

 

レインが作成した勇者放置時の損害予測計算とその際の元老院支持率推移表も机上に滑らせる。

 

元老院支持率推移はほとんどフェイクの適当折れ線グラフらしいが、レインがそれっぽい注釈をいれてそれっぽくなっている。

 

「どうでしょう、作戦が成功すればこれを具申した者の評価も上がるとは思いませんか?

成功すればの話ではありますが。」

 

「……ふぅむ。…わかりました。元老様へ具申しましょう。

ベルヴェデーレ殿に政治の才能があったとは驚きですな。」

 

「お褒めいただき光栄です。勇者に勝ったら考えてみましょうか。」

 

アルフレドは資料の角を机で整えつつフッと鼻を鳴らす。

 

「政敵なら歓迎はしませんよ。この資料このまま持っていっても?」

 

「どうぞ。必要であればデータも送ります。」

 

「あ、この資料と相談内容は一度対人類省で揉むのでね。元老様への報告の時は一緒に来てもらっても大丈夫?」

 

「分かりました。日程は総務に調整させますので。」

 

ベルヴェデーレは応接室を出ると、とりあえず付近にいたスタッフに喫煙所の場所を聞いた。

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